【お兄様と私】フレッドのお誕生会
|
■ショートシナリオ
担当:綾海ルナ
対応レベル:フリーlv
難易度:やや易
成功報酬:0 G 39 C
参加人数:7人
サポート参加人数:-人
冒険期間:08月27日〜08月30日
リプレイ公開日:2008年09月04日
|
●オープニング
8月13日。
その日をアリシアは1人で過ごしていた。
「お兄様の馬鹿‥‥」
アリシアは用意していたプレゼントを胸に抱きしめ、物憂げな溜息を漏らす。
今朝早く、フレッドは亡くなった親友の奥方の様子を見に行くと言って家を出た。
この日くらいは我が儘を言っても許されるだろうと思っていたアリシアだったが、フレッドの切羽詰った様子に口を噤まざるを得なかった。
本当は朝早くから一緒に市場に出かけて、お祝いの料理に使う材料を一緒に買いたかったのに。
「あの様子だと絶対に忘れてらしたわよね。せっかくのお誕生日ですのに」
共に過ごせないのならせめて祝福の言葉だけでもと、夜着のまま階段を駆け降りて旅立つ背中に叫んだあの時、
「お兄様、お誕生日おめでとうございます!」
「‥‥ありがとう。行って来る」
嬉しそうに微笑む前の、ほんの一瞬だけの驚いた顔をアリシアは見逃さなかった。
今日はフレッドの18回目の誕生日。
アリシアがこの日をフレッドと離れて過ごすのは初めてだった。
数日後、フレッドは無事にロイエル家へと戻ってきた。
夏の夜の空気は湿気を含んでいて重く、窓から吹き込む風は生暖かい。
「そうか。エレナさんは息災なんだな」
「ああ。生まれたばかりのフォルティスの世話に追われていて、幸いにも物思いに耽る暇もないそうだ」
ロイエル家の応接間で談笑するフレッドと友人のフランシスはどこかホッとした様に、それでいて寂しそうに見えた。
「失礼します。お飲み物をお持ち致しましたわ」
アリシアはフランシスの前によく冷えたワインを、そしてフレッドの前にはこちらもよく冷えたアップルジュースを差し出す。
「お前は家でもアップルジュースなのか?」
「可笑しいか? これは酒場とは違って蜂蜜が入ってないから飲みやすいぞ」
フレッドはそう言うと、まるでエールでも飲むかの様にごくごくと喉を鳴らし、一気にアップルジュースを飲み干してしまった。
あまりの速さにアリシアとフランシスは思わず顔を見合わせ、そのままくすりと微笑み合う。
「お兄様、おかわりをお持ち致しますわね」
「ありがとう、アリシア」
フレッドは目を細めてアリシアの頭を優しく撫でた。
「お前には出来た妹君だな」
「ああ。本当に俺には勿体無いくらいだ。アリシアは俺が全身全霊を懸けて守りたいと思っている。だが‥‥」
そこまで言いかけたフレッドの脳裏に、夫の死を知り力なく泣き崩れるエレナの姿が浮かんだ。
やがてそれはアリシアへと変わっていく。
「俺がいなくなってしまったら、誰がアリシアを守ってくれるのだろうかと考えるようになった」
「‥‥ジェラールの事があったからか?」
フランシスの問いにフレッドは無言で頷いた。
「俺が死んだ時は勿論だが、仕事で家を長く空けている時に傍にいて守ってくれる存在が必要だと思うんだ」
「ただの護衛ではなく、心から妹君を案じ守ってくれる存在が、か」
「そうだ。アリシアを愛し、その人生を共に歩いてくれる男が1番だろう。認めたくはないがな」
アリシアを溺愛し、彼女に近づく男性を片っ端から牽制してきたフレッド。
彼の妹を想う気持ちは変わらない。
だがジェラールの一件で、ずっと心中に在った『どうすればアリシアが幸せになれるのか』というわかりきった答えを受け入れられるようになってきたのだ。
そして『国の為に生涯独身を貫く』という矜持が、未だ知らない恋に怯えている自分の逃げ道であり言い分けであると言う事も。
「お前も大人びた考えができる様になったな。だが先の事に思い悩むより、妹君と共に過ごせる今を大切にした方がいい」
ワインを優雅に飲みながら諭すような口調のフランシスには大人の落ち着き感じるが、彼はこう見えても20歳になったばかりである。
「そうだな。アリシアが恋をするまでは‥‥」
友の助言に微笑んだフレッドは、少年ではなく青年の顔をしていた。
「お待ち下さい、フランシス様!」
ロイエル家の門を潜り、帰路に着こうとしたフランシスをアリシアが呼び止める。
「すまない。忘れ物でもしてしまったかな」
「いいえ、違いますわ。実はフランシス様にお願いしたい事がございますの。お話だけでも聞いて頂けますか?」
「聞くだけとは言わず、私に出来る事なら喜んでお引き受けしよう」
遠慮がちなアリシアに微笑むと、フランシスはその場に跪いて白く小さな手に口付けを落とした。
アリシアは突然の事に驚き薔薇色に染めながら、何とか口を開く。
「も、もう過ぎてしまったのですけれど、お兄様のお誕生会を開きたいと思ってますの。フランシス様にもご参加して頂けたらと‥‥」
1年に1度のフレッドの誕生日を共に過ごす事は出来なかったが、それでもお祝いしてあげたいとアリシアは思っていた。
「フレッドの誕生会か‥‥私でよければ喜んで参加させて頂こう。だが私も準備を手伝わせてもらいたいのだが、いいかな?」
「ありがとうございます! 今はお父様もお母様もいらっしゃらないから、私1人で上手く出来るか実は不安でしたの」
フランシスの返事にアリシアはホッとした表情を見せる。
「そう言えばフレッドも君も冒険者達と親しくしている様だな。せっかくだから彼等にも声をかけてみたらどうだ? きっと喜んで力になってくれるだろう」
「はい、冒険者の皆様にはいつもお世話になっております。ですがお客様としてならとにかく、お手伝いをお願いするのは気が引けてしまいますわ」
頬に手を当てて考え込むアリシアの肩に手を置き、フランシスは涼しげに微笑んだ。
「イベント事はただ参加するだけよりも、手伝いもした方がより楽しめると思うよ。皆で何かを作り上げる、それが誰かの笑顔の為なら尚更だ」
「‥‥ありがとうございます。そのお言葉に甘えさせて頂いて、早速明日にでもギルドに依頼を出してまいりますわ。お兄様にばれないように、表向きはお茶会と言う事にしようと思ってますの」
「当日になって驚かそうという訳か。面白そうだな」
小さな企みに賛同してくれたフランシスに花の様な笑顔を見せながら、レミーがいないお誕生会は無事に成功すると信じて疑わないアリシアだった。
●リプレイ本文
●男料理再び
依頼初日の朝。
「こ、これは何ですの?」
台所を覗いたアリシアの目にこんがりと焼けた大きな塊が飛び込んでくる。
「肉だ。厚切りにしてパンに挟むと美味いんだぞ」
呆気にとられるアリシアに答えるフレッドは上機嫌で鼻歌まで歌っている。
冒険者達がロイエル家に集まるのはお昼前。
フレッドはお腹が空いているであろう彼等の為に自慢の男料理を作っていた。
「ふむ。そろそろ皆が来る頃だろうか。アリシア、門まで一緒に迎えに行こう」
「まあ、もうそんな時間ですの?」
アリシアはそう言うと、フレッドと連れ立って冒険者達のお出迎えに向かうのだった。
「この度は私の依頼を受けて下さり、真にありがとうございます」
集まった7人の冒険者達にアリシアはぺこりと頭を下げた。
「‥‥あら、あなたとは初めましてですね。私はアリシアと申します」
見知った顔の中に1人だけ初対面の人物がいる事に気づいたアリシアは、伏見鎮葉(ec5421)に自己紹介をする。
「初めまして。私は伏見鎮葉。2人とは面識がないけど面白そうだったから参加させてもらったわ」
「どうかご遠慮はなさらないで下さいましね。こうして出会えたんですもの、私達はもうお友達ですわ。ねえお兄様?」
アリシアは傍らのフレッドに問いかける。
「勿論だとも。気兼ねせずに楽しんでくれ」
「ふふ。気さくなご兄妹で安心したわ。これからもよろしくね」
鎮葉は目を細めて微笑むと、兄妹と握手を交わした。
「皆、アリシア主催のお茶会に参加してくれてありがとう。感謝の気持ちを込めてささやかだが昼食を用意させてもらった」
フレッドの言葉にディラン・バーン(ec3680)の顔が僅かに引き攣る。
「‥‥それはお前が作ったのか?」
「ああ。俺の手料理を食べるのは2回目か? ショコラとシャルルもだよな」
名前を出されたショコラ・フォンス(ea4267)とシャルル・ファン(eb5267)も引き攣った笑顔を浮かべる。
「な、中々に個性的なお料理でした」
「味は悪くないのですけどね」
フォローするショコラとは対照的に、シャルルの発言は男料理初挑戦者達に不安を抱かせる。
「そんな事を言ったらフレッドさんが自信をなくされま‥‥」
「3人には大好評だったみたいだな。今回も期待しててくれ。さあ、屋敷まで案内するぞ」
慌てるショコラの心配をよそに、フレッドどこまでも前向きである。
「フレッドって何事にもプラス思考よねぇ」
「それが彼のいい所ですよ」
チョコ・フォンス(ea5866)と並んで歩くアイリス・リード(ec3876)は、温かい眼差しでフレッドの背中を見つめる。
「レンさん、お久しぶりですね。お元気でしたか?」
アリシアの問いにレン・オリミヤ(ec4115)は微笑を湛えながら、こくんと頷いた。
「‥‥アリシアも元気そうでよかった。フレッドとはついこの間、会ったけど」
「ジェラールさんの遺品を届けるという依頼ですね。お兄様がレンさんにはお世話になったって仰ってましたわ」
「‥‥お世話? ‥‥っ!!」
アリシアの何気ない一言にフレッドとの抱擁を思い出しそうになり、レンはぶんぶんと頭を振る。
「どうなさいましたの?」
「お、お誕生会、上手くお祝いできる様に頑張るからっ‥‥」
そう答えるレンの頬は微かに赤い。
「いい香りね。これは期待できそうかしら」
居間にまで漂う香ばしい肉の香りに鎮葉はホッと胸を撫で下ろす。
しかしその安堵も食卓に並べられる男料理を目にした瞬間に跡形も無く消え失せてしまう事になるとは‥‥。
●最高の日を迎える為に
昼食後、チョコは自宅に鎮葉を招いて垂れ幕や飾り付けに使う小物作りを始めていた。
「美味しかったけどアレには驚いたよね」
チョコは市場で購入した白く大きな布を切りながら、ふうと溜息を漏らす。
「あの肉の塊でしょ? 圧巻だったわよね」
「うん。パンに挟めって切ってくれたけどお肉がパンより厚かったし、あれをどうやって齧り付けって言うのよ」
「アリシアがナイフとフォークを持ってきてくれなかったら顎が外れるとこだったわ」
鎮葉はそう言いつつも楽しげに笑い声を漏らす。
「誕生日は過ぎてしまったけど、誕生会は是非してあげたい、か。健気な妹さんだこと」
フレッドをがっかりさせまいと必死で例のパン料理に齧り付いていたアリシアを思い出す鎮葉。
「心意気に打たれた、なんて気障な事を言うつもりはないけれど、一つお手伝いをさせてもらいましょうか」
鎮葉は色とりどりのリボンを同じ長さに切り揃え、それをわっかの様にして繋げていく。
お誕生会に使う庭に面した部屋は確認済みである。
これを天井から下げたり壁に飾り付ければ華やかになりそうだ。
「ただいま戻りました」
「うう、重いっ」
そこに買出しを終えたアイリスとエイリークが帰ってきた。
「おかえりー。荷物はその辺に適当に置いといてね」
チョコの言葉にエイリークは荷物を置くと、整理整頓の行き届いた部屋を見渡す。
「それにしても綺麗な部屋ですね。物が散らばってないだなんて奇跡だ。僕の部屋とは大違いです」
「綺麗って言うかあまり生活感がないだけなんだけどね」
そう言いチョコは苦笑する。
「では買い物も終わったので僕は失礼します。きっとアリシアさんも忙しいでしょうから‥‥」
いそいそとチョコの家を後にしようとする彼が次に向かう場所は明らかである。
フレッドに『お茶会が実は自分のお誕生会』だという事は絶対に知られてはならない中、うっかりとそれを口にしてしまいそうなエイリークをフレッドと接触させるわけにはいかなかった。
「こら、待ちなさい」
鎮葉はエイリークの首根っこを引っ張った後、がっちりと彼の頭を腕と胸の間に抱え込む。
「いい? ここでアリシアもびっくりさせるぐらいの事をしてみせれば株も上がるわ。だから当日までやってる事は彼女にも伏せておきなさい」
「は、はひ。柔らかい‥‥」
ほっぺたに当たる鎮葉の豊かな胸の感触にだらしなく鼻の下を伸ばすエイリークは、甘い囁きによく考えもせずに頷くのだった。
一方ロイエル家では。
「遅くなってすまないな。初めまして、フランシスだ」
「初めまして。私はショコラと申します」
ショコラは急な仕事の為に待ち合わせに遅れたフランシスににっこりと微笑みかけると、そっと手を差し出す。
フレッドやアリシア、それに昼食が終わる頃に屋敷に顔を出したエイリークとの久しぶりの再会を喜ぶ彼は、温かな時間を仲間と共に作り出せる事に喜びを感じていた。
「私はフレッドさんの従者のシャルルです。お見知りおきを」
「従者じゃなくて親友だろう?」
優雅に挨拶をするシャルルにフレッドは困った顔見せる。
「フレッドのお目付け役のディランです」
「ディラン、お前まで‥‥」
「はははっ。いい友を持ったな、フレッド」
ディランにまでからかわれ途方に暮れるフレッドの肩をぽんと叩くフランシス。
「貴方の英雄譚をお聞かせ頂きたいのですが、よろしいですか?」
「ん? ‥‥ああ、私の話でよければ。すまないが失礼するよ」
そっと目配せをするシャルルに頷き、フランシスは席を立つ。
「私達はメニューを考えましょう」
「こちらをお使い下さいな」
アリシアはテーブルの上に羊皮紙を広げ、羽ペンをショコラに手渡す。
「よし! 俺もアイディアを出させてもらうぞ」
「‥‥すまないがフレッドに馬を診てもらいたい。昨日から調子が悪そうなんだ」
気合十分のフレッドにディランは心痛な面持ちでそう告げる。
「何っ!? それは一大事だ。処置が遅れると命に関わるかもしれない」
「‥‥私達で考えておくから、フレッドは馬を診てあげて」
アリシアの隣に座っていたレンはフレッドの目を見ずに小さな声で呟く。
「すまないな。大事でなければすぐに戻る」
ディランと共に居間を後にするフレッドを見つめながら、レンは涙に濡れた彼の顔を思い出す。
(「‥‥あの事、気にしてるのは私だけ? フレッドは何ともないみたい。意識しちゃ、ダメ」)
少しだけ寂しさを感じながら、レンは自分にそう言い聞かせる。
「フレッドさんがいない内にバースデーケーキをどういう物にするか決めてしまいましょう」
「お兄様は林檎がお好きですから、ケーキに入れたらきっと喜んで下さると思いますわ」
「‥‥うん。そう思う」
ショコラとアリシアに頷きながらも、レンはフレッドの気持ちが気になって仕方が無かった。
「エレナさん達にもお誕生会に出席して頂きたいと思うのですが‥‥」
フランシスを庭園に連れ出したシャルルは自らの考えを口にする。
エレナ達とは任務中に命を落としたフレッドの親友ジェラールの妻と、生まれたばかりの息子フォルティスの事だ。
親友の死をきっかけに成長したフレッドの心の変化を、シャルルはエイリークに知って欲しいと思っていた。全てを知ってからアリシアにアプローチして欲しいとも。
「招待すれば彼女も一時悲しみを忘れられるだろう。だが乳飲み子を抱えて明後日までに屋敷に戻ってくるのは難しい」
親子が住む村へは徒歩で2日かかる。
馬車を用意したとしても赤ん坊であるフォルティスにかかる負担は大き過ぎるだろう。
「‥‥だが、彼女から祝福の言葉を貰う事は可能だろう。今から私が馬を飛ばせば誕生会が終わるまでに戻って来られると思う」
フランシスの言葉にシャルルは伏せていた瞳を上げる。
「エレナさんからお祝いの言葉を頂ければフレッドさんは喜ぶ筈です。お願いできますか?」
「ああ、任せてくれ。私も彼女が気になっていたしね」
笑顔で答えるフランシスにシャルルは深々と頭を下げるのだった。
ディランの愛馬の体に触れながら、フレッドは首を傾げる。
「何処も悪そうな所はないな」
それもその筈。
これはフレッドを外に誘い出すディランの作戦なのだ。
「忙しくてあまり構ってやれなかったからだろうか?」
「馬も案外デリケートなんだ。寂しくて元気がないのかもな」
「なるほどな。寂しいと言えばレオの方が深刻かもしれない。よし、明日一緒にレオと遊ぼう」
「明日って、急に何を言い出すんだ?」
珍しく強引なディランに驚くフレッド。
「天気がいい日の空の散歩は楽しいぞ。悩みも忘れるくらいな」
「だが‥‥」
「準備の合間に行けば問題はないさ。約束しただろう、後でいくらでも話を聞くって」
元気そうに見えるフレッドが完全に立ち直ったわけではない事を、親友である彼は見抜いていたのだ。
「‥‥ありがとう。明日が楽しみだ」
フレッドは目の前の親友に微笑んだ。
●友情時々愛情?
2日目も朝早くから準備が始まる。
ロイエル家の台所に立つのはアリシアと彼女をサポートするショコラとレンの3人だ。
振舞う料理は昨日中に決定したので、今日は試作に取り組む。
メニューは以下の通りである。
『飲み物』
・紅茶
・お酒
・アップルジュース
『お料理』
・魚介フリッタ入り野菜サラダ・ロイエル家風
・フォンス家特製スープ
・お肉たっぷりボルシチのパイ生地包み
『デザート』
・クッキー
・バースデーアップルケーキ
・果物盛り合わせ
「‥‥手、気をつけて」
レンはサラダに入れるフリッタ用の魚介を下拵えをしながら、傍らでケーキに用の林檎の皮を抜いているアリシアに声をかける。
「ゆっくりでいいですからね。あ、そこを切る時はこう持つといいですよ」
「は、はい‥‥」
ショコラはアリシアの背後からそっと彼女の両手を支える。
その時にふわりと漂ってきた清潔感のある香りと、近くにあるショコラの顔にアリシアの頬が薄く色づく。
「ね、上手く切れたでしょう? 食材を切る時は面積の広い部分を下にすると安定しますよ」
乙女のはじらいと変化に気づかないショコラは、アリシアからゆっくりと体を離し、微笑んだ。
その後も2人に教えられながら、アリシアは初めての手料理に真剣に取り組んでいくのだが‥‥
「‥‥プレゼントはわ・た・し☆って言うの? 上目遣いで‥‥」
思いがけないレンの発言にその手は止まってしまう。
「な、な、何を仰いますの!?」
「‥‥やったら、お誕生会、盛り上がるかも」
何の根拠もないレンの発言には何故だか妙に説得力があった。
「‥‥ショコラで試してみて、ダメなら止めればいいと思う」
「わ、わかりましたわ。やってみます」
レンの一言で誰よりもお誕生会を成功させたいと願うアリシアは実践を決意する。
寝かせてある生地の具合を確かめてきたショコラに意を決し、歩み寄った。
「どうしました?」
布で手を拭くショコラにアリシアはさらに近づく。
そして‥‥
「プ、プレゼントはわ・た・し☆」
その瞬間、ショコラの手から布がはらりと舞い落ちた。
そして硬直していたショコラの頬が一瞬で真っ赤になる。顔から湯気を噴き出しそうな勢いで。
「ご、ごめんなさい! ごめんなさいっ!」
立ち尽くすショコラにアリシアは涙目で謝り続ける。
「‥‥効果覿面♪」
嬉しそうなレンの声にハッと我に返ったショコラは、アリシアの肩をがしっと掴む。
「アリシアさんっ!」
「は、はいっ!」
「いいですか、女性があんなはしたない事を言っちゃいけません! もう金輪際! 絶対に! ダメですからねっ!?」
ショコラはいつもの穏やかさからは想像できないような迫力に満ちていた。
アリシアは彼の壊れっぷりにこくこくと無言で頷く。
一体いつレンに小悪魔属性が付いたのだろうか‥‥。
台所でそんな事件が起きているとは露知らず。
フレッドはキャメロットから離れた人気のない場所で空中散歩を楽しんでいた。
「すごいな! 空を飛ぶのがこんなに気持ちいいとは知らなかった!」
(「‥‥さて、そろそろか」)
大喜びではしゃぐフレッドの様子を眺めていたディランはレオに急降下の合図を送る。
「な、何だ? うわあぁぁぁぁ!!」
未体験のスピードにフレッドは振り落とされ、そのまま川へと落下する。
(「それなりの深さがある川だし、死にはしないだろう」)
とても親友とは思えぬ仕打ちをするディラン。
案の定、水面から顔を出したフレッドは恨めしそうな顔をしていた。
「無事だったか? さすがだな」
「‥‥ディラン、悪ふざけが過ぎるぞ」
「たまには何もかも忘れてはしゃぐのも気持ちいいだろう?」
しれっとしたディランに川から這い出たフレッドは息をつく。
「意外と荒っぽいんだな。だがいい気分転換になった」
そして2人はフレッドの服が乾くまで語り合う。
己が胸の内の悩みとアリシアへの想いを語るフレッドを、ディランは真摯な瞳で見つめていた。
庭で一休みをしているレンにフレッドは遠慮がちに声をかける。
「レン、ちょっといいか?」
「う、うん」
「この前は見っとも無い所を見せたな。だが君のお陰で救われた。ありがとう」
ふるふると首を振るレンはフレッドの頬が赤い事に気づく。
(「‥‥照れてる? そっか、何ともなくなかったんだ」)
そう思い自然に微笑むレン。
「レンが泣きたい時、俺でよければいつでもこの胸を貸そう。1人では泣かせないと約束する」
しかしその顔はフレッドの言葉に真っ赤に染まる。
鈍感な彼の事だ、きっと深い意味はない。
でも恥ずかしさと同時に感じるのは、微かな嬉しさ。
未だ赤いフレッドの顔を見つめながら、レンは幸せそうに微笑んだ。
「アリシアさんがびっくりする事‥‥うーん、思いつかないよぉ」
リボンで花を作るエイリークは頭を悩ませていた。
鎮葉のアドバイスに張り切ったものの、いい案が浮かばないらしい。
「特別な事をしなくても、こうやって一生懸命お手伝いしてくれた事にアリシアは感激してくれると思うな」
垂れ幕作りをアイリスと鎮葉に任せたチョコは、昨夜からロイエル兄妹の肖像画を描き始めていた。
「垂れ幕の文字をあなたが書いたらいかがですか?」
「でも僕は字がへたっぴで‥‥」
「上手い下手ではなく、どれだけ気持ちが込められているかですよ」
戸惑うエイリークを後押しするシャルル。
「‥‥僕、やってみます」
エイリークは力強く頷くと『フレッド、お誕生日おめでとう』と『お茶会』の2つを書き始める。
そして数刻後‥‥
「やった! 2枚とも納得行く物が書けました!」
「どれどれ‥‥うん、いいじゃない。すごく素敵だわ」
「えへへ、頑張っちゃいました。だからもっと褒めて下さい、鎮葉お姉さま〜」
鎮葉にふわふわ猫っ毛をぐりぐりと撫でられながら、至福の表情を浮かべるエイリーク。
両方に書かれた文字には心からフレッドの誕生日を祝うエイリークの気持ちが溢れ出ていた。
お世辞にも上手いとは言えないが、見るものの心を温かくする何かがあった。
「お疲れ様です。少し外の空気を吸って気分転換致しましょうか」
「はいっ!」
アイリスとエイリークはチョコの家を後にする。
暮れ始めた空は鮮やかな茜色。
秋風が2人の髪を撫でる。
「フレッドさんはアリシアさんを本当に慈しんでおられるのです。きっと‥‥独り占めしたい程」
「えっ?」
突然始まった話に戸惑うエイリーク。
だがアイリスは構わずに先を続ける。
「それでも妹君の幸せの為、ご自身以外の相手を願う。その愛の深さはいくかばかりかと。貴方はその深い想いを図り、受け止め、答え得る人になり得ますか?」
彼女は家柄や能力の事を言っているのではない。
エイリークの想いの強さや覚悟を聞いているのだ。
「‥‥少し難しい話でしたね。答えは貴方の心の中に留めて置いて下さい」
そう言い浮かべるのは微かな憂いを秘めた聖女の微笑みだった。
「僕にはあなたがそれ程までにフレッドさんを想っている様に聞こえました‥‥」
エイリークはアイリスの背中にそっと呟く。
その想いは博愛か、それとも‥‥。
真実はアイリス自身にもわからないのかもしれない。
●たくさんの想いとフレッドの涙
誕生会当日。
「出来たわよ! うん、我ながら完璧♪」
両端に棒を取れない様に縫い合わせ終えた鎮葉は、アイリスの美しい花の刺繍とリボンの装飾が施された垂れ幕を満足げに見つめる。
「では『お茶会』と書かれた方を上にして貼り付けましょう」
アイリスはにっこりと微笑むと、丁寧に2枚の布を貼り付けていく。
いざ本番になった時、1枚目を剥がすと下から『フレッド、お誕生日おめでとう』と書かれた方が出てくるのだ。
「ロイエル家に急ぎましょ!」
チョコは徹夜で書き上げた2枚の絵を大事に袋へと仕舞う。
1枚は兄妹の肖像画。
もう1枚はアリシアへのプレゼントだった。
屋敷に到着した時には既に部屋のセッティングが始まっていた。
窓際へテーブルを運ぶのはフレッドとディラン。
庭園を見渡せる大きな窓を隅々まで綺麗に拭いているのはシャルルだ。
「このリボンの飾りを天井から垂れ下げて」
チョコは取り出した飾りを長身のフレッドに手渡し、
「このリボンのわっかは壁に緩やかな『W』が連なってくみたいに貼り付けてね」
鎮葉はディランに装飾の仕方を説明し、
「わたくし達は卓上に飾る花を摘みに参りましょう」
アイリスはシャルルを伴って庭園へと赴く。
見事なまでに女性が主導権を握っていた。
「アリシアさ‥‥」
台所に向かうエイリークが目にしたのは、額に浮かぶ汗をものともせずに懸命に料理を作るアリシアの姿。
儚げだと思っていたアリシアは活き活きとしていた。
「‥‥エイリークさん? もしかしてお手伝いに?」
「僕にも出来る事はありますか?」
「ありがとうございます。早速ですけどサラダを盛り付けて下さいな」
「任せて下さい!」
ホッとした様な笑みを浮かべるアリシアにエイリークは元気よく答えるのだった。
フレッドが大きな窓を開けると、装飾の終わった部屋の中は秋風で満たされる。
天井も壁もリボンのわっかで彩られ、卓上には爽やかな香りを放つ花が飾られた。
そして一際目を引くのはエイリークの字で『お茶会』と書かれた垂れ幕である。
「すまない! 遅くなった!」
そこに息を切らしたフランシスが飛び込んでくる。
「気にしないでくれ。仕事は済んだのか?」
「ああ。無事にな」
フレッドに答えるフランシスはそっとシャルルに目配せをする。
「全員揃いましたので、これから始めさせて頂きますわ」
アリシアの合図にディランは垂れ幕の下に移動する。
フレッド以外の全員は逸る気持ちを必死で押さえつけていた。
全員の目を見つめた後、アリシアはとびきりの笑顔で宣言する。
「お兄様のお誕生会の始まりですわっ!」
途端に巻き起こる歓声と拍手。
ディランが垂れ幕の布を剥がすと、その下から『フレッド、お誕生日おめでとう』の文字が、台所からはバースデーアップルケーキを持ったショコラが現れる。
「こ、これは一体‥‥」
未だ状況の飲み込めないフレッドに全員はせーので口を開く。
「お誕生日おめでとう!!」
その後も皆のおめでとうコールは止まない。
「お兄様、隠していてゴメンなさい。でもどうしてもお祝いしたかっ‥‥あら?」
「‥‥みんな、ありがとう‥‥」
フレッドは感激のあまりポロポロと大粒の涙を零していた。
悲しい涙は堪えられても、嬉し泣きは歯止めが利かないようだ。
「‥‥フレッド、泣き虫」
「すまない。涙が止まらないんだ‥‥」
レンに答えるフレッドは既に鼻声だった。
「お料理が冷めてしまいますから、席に着いて下さいね」
ショコラはケーキをテーブルの中央に置くと、フレッドに微笑みかける。
最初に運ばれてきたのは『魚介フリッタ入り野菜サラダ・ロイエル家風』だ。
その後に『フォンス家特製スープ』と『お肉たっぷりボルシチのパイ生地包み』が振舞われる。
「見た目も綺麗ですし、味も格別ですね」
「ああ。アリシアが作ったと思うと尚更だ」
絶賛するシャルルの隣でフレッド感激に声を震わせている。
「‥‥ケケとノノにもあげていい?」
「お誕生日ですもの、特別ですわ」
アリシアの了承を得たレンは、嬉しそうにペット達に料理のお裾分けをする。
「やっぱりお肉にワインは合うわね」
「こんなにおいしいワインも珍しいですね」
ディランと鎮葉は大人の会話を交わしていた。
「フレッドももう18歳かぁ」
「チョコ、まるでお姉さんみたいな口ぶりだね」
何故かしみじみとしているチョコにショコラは笑い声を漏らす。
「いい誕生会だな」
「ええ、本当にそう思います」
フランシスの言葉に頷きながら、穏やかな時間はハーフエルフの身に余る幸せで、だからこそ愛しいとアイリスは思う。
「待ってました! やっぱ甘いものは別腹だよねー♪」
アリシアが運んできたデザートにチョコは歓声を上げる。
賑やかで温かい時間は甘いデザートの登場でより幸せなものとなった。
「アップルケーキだなんて初めてだが、すごく美味いな」
「改めてお誕生日おめでとうございます。フレッドさん好みの甘さに調節したんですよ」
ショコラはパクパクと食べ進めるフレッドにアップルジュースを注ぐ。
「ではここで私からフレッドさんに歌を贈らせて頂きます」
シャルルの奏でる竪琴に乗せて歌われるのはフレッドの成長を称える歌だった。
美しく歌い上げられるシャルルの親友を想う優しい気持ちに、全員がうっとりと聞き惚れていた。
歌が終わると歓声と共に拍手が贈られる。
「ありがとう、シャルル。買被られているようで照れ臭いけどな」
「照れる事はありませんよ。寧ろ誇っていいのです。貴方の成長には目を見張る程に素晴らしいのですから」
「そうだろうか?」
珍しく褒め言葉を口にするシャルルにフレッドは首を傾げる。
「ええ。最初は単純な所があると思っていましたけれど、今となってはアリシアさんを引き合いに出すだけじゃ動かせるとは到底思えませんよ」
「それは誉め言葉か?」
「勿論ですよ」
シャルルは意味ありげに微笑む。
「フレッド、お誕生日おめでとう! これはあたしからのプレゼント♪」
「あ、ありがとう。開けてもいいか?」
「うん、どうぞ」
突然の事に戸惑うフレッドは、ゆっくりと袋の中からプレゼントを取り出した。
「どう? 気に入ってくれた?」
「‥‥素晴らしいな。うん、実にいい絵だ」
チョコが描いたのはお互いを優しい目で見つめる兄妹の絵だった。
淡く優しい色使いが醸し出す、永遠の家族愛が絵から溢れ出て来る様な素晴らしい作品である。
「お兄様、私のプレゼントも受け取って下さいますか?」
「勿論だとも。ありがとう、アリシア」
丁寧な包装を解くと、金糸の刺繍が施された純白のマントが姿を現した。
華美ではないが優雅な凛々しさを称えるそれはフレッドによく似合いそうだ。
「お気に召して頂けましたか?」
「やはりアリシアはセンスがいいな。纏うのが勿体無い位だ」
フレッドは優しい目でアリシアの頭を撫でる。
「実はまだプレゼントがあるんですよ。皆からあなたへのバースデーメッセージです」
アイリスが手渡す寄せ書きには‥‥
フレッド、18歳のお誕生日おめでとう!
いつまでも兄妹仲良くね♪ チョコ
ハッピーバースデイ
フレッドさんにとって良き年になりますように ショコラ
誕生日おめでとう
一緒に酒を飲める日を楽しみにしている フランシス
良い妹さんを持ったわね、おめでとう 鎮葉
フレッドさん、お誕生日おめでとうございます!
あなたは僕の目標です! エイリーク
貴方と、貴方を愛する全てのものに祝福を
そして、貴方を育んだこの世界に、心からの感謝を
お誕生日、おめでとうございます アイリス
あなたのこれからの活躍と生存を願います シャルル
おめでとう(犬の足型付き) レン
答えは一つとは限らない
悩みは独りで抱えるな ディラン
お兄様、お誕生日おめでとうございます
何処にいてもアリシアはお兄様の無事を祈っております
心からの尊敬と愛を込めて‥‥ アリシア
10人の温かい想いに、再びフレッドは瞳を潤ませる。
「それとこれはエレナさんからだ」
フランシスはフレッドに小さなカードを手渡す。
お誕生日おめでとうございます
貴方が届けて下さった夫の想いと子供の名があるから、私は生きていけます
私達の為に涙を流してくれてありがとう
貴方の話をする夫はとても幸せそうでした エレナ
ぽたり、と涙が落ち、カードに書かれた文字が淡く滲む。
優しいシャルルの調べに包まれ涙するフレッドを全員は温かく見守るのだった。
●目に見えなくとも
後片付けの最中、フレッドは手を止めて沈み行く夕日を見つめていた。
「少し‥‥大人の顔をなさる様になりましたね」
その横顔が寂しげに見え、声をかけるアイリス。
振り返ったフレッドは美しく着飾った彼女を優しい眼差しで見つめる。
「あ、あの、せっかくのお祝いの席だからと思いまして。本当に、頂いてばっかりだったのだと‥‥改めて。こういう格好は慣れていないので、お目汚しでしたらすみません」
アイリスが身に着けているのはフレッドやアリシアからの贈り物だった。
「綺麗だな。よく似合っている」
鈍感かと思えばフレッドはたまにさらりとこんな台詞を口にする。
下心がないが故の自然さで。
「これを受け取ってもらえるだろうか?」
差し出されたのは真っ白な羽だった。
「デビルを探すアイテムらしいが、ただ持っているだけでもお守りになりそうな気がしたんだ」
フレッドは微笑むと、そっとアイリスに羽根を握らせる。
「‥‥叶うなら、わたくしは大切な人々の成長と行く先を見守り続けたいと思っています。勿論、貴方の事も」
人間より長い生の意味を見出す事が出来るかもしれないと今は思うから。
「ありがとう。俺も早く貴方の心を支えられる様、努力しよう」
レンと自分がハーフエルフだと知っても態度を変えなかったフレッド。
その優しい心が折れてしまわぬ様にとアイリスは願うのだった。
「アリシア、内緒のプレゼントをあげる!」
チョコはもう1枚の絵をアリシアに手渡す。
「これはお兄様の肖像画ですか?」
「うん。実は前にフレッドにアリシアの絵を頼まれたんだ。本当にアリシアが大好きなのね」
「チョコさんだってショコラさんに大事にされてるじゃないですか」
兄を持つ同士、そして兄が大好きな者同士の2人にはお互いの想いが手に取るようにわかっていた。
「ありがとうございます。離れていてもこれで頑張れますわ」
「わ、フレッドも全く同じ事を言ってたよ。さすが兄妹!」
アリシアの言葉に目を真ん丸くするチョコ。
やがて笑い合う2人をショコラは遠くから温かい眼差しで見つめていた。
夜の闇を切って空を飛ぶのは1匹のグリフォン。
その背に乗るアリシアはディランの背中にしがみ付きながら、星空の散歩を楽しんでいた。
「素敵ですわ。まるで夢の様です」
「喜んで頂けて何よりです。怖くはありませんか?」
「ええ。ディランさんが一緒ですもの」
笑顔で答えるアリシアにディランも優しい微笑みを浮かべる。
「でも、このまま夜空を見つめていたら吸い込まれてしまいそうな気がします」
「大丈夫。目を瞑って、風だけを感じて下さい。後は‥‥」
「後は?」
言い淀むディランにアリシアは閉じていた目を開ける。
「私にしっかりと捕まっていてくれると、貴女がいないんじゃないかと不安にならずに済みます。お願いできますか?」
「‥‥はい。怖がりなディランさんも可愛いですわ」
甘い言葉に頷くアリシアの瞳に、空に浮かぶ星々が煌いた。
冒険者達にアリシアから感謝の気持ちと共にお礼の品が贈られた。
思いがけないプレゼントに喜ぶ冒険者達だったが、1番嬉しい贈り物はそれぞれの胸の奥にある。
仲間と協力して作り上げた誕生会と、共に過ごした3日間。
形として残らないからこそ優しい輝きを放つ宝物が────。