【儚き双珠】シエラの初恋
 |
■ショートシナリオ
担当:綾海ルナ
対応レベル:フリーlv
難易度:普通
成功報酬:0 G 78 C
参加人数:7人
サポート参加人数:1人
冒険期間:03月16日〜03月23日
リプレイ公開日:2009年03月24日
|
●オープニング
チュンチュンと小鳥達が愛らしい泣き声を響かせる爽やかな朝。
「シエラさん、シルフィさん、おはようございます」
「ルイスお兄ちゃん、おはよう!」
朝食の準備をしていたシルフィは、弾む声で村の青年ルイスを迎え入れる。
キャメロットのパン屋で姉妹の為にと買ってきた籠いっぱいのバケットをシルフィに手渡しながら、ルイスは彼女の左手の薬指に嵌められた指輪を目を細めて見つめる。
「おめでとうございます、シルフィさん。とても素敵な指輪ですね」
「えへへ、ありがとう」
微笑む顔はとても幸せそうであり、彼女は前よりも元気になったようだとルイスは思う。これも恋人の段階を一気にすっ飛ばして婚約者となった、黒髪の凛々しい青年のお陰だろう。
「あの夜のパーティーはとても素敵でしたね。シエラさんの忘れ物を届けに行っただけなのに、あそこの奥様に飛び入り参加までさせて頂いて、とても楽しい一時を過ごす事が出来ました」
「うん。レミーさんはとってもいい人なの! お屋敷の中に謎の衣裳部屋があってね、そこには色んなお洋服がいっぱいあるんだ。あのカーテンも頂いたんだよ」
「シンプルだけど素敵なデザインで‥‥シ、シエラさん!?」
シルフィが指差す窓辺に視線を移したルイスは、スープのスプーンを持ったままぼーっと宙を見つめているシエラの姿にぎょっとする。
しかもそのスープはシエラの大好きな野菜と鮭スープだ。いつもならおかわりを3杯もする食いしん坊な彼女が、全く手をつけていないとは。
「あのパーティーからずっとあの調子なの。依頼の時はいつも通りみたいなんだけど‥‥」
「何かあったのですか!? 嫌な思いをしたとか?」
普段通りの声のトーンで2人は会話を交わしていたが、シエラの耳には全く入っていない様だった。
いつもならひそひそ話も地獄耳で聞きつけて、怒った顔で『何こそこそ話してるんだ!』と詰め寄ってくる彼女がだ。
「ううん。ある男の人に出会ってね‥‥落ちちゃったみたいなの」
「落ちた? 何にですか?」
鈍感なルイスにシルフィはぱちっとウインクをしてみせる。
「恋にだよ。お姉ちゃん、ついに初恋を経験中なの」
「えぇっ!? あのシエラさんが恋っ!?」
驚愕の事実にルイスはよろめき、普段は決して上げない大声で叫んだ。
しかしまだシエラは気づかず、ふと視線を移すとにへらっとにやけていた。ちょっと‥‥いや、かなり不気味だ。
「お相手はどなたですか? まさかレミーさんが作ったお料理ではないですよね!?」
「‥‥ルイスお兄ちゃん、いくらお姉ちゃんが食いしん坊でも、食べ物に恋するほど見境なく無いよ。ちゃんと意思疎通できる相手だから安心して」
「それを聞いて安心しました。まさかと思ったもので‥‥。どんな方なんですか?」
本気でそう思っていたらしいルイス。
やはり色んな意味で大物である。
「ハーフエルフの男の人なの。年上で渋くて素敵な人だったよ。お名前は何て言ったかなぁ‥‥」
シルフィは暫し考え込んだ後、にこっと微笑む。
「思い出した。レオンさんって言う人だよ」
その名を口にした瞬間────
ガタンッ!!
それまで呆けていたシエラが真っ赤な顔で椅子から立ち上がった。
「レオン!? そんな奴、あたしは知らないぞ! 手の甲にキスなんてされて無いし、好みだなんて言われてない! それにダンスなんて踊ってないからなっ!!」
そしてぽかんとする2人を残し、真っ赤な顔のまま蟹股歩きで家を出て行ってしまった。
「‥‥これは本当に恋しちゃってますね」
「でしょ? この前、バレンタインの村祭りで偶然レオンさんに会えた時なんてすごかったんだから」
「すごかった?」
首を傾げるルイスに、その時のシエラの様子を思い出したシルフィはくすっと微笑む。
「あのお姉ちゃんが借りてきた猫みたいに大人しかったの。『うん』しか言わなかったんだよ?」
「なるほど。遅過ぎた初恋を持て余し、どうしていいかわからない状態なんですね」
男勝りでがさつなシエラは、恋という物に全く興味がない様に見えた。実際、そうだったのかもしれない。
しかしあっさりと恋に落ちた所を見ると、レオンはよほど魅力的な男性なのか、はたまたシエラの好みにどんぴしゃだったのか。
どちらにせよ彼女に訪れた春を、シルフィとルイスは微笑ましく見守ろうと思うのだった。
その頃、シエラが大ピンチに陥っていた。
憂さ晴らしに蹴っ飛ばそうとした木の桶を持ったまま、目を見開いて口をパクパクさせる。
「こんにちは、シエラ殿。依頼に出かけてるかもしれないと思ったのだが、会えてよかった」
予想外の嬉しいハプニング。
何とレオンはシエラを尋ねて村を訪れていたのだ。
自然な動作で手の甲にキスを落とされ、シエラは持っていた桶を落っことす。
「っ!! あ、あう‥‥」
「ここが君たち姉妹が住んでいる村か。のどかでいい所だな」
顔から湯気を噴出すシエラににっこりと微笑んだ後、レオンは村を見渡す。
「自然の中って落ち着くよな! 鶏が俺の事を餌を見る目で見てんのが気になるけど‥‥」
「‥‥ダメだ。あいつは食っても美味くは無い」
「そうそう。俺を食ったら腹壊すぜ‥‥っておい! どういう意味だよ、キルシェ!?」
「そのままの意味だが?」
しゃがんで鶏に言い聞かせるキルシェに、乗り突込みを見せるアゼル。
従者コンビの見事な(?)掛け合いに、シエラは緊張が解けて声を上げて笑った。
「あははっ! 賑やかな奴らだな。一緒にいたら退屈しなさそうだ」
「騒がしくてすまない。だが君の言う通りだ」
ふっと笑みを零すレオンを目が合い、シエラは慌てて赤い顔で俯く。
「今日は君を私の屋敷に招待したくて会いに来た。妹さんや友達も誘って遊びに来てくれないだろうか?」
「‥‥え?」
思いがけない申し出にシエラは固まってしまった。
「両親に紹介したいとか深い意味は無いから安心して欲しい。私はあの2人と共に住んでいるんだ」
自分の考えを見抜かれ、シエラは顔を上げる事が出来なくなってしまったが、返事の代わりにこくりと頷くのだった。
●リプレイ本文
●いぢられるのはだ〜れだ?
春めいた陽射しの午後。
ルイスはまるごとイーグルを着たミリア・タッフタート(ec4163)に抱きつかれ、固まっていた。
「鷹のまるごとなんだよ〜〜♪ 可愛い?」
「はい、とっても」
嬉しそうに微笑むルイスよ、相手はまるごとさんだぞ?
「おおマイハニー! ハネムーンは何処にしようか?」
キュアン・ウィンデル(eb7017)は頬を染め、でれれんとした顔でシルフィに抱きつく。
「きゃっ! もう、気が早いんだから‥‥」
「す、すまないっ! 君に会えた喜びで本来の『紳士的でストイックな自分』を忘れてしまったようだ」
‥‥思いっきり反論したい気がする。しかも全力で。
「恋愛初心者の私をドキドキさせるあの振る舞い‥‥確実に女性の扱いに慣れてますよね」
ヒルケイプ・リーツ(ec1007)には1つ気がかりな事があった。
「もしかしてすごい遊び人とか‥‥はわっ!」
「‥‥‥‥‥‥」
ぶつぶつと悩み事を呟いていたヒルケは、隣にシエラがぬぼーっと立っている事に気づき、悲鳴と共に飛び上がる。
「あら、シエラさん。今日は随分と大人しいのね? 珍しくて雨でも降るんじゃないかしら?」
「‥‥‥‥‥‥」
明らかに様子がおかしい事に気づき、マール・コンバラリア(ec4461)がいつもの調子でからかうものの、心ここにあらずの無反応である。
「これは重症ねぇ」
マールは子悪魔スマイルを浮かべる。
「それにしても『レオンさん』のお屋敷ってどんな所かしら。きっと『レオンさん』みたいに素敵な所でしょうね♪」
「シエラさんは『レオンさん』のご両親にご挨拶に行くんですね。おめでとうございまーす♪」
「なっ!」
マールの企みに気づいたヒルケも口撃をしかける。
そして極めつけは‥‥
「義姉上、挙式の日取りは決まったのかな?」
幸せボケで危険察知能力が著しく低下したキュアンの空気の読めない発言だ。
「う、うるさいっ! このエロぬくぬくがっ!!」
「ぶべらぁっ!」
シエラの鉄拳で殴り飛ばされるのは、もはや村の風物詩である。
「春ですわねぇ」
ミシェル・コクトー(ec4318)はぽかぽか陽気の中の友人達を眩しげに見つめる。
「あのシエラさんが恋、ね。はぁ‥‥私も一緒にお花見できると良いな」
「すっごく鈍感だもんねぇ、ミーちゃんから誘わなきゃ」
マールは雛あられをぽりぽりと食べながらにっこりと微笑む。
「フ、フレ‥‥じゃなかった、私の事は置いといて、マールさんはいつお返事をするつもりですの?」
「‥‥えぇっ!?」
思わぬ反撃を食らったマールは赤面し、耳元に光る耳飾を弄り始める。
今回はバレンタインの祭りの時の様に緊張しっぱなしは避けたいと思い、姉妹を迎えに来る事で心の準備をしてたのだった。
レオンの屋敷までの道中は、予想通りシエラが皆にいぢり倒されていた。
その度に照れ隠しに蹴られたり殴られたりした人物がいるのだが、あえて名は出すまい。暗黙の了解事項、である。
「私達は初恋で初々しいシエラさんを弄‥‥こほん、応援したいと思っています」
「綺麗にドレスアップ〜♪ これでレオンさんもめろめろだね!」
ヒルケはドレスを、ミリアは櫛を手にシエラに詰め寄る。
「あ、あたしは別に‥‥」
「往生際が悪くってよ?」
「観念なさいっ☆」
「うわあぁっ!?」
羨ましくて意地悪モードが復活したミシェルといじわる子悪魔さんのマールのコンビに、すっかり乙女なシエラが敵う訳もなく。
「ご招待を受けたんですから、失礼のないように身なりを整えないといけませんよー?」
そしてヒルケもにっこりと微笑みながら、手をわきわきとさせていた。
●恋する乙女達
「大した用意は出来なかったが、心からの持て成しをさせて頂きたいと思っているよ」
温かな笑顔で一同を迎え入れるレオンの背後には、高級そう且つ品のいい調度品が見えた。屋敷の中は掃除が行き届いていて、飾られている花も見事である。
「シエラ殿、今日は一段と美しいな。私の為に着飾ってきてくれたと自惚れてもいいだろうか?」
「う‥‥あ‥‥」
そっと肩を抱くレオンにシエラはまともな言葉を返せないまま、赤面して俯いてしまう。
「レオンさん、ご招待してくれてありがとう。すっかりシエラさんはあなたに恋しちゃってるみたいなの」
「なっ!」
マールはあっさりとシエラの恋心を暴露する。
「それは光栄だな。‥‥君もアゼルと楽しい一時を過ごしてくれ」
そっと耳元で囁かれ、今度はマールが頬を赤く染める。
ちらりと視線を移したアゼルはむすっとした表情をしていたが、マールがその意味を知るのはもう少し後の事。
「‥‥会いたかった」
「きゃうっ!」
ヒルケはキルシェに思いっきり抱きしめられ、真っ赤な顔で思考を停止させていた。
ふわりと香るいい香りと力強い腕に心臓がドキドキと高鳴る。
(「‥‥ふふふ。思う存分ラブラブなさいっ!」)
様々な恋模様が展開しようとする中、お酒と壺を抱きしめながらきらーんと瞳を光らせる金髪の魔女の姿が‥‥。
深夜、男性陣は意中の女性について熱く語り合っていた。
「私は彼女の全てにめろりんラヴなんだ! ああ、言葉では言い尽くせないよ」
「俺は全部ひっくるめて可愛い所かな。好きの強さじゃ負けねーぞ?」
「て、天真爛漫で私の料理を美味しそうに食べてくれる所です」
「‥‥ちっちゃくてちまちましてて、小動物みたいな所。それに優しいし」
「美しく凛々しい女性だと思っていたが、初心な所も愛らしいな」
誰が誰について言っているかを詮索するのは野暮ってモノである。
ルイスが腕によりをかけた料理は好評で、美味しい料理と楽しい時間に笑顔が絶えなかった。
「いつも美味しいお料理ありがとう〜♪ これ、ルイスさんにプレゼント!」
食事の後、草原でケルとコルの2匹と一頻り遊んだ後、ミリアはキャメロットで見つけてきた鍋を差し出す。
「これを私に? ミリアさんが選んでくれたんですか?」
「うん! ルイスさん(のお料理が)大スキーー♪」
「大、好き‥‥?」
「ルイスさんのお料理は優しくて幸せーーって味がするから大好き〜〜♪ いつも食べられたらいいのになぁ」
「そ、そうですよね‥‥ははは、はは‥‥」
淡い期待も空しく、無邪気に抱きつくミリアの頭を優しく撫でながら、乾いた声で笑うルイス。
「皆ラブラブで、いっぱい幸せのおすそ分けをしてもらっちゃったね」
どきどきウォッチングと称し、ミリアはルイスを連れて友人の恋模様を覗き見していたのだった。
「好きな人と一緒って嬉しいよね♪ だからいーーーっぱい大すきーーーって伝えるの、ずっと一緒にいられるように」
「そして皆が幸せになりますようにってお祈りするんですよね?」
「うん!」
柔らかな笑顔を見せるルイスに、ミリアはぎゅっと抱きつく。
「ルイスさんって、温かいね‥‥」
温かな陽射しと爽やかな風。そして安心できる胸の中で、ミリアの瞼が重くなってくる。
「お昼寝も‥‥幸せ〜〜」
抱きついたままで微かな寝息を立て始めるミリア。
ルイスは男心を全く分かっていない彼女に苦笑しつつも、優しい瞳で寝顔を見つめるのだった。
(「糖度30。許してあげましょう」)
茂みで魔女は呟き、去って言った。
丸い月を見上げながら、ヒルケは思い切ってキルシェに付き合ってる女性がいるのかを聞いてみる事にした。
「お、おつき‥‥、お月さまが綺麗ですね!」
しかしお約束の誤魔化ししか出来ない乙女心。
茂みで目を光らせる魔女は思いっきりずっこける。音を立てないのは魔女の意地か!?
「ああ、綺麗だな‥‥きっとヒルケと一緒だからだと思う」
そして返される言葉と優しい笑顔に、きゅんと胸が高鳴る。
「あ、あの‥‥もしも、好きな人に恋人がいたとしたら‥‥どうしますか?」
ミシェルから借りたドレスの裾を握り締めるヒルケ。その問いにキルシェの眉根が寄った。
「男がいるのか?」
「い、いえ! 例えばの話ですっ!」
ぶんぶんと首を振るヒルケに、キルシェは安心したように微笑む。
「‥‥そうだな。好きになったら気持ちは止められないと思う」
月の光に照らされたキルシェの瞳は熱っぽく揺れていた。
「相手がいても俺は奪う。‥‥そういう男は嫌いか?」
「えっ‥‥」
捕まったらきっと逃げられない────ミステリアスで艶やかな瞳に魅入られそうになったヒルケは、何も言わずにキルシェのポケットにある物を押し込み、逃げる様にその場を立ち去った。
(「糖度測定不能‥‥き、危険な殿方ですわ」)
魔女は赤い顔でヒルケの背中を見つめた。
木の枝に並んで座るマールとアゼル。
その距離は微妙に開いていた。
「あのさ‥‥」
「な、何っ!?」
2人きりになった途端、挙動不審なマールである。
「ここに来た時、レオンになに言われたんだ?」
「えっ?」
「だって顔を真っ赤にしてたろ? ‥‥アイツ、俺のマールを口説いてたらただじゃおかねぇ」
嫉妬心を露にするアゼルに、マールの頬がますます赤く染まる。
「ち、違うわよ」
「そうか? ならいいんだけどさ」
ホッと胸を撫で下ろすアゼルは、マールがしきりに弄っている耳飾を見て、嬉しそうに微笑んだ。
「付けてくれてるんだな。すげぇ嬉しい」
「う、うん‥‥」
アゼルの首にプレゼントしたリボンがある事に安堵し、マールは感謝の気持ちを伝える為、そっと深呼吸をする。
「小さい頃、この石を海の欠片だと思っていたの。今では違うと知っているけど‥‥でも、この耳飾りは本当に海の雫みたい」
マールはそこで言葉を区切り、幼く見える位の笑顔を見せた。
「この耳飾りも、一所懸命考えて選んでくれた事も、すごく嬉しかった‥‥ありがとう」
ふとアゼルに視線を移すと、満面の笑みを浮かべていた。
「あー、もう、何から何までマールは可愛いなぁ! 世界中にあるこの石を買い占めてプレゼントするから、待っててくれよ!」
ぎゅううっと抱きしめられ、マールの体が跳ねる。
それをやはり茂みから見ていた魔女はにやりと微笑んだ。
(「糖度90‥‥決定ですわ」)
その言葉は意味するものとは!?
●魔女の悪戯
最終日。
ある仕事を終えたミシェルは恋愛経験が豊かそうなレオンに相談事を持ちかけていた。
「想いを優先させた自分に、王宮騎士を目指す資格があるのかなって‥‥あ、でも、初対面でこんな相談もおかしいわね」
赤面するミシェルにレオンは優しく微笑む。
「騎士であり女性である事を両立させられるかは、君が恋する男によるな」
「何もかもお見通しですのね‥‥」
見抜かれたミシェルは観念した様に想い人について話し始める。
「鈍感な王子様を振り向かせるには? ううん、違うわ。どうすれば、支えてあげられるのかしら?」
馬鹿正直で不器用で‥‥でもとても優しくて頼もしい彼の顔が脳裏に浮かぶ。
「難しい事じゃないさ。何があっても彼の味方でいてあげればいい。男は単純だからな。自分を信じていてくれる女性がいるだけで強くなれる」
レオンの言葉を聞きながら、ミシェルは傷つき悩んで揺れる碧の瞳を思い出していた。
「最近ようやく慣れてくれてね。もっと大きくなったら、君を乗せて空の旅をしたいな」
「うん、楽しみにしてるね。ペガサスって本当に綺麗‥‥」
マハを撫でるシルフィをキュアンはそっと抱き寄せる。
「今は2人きりだから‥‥いいね?」
「キュアンさん。大好き‥‥」
頬を染めて瞳を閉じるシルフィに、キュアンは優しく口付けた。
「いつもいっぱいプレゼントをくれてありがとう。今度お返しをするね。何が欲しい?」
キュアンはシルフィにだけでなく、シエラやレオンにまで贈り物をしていた。
「そ、それはき、君のす、すべっ‥‥あだっ!」
男子として素直な気持ちを口にしようとしたキュアンをハマが後ろ足で蹴っ飛ばす。
これも初日に見送りに来ていた若宮天鐘の呪いだろうか?
「ちゃんとお嫁さんにしてくれたら‥‥ね?」
シルフィは恥ずかしそうに微笑むと、キュアンのほっぺにちゅっとキスを落とした。
「きゃああぁぁっ!!」
マールは悲鳴を上げ、急に服を脱いで上半身を露にしたアゼルから目を逸らす。
「ご、ごめん! でも暑くって‥‥別に変な事をするつもりじゃないからっ!」
そっと指の隙間から伺ったアゼルは、細身ながら筋肉の付いた逞しい体をしていた。
思わず見惚れるマールの視界の隅に、ミシェルが大事そうに抱えていたヴァン・ブリュレと禁断の壷が映る。
説明しよう。
濃厚なヴァン・ブリュレを禁断の壺に入れて飲むと、壺の魔力で脱衣衝動に駆られてしまうのだ!
「だ、だめ! 下は脱いじゃだめーーっ!!」
元凶はミシェルだと悟りながら、マールは真っ赤な顔で叫ぶ。
それを聞きつけた男性陣に取り押さえられるアゼルに、ミシェルはにやりと微笑んだ────。