【お兄様と私】レミー様のお持て成し

■ショートシナリオ


担当:綾海ルナ

対応レベル:フリーlv

難易度:普通

成功報酬:0 G 39 C

参加人数:8人

サポート参加人数:2人

冒険期間:04月02日〜04月05日

リプレイ公開日:2009年04月13日

●オープニング

 人でごった返す賑やかなキャメロットの商店街。
 ある仕立て屋からほくほく顔で出てきたのは、ロイエル家のお節介奥様レミーだ。
「あぁ、満足ですわ。やっぱりお買い物は楽しいですわねぇ♪」
「‥‥母上。何の服を買い込んだのですか?」
 たくさんの袋を抱えたフレッドは、困った様な顔でご機嫌な母を見つめた。
「うふふっ。それはまだ秘密ですわ♪」
「お母様‥‥また皆様を巻き込んで、ご自分が楽しもうとしてらっしゃいますわね?」
 フレッドが持ちきれなかった小さな袋を引き受けたアリシアは、確信めいた口調でそう尋ねる。
「失礼ですわね。私もですけれど、皆様にも楽しんで頂こうと思って素敵な企画を考えてますのに。我が子に信じてもらえない私は、薄幸の麗し婦人ですわ」
 傷ついたと言いながら、レミーの口調は軽やかだ。
 自分で自分の事を『薄幸の麗し婦人』というよく分からない造語で褒めている母に、兄妹は顔を見合わせる。
「いつになくご機嫌だな」
「ええ。セラの事も落ち着きましたし、何よりお兄様が無事にお戻りになられましたから」
 るんるんと鼻歌を歌いながら歩くレミーの後姿を見つめながら、どちらともなく微笑む。
「‥‥お兄様、セラに対する皆様のご好意は気づかないふりをしていた方が良いのでしょうか?」 
「そうだな。彼等の心遣いを無駄にしたくはない。明かすべき時が来たら打ち明ければいいさ」
 春の風に髪を靡かせながら、2人は冒険者達の優しさを想う。
 その一部始終を話した時、レミーや父エリックは嬉し涙を浮かべながら微笑んでいた。
「俺達だけだったら、きっとセラを救えなかっただろう。父上も母上も同じ事を思っている筈だ」
「だからお持て成しをしたいと、あんなにお母様は張り切っているのですね。なのにいつもの悪巧みと疑ってしまった自分が恥ずかしいですわ」
 しゅんと俯くアリシアにフレッドはゆっくりと頭を振る。
「俺だって疑っていたさ。だからそんなに気に病む事はない。それにいつもの母上の行いを見ていたら、疑いたくなるのも当然だろう?」
「それもそうですわね。ふふっ」
 穏やかな顔のフレッドを目にし、アリシアは花の様に微笑み安堵する。
 最近は色々な事があって、とても辛そうに見えたから。
「こうしてお兄様と並んで町を歩くのも久々ですわね。とても嬉しいし楽しいですわ」
「ああ、俺もだ。寂しい想いや辛い想いをさせてばかりですまなかった。暫くはゆっくりと過ごそうと思っている。行きたい所やしたい事はあるか?」
「本当ですか? 私、お兄様と行きたい所やしたい事がいっぱいありますの!」 
 瞳を輝かせ、アリシアは自分の希望を1つ1つ挙げていく。
 そんな妹の様子をフレッドは瞳を細めて見つめていた。
 家族以外に大切な存在が出来つつある2人。
 しかしお互いへの兄弟愛はいつまでも優しく、変わる事はないのだろう。
(「私は本当にいい息子と娘を持ちましたわ」)
 子供達の仲睦まじい様子を振り返って見つめながら、レミーは母としての喜びを噛み締めていた。
(「何て言ったって‥‥とってもいじり甲斐のある子達ですもの♪」)
 ‥‥やはりレミーはレミーだった。
 胸の内に抱く野望に兄妹が餌食になるのは、もはや時間の問題である。

 夕食後、レミーは紅茶のカップをテーブルの上に戻し、神妙な面持ちで口を開いた。
「女として生まれた以上、お洒落をして最先端の流行を追いかける事はとっても大事な事だと思いますの。私はそれに命を懸けていると言っても過言ではありませんわ」
「「はあ‥‥」」
 突然、熱く語り出したレミーに兄妹の気のない返事がハモる。
「しかし私は気づいてしまったのですわ! 己が内にある渇望を! そしてそれを実行に移せる自分の才能にっ!」
「母上、全く話が見えてこないのですが‥‥」
「私もですわ‥‥」
 既に呆れ顔の2人を気にする事もなく、レミーはふふふと邪な顔で微笑む。
「聞いて驚きなさいな。私はこの春、流行を追うのではなく、流行を作ってみせますわっ!!」
 ずばばーん!!
 ‥‥と言う音が聞こえてきそうな勢いで言い切るレミー。その瞳はキラキラと輝いている。
「ええと、それはお母様がファッションリーダーになるという事でしょうか?」
「甘ぁぁいっ! そんな甘っちょろいものではありませんわっ!!」
「きゃっ!」 
 レミーの剣幕に押され、アリシアの細い体が跳ねる。
 その肩を優しく抱きしめながら、フレッドは心底困り果てた顔で息巻く母を見上げた。
「では、母上は一体何を企んで‥‥いえ、お考えなのですか?」
「ふふふっ‥‥おーっほっほっほっ!!」
 レミーはすくっと立ち上がり、2人を指差しながらこう言い放った。
「この春、キャメロットに獣耳メイドさんと獣耳執事を流行らせてみせますわっ!!」
 ずががが────────んっ!!!!
 窓の外で雷鳴が轟いた‥‥気がした。
「‥‥お母様、本気ですの?」
「本気も本気、超絶本気ですわ! しかも全く新しい概念をも作り上げてしまおうと思っているのです」 
「新しい概念‥‥ですか?」
 嫌な予感に顔を見合わせる2人。
 その予想は‥‥
「メイドさんや執事にご奉仕をさせるのではく、ご奉仕を受けさせてしまうのですわっ!」
 当たった。
 というか、メイドさんや執事の存在を根本から覆す侮辱的行為の気がしないでもない。
「‥‥母上。本気で仰っているわけではありませんよね?」
「いいえ、フレッド。私の決意は揺るぎませんわ。ギルドには依頼を提出済みです」
「ま、また冒険者の皆様を巻き込むおつもりですの!?」
 やっぱり、と頭を抱えるフレッドと、驚愕するアリシアにレミーはにんまりと微笑んだ。
「皆様には獣耳メイドさんや獣耳執事になってもらって、私のお持て成しを受けて頂きますわ。あなた達も手伝うのですよ?」
「横暴過ぎますわ‥‥」
「アリシア、しっかりしろっ!」
 ふらりと気を失いかけたアリシアを、フレッドは慌てて抱きとめる。
「ご奉仕される事に耐えられなくなって、うっかりご奉仕しようとした人には、私がきつーいお仕置きをしようと思ってますの。楽しみですわぁ‥‥おーっほっほっほっ!!」
 その笑みは悪魔ではなく、もはや大魔王のそれだ。
 こうしてレミーの魔の計画に、またもや冒険者達が巻き込まれようとしていた‥‥合掌。

●今回の参加者

 ea2804 アルヴィス・スヴィバル(21歳・♂・クレリック・エルフ・イギリス王国)
 ea5866 チョコ・フォンス(29歳・♀・ウィザード・人間・イギリス王国)
 ea5936 アンドリュー・カールセン(27歳・♂・レンジャー・人間・イギリス王国)
 eb5357 ラルフィリア・ラドリィ(17歳・♀・ウィザード・エルフ・イギリス王国)
 ec1007 ヒルケイプ・リーツ(26歳・♀・レンジャー・人間・フランク王国)
 ec4311 ラティアナ・グレイヴァード(14歳・♀・クレリック・ハーフエルフ・イギリス王国)
 ec4318 ミシェル・コクトー(23歳・♀・神聖騎士・人間・イギリス王国)
 ec4979 リース・フォード(22歳・♂・ウィザード・エルフ・イギリス王国)

●サポート参加者

八代 紫(eb3902)/ ラヴィサフィア・フォルミナム(ec5629

●リプレイ本文

●生贄の子羊達
 庭へと案内された一同は、テーブルの上に所狭しと並べられているスイーツに目を見張る。
 おいしそうなこれらがやがて起きる悲劇への晩餐とは誰1人気づかないまま、1日目のお茶会が始まった。
「皆様、ウェルカムですわ〜! くふふふっ」
「レミー、ちょっとお久しぶりだね‥‥って、何かすごい『いい笑顔』だなぁ‥‥」
「あなたにお会いできたからですわ。おほほほほ♪」
 リース・フォード(ec4979)にちゃっかりと抱きつきながら、レミーは得意の話術で強引に誤魔化す。
「招待して下さってありがとうございます」
「招いて頂き、感謝する」
「あなた達はもう結婚なさったの?」
「してませんっ!」
 真っ赤な顔で頭を振るチョコ・フォンス(ea5866)の隣で、アンドリュー・カールセン(ea5936)は紅茶のカップを持ったまま無表情で固まっている。
「こんにちわなのー♪ ティーはね、ラティアナ・グレイヴァード(ec4311)って言うの。ラティって呼んで欲しいのー。ティーはね、セーラ様に仕えてて神聖騎士さんを目指してるクレリックなの」
「まあ、可愛らしいお嬢さんね♪」
「えーと『きょうは、ごしょーたい、いただきまして、ありがとうございます』なのー♪ これ、プレゼント〜」
「まあ、こちらこそありがとうございますわ〜!」
 人から教わったらしい挨拶(恐らくは兄だろう)を棒読みし、つまみ食いの末に数の減ったクッキーを笑顔で差し出したラティを、レミーはぎゅむっと抱きしめる。
「フレッド殿は素晴らしい戦い振りじゃった。さぞ自慢の御子息じゃろう」
 ラティの見送りに来た紫は、地獄でのフレッドの様子をレミーとアリシアに話して聞かせる。引き締まった体の長身美人な彼女に、アリシアは尊敬の眼差しで見惚れていた。
「‥‥ふれっどじゃまする‥‥おいしーものわたさないっっ」
「ラル、俺が嫌いなのかっ!?」
 可愛いものに弱いフレッドは緩んだ顔でラルフィリア・ラドリィ(eb5357)に近づくものの、ライバル心を剥き出しにした拒絶に遭い、がっくりと膝を付く。
「お招きありがとうございます。それと、ペンダントも。片方は無事‥‥ではないですけれど渡せたと言うか何と言いますか」
「あら? そのお話は後でじっくりと聞かせて頂きましてよ?」
 頬を染めて耳打ちをするヒルケイプ・リーツ(ec1007)にレミーは好奇心丸出しの瞳で微笑んだ後、ちょいちょいとラヴィサフィアを手招きする。
「ちょっとこちらへ‥‥ごにょごにょ」
「‥‥ふんふん‥‥まぁ‥‥そうでしたのね」
 話を聞き終えたラヴィはにんまりと微笑むと、アリシアと談笑している兄リィに近づくのだった。
「フレッドくんのお母さん‥‥いや、ここは敢えてお義母さんかな? はこう、同類の匂いがするなぁ。何を考えているかは知らないけど、楽しい滞在になりそうだ」
 フェアリーのスノートを愛でつつ、対人鑑定に長けているアルヴィス・スヴィバル(ea2804)は意味有り気に微笑んだ。
 何故『お義母さん』なのかは、決して深く考えてはいけないのだ。
「お弁当を作って来ましたの。我ながら自信作ですわ」
 ミシェル・コクトー(ec4318)が差し出したモノを一同は見つめた後、慌てて視線を逸らす‥‥彼女は魔女的料理を生み出す天才なのだ。
「きょ、今日も個性的な色合いですわねぇ。フレッド、あなたが頂きなさい。いいですねっ!?」
 有無を言わせぬレミーの命令でフレッドが食し、その日1日をうなされて過ごす事になったのは言うまでもない。ミシェルを傷つけまいと、笑顔で全部食した優しさが仇となるとは‥‥。

●冒険者はお仕置きがお好き☆
 そして2日目‥‥運命の時。
 獣耳と尻尾、メイド服と執事服に塗れたレミーの野望が明らかにされた。
「いや、まって‥‥ちょ、聞いてない‥‥まってレミーさまぁぁっっ」
 叫び声も空しく、リースは灰猫執事に変身させられてしまった。
「あぁにゃんだってこんな目に‥‥というか、にゃにがしたいんだレミーにゃん」
 すっかり身も心もにゃんこになってしまったリィ、堕ちたり!
「こういう趣向な訳か。成る程成る程、面白い。良いね、存分に奉仕して貰うとしよう」
 シックな執事服を軽く着崩した銀色狐のアルヴィスは、動揺するどころか満足そうに微笑んでいる。  
「‥‥おいしーものくれる、ならそれでいー」
 くまメイドさんラルは食べ物があれば何でもいいらしい。
「クレリックだから普段は可愛い服を着ちゃいけないのー。でもこの2日間は特別。とっても嬉しいのー♪」
 ふりふりメイド服うささんラティは、その手の趣向の男性に攫われそうな可愛さである。
「セラから手紙はあったのか?」
「いいえ、来ておりませんわ。彼は元気でしょうか‥‥」
「まあ、ハロウィンの時には帰ってくるだろう」
 この手の格好を過去に経験済みのアンドリューは、まだまだ余裕の表情で白仔猫アリシアと談笑していた。
「ゲームや遊びだと思えば楽しいわよね♪」
「だがチョコのご主人様は自分だけだ」
「ちょっ、皆がいるのに何言ってんのよっ!」
 さりげなく独占宣言をする黒犬執事のアンドリューに、ツインテールに黒猫メイドさんのチョコは顔を真っ赤にさせる。
「フレッド、食べさせてちょうだい。ただし手を使わずにね?」
「手掴みで宜しいのでしょうか?」
「いいえ、口でですわ」
「っ! ‥‥か、かしこまりました、ミシェルお嬢様」
 アップルパイを咥えた白犬フレッドの顔が近づく。ちなみにレミーによりシャツのボタンがかなり下まで外されていた。
 羞恥に潤む顔を見つめながら、彼とお揃いのたれ耳犬メイドさんのミシェルはゆっくりと食べ進めていく。
 そして唇が触れそうな、後一口となった時────
「みーちゃんだけずるいの‥‥ぼくもたべる‥‥むちゅ‥‥はむはむ」
「僕はその唇についているのを頂こうか。んちゅ」 
 突如現れたラルとアルヴィスが次々とフレッドの唇を奪っていく。‥‥アルヴィスの目的はアップルパイではなかった筈だ、絶対に。
「何て事をっ! フレッド、呆けてないでこの格好を流行らせる為にお買い物に行きますわよ!」
 ミシェルは頬を膨らませると、フレッドをずるずると引っ張って町へと繰り出すのだった。
「この格好でご奉仕されるだなんて、落ち着きませんっ」
 うさみみメイドさんのヒルケがそわそわと周りを見渡していると、アリシアが汲んだお茶を零してしまったラルがしょんぼりとしていた。
「‥‥ごめん‥‥なさい‥‥なの‥‥せっかくおいしーのに」
「いいえ、私の粗相でございますわ」
「大変! 早く拭かないと! ‥‥あ」
 咄嗟に手を出してしまったヒルケが視線を感じて恐る恐る振り返ると、そこには丈の短いドレスから惜しみもなく脚線美を披露している黒豹レミーの姿が。
「ヒルケお嬢様。罰として『あの方のほっぺにちゅうなさいませの刑』を言い渡しますわ☆」
 既に魔王化しているレミーはヒルケにとんでもない命令をするのだった。
「もう限界だっ‥‥」
 着飾られると精神的ショックを受けてしまうリースは、よれよれと物陰で猫耳を外す。
「あら、外してしまいましたわね?」
 しかしあっさりと見つかった!
「にゃ〜〜〜!! アリシにゃ〜〜〜たしけて〜〜〜」
「お母様、リィに何をなさるおつもりですの!?」
「私の秘蔵コレクションでファッションショーですわ♪」
 お仕置き内容を聞いたリィの口から魂が抜けかかっている!
「アリシにゃ、最期に可愛い姿が見れて良かったにゃ‥‥ぐっにゃい‥‥」
「リィ〜〜!!」
 気を失ったリィはその後、お色気系から可愛い系まで、総勢100着ものドレスに着替えさせられるのだった。 
 あまりの衝撃にその時の記憶はぽっかりと抜け落ちていたそうな。

●煩悩の宴
 最終日は獣耳と尻尾はそのままに、レミーのやりたい放題で女装男装である。
「‥‥懐かしいな。昔女装して暗殺したことを思い出す」
 レミーの卓越した化粧を施された後、半袖に丈の短いメイド服を着させられたアンドリューは、声音を少女のそれに変えて色んな意味で物騒な事を平然と言い放つ。
 スカートの下のいたいけな太腿には何故か投げナイフが隠されていた‥‥プリティかつデンジャラスな黒わんこである。
「悔しいけど可愛い。何か複雑な気分だわ」
「安心しろ。俺のご主人様はチョコだけだ」
「主語を変えて昨日と同じ様な事を言わないのっ!」
 執事服を着たチョコは、レミーの影響か日に日に大胆になっていくアンドリューに心休まる暇がない様だ。
「チョコお嬢様、紅茶をお持ちしました」
「あ、ありがと」
「まるごとうしゃぎありしあ、か〜い〜の‥‥ぼくのなの」
 昨日から皆のスケッチをしているチョコの元に、まるごとうさぎさんを着込んだアリシアが現れる。
 黒の王子様風衣装を着たラルは持っていたくまの人形を放り投げると、うっとりとした顔でアリシアにしがみつく。
「おかーさん、おとーさん‥‥何処?」
「ここにいますわよ。だから安心してお眠りなさい」
 初めて訪れる貴族の屋敷に大興奮し、この2日間はしゃぎっ放しだったラティは、ソファで転寝をしながら両親の夢を見ている様だ。
 伝統的な正統派メイド服を着たレミーは、そっとラティを抱きしめた。
「さ、リィ。覚悟はよろしくて?」
「美人さんに仕立てあげますから、安心して下さいねっ☆」
「‥‥ま、まてヒルケ‥‥ミーちゃん‥‥ぎゃー!」
「2人でフレッドくんを誘惑しようじゃないか」
 ミシェルとヒルケに連行されるリースを、既に準備万端のアルヴィスが見送る。
「女装って男の浪漫なのかしら?」
「自分は断じてそんな事はないぞっ!」
 チョコの呟きを何故か全力で否定するアンドリューだった。
 そして数十分後‥‥。
「リ、リースさんズルいですっ!」
「こんなに綺麗で胸も大きいだなんて、かなり反則ですわね」
「りーすままみたいに‥‥おーきくなーれ‥‥」
 ヒルケ、ミシェル、ラルの羨ましげな視線を胸元に集める金髪エルフさんは、ワインを飲み干して戦闘態勢に入った。
 ちなみに何故ラルがリースを『ママ』と呼ぶのか。そこにのっぴきならない事情は‥‥ない。 
「‥‥こうなりゃヤケだ。ルヴィ、俺達の恐ろしさを見せつけてやろう!」  
「勿論だとも」
 そして2人のセクシー美女(?)は、何も知らないフレッドにお色気攻撃を仕掛ける!
「なっ、アルヴィス!? リィ!?」
「足、揉んで。優しくね」
 動揺するフレッドにリースは長く美しい脚を投げ出した。
「‥‥か、かしこまりました」
 妖艶な仕草で耳元に息を吹きかけられたフレッドの頬が朱に染まる。その際に何を囁かれたのかはご想像にお任せしよう。
「ねぇ、本当は女だったんだって言ったらどうする?」
 リースの脚を揉むフレッドに背中から抱きつき、アルヴィスはとんでもない事を言い始める。
「それが真実だとしても、あなたへの接し方は変わりません」
「ふうん。酒場では凛々しいとか惚れたとか言ってくれたのに‥‥少しも、意識してくれてなかったんだ」
「あれは、男惚れだと前にも‥‥」
「疑うのなら、触って確めてみるかい? フレッドくんなら────良いよ」
 アルヴィスがそっとフレッドの手を取り、自身の胸へと近づける。 
「ご奉仕中によそ見するだなんていけない子だね。罰としてわんって言ってごらん、わんって」
 大混乱中のフレッドの頬をリースはゆっくりと指でなぞる。
「あ〜らフレッド、顔が真っ赤ですわよ。熱でもあるんじゃなくて?」
 純情青年のピンチを救ったのはヤキモチ全開のミシェルだった。
 キッとやり過ぎの2人を睨みつけ、こつんと自分のおでこをフレッドのそれにくっつける。
「ミ、ミシェル!?」
「こんなに熱くなって‥‥お仕置きですわ」
 ミシェルはそのままフレッドの鼻にちゅっとキスをすると、ぷんぷんと怒りながらその場を後にした。
 アルヴィス曰くその時のフレッドの赤面顔は、とても嗜虐心をそそるものだったとか。
「楽しくて笑いが止まりませんわっ。おーっほっほっほ!」
 3日目の夜更け、やっとレミーのお持て成しは幕を閉じた。
 レミーから魅了アイテムが、チョコからはツーショットを含むスケッチが手渡される。
「レミーママなの〜♪」
「おいしいのいっぱいくれたから‥‥れみー、だいすき‥‥」
 無邪気なお子様2人を抱きしめつつ、レミーは次はいつにしようかと企むのだった────。