月夜の絆

■ショートシナリオ


担当:綾海ルナ

対応レベル:6〜10lv

難易度:難しい

成功報酬:6 G 75 C

参加人数:4人

サポート参加人数:1人

冒険期間:02月22日〜03月04日

リプレイ公開日:2009年03月02日

●オープニング

 コールチェスター領にある小さな村に住むアンリは、冒険者になる事を夢見る少年である。
 近くにある森を修行と称して毎日散策するのは、彼の日課であり楽しみでもあった。
 散策は主に昼間だが、時々親の目を盗んでこっそりと夜に森に入るのが楽しくて堪らない。
「アンリく〜ん! 待ってよぉ」
「おっせーぞ、ミリア! 早く来いって!」
 情けない声に振り向くと、ランタンの灯に照らされた幼馴染の少女ミリアの姿があった。
 ミリアはアンリより2つ年下で、体も小さく運動神経もあまり良くない。だが動物好きな優しい性格で、アンリは彼女を妹の様に可愛がっていた。
「今日はあそこまで行こうぜ。これをやるから頑張れよ、な?」
 既に家に帰りたそうなミリアに、アンリは甘い匂いのする小さな包みを取り出してみせる。
「いい匂い‥‥これっておばさんが焼いてくれたクッキー?」
「母ちゃんのクッキー、好きだろ? 着いたら一緒に食べようぜ」
 満面の笑顔で頷くミリアの小さな手を握り、アンリは2人のお気に入りの場所を目指す。
 そこは森の奥深くにある、古く大きな木の根元だった。
 地中は窮屈とばかりに飛び出した木の根っこが幾重にも重なり、まるでアーチの様になっているのだ。
 ミリアが躓いて転ばない様に注意しながら、2人はお気に入りの場所を目指す。もう少しで辿り着くという所で、ミリアは急に足を止めた。
「アンリくん。あそこ、光ってない?」
「‥‥本当だ。何かいるのかな」
 視線の先には白く淡い光が見えた。
 見た事が無いのに、恐怖心を感じさせない温かな光────2人は何だか呼ばれている気がしてならなかった。
 すたすたと光に向けて歩き出す2人が見たものは‥‥
「こ、これって‥‥ドラゴン、か?」
「絵本で見たのと同じだよ、アンリくん!」
 金色の鱗に流麗な線を描く細い体躯。その体は月の光を受けている様に白く輝いている。
『夜に子供2人では危険ですよ。早く家に帰りなさい』
 それは静かで穏やかな声だった。
 目の前にいるドラゴンは襲いかかって来る様子もなく、木の根のアーチの下で蹲っている。
「わ! 喋った! すっげぇ!!」
「初めましてドラゴンさん。あたしはミリア。こっちはアンリくんだよ。ドラゴンさんのお名前は?」
 大興奮するアンリの横でミリアはぺこりとお辞儀をした後、素朴な笑顔で挨拶をする。
『あなた達の様な名前はありませんが、ムーンドラゴンと呼ばれています』
 ムーンドラゴンはそう答えると、微かに身じろぎをした。
 その瞬間、2人の目に傷を負った腹部が飛び込んできた。焼け爛れて血が滲むそれは痛々しい。
「どうしたんだよ、この傷!? 誰かにやられたのか?」
『心配してくれてありがとう、人間の子らよ。ですが大事ありません』
「そんな事ないよ! だってとっても痛そうだもん!」
 ムーンドラゴンに駆け寄り、2人はその傷口を注意深く観察する。
「ひでぇ火傷だな。ばあちゃんの薬があるけど、効くかな?」
「アンリくん、お願い! このままじゃドラゴンさんが可哀想だよ!」 
 涙目で訴えるミリアの頭を優しく撫でると、アンリは祖母特製の薬を取り出す。野草を磨り潰した火傷に効くものだ。
「ちょっと沁みるけど我慢してくれな」
 清潔な布にそれを塗り、ムーンドラゴンの患部にそっと貼り付ける。
「これで安静にしてれば治る筈だ。明日も見に来るから、傷が治るまでここで大人しくしてろよ?」
『いえ、私は‥‥』
「いなくなっちゃやだよ、ムーンちゃん」
 戸惑うムーンドラゴンを、2人はじっと見上げる。
 その純粋な瞳から優しさが伝わってきて、ムーンドラゴンは宝石の様に煌く瞳をすっと細めた。
『はい。わかりました。明日もあなた達を待っていますよ。アンリ、ミリア』
 名前を呼ばれた事に2人は顔を見合わせて笑うと、大はしゃぎで手を振って家へと帰っていった。
 遠ざかる小さな背中を見つめながら、ムーンドラゴンは呟く。
『人間と接するのは初めてですが‥‥彼等は想像以上に優しく温かな存在なのですね』
 子供達との出会いは、普段は決して人と交わる事のないムーンドラゴンが人間に興味を持つきっかけとなったのだった。

 それから毎日、2人はムーンドラゴンの元へと訪れていた。
 1週間ほど経った頃、火傷は綺麗に完治する。
 アンリの祖母の塗り薬のお陰だと大喜びする子供達に、これは自然治癒だとは言い出せないムーンドラゴンであった。
「すっかり良くなったな。これで一安心だぜ」
「‥‥うん。でも、元気になったらムーンちゃんはお家に帰っちゃうんでしょ? 嬉しいけど寂しいな」
 ミリアは寂しそうに呟くと、少しひんやりとするムーンドラゴンの体に頬を寄せる。
 子供達の優しさと自分への好意に触れる内に、いつしかこの子達を守りたいという気持ちがムーンドラゴンの中に芽生えつつあった。
 何から守るのか────それはこの近辺で自分を襲った2体のデビルからである。
「俺だって寂しいけど、もう2度と会えなくなるわけじゃないんだから。そうだよな?」
 ミリアを宥めつつも、どこか縋る様な瞳でアンリはムーンドラゴンの尻尾を優しく撫でる。
『2人共、お願いした事は覚えていてくれていますか? 炎関連で気になる事を聞いたら、直ぐに教えて下さい』
 アンリの問いには答えず、ムーンドラゴンは諭す様な声で語りかける。
「そう言えば昨日、父ちゃんが東にある森が燃えてたって言ってたぜ!」
「何だか嫌な予感がするよ‥‥」
 2人の言葉を聞き、ムーンドラゴンは自らを落ち着かせる為に瞳を閉じる。
 そして再び開かれたそれは、優しく子供達を見つめていた。
『恐らくそれは私を襲ったデビル達の仕業です。このままではあなた達の住む村が狙われる危険性があります。ですが心配ありません』
 ムーンドラゴンはそう言うと、ゆっくりと立ち上がった。
 村が危ないと言う話に呆然としていた2人は、その行動にハッと我に返る。
「もしかして戦うつもりかよ!? 1回やられてんだぞ、無理だって!!」
「ダメだよ! 今度こそ殺されちゃうよ!」 
 2人は金色に輝く足にしがみ付き、ぶんぶんと頭を振りながら必死で引き止める。
『ですがこのまま2人の村に被害が出るのを黙って見過ごすわけには行きません。この命と引き換えにしてもあなた達と村を守りますから、安心して下さ‥‥』
「ムーンちゃんの馬鹿っ! そんな事されてもちっとも嬉しくないんだから!」
「そうだぞ! 俺たちがせっかく傷を治してやったのに、無駄にする気かよっ!」
 ぽろぽろと涙を流す2人にムーンドラゴンは戸惑う。
 つい最近会ったばかりの自分より、村や自分達の命の方が大事な筈なのに。
「こういう時こそ冒険者に助けてもらうんだよ。絶対に何とかしてくれるって!」
「うん、そうだね! ムーンちゃん、絶対に戦っちゃダメだよ?」
 冒険者については多少なりとも知っていた。
 しかし見ず知らずの彼らに、何故絶対の信頼をおけるのかがムーンドラゴンには分からなかった。
 人間と言う生き物は実に奥深いと、感心せざるを得ない。
『‥‥わかりました。あなた達がそこまで信頼しているのなら、冒険者達に全てを委ねましょう』
 そう言い再び腰を下ろすムーンドラゴンに、2人は安心した様な顔で抱きつく。
 慈しむ様な瞳で見つめながら、いざとなれば約束を違えてでも彼らを守ると、ムーンドラゴンは決意していた。

●今回の参加者

 ea1181 アキ・ルーンワース(27歳・♂・クレリック・人間・イギリス王国)
 ea7242 リュー・スノウ(28歳・♀・クレリック・エルフ・イギリス王国)
 ec0097 瀬崎 鐶(24歳・♀・侍・人間・ジャパン)
 ec4984 シャロン・シェフィールド(26歳・♀・レンジャー・人間・イギリス王国)

●サポート参加者

アニェス・ジュイエ(eb9449

●リプレイ本文

●光明
 炎を操るデビル2体が村を襲うかもしれない。
 依頼書に書かれていたのは確定情報ではなかった。
 しかしどんな小さな火種でも、1度燃え上がったら全てを焼き尽くさんばかりの脅威になる。
 依頼を受けた4人の冒険者達は、ペットや履物を利用して現地まで急いでいた。
「‥‥やっぱり、大分焦ってるみたいだね」
 息を切らし辿り着いた村には、迫り来る恐怖に怯える子供の泣き声と男達の焦った様な怒声が響き渡っていた。
 ぽつりと呟いた瀬崎鐶(ec0097)は、村の周りに張り巡らされた防御柵に視線を移す。慌てて作られたそれは見るからにお粗末だった。
「あなた達は冒険者さんですか!?」
 混乱の只中にある村の様子に表情を曇らせていたリュー・スノウ(ea7242)に、2人の女性が声をかけてきた。
「はい。微力ながらこの村を守りたいと思って馳せ参じました」
 柔らかな口調に女性達は顔を見合わせた後、瞳に涙を溜めてその場に崩れ落ちてしまった。
「2人とも、大丈夫!?」
 慌ててリューとアキ・ルーンワース(ea1181)が2人を支える。
「お願いです、アンリとミリアを探して下さいっ!」
「何処を探しても見つからないのよ!」
 愛する我が子を思うあまり、母親達は半狂乱の状態だった。
「安心して下さい。お2人は森の中の安全な場所にいます」
 そこに村の北にある森にペガサスのエーリアルで偵察に行っていたシャロン・シェフィールド(ec4984)が帰還し、2人の無事を伝える。
「すぐに連れ戻しに行きましょう! デビルが来てからじゃ遅いわ!」
「ええ!」
 森に向かおうとする母親達に、シャロンは出来れば言いたくはなかった一言を口にする。
「その心配はありません。お2人はムーンドラゴンと一緒です。いざという時は守ってもらえるでしょう」
 ムーンドラゴンという言葉に母親達は息を飲む。
 安堵の色が浮かばない表情を目にし、だから言いたくはなかったのだとシャロンは思う。
「ムーンドラゴン? ドラゴンってモンスターじゃないの?」
「側にいたら食べられてしまうんじゃ‥‥」
 母親達の恐怖に強張った体をリューとアキは抱きかかえると、安心させる為に優しい声音で語りかける。
「ムーンドラゴンはモンスターではありません。人語を理解するとても賢い生き物です」
「2人は傷ついたムーンドラゴンをずっと治療していたんだ。恩人なんだから、きっと守ってもらえるよ」
 鐶はそっと母親達の手に触れる。
「‥‥僕達を信じて。絶対に皆を守るから」
 短いながらも、力強く頼もしい言葉。
 それを聞いた母親達の体からふっと力が抜けていく。
「不安なのは分かります。ですが立ち上がる勇気を持って下さい。あなた達は母親なのですから」
 突き放すわけではなく微かな勇気を鼓舞するシャロンの励ましに母親2人は頷くと、冒険者達の指示に従って動き始めるのだった。

 デティクトアンデットで索敵を終えたリューは、デビルの反応がない事に安堵する。
「ここに来るかもしれないデビルは炎を操るんだ。火事対策をしっかりしておいてね」 
 村長に挨拶を終えた鐶は、村人達に自らの安全確保もしておいて欲しいと付け加える。
「いつ戦闘が始まるか予想がつかないから、戸締りをして隠れていて。俺達がデビルを倒すまで絶対に出てきちゃダメだよ?」
 アキは一軒一軒を尋ね、安心させるのと同時に念を押していく。自衛の為に村の入り口に立っていた若者達も彼の説得を受け、自宅に戻っていた。
 村人全員を避難させ終えた4人は、作戦会議の為に一箇所に集う。
「これで村にデビルが潜んでも、俺達が迅速に討伐すれば被害は抑えられる」
「‥‥デビルの種類は何だろうね」
「恐らくはグザファンというデビルでしょう」
 高度のモンスター知識を持つリューは、デビルについて説明し始める。
「手にしたふいごから小さいとは言え炎の塊が飛び出すのですね。では私はそれを優先的に狙い打つとしましょう」
 優れた射撃能力を持つシャロンに3人は期待をかけるかの様に頷く。
「‥‥直接竜の元に向かうのは、逆に危ないよな‥‥先にデビルを何とかしないと」
「ええ。わざわざ村から離れた位置で火の手を上げたのも、陽動かもしれません」
 アキの呟きにシャロンは自らの推理を口にする。そちらに向かっている隙に襲われたら村は壊滅だろう。しかし戦力を分散させる余裕はなかった。
「もしデビル達の目標の一つにドラゴンの存在があるとしたら、潜伏場所の偽情報で誘き出せるやも知れません」
 索敵魔法を唱えたリューの瞳に険しい色が浮かぶ。デビルの反応があったからだ。
「2体ともここに‥‥好都合だね。こっちは僕に任せて」
 鐶は打ち合わせ通りに村人の家の前で大声を張り上げる。
「皆、まだデビルは来てないけれど、警戒を怠らないでね!!」 
 気づいてないと思わせ、敵の油断を誘う作戦である。
「さて、私達は件の竜に話を聞きに行きましょうか。確か東の森にいる筈です」
 シャロンの偽情報を耳にし、姿を消したまま村から森へと飛び立った2体のデビルの気配をリューの魔法が捉える。
 これで村から離れた場所で戦える────4人は急いで後を追う。
「野生のムーンドラゴン‥‥相手が子供だからこそ、かな。折角芽生え始めたモノ、デビルなんかに摘ませるのは勿体ない」 
 アキの呟きにシャロンはムーンドラゴンと寄り添う子供達を思い出す。
「地獄での戦いの激化の影響がこんな所まで、という事なのでしょうか‥‥精霊や竜もデビルとの戦いを続けているのですから、こちらも踏ん張りどころですね」
 自らを奮い立たせながら、シャロンは駆ける足を速めた。

●新たな縁
 アキのブラックホーリーとリューのホーリーに襲われ、2体のグザファンは悲鳴を上げながら地面に体を打ち付ける。
 その間際にふいごから吹き出した小さな炎の塊が、前衛として仲間を背に庇う鐶を次々と直撃した。
「うああっ!!」
「鐶さん!」
 中傷を負った彼女にすぐさまリューが駆け寄り、リカバーで傷を癒す。
(「僕がしっかりしなきゃ、皆が危ない。怖いだなんて言ってられない‥‥!」)
 火への恐怖を抱く鐶は自身を鼓舞し、微かに震える手で刀を握り締めて敵に向かって斬りかかって行く。
「そのふいごさえなければ恐るるに足りません! 私が射抜いて見せます!!」
 クイックシューティングで素早い攻撃を続けるシャロンは、敵の一瞬の隙を突いてふいごを狙い打つ。
 自慢のアイテムを打ち砕かれ動揺する1体はアキが唱えたダークネスの暗闇に襲われ、鐶の渾身の一太刀で絶命した。
「インフェルノにお還りなさい!」 
 リューが放つホーリーの後を追う様に、シャロンが連射した弓矢がもう1体のグザファンを射抜く。抵抗する間を与えない連携攻撃の前に、成す術もなくデビル達はその存在をかき消されていった。  
「大した事はない敵だったけど、村の中で戦闘になったらって考えると恐ろしいね」
 アキは遠くに見える村を見つめ、ふうと息を吐く。
 万が一村で戦いになったとしても、冒険者達の働きかけにより被害は最小限に抑えられただろう。
 しかし村から敵を誘き出す事により、全く被害を出さずに討伐する事が出来た。少ない戦力でこれ程の成果を挙げられるとは、見事な策である。
「デビルをやっつけてくれたのか? やっぱ冒険者ってすげーんだな!」
「これでムーンちゃんも怖くないね。お姉ちゃん、お兄ちゃん、ありがとう!」
 村に戻りデビルを倒したと報告した後、一同は子供達を迎えに北の森を訪れていた。
 満面の笑みの子供達を見つめるムーンドラゴンの瞳は優しく、神々しいその存在に誰もが息を呑んでいた。
「村の心配と‥‥何よりドラゴンを護る事。いつか自分達と村の為に飛ぶかも知れない、そう不安でしたでしょう?」
「ううん! 冒険者の皆を信じてたから怖くなかったよ」 
 申し訳なさそうなリューにミリアは頭を振った。無邪気な笑顔を浮かべる彼女を抱きしめながら、リューはムーンドラゴンに語りかける。
「御自身の意思に依るものであっても、子供達の願いを叶えてくれた事に対し純粋に感謝いたしたく‥‥」
『いいえ。私こそあなた達に感謝しています。村と私達を守って下さり、ありがとうございます』
 頭の中に響くその口調は穏やかだった。
「2人とも、温かいお茶をどうぞ。ムーンドラゴンさんは‥‥飲めるかな?」
 子供達に湯飲みを渡した後、鐶はうーんと首を傾げる。
『お気持ちだけで十分ですよ。ありがとう』
 ムーンドラゴンの言葉に、鐶は微かに微笑んだ。
「デビルを騙して戦うだなんてカッコイイよな! 誰のアイディアなんだ?」
「うーん、ちょっと人聞きが悪い言い方だけど、まいっか。発案者は彼女だよ」
 戦いの一部始終をアンリに聞かせていたアキは苦笑すると、シャロンに視線を移す。
『勇ましき人間の乙女よ。あなたの知恵と勇気を湛えましょう。お礼と言えるかどうかはわかりませんが、私を共に連れて行ってはもらえませんか?』
 ムーンドラゴンの申し出にシャロンだけでなく、全員が目を見開く。
『どうやら私は人間と言うものにとても興味を持ってしまったようです。どうか傍であなたを守らせて下さい』
「は、はい‥‥」
 シャロンは驚きの余りそれしか口に出来なかった。
 彼女の返事を聞き、子供達は歓声を上げる。
「すっげぇ! 姉ちゃんとムーンのコンビだなんて最強だな!」
「うん。会えなくなるのは寂しいけど、お姉ちゃんと一緒なら安心してお別れできるよ。また会いに来てね?」
 涙を堪えるミリアに答える代わりに、ムーンドラゴンは抱きしめる様に尻尾を優しく2人に寄せた。
「一度繋がった縁は、きっと双方共に残るものだから‥‥大丈夫だよね?」
 堪えきれず泣き出す2人と、慈しむ様に顔を寄せるムーンドラゴン。
 アキは種族を越えた友情に目を細める。
 新たな絆の誕生に、誰もが優しく温かな微笑みを浮かべていた────。