【グレッグの調査書】 海岸の秘宝(笑)
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■ショートシナリオ
担当:熊野BAKIN
対応レベル:11〜lv
難易度:普通
成功報酬:5 G 55 C
参加人数:6人
サポート参加人数:1人
冒険期間:05月19日〜05月24日
リプレイ公開日:2008年05月23日
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●オープニング
●ある意味、得な性格
「・・・・とゆうわけでな、わしの熱意のこもった交渉でこの地図を譲り受けたんじゃよ」
「はぁ」・・・・なんだか以前も聞いたことがあるような展開だな〜、とは思ったが、取り合えず表情に出さず相槌を打つ事ができた。もっとも相手はそんな事、はなから気にしてはいないようだが。
「ついては、ここの調査をするための人材を探しておるんじゃよ」
「はぁ」
受付担当はもう一度−今度は若干呆れたようなニュアンスを込めて−相槌をうった。勿論、依頼人であるグレッグ氏は全く意に介さず・・・・と言うか自分の世界にどっぷり浸っていて気付かないようだったが。
●ある意味、才能
「人材を募るのは構いませんが、そもそもこの地図に信憑性はあるのですか?」
有益な情報を引き出そうと受付担当が問いを投げかける、と。−きらーん−グレッグ氏の眼が光る。「あ、失敗したかな・・・・」心の中で一人ごちるが、時既に遅し。
「話せば長くなるんじゃがの」お決まりの語りだしでたっぷり1時間(内、同一内容の繰り返しが7〜8割)、この地図を手に入れた経緯を語り続けた。要約すると、酒場で意気投合した旅人からエール3杯で譲り受けた。以上。
「えーと」
取り合えず言うべきなのだろう「その地図は怪しいです」と・・・・だが、しかし。
「偶然の出会い・・・・否! これは必然だったんじゃよ!」
言えるのか? この希望と情熱に燃える依頼人に「これ、偽者っぽいです」等と言うことがはたして許されるのだろうか?
「・・・・わかりました、人手を募ってみます」
これも仕事、と割り切って。受付嬢は真新しい羊皮紙を広げた。
「あんたにもロマンを解する心があるようじゃの! よろしく頼むわい」
いえ、そんな心はひとかけらも無いですから・・・・無い、と・・・・信じたい。
●現地は
「ここは海っぺりの崖での、この印の場所は波に削られた洞窟になっとるそうじゃ」
グレッグ氏は地図の持ち主だった旅人から聞いた話を告げる。その旅人はそこまで知っていて洞窟には行かなかったのか? と言う疑問も残るが、聞いても仕方が無いような気がするので止めておいた。聞いたところで「自分の目で確かめないと気がすまない」と言いそうだし。
「崖っちゅーても、迂回して降りれる道があるそうじゃから問題なかろ」
・・・・その旅人は(以下略)。
「そうそう、その洞穴なんじゃが満潮時は海面にしずんどるそうじゃ」
「はぁ?」
「地元のモンに干潮の時間帯を聞ければ問題あるまいて」
まぁ、運よく船乗りの経験がある冒険者が参加してくれればその辺りもクリアできるとは思うが・・・・
「他に、何かいい忘れてることは、ありませんか?」
言葉を区切って、よりプレッシャーをかけて依頼人を問いただす。
「うむ。それだけじゃな・・・・」
自信を持って言い切るグレッグ氏。だが彼女は聞き逃さなかった。依頼人が最後に一言「多分」と、呟いた。
意図して隠しいるのか? それとも・・・・いや。多分、本気で忘れているんだろう。受付嬢は大きくため息をついた。
●リプレイ本文
●序
事の起こりは得てして単純な場合が多い。今回の場合は依頼人こと、グレッグ氏が酒場で知り合った旅人から一枚の地図を譲り受けたことから始まる・・・・
「・・・・なんてね。辻吟遊にありがちな話だよな」
森里霧子(ea2889)は、言葉とは裏腹に楽しげな口調で呟いた。
「あたしはこういうの結構好きだよ。面白そうじゃん?」
独り言に返事が返って来る。振り向くとそこにいたのは長身巨躯−ジャイアントなので当たり前だが−の女性、ジェラルディン・ムーア(ea3451)。
「船は借りられた?」
「いいや。あのあたりは岩が入り組んでるからやめとけって」
霧子の問いに首を振って答える。
「悪いことは言わないから歩いて行け、だってさ」
彼女が納得して戻ってきたなら、きっとそういう事なのだろう。自分もまた漁師の経験がある、だからこそ海の危険はわかっているつもりだ。
「『板子一枚下は地獄・・・・』か」
「何か言ったかい?」流石にジャパン語の呟きは聞き取れずジェラルディンに。
「昔。郷でいい聞かされた言葉」
とだけ、答えた。
「お帰りなさい」
「ドウダッタ、ですカ?」
黄桜喜八(eb5347)が海から上がるなり、流暢なイギリス語と片言のイギリス語に迎えられた。
「大分、海面が下がってたんで、洞窟の入り口も拝めたぜ・・・・」
と。
「おお喜八君! 帰って来たか。ささ、さっきの続きを聞かせてくれんか」
下見の報告もすまないうちにグレッグが割り込んできた。何故、グレッグ氏が一介の冒険者に(今回の目的を忘れそうなほど)入れ込んでいるのか? それは喜八がイギリスでは珍しい河童の冒険者だったから。
「ちょ、ちょいと待ってくんねぇ。仕事の話がだな・・・・」
「いや! 今はこっちの方が大事じゃー!」 ちょっと待て、落ち着け自称・冒険家。当初の目的を忘れてどうする。
「ぐれっぐサン。私達、イマカラ大事ナ話アル、デス」
理瞳(eb2488)が喜八に助け舟・・・・と言うか実力行使? グレッグ氏の襟首を掴んで霧子達の方へと連行する。ちなみに瞳の口調はイギリス語に不慣れなためだ。
「いや、しかし瞳君! これはわしの知的好奇心のだな・・・・」
「私いぎりす語マダ上手クなイ。ムズカシイ言葉、ワカラナイデス」一刀両断。ばっさり。
退場するグレッグ氏を見送ると、ロッド・エルメロイ(eb9943)はようやく下見の結果について尋ねることができた。
「それで、何かが住み着いている痕跡はありましたか?」
「うーん」一拍、間をおいて。
「これはってのは特に。ただ・・・・」
「ただ?」
「入り口はそれなりの大きさだったし、何もいないと思うよりは」2人の視線が合う。そした測ったように同じタイミングで。
「何かがいると思ったほうが良い」
●本題
潮が引いたのを見計らって喜八と霧子、ジェラルディンの3人が先頭に立ち、洞穴目指して岩場を進んでいた。
「そこの岩、海草で滑りやすいから気をつけろ」
先導する3人からアドバイスを受けつつも足を踏み外しかけるグレッグ氏を、瞳とロッドがサポートする。と言う具合で実に手間がかかる。ようやく入り口にたどり着いた頃には、武道家の瞳はともかくロッドの方はうっすらと汗をかいていた。
とは言えここでめげるわけにも行かない。ロッドはスクロールを取り出す集中に入る・・・・程なく結果がでた。使用したのは、呼吸する存在を探知できるブレスセンサーの魔法。
「呼気の反応はありません」
海中に沈む洞窟だけにブレスセンサーで感知できる相手がいるのかどうか・・・・悩むところではあるが、やらずに後悔するよりは多少の手間をかけてもやる価値はある。ある程度予想していた結果を聞きながら、ある者はランタンを、ある者は松明を取り出し照明の準備をした。
洞窟の入り口付近は波の侵食で大きく岩肌が削られ、奥に控える洞窟の玄関のようにも感じられた。
「ふぅむ、波と言うのはすごいもんじゃな。こんな・・・・」
こつこつ、と足元の硬い岩を踏みしめ。
「岩の塊を削り取ってしまうとは」感じ入ったように呟いた。
ジャパン出身の人間や海に係る仕事をしている者にはピンと来ないだろうが、イギリスは島国でありながら海岸と言う地形が少ない国。こういう光景を目にする機会は滅多にない事だった。
出だしで感動している依頼人はさて置き、冒険者達はこれからの打ち合わせに入る。
「爺さんは瞳とロッドにお任せで良いんだな?」
「任せてください」
「ハイ。私グレッグさんノ側ニ居ル、デス」
「念のため隊長には水姫のマントとフェアリーダストを貸しておくよ」
霧子は用意しておいた道具を取り出すが、彼らなら道具に頼らずとも上手くグレッグ氏をサポートしてくれるだろう。
「それじゃあたしは後方警戒に回るよ」
●洞窟の中には
洞窟は思ったよりも奥が深く・・・・と言うよりも。ところどころに潮溜まりがあった為に、それを迂回したりあるいは膝丈まで濡らして渡ったために、時間を食ってしまったのだ。あれから2度ほどロッドが探知魔法を使ったが相変わらず反応は無い。
隊列の真ん中ではグレッグ隊長が、「天井からは海水が滴り、壁はランタンの灯りを反射して不気味に・・・・」云々。なにやらメモを殴り書きしている。ま、今回は彼の知的好奇心を満たすのが目的なので問題ないが。
「おっと」
先頭を歩く喜八の足が止まった。通路はちょっとした舞踏会が開けそうな広間に行き当たった。だが実際に舞踏会を開くには少々問題がある。ダンスホールのど真ん中に海水の池が広がっているのだ。
「ちょっと深そうだね・・・・」
「そうだな、様子を見てくる」
手持ちの照明器具では池の向こう側まで光が届かない。喜八はランタンをかざして海水の池を覗き込む霧子に声をかけると、壁伝いに池を迂回しようと足を踏み出す。
−ゆらり−
と、海面が揺れた。
「何か来る! 瞳殿っ・・・・」
「のわっ! なんじゃなんじゃぁ!?」 既に瞳は松明を投げ捨て、グレッグ氏の襟首を引っつかみ、そのまま「持って」後ろに下がるところだった。
「・・・・言うまでも無いか・・・・あ」
今、「ぐぇ」とかゆー泣き声のよーな音が聞こえた気がするが。
「なんだぁ、こいつは!?」 喜八の叫びに意識が引き戻された。
海面からの奇襲を辛うじて裂けた喜八は、水面から顔を覗かせた異形の生物を目の当たりにした。それはジャパンで言う蛟、サーペント。だがその口からは覗くのは牙ではなく、蠢く触手・・・・
「シーウォームです、気をつけてください!」
ロッドの叫びが漆黒のダンスホールに響き渡たる。
「海長虫が相手じゃ分が悪いねぇ」
水中戦になればまず勝ち目は無い。念のため水遁の術を発動させてはいるが、水に落ちることだけは避けたい。
「あれは光や熱を狙います! 喜八さん、霧子さん通路へ!」
シーウォームの生態を記憶から掘り起こし、ロッドは前列の2人に移動を促す。
「あいよ」「了解」
仲間の指示を受け喜八と霧子が通路に引き返すが・・・・
「あぅ!」
触手に足を撃たれ、霧子の動きが一瞬止まる。
「霧子ぉ!」
「霧子さん!」
シーウォームの頭部に開いた大きな口が、獲物を丸呑みにしようと近づく・・・・男達はとっさに槍を構え、炎の呪文を詠唱を試みるが・・・・間に合わない! そう思った瞬間。
−どぉおぉん!−
霧子を中心に空間が爆裂した。
触手を吹き飛ばされ水中に逃れるシーウォームを見送る男達・・・・と、その背後から。
「冒険談とか辻吟遊にはこういう場面も必要だよな〜」
涼しい声。
「時間切れだ。そろそろ戻らないと、あいつらと水泳する事になるね」
油の残量で時間を計った冷静な判断。
「静カニナッタデスネ。モウ大丈夫デス」
「なんじゃなんじゃ、何があったんじゃ? 誰か説明してくれんかの」
ここにいたら別の個体が現れるかもしれない。
「取り合えず」
「戻りましょう」
喜八とロッドは撤退を具申をした。
●結
シーウォーム自体は冒険者にとって対処できない相手ではない。しかし、刻々と迫る満ち潮の時間はそうはいかない。それがわかっているからこそグレッグ氏も素直に調査の打ち切りに同意した。
「残念だったね」
グレッグ氏はジェラルディンの慰めに、にやりと笑うと。
「なぁに、何でもかんでも都合よく進むとは限らんさ」
至極冷静な様子に。「まだ調査するつもりかい?」 思わず聞き返す、が。
老冒険家はうんにゃと首を振り。
「何でもかんでも、解明すりゃいいとゆうもんでも無いでな」
実も蓋も無い・・・・もとい。実に含蓄深い台詞をはく。
「グレッグさん、地図の下書きが終わりましたので見てくれませんか?」
「どれどれ」
言葉の真意を確かめるタイミングを失い、釈然としない表情を浮かべる面々。
「まぁ、これもロマンってヤツなんじゃないか?」
かなり無理やりではあるが、そう結論付けた。
「・・・・洞窟の奥に満ちる海水湖。そしてそこに住まう番人と自然の摂理。秘宝は我々調査隊と出会うことを拒んだ。それは我々の努力が足りぬという神の思し召しか、はたまた運命の悪戯だろうか? だが私こと、グレッグ・レイバーは確信する。勇気と情熱に満ち溢れた若き探求者達が我々の後に続き、必ずやこの洞窟に眠る秘密を解明してくれるだろうと。
−グレッグ・レイバー−」