【モル様いぢり】指令・赤面させよ!
|
■ショートシナリオ
担当:綾海ルナ
対応レベル:フリーlv
難易度:やや難
成功報酬:0 G 65 C
参加人数:5人
サポート参加人数:-人
冒険期間:03月30日〜04月04日
リプレイ公開日:2009年04月08日
|
●オープニング
キャメロットの町をふらふらと覚束ない足取りで歩く1人の女性の姿があった。
彼女の名前はミル。売れない作家である。
「も、もう無理‥‥目が回ってきたわ‥‥」
ぐ〜きゅるるる〜。
盛大な音で鳴ったお腹に、道行く人々はびっくりして振り返る。
「どこかにいいネタはないかしら‥‥じゃないと本当に飢え死にす、る‥‥」
しかし人々の目など気にせず、ミルはふらふらとある場所へと向かう。
そこは町のうら若き女性達が集まり、お喋りに花を咲かせる広場だった。
「ねぇ、モードレッド様×トリスタン様の最新作、読んだ?」
「勿論! お互いを想うが故にすれ違う2人。そしてやり切れない想いを激しくぶつけ合う大人描写が堪らないわっ」
「強気年下攻め萌えよねぇ♪」
「超美麗女顔天然受けも最高っ!」
どうやらこちらのお嬢様方は、裏で出回っているその手の書物の愛読家のようだ。
「確かに最近になって急に需要を伸ばしてきているカップリングよね‥‥でも私はノーマルの方が得意だわ」
そう言いつつも、しっかりとその手の書物を網羅しているミルであった。
「でもでも、鬼畜ケイ様に調教される生意気モードレッド様もいいわよね!」
「きゃーっ! トリスタン様とケイ様の間で揺れ動くモードレッド様! 垂涎モノだわっ!」
‥‥お嬢様方。
お願いですから目を覚まして下さい‥‥。
「美男カプもいいけど、自分が主役のラブロマンスを読めたら最高よね」
「現実では無理だもんねぇ。せめて物語の中でくらい激しく求められたいわ。どこかにそんな物語を書いてくれる胸きゅん作家さんはいないかしら?」
きゅぴぴーん☆
お嬢さんの呟きにミルの目が怪しく光る。
「お任せ下さい、お嬢さん方! わたくしめが貴女達をきゅん死させる位の超ラブロマンスを書いてみせましょうっ!」
「ほ、本当にっ!?」
「私にも書いてくれる?」
「あたしにもっ!」
お嬢さん方はミルを怪しがる事無く、わらわらと群がってきた。
そして円卓関係者の名前を相手にと口々に叫びだす。大興奮のその顔には臆面も羞恥心も全く感じられなかった。
「まあまあ皆さん、落ち着いて。順番に受注しますから。では1番のあなた、お相手は誰をご希望ですか?」
ミルの1番近くにいた女性は、可憐な顔をへにゃっと緩ませる。
その薬指にしっかりと指輪が嵌っているのは、見ない事にしよう。
「ぜひぜひモードレッド様でお願いするわ。そうねぇ、まず第一話は私との運命的な出会いを書いてちょうだい。1番の萌えポイントは赤面するモードレッド様よ!」
「‥‥へっ? あの生意気で常に上から目線のモードレッド様の‥‥赤面っ!?」
勝手に『第一話は』と続きを要求する気満々な所ではなく、別の所にミルは間抜けな声を上げる。
「まだ少年のくせに女性経験豊富そうで、且つ俺様っぽい彼が私だけに見せる余裕のない照れた顔‥‥これに萌えずしてどこに萌えるって言うのよ。ねえ、皆?」
振り返り同意を求める彼女に、集まったお嬢さん方はうんうんと頷く。
「内容によっては倍の金額で買うわ! とびっきりのドキドキと萌えを提供してちょうだい!」
「ばばば倍ですか!? 全力で取り組ませて頂きますですっ!!」
ずずいと詰め寄る女性に、空腹で明日をも知れぬ命の貧乏作家ミルは瞳を輝かせて頷くのだった。
「‥‥というわけなんです」
「あらあら、それは大変ねぇ」
ギルドの受付カウンターで、ミルと受付嬢はずずずっとハーブティーを啜る。
「見た目は若い可憐なマダムに頂いた前金があるので、報酬はばっちりです。後は皆様のやる気と意地悪心かと」
「それも心配ないと思うわ。なんだかんだでモル様は冒険者達に可愛がられているし」
「モル様? 何ですか、そのとってもプリティな名前は?」
遠慮なくクッキーを頬張りながら、ミルは首を傾げる。
「エクター様が付けたモードレッド様のあだ名よ。他に冒険者達が付けたものもあるわ」
受付嬢はにっこりと微笑むと、指折り数えてモードレッドのあだ名をあげていく。
モルモル、モルっち、赤壁くん、ドレッド様‥‥などなど。
1つとしてカッコいいものがないのは何故だろう?
「モードレッド様の照れ顔なんて、私には想像できないんですよ。このままではあのマダムを萌えさせる自信がありません。気に入っていただかなければ、また私はお腹を空かせて路頭に迷う事に‥‥ううっ。あ、こっちのクッキーも美味しいですね」
ぼりぼぉーりのむっしゃむしゃ。
よよよと泣くふりをした後、ミルは次々とクッキーを食べ進める。
「百戦錬磨、数多の戦いを駆け抜けてきた冒険者の皆様なら、生意気モル坊を照れさせるだなんてお茶の子さいさい朝飯まーえよ♪ だと思うんです」
「戦いは関係ない気がするけど‥‥でも彼等なら大丈夫よ。それに私も楽しみだわ」
のほほんと無責任な発言をし、受付嬢はミルからの依頼書を貼り付ける。
「‥‥で、コツを掴んだ後は私にも書いてくれるんでしょうね?」
「あなたもモルスキーですか。お任せ下さい。いつもこちらでただハーブティーとただクッキーを頂いてるご恩に報いましょうとも!」
がしっと硬い握手を交わす2人。
ちなみにお茶やクッキーは受付嬢の私物なので、職権乱用にはならない筈である‥‥たぶん。
そんなこんなで『生意気モードレッドの赤面が見たい!』計画が始まったのだった。
●リプレイ本文
これは己の欲望と好奇心に忠実な‥‥基、世のうら若き乙女達のときめきと萌えの為に戦った、5人の戦士達の英雄譚である。
ターゲットであるモードレッド・コーンウォールとの戦いは、麗らかな春の日の午後に幕を開けた────。
●捕獲せよ!
甘いもの好きなモルを誘き寄せる為、セピア・オーレリィ(eb3797)は彼の行きつけの店で『ジャパン甘味フェア』を開けないかと交渉を行った。
結果はセピアのお色気で完勝。彼女が着物姿で給仕している事もあり、店は大盛況だ。
「モル様は熟女好みなのかと思いきや、よく見ればクレアさんでしたね。ちぇっ」
年配の女性と楽しそうに談笑をしているモルを、ミルは何故か物足りなさそうに見つめる。一体どんなスキャンダルを期待していたのだろう‥‥。
彼女の情報によると、クレアはモルの侍従だが、彼にとっては実の母親以上の大事な存在らしい。
「赤面するモードレッドさんは可愛いでしょうねぇ。楽しみです〜♪」
「ミルさん、私にもきゅん死ラブロマンスをお願いしていい?」
「僕もすっごく読みたいです! 鬼畜ケイ様に僕が調教も‥‥どきどき」
ほわわんとしたカメリア・リード(ec2307)の隣で、リン・シュトラウス(eb7760)とシャルル・ノワール(ec4047)の鼻息は荒く、まだモルと接触していないというのに大興奮だ。
ちなみにシャルルは男性だが、彼の愛は全てを超越しているのだと言っておこう。
「そんなに異様な熱気とオーラを出していたら、モルモルに気づかれますよ」
ふうと息を吐くのはフィーナ・ウィンスレット(ea5556)だ。
「いいですか、彼をまるで舐めまわすかの様にじっくり一方的に観察したければ‥‥こうするのです」
披露された視線の冷たさとどす黒さに、一同は「ひいぃっ!」と声を上げて凍りつく。
「さすがキャメロットの黒き魔女。この世の生物全てが触れ伏す様なドSっぷりが素敵です☆」
しかしミルだけは尊敬の眼差しでフィーナを崇めていた。
(「さて、彼の理性が勝つか、こっちの女のプライドが勝つか」)
モルとの『約束』を果たすべく、セピアはくすりと笑った後に2人に近づく。
「紅茶をお持ち致しました」
「そこに置いておけ‥‥って、セピアっ!?」
「如何です? 似合っているでしょうか?」
呆気に取られているモルに敢えて丁寧に、楚々とした仕草でアタックするセピア。
モルの視線がセピアの全身を一巡して再び美しい相貌へと戻った時、彼の頬は朱に染まっていた。
「ふ、ふんっ! 悪くは無い」
「お褒め頂き光栄ですわ」
驚き見惚れる少年らしい表情を隠す為、仏頂面を貼り付けるモル。セピアは自らの『勝利』を確信した。
(「私の着物姿を見てあなたが動揺すれば私の勝ち‥‥まだまだ強靭な理性とは言い切れないわね」)
この店の給仕女性のレベルは高い。
それなのにモルは全く関心を示さなかったのだから、セピアの魅力は絶大と言えよう。
「「ぶはっ! か、可愛いぃっ!!」」
モルの赤面顔を目にし、悶えるリンとシャルル。
「どれにしようかなぁ。迷いますねぇ」
しかし肝心のミルはメニューに気を取られ、その瞬間を思いっ切り見逃していた‥‥。
●女装させよ!
クレアと別れたモルはとびきりの甘味を用意したという冒険者の甘言に「仕方ないから行ってやる」と勿体を付けつつ、ほいほいと軽い足取りで噴水の傍に誘き出されていた。
「モードレッドさん、こんにちは〜。お久し振りです〜♪」
再会を喜ぶカメリアはモルに背後から抱きつき、頭を撫でくり回す。
それを目にし、リンは瞳を輝かせてモルに突進した!
「モル君、初めましてっ☆」
「な、何だお前は!? って前後から抱きつくな! 離れろっ!」
意外にも強い力で2人は引き剥がされ、名残惜しそうにモルを見つめた。
「で、肝心の甘味は何処だ?」
既に不機嫌そうなモルに女性陣は用意した甘味を差し出す。
「はいどうぞ。瓢箪印の人形焼よ」
「雛あられです。仄かな甘みを心行くまで堪能して下さい」
「桜餅とか雪大福とか色々あるわよ。お酒も用意したの♪」
「モードレッドさんの為にクッキーを焼いてきました〜」
きゅぴぴーん☆ とモルの目が光った刹那、まるで何本も手があるかと錯覚する様な早さで、次々と甘味が平らげられていく。
(「あの至福に緩みきった顔‥‥すっかり油断していますね。さあ、水場に沈み‥‥基、水浸しになりなさい!」)
色気の飴を舐めながら、フィーナは1粒の雛あられを噴水の方へと放り投げる。
「あ、あっちにお菓子が転がってますね」
「何だと!? あの1粒は甘味職人による甘味魂の結晶だ! 無駄にさせるものかっ!」
地面に落ちた物を食べようとするな! というツッコミはさておき。
『わんわんっ!』
必死で雛あられを追いかけるモルに、カメリアとリンの愛犬達が襲いかかった。
「うわあぁぁぁぁっ!!」
ばっしゃーーーーん!!
盛大な悲鳴と水飛沫を上げて噴水に落ちたモルに、飼い主2人が駆け寄る。
「モル君、大丈夫!?」
「ゴ、ゴメンナサイ、このままじゃ風邪をひくのです」
と白々しく心配するふりをしつつ、さり気なく手にした甘味をモルの体へぽたりと落としていく。
「ずぶ濡れなだけならともかく、お前達が甘味を持ったまま飛び込んだ所為でベタベタだぞ」
「ゴメンね、助けなきゃって夢中だったから。熱、ない?」
リンはモルの前髪をかき上げ、自分のおでこをくっつける。
「‥‥お前の方が熱いようだが?」
「き、気のせいよ」
「お望みならキスしてやってもいいぞ」
「っ!!」
モルの胸きゅん攻撃!
リンの乙女心に瀕死級のダメージ!
至近距離の囁きにどきりと胸を高鳴らせ、リンは慌てておでこを引き離す。
「桜餅に細工をした罰だ」
指に付いた蜂蜜を挑発的な瞳でぺろりと舐めるモルの仕草にくらりとするリン。
無邪気なお姉さん小悪魔は要修行の様だ。
「とにかく着替えを‥‥皆さん、何かお持ちです?」
「必要ない。このまま歩いて帰る」
「ダメです! まだ風は冷たいですもの。もし、もし私(の犬)のせいで風邪をひいたりしたら〜」
瞳をうるうるとさせて泣き落とし作戦を実行する、のほほん策士カメリア。
「これしきで風邪をひくほど柔じゃない」
「着替えがダメならフィーナさんに良く効くお薬を‥‥」
「それだけは止めてくれ!」
電光石火の如き即答であった。
「さあモルモル。これに着替えるのです」
フィーナが手にしたエンジェルドレスを目にし、モルの顔が引き攣る。
「そんなの着れるか!」
「じゃあこっちがいいかな? 獣耳もあるわよ♪」
胸きゅん攻撃から回復したリンは、ほくほく顔でメイドドレス「アリス」を掲げる。
「あぁもう我慢の限界だっ! はじめまして、モードレッドきょ‥‥はうっ!?」
それまで後方で大人しくしていたシャルルは、荒い鼻息でモルに近づく。
モルの美少年攻撃!
シャルルの理性に瀕死級のダメージ!
「な、何て極悪な可愛さなんだっ! 鎮まれ僕の煩悩っ! 落ち着け僕の滾る血潮ぉぉっ!」
うねうねくねくねと悶える様子に、さすがのモルも呆気に取られている。
「だ、駄目だよ、落ち着けシャルル‥‥僕が赤面してどうするのさ‥‥!」
「あんなに可愛いモル様の服の下がどうなってるのか、と〜っても気になりません?」
ミルの悪魔の囁き!
シャルルの理性は崩壊してしまった!
「ね、ねえ、着替えません? って、ちがうだろおぉぉぉぉぉぉっ!!」
近くにある木にシャルルはがんがんと頭を打ちつけ始める。
「‥‥帰る」
「待ちなさい、モルモル。つべこべ言わずに着替えないと、そのずぶぬれの体に雷が落としますよ? それともあなたが私にした事を、面白おかしく脚色してコレットさんに話してあげましょうか?」
色気の飴の効果かどうかは不明だが、とびきりの邪笑を浮かべるフィーナに屈せずにいられようか。
力なく頷くモルに一同は肉食動物の如く群がるのだった。
●伝説の目撃者となれ!
以下は茂みの中で行われた着替えの模様である。
「1人で着替えられる! 出て行け!」
「女物の服なんて着れっこないでしょ。ほら、恥ずかしがらないで」
「止めろっ! 一斉に群がるな!」
「‥‥モードレッドさんって意外に‥‥はうっ、恥ずかしくて直視できません〜」
「細身なのにしっかり筋肉が付いてて、綺麗な体‥‥ね、触っていい?」
「許可を取ってないのに触るな! さっさと着替えさせ‥‥」
「ふぅおぉぉぉっ! もう辛抱堪りませんっ! 今の僕はモル君を狙う一羽の鷹‥‥否、蜘蛛だ! モル君、僕の噴火1秒前の熱い想いを受け止めてえぇぇん」
「男に押し倒される趣味はない! 離せ、離せぇぇっ!!」
「エ〜クセレントっ☆ この赤面顔は高萌えポイントです!」
「嫌々女装させられるモルモル。羞恥に歪む表情‥‥ああ、被虐心がそそられます」
そして数十分後。
黒猫耳美少女メイドにされ魂が抜けてしまったモルは、コレットいぢりの舞台である騎士団の詰め所に連行されていた。
「コレットさんとのご対面ですよ〜」
このカメリアの一言さえなければ、後の悲劇は防げたのだろう‥‥運命の悪戯とは恐ろしいものだ。
「ようこそ可愛い子ちゅわぁぁぁんっ!!」
ドドドドドドドッ!!
盃を放り出して群がる騎士達にフィーナは黒い笑みを浮かべる。
しかしモルは未だ精神的ショックが抜け切っていないのか、呆けたままだ。ちなみにシャルルの餌食にはなってないのであしからず。
ともあれ猫耳美少女メイドの正体がモルだと、コレットと先輩騎士だけは気づいていた。
「――なっ、コレット!?」
冒険者に何かを囁かれ、ゆっくりとモルに近づきしなだれかかる妖艶なコレット。
ハッと我に返ったモルは、彼女が酔っている事に気づく。
コレット、お色気お姉さんモードだ。
「人前で酒を飲むなと、あれほど‥‥」
大きく開いた胸元と背中、潤んだ艶っぽい瞳。そして触れる体の柔らかさ────真っ赤な顔で慌てて視線を逸らすモルの耳元で、コレットの唇が何かを囁く。
「あの赤面、頂きっ!」
「‥‥やっぱりコレットさんが1番なんだ」
ペンを走らせるミルの隣でリンは頬を膨らませる。
「そ、そんな事できるか!!」
「だったら、あなたの正体をここにいる皆にバラすだけだけれども‥‥どうする?」
2人のやり取りは聞き取れない。
しかし次の瞬間────
「2人は――」
「キュアナイト!」
ばばーんっ!
「うおおぉぉぉぉぉぉっ!!」
ポーズを取る2人に惜しみない拍手喝采が巻き起こる。
「私達は今、歴史的瞬間を目にしているのです」
誇らしげなフィーナの呟きに、一同は生暖かい目で再び抜け殻となったモルを見つめた。
この一件で彼の中の何かが崩壊したのは、言うまでもない。
詰め所からの帰り道。
リンの優しい歌で正気を取り戻したモルだったが、激しい屈辱と羞恥心にずーんと落ち込んでいた。
カメリアはとぼとぼと歩くモルの右腕に抱きつく。
「家に着くまでがお仕事ですよ♪ もしもモルさんに会えなくなったら、私はとっても寂しくて悲しいのです」
「‥‥ふん。子ども扱いをするな」
「あと、火遊びは程々に、です♪」
モルが可愛くて仕方がないカメリアは、ついついお姉さんっぽくなってしまうらしい。
「お前には関係ないだろう。後腐れのない女を選んでいるから問題はない」
「そんな事ばっかしてると、本命さんに嫌われちゃうんだから!」
リンは自分の言葉に棘があるのを感じながら、モルの左腕に抱きつく。
「余計なお世話だ。僕には本命もいないし本気の恋なんてする気がない。それに今は忙しくて女に構ってられん」
つんとそっぽを向くモルをシャルルはとろんとした瞳で見つめた。
「遊びでもいいからモル君と‥‥はぁはぁ」
「あの一件で思いっ切り警戒されてると思うけど?」
「これでモルモルの中に年上のエルフとハーフエルフは恐ろしいと刷り込まれましたね」
呆れ顔のセピアの隣で、フィーナはくくくと不穏な笑い声を上げる。
「モル様は臆病な子なんですねぇ。諦めたくなる気もわからなくはないけど‥‥」
妙に勘のいいミルは神妙な顔で呟く。
しかしモルが本気の恋に落ちていく様を書いたら大ヒットだろうと確信し、だらしなく顔を緩ませた。
様々な赤面顔を目撃したミルから追加報酬が支払われる。
そしてシャルルとリンにはモルが相手の短編恋愛小説が手渡されたのだった────。