小悪魔狂騒曲 安眠奪回戦
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■ショートシナリオ&プロモート
担当:熊野BAKIN
対応レベル:1〜5lv
難易度:普通
成功報酬:1 G 35 C
参加人数:8人
サポート参加人数:2人
冒険期間:09月20日〜09月25日
リプレイ公開日:2006年09月25日
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●オープニング
●夜のしじまを破るモノ
キャメロットから程近いとある農村の夜。村人は床につき、明日の野良仕事への英気を養う時間。
−がらん がしゃん がんがんがんがんがん! −
「またかよ・・・・いい加減にしてくれぇ」
事の起こりは数日前。イギリスの短い夏が終りをつげ、実りの秋を迎えはじめた頃。
日が暮れ、村人達が寝静まる時刻になると、死人すら飛び起きそうな騒音が村中に響き渡るようになったのだ。
勿論、村人達は家を飛び出して原因を探したが、辺りには散らかった農具や金物が転がっているばかり。
最初の夜は動物が餌を求めて紛れ込んだのかと(この時期に人里に近づくとは考えづらかったが)思い、次の夜は村の腕白小僧の仕業かと思った。
しかし村に動物の足跡はなく、小僧どもはどんなに問い詰められても「知らない」「僕達じゃない」との主張を繰り返すばかり。
さらに次の夜は、農具や音の出そうな物は全て納屋にしまったはずなのに、騒音に叩き起こされてみれば、あちら此方にばら撒かれている始末。
数日の安眠妨害の為に、村人の気力と体力は限界に近づいていたある日・・・・
●ギルド受け付け
「グレムリンだったんですよ」
くっきりとクマを浮かべた村人が、受け付け担当にそう告げた。
「犯人を突き止めようと、何人かで農具をしまった納屋を見張っていたら、月明かりに照らされた小柄で毛むくじゃらなヤツが現れたんです」
成る程。グレムリンならば自在に姿を消す事が出来るし、その性格からして村人の慌てる姿をあざ笑う姿も用意に想像できる。
「ではグレムリンの討伐と言う事ですね」
担当者は手早く依頼の要点を書き出していく。
「グレムリンは1匹と考えて宜しいですか?」
「多分、そうだと思うんですが・・・・」
依頼者の歯切れが悪い。
「何かご不審な点が?」
「それがその、姿を見たのは1匹なんですが、村の散らかり方から考えると、どうしても1匹だけとは・・・・」
騒音で起こされた村人が外を確認するまでの時間と村の状況を考えると、1匹だけとは考えにくいと言う事らしい。
「わかりました。では最低数1匹から数匹の可能性有り、と言う事で募集をかけます」
「はい、それで宜しくお願いします」
●リプレイ本文
●事前作り
安眠を奪われた村で、黙々と作業を続ける者達の姿があった。
その中の一人、ギリエル・クルーガー(ea6384)はあちらこちらから集めた農具を束ね、しっかりと結束していた。
「ざっと見て廻ったが、これで最後だと思うぜ」
ギリエルが声の主を見やると、そこには異国出身の剣士、日高瑞雲(eb5295)が農具を抱えていた。
「ご苦労さま。それじゃ手早く終らてしまおう」
「あいよ、そこの縄を取ってくれや」
男達は手際良く仕事を消化していった。
「こちらは大丈夫そうですね。そちらはどうですか?」
エルフの女性−実はハーフエルフなのだが−乱雪華(eb5818)が仲間に声をかけた。
「あ、鳴子はこんな感じでいいのかしら?」
その声の主はもう一人のエルフ、キッシュ・カーラネーミ(eb0606)だった。
彼女達はグレムリンが出没した時の為に設置した、鳴子や音の出る仕掛けの最終確認をして廻っていた。
「うん。大丈夫、問題ないわ」
ジプシーの少女、ナセル・ウェレシェット(eb3949)がキッシュの指摘した場所にチェックを入れる。
ナセルは歳こそ若いが優秀な猟師の技能を持っている。彼女のお墨付きが出れば一安心だ。
「これはもう必要ないか?」
資材を抱えて一行の後を付いて廻っていた巨躯の騎士。メグレズ・ファウンテン(eb5451)が声をかける。彼女には罠に関する知識は無いが、その代わりに資材の運搬を一手に請け負っていた。
「そうですね・・・・罠はこれぐらいで充分でしょう」
雪華は村の見取り図を頭に浮かべ、それに罠の設置場所を重ねた。必要数を効果的に配置する、身に付けた技能が役に立った。
「それじゃ夜に備えて一息いれましょ。夜更かしはお肌に悪いんだケド・・・・そうも言ってられないしねー」
溜息混じりのキッシュにナセルが応じる。
「そうよね、夜の騒音って本当に迷惑。デビルって眠くならないのかしら?」
発想の違い。悲しいけど現実なのよね。これ以上は言えません。
一方、仲間達とは別の行動を取る者もいた。
神学者のアーサー・リーコック(eb3054)は村の教会に人を集め、持ち前の話術と説法を持って彼らの苦痛を癒そうと試みていた。
「村の皆さんに静かな夜が戻ってきますように、微力ながらお手伝いさせていただきます」
くっきりと隈の浮かんだ顔で、一心に祈る人々を見れば彼らの苦悩がどれほどか見て取れる。「セーラ様の慈愛が、この村に良い夢をもたらしますように」アーサーは村人と供に祈りを捧げた。
冒険者の最後の一人。ケンブリッジ魔法学校の学徒にして陰陽師、衣笠陽子(eb3333)は分けてもらった小麦粉を前に、広がり易いように投げる為の工夫をしていた。
以前の経験で敵が自在に姿を消せる事を知っていた。でももし目印をつける事ができれば、その能力を無効化できるかもしれない。
もしうまく付かなくても敵が広がる小麦粉の中を移動すれば、それが目印になる。
正直、自分の投擲技術に自信は無い。でも上手く広がるような工夫が出来たら、きっと役に立つはず。
「情けは人の為ならず」故郷の格言を噛み締めながら、小麦粉作戦の準備を整える陽子だった。
●安眠奪回作戦
−がっしゃーーん! − −からころから− −からん、からからから−
夜のしじまを引き裂いて轟く騒音と鳴る子の音。だが、鳴子は若干の間を置いて別の方角から聞こえている。
「東の方に反応があるわね」
ナセルの指輪にある「石の中の蝶」がゆっくりと羽ばたたく。それは取りも直さず悪魔族の存在を示していた。瑞雲・ナセル・アーサーのA班が動き出す。
もう一人のA班、陽子がサウンドワードで騒音から情報を聞き出しB班へ伝えた。
「北の方の音。グレムリンが納屋の罠にかかって鳴った音です」
それを受けてメグレズ・雪華・キッシュ・ギリエルのB班が北へと動き出した。
ここにかくも小規模かつ、重大な攻防の幕が切っておとされた。
●サイドA
彼らの作戦は、先ず酒でグレムリンを誘き出して、準備した小麦粉でマーキングをする所から始まる。
ナセルが事前に入手した情報と、前に別のグレムリンと戦った事がある陽子の経験から出た作戦だ。
「ちょいとばかり使い勝手が悪いが、贅沢はいえねーか」
彼の手に有るのは使いなれた日本刀では無く、魔剣「ストームレイン」悪魔を立つ為に打たれた剣。
「日高さんなら大丈夫ですよ」
何度か瑞雲と依頼を供にした事の有る陽子が微笑みかける。けしてお世辞ではない、同じ戦いを経験した「戦友」だから言える言葉だ。
「いました」
辺りを警戒していたアーサーがいとも容易く敵を見つけた。理由は簡単、なんとグレムリンは姿を消さずに堂々と結束した農具を漁っていたのだ。
「こんなに沢山、お酒を準備する必要ありませんでしたね」
「そうでもないわよ。向うから寄って来てくれれば小麦粉も当て易くなるし」
アーサーの呟きにナセルがフォローをいれる。
「そうゆうこった。向うさんが気付く前に始めようや」
瑞雲の提案に頷く一同。とはいえ、相手は自分の作業とその音でこちらに気付く気配すら無かったが。
−ひく−
鼻を擽る香りに手を止めるグレムリン。風に乗って何処からか酒の匂いが漂ってくる。連日の騒ぎで人間どもが自棄酒でもしたのだろうか? −実際は瑞雲が風上で酒を振って香りを流しているのだが−
作業を続けようとしたがどうしても気になり、ついに匂いの元を探して歩き出した。1歩2歩・・・・納屋から少し離れた、と。
「今です、陽子さん!」
叫び声と供に視界が真っ白に染まる。
合図に合わせ陽子が用意していた、小麦粉の包みをグレムリン目掛けて投げつけたのだ。良き所で解けた布の中から、小麦粉が振りまかれグレムリンを白く染め上げた。
−ぎひゃ!? −
運も冒険者に味方したらしい。投げられた小麦粉は小悪魔を染め上げるだけでなく、目に入り込んでその視覚をも奪ったようだ。
突然の出来事で完全に戦意を失い、グレムリンは翼を広げ空へと逃走を謀る・・・・が。
−びしぃ! −翼をに走る激痛と供に自由をも奪われ、地面へと叩きつけられる。
「そう易々と逃げられるはず、無いでしょ」
見えぬ彼の変わりに語れば、ナセルが放ったローズウィップが彼の翼を絡め取っていた。これも視覚を失い、逃げる方向を誤った故の結果だ。
「お前さんに恨みはねぇ・・・・ねぇんだが、ちょいといやーな台詞が聞こえた気がするんでな」
−踏んでー、縛ってー、蹴ってー−瑞運の耳の奥で聞こえる件の「声」これがただの幻聴だったら、どんなに良かったか。
不幸なのは八つ当りされる方ではあるが、これはもう自業自得なので不問。
視覚を無くし逃走も叶わず、斬魔の剣まで揃っては小悪魔如きになす術は無く。
「他人の迷惑を顧みない者には罰が当たるんですよ」
ポツリと呟いた陽子の言葉と供に消滅した。
●サイドB
こちらは些か状況が違った、最初から敵が姿を消していたのだろう。肉眼ではグレムリンを確認する事が出来なかった。
「1匹いる、たぶん納屋の辺りだ」
デティクトアンデッドでグレムリンを感知したメグレズが仲間に告げる。
「姿を消されたままだと厄介ですね」
雪華が呟く。B班にはメグレズの他、姿を消した悪魔を感知出来る手段は無い。それとて魔法が効力を発している短い間だけだ。
「姿が見えなくては魔法も使えない」
ギリエルが苦々しい表情で相槌を打つ。彼の武器では悪魔族を傷つけることは出来ないが、その代わり魔法で援護をする予定だった。
どうした物か、一同が考えを巡らそうとしたその時。
「どうやらあたしの出番ね」
キッシュが微笑みながら立ち上がった。「何を? 」問う間もなく、エルフの姉さんは発泡酒の入った皮袋を手に、颯爽と納屋へと歩き出してしまった。
「不眠は美容の天敵なのよねぇ」
−何時もと様子が違う−鳴子や意図して出された音に警戒し、姿を消していた彼の前に1匹のエルフが現れた。
エルフは何事か呟くと手にした皮袋に口をつけ、美味そうに何かを飲む。
−酒−直感した。村の中で、わざわざ水を皮袋に入れて持ち運ぶ者はいないだろう。何より、あの表情は美味い酒を飲んだ時の顔だ。
そう言えば最後に酒を口にしたのは何時の事か・・・・グレムリンは用心深くエルフの方へと接近を始めた。
キッシュの手から不可視の何かが皮袋を引っ手繰った、その瞬間。
「乱さん、今よ! 」
飛びのくと同時に叫ぶ。
考えるより早く雪華の身体が動いた、即座に飛び出すと鳴弦の弓を構え破魔の波動を奏でる。
−ぎぃ! −
見えない空間から苦痛の悲鳴が上がる。弓から放たれた音色が見えぬ鎖となってグレムリンを絡め取った。
次に動いたのはメグレズ。おおよその位置はわかるが姿はまだ見えない、ならば。
「破刀、天昇!」
気合と供に放たれた剣風がもろともグレムリンを薙ぎ払う。悪魔に流れる異形の体液が何も無いはずの空間から滴り落ちる。
「黒騎士、ギリエル・クルーガー。いざ、参る」
黒騎士の身体が黒い燐光に包まれ、その手から放たれた闇色の光がグレムリンを捕らえる。−ブラックホーリー−邪なる者には抵抗する術さえ与えぬ断罪の力が、小悪魔の身体を打ちのめした。
それでも何とか体勢を立て直した彼が最後に見た物は、魔剣を大上段に構えた巨躯の騎士。最後に聞いた音は「撃刀・・・・」
●そして夜は静寂に
石の中の蝶やデティクトアンデッドで他に敵がいないか確認した後。A班B班が合流したのは夜の闇が微かに白み出した頃だった。
後片付けや村人への報告は朝に回す事にしていた。それはここ数日まともに寝ていない村人達に対する、冒険者達の気遣いでもあった。
「少し仮眠でも取ろうか」誰とも無く上がった提案に皆が頷くなか・・・・
「これでお肌が荒れてたら、どうしよう」
真夜中の騒音とお年頃の切実な思いは、秋風と供に流れていったと言う。