人を食う森 御伽噺の結末
 |
■ショートシナリオ
担当:熊野BAKIN
対応レベル:6〜10lv
難易度:普通
成功報酬:3 G 9 C
参加人数:6人
サポート参加人数:-人
冒険期間:08月04日〜08月09日
リプレイ公開日:2007年08月10日
|
●オープニング
●「人を食う森」
「あの森に入ってはいけないよ。あの森の奥には怖い魔物が居るんだ」
「お婆ちゃん。僕、魔物なんか怖くないよ! 僕がやっつけてやる!」
「その魔物はね。お前みたいなやんちゃな子が好きなのさ。特に・・・・」
「・・・・」
「頭からバリバリと齧るのがね・・・・」
幽霊の取り付いた廃屋、悪魔の住む城に悪食の竜が住む滝壺。首無しの騎士が彷徨う丘に死者の国に繋がる洞穴・・・・。
その殆どは危険な場所に子供を近づけないようにする為の、荒唐無稽な御伽噺。でも・・・・今回のお話し、「人を食う森」は、不幸にも御伽噺が真実だったという顛末。
村人達は今日も不安げに森を眺めていた・・・・
●依頼人との打ち合わせ
「・・・・と、言うわけでガヴィッドウッドの生息域を避ければ安全なルートは作れそうだ、との事です」
受付担当は冒険者の製作した森の見取り図を元に、依頼人への調査報告を行っていた。調査の結果もたらされた内容に、依頼人である若き村長は眉間に皺をよせて考え込んでしまった。
元々はいわく付きの森に道をつくるため、少し大げさだとは思ったが冒険者ギルドに依頼をしたのだが・・・・まさか本当に危険な生物が生息しているとは思わなかった。
「クレイジェルの方はまだ見逃しがあるかも知れませんが、ガヴィッドウッドはこの1体だけ、となっていますね」
人食い樹木は側に寄らなければ良いとして、ジェルの方が問題かな・・・・説明しながら受付嬢は分析した。理由は至極簡単、どちらも危険には違いないが、近寄らねば大事無いモノと勝手に近づいてくるモノ、その差は歴然としていた。
それを踏まえた上で次の思案に移る。つまりは依頼人の選択・・・・だが、この時点でおおよその予想は出来ていた。
1つは道をつくるのを諦めるという選択肢。これは冒険者を雇ってまで森の調査をした時点で、可能性は低いだろう。彼らが欲しているものは、多少の危険を犯してでも手にいれる価値のある物・・・・時間なのだ。
「道をつくる」という大前提が崩れない以上、選択肢は2つ。この調査報告を元に道を拓くか、あるいは・・・・もう一度冒険者を雇い、森に潜む御伽噺の悪役を排除するか。
ただ、どちらを選ぶかまではさすがに断定できなかった。前回の調査時に冒険者はクレイジェルを5匹排除しているし、ガジェットウッドにいたっては「近づかなければ」良いだけの話だ。
後は依頼人次第だな、担当は思案に暮れる村長の決断を待った。
●依頼書
「募集・森に生息するガヴィッドウッド1体。生息場所特定済。ただし森の中にクレイジェルが居る可能性あり」
「あら、討伐になったんですね」
振り返ると依頼書の草案を同僚が覗き込んでいた。長いこと依頼人との打ち合わせをしていたので気になったのだろう。
「うん。森の中に道が出来たら、子供達だって奥に行きたくなっちゃうかもしれないでしょ?」
「それは・・・・そうだね。子供だけじゃなくって、大人だって薬草とか探しに入るかも」
人食い樹木から離れて道をつくっても、いつかは自分達の方から近づく事になるかも知れない。何も推測だけで言っている訳ではない。森に伝わる「人食いの森」の話が、皮肉なことにそれを証明しているのだ。
彼女は、村長を若いわりに現実的で先を見る目がある、と評した。それはとりも隠さず「野心的」である、とも言えるかも知れない。
でも・・・・受付担当はペンを置いた。少しでも暮らしを良くしたいと言う思いは、決して非難される事では無い。
「ま、そう言う人達を手助けするもの冒険者ギルドの仕事だしね」
一つ伸びをして作業を再開した。
●リプレイ本文
●村での一幕
件の森の手前。依頼人が住む村で冒険者は一夜を明かしていた。一度調査をしたとはいえ唯でさえ木の密度が高く足場が悪い場所だ。それに相手は危険なモンスターとはいえ樹木には変わりは無い。自分で位置を動かすことが出来ない以上、危険を冒してまで急ぐ必要は無かった。
「前回クレイジェルと遭遇したのはこことここ、そして・・・・ここだ」
シャノン・カスール(eb7700)は、前回作成した見取り図を広げ、仲間に森の状況を説明していた。ガヴィッドウッドの生息域に近づくまでは、当面の危険はクレイジェルになるだろう。同じ場所にまた出るとは限らないが警戒するに越した事は無い。
「ジェルが相手じゃあたしの探査魔法に引っかかるか判らないし、地道に探すしかないな」
「兎に角こまめに見張るしかないのだね」
セティア・ルナリード(eb7226)の溜め息混じりに発言に、ウィルフレッド・オゥコナー(eb5324)が同意した。エルフの淑女達は森での行動に長けてはいるものの、地面に潜むクレイジェルを発見できるかどうかとは別の問題。しかも2人ともウィザードという職業柄、敵の攻撃に対してどうしても弱い・・・・ジェル待ち伏せを受ければ手痛い目に遭うのは明らかだった。
「何にせよ注意して進むしか無いな」
締めくくるように発せられた、ジェイス・レイクフィールド(ea3783)の言葉に、その場に居合わせた冒険者は一様に頷いた。
「うん、手頃な長さだ。ありがとう」
村の若者から杖を譲り受け、イレクトラ・マグニフィセント(eb5549)は満足そうに微笑んだ。何でも箒やモップの柄に使う為の物で、長くは無いがあの森の中で使うことを考えれば、使い易いサイズだと思った。
「よさそうな杖が見つかりましたか?」
「ああロッド殿か」
イレクトラは振り向くと声の主・・・・依頼に参加した4人目のエルフにして4人目のウィザード、ロッド・エルメロイ(eb9943)。
「相手が相手だし、予備はあった方が良いしね」
ジェルは取り込んだものを酸で溶かし吸収する。もしも用意したロッドがジェルを探り出せば、木の杖など簡単に溶かされてしまうかもしれない。
「早くに発見できれば、助かるんですけどね」
「確かに」
希望的願望に声を上げて笑う。一頻り笑うってから、エレクトラは少し考えてロッドに話しかけた。
「ロッド殿」
「なんですか?」
「・・・・いや、大した事じゃなかった。忘れとくれ」
ロッドは言葉を濁したエレクトラを暫し見つめていたが、本人が「大した事ではない」と言うのなら、きっとそうなのだろう。
「そうですか」一言、そう答えると追求しなかった。
『言える訳が無い』その時彼女は内なる葛藤と戦っていた・・・・「地面を突くのは杖(ロッド)で、ロッド殿では無いぞ?」 等と。
●人を食う森
「そろそろじゃないか?」
イレクトラの言うとおり冒険者達は、前回の調査でガヴィッドウッドの蔦に遭遇した場所に近づきつつあった。
ガヴィッドウッドの討伐がメインの目的という事もあり、比較的歩きやすいルートを選択したので日暮れまでまだ時間がある。
「ジェルに出会わなかったのも幸運だったのだね」
「広い森の中で、しかもいちいち調べまわってたわけじゃないしな」
ウィルフレッドにセティアが応じる。確かに森中探し回って3匹かそこらしか出会わなかったモノに、目的地へ真っ直ぐ向かってきて出会う可能性は・・・・かなり低かったかもしれない。
「ジェルを見かけた木もいなかった」
道中、シャノンはグリーンワードの魔法でクレイジェルの存在を木に尋ねていた。木からは簡単な答えしかもらえないが、それでもモンスターの存在を知るには充分役に立つ。
「そろそろ準備を始めたほうが良いですか?」ロッドの問いかけにシャノンは「少し待って」と言い残し、もう一度グリーンワードを発動させる。
「この近くにガヴィッドウッドはいるか?」 『いる』「どちらの方向にいる?」 『北』 「距離は?」 『・・・・近く』
少しづつ情報を引き出す、が・・・・近く? 木が感知できると言うことは、ガヴィッドウッドの蔦がこの近辺にも届く・・・・と言うことか? だとすれば。
「かなり近いようだ。準備を」
いつ蔦が襲って来てもおかしくないと言う事。シャノンは仲間に戦闘準備を促した。
●人食い樹木
「ガヴィッドウッドの蔦を!」
シャノンの命を受け、淡い光の矢が木の間を潜り抜け地面に突き立つ・・・・と、地面から褐色の蛇−否。腕ほどもある蔦がのた打ちまわる。
「行くよ!」
「・・・・」
次に動いたのはイレクトラ。蔦を目視で確認すると破邪の剣を携え、走る。−蔦と枝葉を切り落としたら、後は斧で切り倒せば良い。まずは厄介なモノから片付ける−そう決めると、獲物を求めて動き出した蔦に得物を叩きつけた。
数瞬遅れてブラヴェインを構えたジェイスが後を追う。密集した木のお陰でイレクトラとの位置取り、武器の間合いを確保に悩まされるが、それでも粘り強く最良のポジションを維持して相方をサポートする。自分と仲間の能力を最大限に引き出せれば絶対に勝てる、確信を持って。
「そう、そこの枝を上に!」
セティアはプラントコントロールの魔法を用い、何とか射線と視界を確保しようと試みる。とはいえ本体が何処にいるかまだ見えないため、どれだけ枝葉を動かせば良いのか判らない。
「早く本体を見つけてくれ・・・・」祈る様な小さな声で、呟いた。
「あれか!?」
イレクトラとジェイスに切り刻まれた蔦は木々の隙間を縫って逃げだした。痛み−木にも痛覚があれば、だが−耐えかねて、蔦を引き上げたのだろうか? とにかく逃げる蔦を追って走る2人の前に、回りのどの木々よりも明らかに幹周りが太い大樹が姿を現した。根元には大人でもすっぽり入る程の大きなうろが口を開けている。
その時−ざわ・・・・ざわざわ−
得物を存在を感知して、幹に纏わり付いた蔦草が触手のように蠢く。
「本体はここだ・・・・ここにいるよっ!」 森の中にイレクトラの声が響き渡った。
「待ってましたっ!」
仲間の声を聞いたセティアはそちらの枝を動かす。続けて木に何かを叩きつける音が響いた。2人の剣士が本体への攻撃を始めたのだろう、急がなくては・・・・その思いが一瞬、一瞬だけ彼女の警戒心を鈍らせた。
セティアの足元で土気色の蛇がゆっくりと鎌首をもたげ・・・・
「ライトニングサンダーボルト!」
放たれた雷撃が蔦を焼き焦がす。
「逃がさないのだね!」 逃げ出す蔦目掛けて、高速詠唱で紡がれた2度目の雷撃が打ち据えた。動きを留めた蔦から、煙と共に木の焦げる臭いが立ち上る。
「助かったぜ、ありがとう」
「間に合って良かったのだね」
セティアの感謝の言葉に、雷術者はにっこりと微笑んだ。
「ガヴィッドウッドは見えまし・・・・何かあったんですか?」
前衛にフレイムエリベイションを施したロッドは、戻ってくるなり漂う臭いに眉をひそめた。
「まぁ、なんだ」
「ここも安全じゃ無い、と言う事だね」
「・・・・そうですか」判ったような判らないような表情のまま、ロッドはショートボウを構えると木々の隙間から人食い大樹を狙った。
「くっ・・・・」真横から振り下ろされた一撃に、ジェイスの反応が遅れた、が・・・・−ばし!− 仲間が施してくれたレジストプラントの魔法が蔦を弾く。
この魔法の護りがあるお陰で、ジェイスもイレクトラも傷一つ無く戦うことが出来ていた。
ガヴィッドウッドは決して排除不能な難敵では無かった。かといって楽に勝てるほど甘い相手でも無い。何よりも。
「しぶとい奴だね!」
「打たれ強いなんてものじゃないな」
モンスターとは言え、樹木だけあって振れば必ず幹には当たるのだが、剣で叩くには硬いその感触は熟練の剣士といえど手が痺れてくるほどだ。
先ほどから森の奥からも矢や雷撃、黒い帯のようなものが人食い樹木の幹を削っているのだが、それでも蔦は今だにその動きを止めず、隙あらば獲物に襲い掛かろうと狙っている。
「グラビティキャノン」
シャノンの放った重力魔法が射線上に存在する枝をへし折り、少しづつではあるが視界を開いていく。ガヴィッドウッドは強烈な重力の直撃を受け、軋む様な音を発しながらも耐えた。
「これで矢は、品切れです」
ロッドは最後の矢を番え、一呼吸置いて放った。弓どころか剣の扱いもまともに習ったことは無かったが「相手が動かない」と言う好条件に恵まれ、的に向かって飛んだものは全て命中している・・・・何本かは明後日の方向に飛んでいった気もするが。
「ライトニング・・・・」「サンダーボルト!」 セティアとウィルフレッドが同時に雷撃を放つ。2本の閃光が燻る樹皮をさらに焦がす。誰一人弱音を吐かないが、彼等の魔力も限界が近い・・・・それでも皆の思いは一つ。
「きっちりしっかり退治して、ただの森に戻してやらないとな」
●かくして御伽噺にピリオドが打たれた
「はぁぁ!」
「食らえっ!」
イレクトラの斬撃とジェイスの大上段からの振り下ろしを受け、ついにガヴィッドウッドは断末魔のような軋み声を上げて活動を停止した。
目だった外傷も無く、唯一のダメージは剣を握っていた手の痺れだけ・・・・と言うのは、魔法の加護があったとはいえ幸運だった。
「御伽噺だと思ってたら本当に魔物がいた・・・・か」
「旅人の安全を考えれば、放置するわけには行きませんでしたしね」
いつの間に集まってきたのか、4人のウィザードも「人食いの森」の主を見上げていた。
もしも人食いの森の御伽噺が語り継がれるなら、きっとこう締めくくられるだろう。
「勇敢な冒険者の活躍で、人食いの森は平和な森になりました・・・・」と。