ゴブリン達の新年会?

■ショートシナリオ


担当:青猫格子

対応レベル:1〜3lv

難易度:普通

成功報酬:0 G 65 C

参加人数:10人

サポート参加人数:-人

冒険期間:01月07日〜01月12日

リプレイ公開日:2005年01月16日

●オープニング

 冒険者ギルドに一人の若い男がやってきた。男はアルと名乗った。
 パリから一日ほど歩いた場所にある小さな村に住んでおり、彼の父は村長をつとめていると言う。
「うちの村のゴブリン退治をお願いしたいのですが‥‥じつは、ちょっと状況が特殊でして」
 どういうことですか、と受付の者がたずねると、アルは説明を始めた。
「毎年この時期になると、たくさんのゴブリンが村の近くの集会所跡に集まってくるのです」
 集会所は村の近くの森の近くにある、あまり大きくない建物で、今では使われていないとのことだ。
「しかし、なぜこの時期に?」
 受付の者が首をかしげると、アルは困ったような顔をして言った。
「おそらく、寒さをしのぐためだったと思うのですが、どうやらそこで宴会の真似事でもしているらしいのです」
「宴会?」
 アルの説明によると、どうやら最初ゴブリンたちが集まってきた時に、以前村の誰かが残していった食料や酒を見つけたらしい。
 春になってから村人が確認に行くと、集会所の中は食い散らかしたごみなどが散乱していたという。
「でも、もう食料は置いていないのでしょう。ならば集会所で宴会できないのでは?」
 受付の者がそう推測すると、アルは残念そうに首を振った。
「どうも奴らはどこからか食べ物や酒を手に入れて持ってくるようなのです。わざわざうちの村で宴会しないでほしいのですが‥‥。」
 とにかく、村の近くにゴブリンが溜まっているというのは物騒だし、うるさくて迷惑なので退治してほしいとのことである。
「数は多いですが、どうにかしてゴブリンを退治してください。あと、今後このようなことが起こらないように何とかしていただけるとありがたいです」
 アルは真剣な表情で訴えたが、受付の者が宴会しているゴブリンを想像して、ちょっぴり愉快に感じたことは秘密である。

●今回の参加者

 ea0130 オリバー・マクラーン(44歳・♂・ナイト・人間・イギリス王国)
 ea4433 ファルス・ベネディクティン(31歳・♂・ウィザード・人間・ノルマン王国)
 ea7780 ガイアス・タンベル(36歳・♂・ナイト・パラ・イスパニア王国)
 ea7838 テテニス・ラー(15歳・♀・バード・シフール・イスパニア王国)
 ea7917 エテルノ・ナーダ(18歳・♀・ウィザード・エルフ・イスパニア王国)
 ea8203 紅峠 美鹿(30歳・♀・浪人・人間・ジャパン)
 ea8284 水無月 冷華(31歳・♀・志士・人間・ジャパン)
 ea8602 ギム・ガジェット(31歳・♂・ファイター・ドワーフ・フランク王国)
 ea9248 アルジャスラード・フォーディガール(35歳・♂・ファイター・ハーフエルフ・インドゥーラ国)
 eb0010 飛 天龍(26歳・♂・武道家・シフール・華仙教大国)

●リプレイ本文

 年が明けたばかりのある日。
 アルの父親、すなわちこの村の村長は冒険者達と集会所に居ついたゴブリンの扱いについて話し合っていた。
「ゴブリンが同じようなことを繰り返さないようにするにはどうすればいいじゃろう?」
「とりあえず、全滅させればいいのではないでしょうか?」
 オリバー・マクラーン(ea0130)は皆にそう提案してみた。
「生き物をむやみに殺すのは考え物だな。それよりも集会所を壊した方が確実だ」
 ファルス・ベネディクティン(ea4433)はそう言って、村長に集会所を壊していいかどうか尋ねた。
「あの建物は今はもう使っていない‥‥壊しても問題ないだろう」
 村長はそう言ってファルスの案に同意した。

 集会所に行くのは夜がいいだろう、ということになり冒険者達はしばらく村で時間をつぶすことになった。
 ハーフエルフのアルジャスラード・フォーディガール(ea9248)は一応フードをかぶって正体を隠していたが、やはり村には居辛いらしく、村はずれの草むらで昼食を取っていた。
「ここにいたのか」
 しばらくして、飛 天龍(eb0010)ら他の冒険者達がアルジャスラードの前に現れた。
「どこにいようと、勝手だろう」
「そんな事いわずに、一緒にお昼ごはんを食べましょう。その方が楽しいですよ」
 水無月 冷華(ea8284)がそう言うと、皆がそうだそうだとうなずき、勝手にアルジャスラードの周りで昼食を食べ始めた。
「‥‥‥‥」
 アルジャスラードは別に歓迎も嫌がりもせず、好きにさせておくことにした。
「アルジャスラード、後で組み手していただけないか」
「受けて立とう」
 天龍の誘いにアルジャスラードは快く応じた。
 こういうのも、悪くはない。

 その日の夜。
 問題の集会所は村の外れ、森の入り口近くにあった。
 古い大きめの倉庫といった雰囲気の建物で、ところどころ壁に蔦が張り付いていた。

「あれが見張りでしょうか」
 ガイアス・タンベル(ea7780)が物陰から建物の方をのぞいて言った。
 集会所の入り口近くに二匹のゴブリンがけだるそうに座っている。
「攻撃する?」
 エテルノ・ナーダ(ea7917)がファルスにたずねると、彼はちょっと待てというポーズをした。
「まず中にいるゴブリンについて調べるべきだ」
 そう言うとファルスは呪文の詠唱を始めた。ブレスセンサーの魔法である。
「ゴブリンの息が聞こえる‥‥数は六匹といったところか」
「よし、偵察してこよう」
 天龍はそう言って飛び立つと、集会所の屋根の上に降り立った。建物の壁を見て回ると、ちょうど壊れかけの窓がある。
「どれどれ‥‥」
 かれは屋根から顔を出して窓を覗き込んだ。ゴブリンたちが宴会をしているのが見えた。
「どうだった?」
 ギム・ガジェット(ea8602)が戻ってきた天龍に尋ねた。
「ちょうど宴会の最中だ。おそらく酔ってるだろう」
 彼の報告により、突撃することが決まった。
 数分後、冷華とナーダの放った魔法により、見張りのゴブリンの片方が倒れた。

 もう一匹のゴブリンはダメージを受けていたが、かろうじて意識はあった。
「う、うが‥‥?」
 とりあえず危険を感じたゴブリンは助けを求めに建物の奥へと走っていった。
「おいかけるぜ!」
 紅峠 美鹿(ea8203)の掛け声で彼女とオリバー、ガイアス、ギムらが建物の中へ突撃していった。
 集会所の内部は古く、所々崩れている部分もあった。
 見張りのゴブリンが広間に駆け込んで行くのが見えた。冒険者達は追いかけるように広間に飛び込んだ。

「うがーっ!」
 冒険者達をゴブリンの群れが取り囲んだ。とはいえ、酔っ払っているらしく、足元がおぼつかない者も何匹かいる。
 そこらへんに転がっていたおもちゃの剣(昔、祭りの劇で使ってた小道具)を構えたゴブリンは美鹿に殴りかかったが、彼女は日本刀で楽々と受け止めた。
「はっ、人間様の恐ろしさをたっぷりと教えてやるぜっ!!」
 美鹿は刀に思い切り力をこめてゴブリンを地面にたたきつけた。
 それをみたゴブリンたちは恐ろしさのあまり逃げようとしたが、広間のドアの前にはガイアスが立って行く手をさえぎっていた。
 戸惑うゴブリンたちにギムがウォーアックスを力いっぱい振り下ろした。逃げ遅れたゴブリンは真っ二つになった。
「おい、むやみに殺すなとファルスがいってたろう」
「やられる前にやっただけさ。オリバー殿も油断なさるな」
 確かにいったん戦闘に入ってしまったら、何を言っても無駄であった。
 そうしているうちに、何匹かのゴブリンがガイアスの隙をついて窓から逃げ始めた。
「まちなさい!」
 ガイアスたちも急いでゴブリンたちを追った。

 逃げるゴブリンたちは今度は逆に外に待機していた冒険者達に囲まれた。
「十二形意拳奥義・龍飛翔!!」
 天龍がゴブリンの顎元に拳を叩き込むと、ゴブリンは上空に舞い上がり、思い切り地面に打ちつけられて気絶した。
 怒った他のゴブリンたちが冒険者たちに襲い掛かったが、冷華、アルジャスラードの敵ではなかった。
 冷華はカウンターアタックで華麗にゴブリンに反撃した。アルジャスラードは両拳によるパンチでゴブリンたちをはじき返していた。
 また後衛のエテルノとファルスが放つ魔法もゴブリンたちにとっては脅威であった。

 しかしゴブリンの数が多いため、少し注意をそらすと何匹かは逃げ出し始めた。
 テテニス・ラー(ea7838)は逃げようとするゴブリンたちにメロディーを使って呼びかけた。
「こ、この人達のような優しい人に殺しをさせないでください‥‥。悲しいことに貴方達と私達はまだ分かり合ないのです。今は私達の生活に干渉しないでください。も、もしかしたらいつか分かり合える日がくるかもしれません‥‥」
 ゴブリンたちは立ち止まってテテニスの歌を聞いていたが、歌が終わるとそろそろと森の奥へと消えていった。
「こ、効果あったのでしょうか‥‥?」
「おそらく、な。しばらくは現れないだろう」
 ファルスはゴブリンたちの消えた森の奥を見つめながら言った。

 次の日の朝になった。冒険者達は村の人々に手伝ってもらいながら、集会所を破壊することにした。
 エテルノが何箇所かにグラビティーキャノンを放つと、もともと古くて壊れやすかった集会所はガラガラと音を立てて崩れ始めた。
「これで、来年からはゴブリンたちも来ないよ」
 エテルノがそう言うと村人達は喜んだ。その後は皆で瓦礫を集めたり、地面に穴を掘って瓦礫を埋めたりなどした。
 そうした作業が夕方まで続いた。

「本当にどうもありがとうございました。」
 アルが冒険者達に礼を言った。
「これから村で宴会があるのですが、よろしければ皆さんも来てください」
「本当ですか!」
 オリバーらは喜んだが、ちらりとアルジャスラードのほうを見た。
「ああ‥‥俺は疲れたからこのまま帰るよ」
 宴会会場でフードをかぶり続けるのは難しいと彼は考えたようだ。
「そうか? じゃあ俺もいいや。さっさと帰ろうぜ」
 美鹿がそう言うと、他の冒険者達も次々にアルの申し出を断った。結局、皆すぐに帰るということになった。
「そうですか‥‥残念です」
 アルは残念そうに言ったが、内心少しほっとしていた。彼は冒険者達の素性を一応全部知っていたのだった。
 彼は冒険者がどんな種族でも気にしない、仕事を引き受けてくれるだけでありがたいと思っていたが、村人すべてが同じ考えというわけではない。

 星がひとつ、ふたつと輝きはじめる中、冒険者達はパリへと帰っていった。