●リプレイ本文
●5人の勇者
これはある五人の勇者様のお話。
五人の勇者様は小さな村をお救いになったのです。
日頃から三匹のゴブリンが村人達に悪事を働いていて村人達は困り果てていました。
そこにやってきたのが5人の勇敢な勇者様。
「わしはカメノフ、エルフのウィザードじゃ。よろしくのう、お嬢さん方」
ふさふさの口髭に顎鬚、襟の大きく開いたカラフルシャツに半ズボンを履いたお爺さんはカメノフ・セーニン(eb3349)。
周りの若い女性に握手を求めるカメノフは勇者様の一人なのです。
女達だけでなく、男達も次々に握手を求めるが男に握手されているカメノフの表情は浮かない。
「シェリスさんもそう思います?」
井戸の周りで戯れている女性達の輪に解けて込んでいるのは、二人目の勇者様のシェリス・ファルナーヤ(ea0655)。
「ええ、今日の晩御飯はやはりフィッシュフライにするべきだわ」
頬に手を当ててシェリスは真剣に奥様方の会話に入り込む。そして、いつしかシェリスは輪の中心となっていました。
「あら、その指輪‥‥思い人からの贈り物ですの?」
「えぇ! いえ、あの‥‥」
動揺したシェリスは話題を変えようと必死の様です。大切な人から贈り物なのか、特別な意味はないのかは秘密のようです。
そして三人目の勇者様は子供達とお話しているようです。
「なにかゴブリンの事について知らないか?」
一文字羅猛(ea0643)は子供達が警戒しないようにと目線を合わせるようにしゃがんで話を聞く事にした。
「うーん、僕はこの間見たよ! シンと遊んでたら、僕達の隠れ家に突然現れたの!」
「でも僕達、ちゃんと隠れていたから見つからなかったよ」
子供の一人が自慢げに話をする。どうやら子供達だけの秘密の遊び場があるようだ。羅猛は子供達ともう少しお話を続ける事にしました。
「あんた、ゴブリンの事について、なにか知ってるか?」
四人目の勇者様、アラン・イクスフォード(eb3390)は長老達が多く集まっている場所を探し出して声をかけていました。
「ほぉ? 貴方は勇者様ですね。この老いぼれ出よければ情報提供をするのじゃ」
村中で勇者様の噂は持ちきりで存在を知らないものはいない。
老人達も情報提供をしようと予め噂を集めていました。
アランは老人達から良い情報が得られそうな予感です。
そして5人目の勇者様はフレイア・エヴィン(eb2621)。
もっとも情報を多く持っていると思われる村長からフレイアは情報を得ようと真剣です。
「村長殿に話を伺いたいのだが‥‥」
貴族の心得を持つフレイアは村長の機嫌を損ねないようにと言葉を慎重に択ぶ。
村長から何かいい情報を得られるのでしょうか?
●手がかり
「ゴブリンの出現場所が特定できないのは何故かしら‥」
「子供達から抜け穴の近くにアジトがあるんじゃないか?」
ゴブリンについての噂を井戸の周りで話す女性達からシェリスは聞きだしましたが、ゴブリンの目撃情報はさまざまだ。長老から話を聞いていたアランも首を縦に振る。
子供達と話をしていた羅猛は子供達だけが知っている秘密の抜け穴の話を始めた。抜け穴を通る子供達は何度もゴブリンを見ている。
「村長も子供達が一番被害に遭っていると話していた」
「わしも被害者を探したが、子供が一番多かったのじゃ」
村を纏める村長はフレイアの予想していた通り、たくさん情報を持っていた。少しでも村人達の役に立ちたいと思うフレイアの表情は必死のようだ。
一方、女性達に悪戯をしていたカメノフは悪戯をしていた事を問い詰めると、とぼける始末だが情報は確りと集めていた。
「まずは秘密の抜け穴に行くのが妥当だな」
「ここに居ても始まらない‥」
手がかりを見つけフレイアは冷静な表情で立ち上がる。アランも素っ気無い態度を見せながら席を立ち、勇者達は会議室にしていた借家を後にしました。
●秘密の抜け穴
「まぁ! あそこに居るのは女の子じゃないかしら?」
曲がりくねった道を歩いているとうずくまっている少女の姿が見え、嬉しそうに一番初めに駆け寄ったカメノフだが表情は一変する。
「どうかしたのか?」
「いや、なんでもないのじゃ‥‥」
さすがに小さな子供にちょっかいを出せずに残念に思うカメノフの思いなど、気付くはずもなくアランは不思議に思う。
勇者達に気がついた少女は体を強張らせる。
「どうした?」
泣く子供を放っておけない性格の羅猛は子供が怯えないように腰を落とし、目線を合わせて優しく頭を撫でてあげる。
シェリスも羅猛の隣に座り、少女が落ち着くようにと優しく手を握ってあげると擦り傷を発見した。
「怪我をしているわ‥」
「このくらいなら心配ない‥もう大丈夫だ」
シェリスは自分では傷の手当てが出来ないので応急手当が出来るフレイアに見せる。傷口はそれほど酷くないようで、フレイアは安心しながいつもとは違う優しい声で少女に手当てをしてあげました。
「ひくっ‥‥突然、ゴブリンが襲ってきたの‥」
花摘みに来ていた少女の話によると、花摘みの帰り道に抜け穴に向かって歩いて居た所、3匹のゴブリンが現れて逃げる少女を追いかけてきたそうだ。けれど何とか逃げだせた少女は途中で転んでしまったらしい。
「ひくっ‥」
「私達に任せてくれ。他の人達と君の分も合わせてみっちりと懲らしめてやらないとな」
「くすんっ‥本当に?」
羅猛もやっとの思いで話してくれた少女の頭を再び優しく撫で上げて首を大きく縦に振って微笑んだ。
勇者達はこれ以上の被害を出さないように急いで秘密の抜け穴へと向かう事にしました。
情緒不安定な少女を置いていくわけにはいかないとシェリスは少女の手を取って一番後方を歩く事にしました。
●ゴブリン退治!
秘密の抜け穴まで少女に案内してもらった勇者達は辺りを見渡して、ゆっくりと穴の中へと入っていきました。
「意外と広いな‥‥」
抜け穴は一本道になっていて、奥の方に見える僅かな光が出口であろう。ゴブリンの姿はなくアランはゆっくりと突き進む。
だが出口を出た瞬間‥‥
「おまえ! 村人達に悪事を働くゴブリンじゃな!」
「!!!!!」
目の前に突然現れたのは三匹のゴブリンである。カメノフの声に驚いたゴブリンは逃げ腰で森の中に逃げ込もうとする。
「待てっ! 逃がしてたまるか!!」
ラージハンマーを取り出した羅猛は急いでゴブリンの前に立ちはだかり逃げ道を塞ぐ。
ゴブリン退治に行こうとするアランとフレイアのマントを不意に少女に引っ張られて二人が振り返ると不安そうに見上げる少女の姿がある。
「あの‥‥お兄ちゃん、頑張ってね」
「お前の憂いは晴らそう。だから、もう泣くな‥‥」
必死の思いで言葉を放つ少女に不器用な口調で答えるアランの表情は心なしか照れくさそうだ。
「君を苛めた悪いゴブリンはきっと私たちが退治して見せよう!」
普段は感情を表に出さないフレイアもこの時ばかりは微笑して見せると少女は、ほっとした様子で満面の笑みを見せた。
「さぁ。危ないから木の陰に隠れていましょうね」
シェリスは少女を連れて木の影に隠れる。
「わしは格闘ができんからのう」
笑顔を見せるカメノフにゴブリンがまっすぐ突進してくるとサイコキネシスを使って村人が切って一箇所に保管している木材の固まりの1つを浮かせて、頭の上でくるくると回した。
「ほれ、どんなもんじゃ」
驚いたゴブリンが逃げ出そうとしましたが、羅猛と衝突し尻餅をついて怯えた様子を見せた。
「命までは奪いはしない」
懲らしめる事に専念していた羅猛はゴブリンを上から見下ろし反省しているのかを尋ねました。
一方、他の勇者達とゴブリンはというと‥‥
「神聖騎士、フレイア・エヴィンの名において貴様達を退治する!」
騎士は人々を守る盾であり、剣だという意志の強いフレイアは人々に悪事を働くゴブリンを許せませんでした。
ゴブリンにむけられたクルスガターは光に反射し、ナイトレッドに染められたマントが風になびく姿は物語に出てくるような騎士そのもの。
「こら! 逃げるな」
アランは容赦なくゴブリンを追いかける。どのような理由があっても悪事をはたらく事は許せるものではない。
そして三匹はいつのまにか一箇所にかたまっていました。
「消えうせい!」
最後に眼力を込めてはなった羅猛の一喝が周りに響き渡り、ゴブリンたちは森の中へと消えていった。
それ以来ゴブリン達が悪事をはたらく事はなくなり、再び村に平和が戻りました。
完。
●物語の続き?
「皆さん、お茶タイムとしましょう。クッキーを羅猛と焼いたわ」
「物語は楽しかったか?」
物語が始まる前に台所を借りて焼いたクッキーをシェリスと羅猛が大量に持って子供達の前に出てくると子供達は嬉しそうに群がった。
「すごく面白かったよ。騎士のお兄ちゃん、すごく強いんだね!」
「あ‥ありがとう‥‥」
子供の目は光り輝いていている。フレイアは珍しく少し照れくさくなりながらお礼を言う。
自分が想像する騎士像を思い浮かべてインタビューに答えた意図が子供達に自然と伝わっていたようだ。
「私も悪さをするゴブリンがいたらボコボコにするんだ!」
子供が苦手なアランは群がる子供達にどう対応していいのかが分からず、ただ黙ったまま子供達の話をひたすら聞いていた。
「お姉さんは羅猛さんと仲良しなの?」
「えっ?」
「くすくす‥‥仲良しさんなのよ」
シェリスにむけられた子供のストレートな質問に動揺する羅猛を他所にシェリスは上手に子供の質問を交わして見せた。
子供達がクッキーを美味しそうに食べていると、突然、外から女性の悲鳴が響き渡る。
「ほっほっほ、風じゃよ風」
「きゃぁぁ!! 変態!!!!!」
サイコキネシスで手伝いに来ていた女性のスカートめくりを楽しんでいた。
「僕が退治しようか?」
己の前に立ちはだかるモノはどんなモノでも叩きのめすアランが無表情で放った言葉に誰もが苦笑した。