美人姉妹と呪いの言葉

■ショートシナリオ&プロモート


担当:べるがー

対応レベル:フリーlv

難易度:普通

成功報酬:0 G 78 C

参加人数:8人

サポート参加人数:-人

冒険期間:12月14日〜12月19日

リプレイ公開日:2004年12月20日

●オープニング

「一言で言えば美人姉妹でした、と言わざるを得ません‥‥」
 入ったばかりの依頼の説明をするギルド員は、どこか遠くを見ていた。
 ギルド員のばっさばっさの髪、着乱れた着物は嫌な予感を抱かせる。依頼はないかと聞きに来るんじゃなかった、と思ったがもう遅い。
「ええ、いい依頼があるんですよ、モンスターを相手にすることもない、報酬は十分な、ね‥‥」
 そう言いつつ眼は死んでいる。
 冒険者の間に動揺が走った。
「ある姉妹の性格矯正依頼です‥‥ええ、美人姉妹のね」
 依頼に来たのは、美人姉妹の家に仕える年老いた使用人であった。

 話は十八年前に遡る。
 あるそこそこ金持ちな商家に双子の娘が生まれた。
 婚儀を済ませて十年。やっと生まれた初の子供に、父親と母親は大変喜び、近所のありとあらゆる住民を呼び集めた。
「うちにもようやく娘が出来た。今日の宴は全て私の奢りだ。好きなだけ騒いで飲みたまえ」
 この時ばかりは身分も何も関係ない。ただ双子の娘を祝うためだけの、幸福で楽しい宴。
 だが、ある一人の女だけ呼ばれることはなかった。
 この女は父親の昔の女で、捨てるように商家の娘と結婚したため、もし宴の最中に不吉な言葉でも言われたらとわざと呼ばなかったのだ。
 しかし、女はどこからか聞きつける。
 昔の男が子供が出来た宴に自分を呼ばなかった。
 捨てられた恨みが倍に膨らみ、宴に乱入した。
「ハッ、みんな見え透いた嘘の祝いの言葉ばかり。あたしが本当のお祝いをしてあげるよ」
 そして、生まれたばかりの赤ん坊に呪いの言葉を浴びせた。
「姉は、そうだね、ちょっとばかし常識のない女に育つよ。女のくせにガサツな女さ。妹はきっと暴力好きになるんだ。男と見れば殴るような暴力的な女にね!」
 周りの男達に取り押さえられた女は、あっという間に外に放り出された。
 しかし宴の席には、呪いの言葉だけは残る。

「‥‥呪いが成就したとは言いません」
 ギルド員の男は言った。眼は卓の向こうに倒れている男を見ている。
「ただ、少なくともその商家の夫婦はそれが原因だと思っているようで‥‥使用人に姉妹の性格矯正依頼を言付けて依頼に来させています」
 ギルド員はヒビ割れた柱を見た。
「ええ‥‥報酬は多いし姉妹は美人だし、モンスター退治はしないし、いい依頼だと思いますよ‥‥」
 手元の二つに割れた卓を見た。
「本当、いい依頼だと思います‥‥」


「姉さん、またやってしまいました‥‥」
 少し腫れてしまった手を見て、妹の千歳は溜め息をついた。
 姉は片眉をひょいと上げて、バシンと妹の背中を叩く。
「アンタまだそんなこと言ってんのん? しっかりしぃや!」
「姉さん‥‥」
「投げ飛ばしたこと気にしてんの? 平気やって、あのオッサン丈夫そうやし。あ、止めた人蹴り倒したことか? ありゃ自業自得やって。え? ちゃうんか? 何、それやったら柱にひび入れたこと? それとも机真っ二つに折ったこと?」
「‥‥全部です。私、気がついたらあのギルド員さんのこと振り回しててっ」
 ううっ、と千歳が泣いた。
「ああっ、もう泣くなや! いいやん、別に、家のもん壊したんちゃうんやし!」
「でも‥‥家に請求されたら‥‥」
「任しとき! ウチがちゃんと泣いて一芝居打って親だまくらかしたるから!」
「姉さん‥‥」
 お互い姉妹想いの二人は、帰り道だというのにひしと抱き合うのだった。
 そしてそれを見守る老人一人。
(「ああ、お嬢様、何と嘆かわしい性格に‥‥! 冒険者さまにすぐにもその性格矯正して頂かなければ!」)
 失礼な心配の仕方をしていた。

●今回の参加者

 ea0050 大宗院 透(24歳・♂・神聖騎士・人間・ジャパン)
 ea1057 氷雨 鳳(37歳・♀・浪人・人間・ジャパン)
 ea1569 大宗院 鳴(24歳・♀・志士・人間・ジャパン)
 ea2369 バスカ・テリオス(29歳・♂・ファイター・人間・フランク王国)
 ea3220 九十九 嵐童(33歳・♂・忍者・パラ・ジャパン)
 ea6463 ラティール・エラティス(28歳・♀・ファイター・ジャイアント・エジプト)
 ea8423 アレックス・ヤシチ(40歳・♂・レンジャー・人間・イギリス王国)
 ea8484 大宗院 亞莉子(24歳・♀・神聖騎士・人間・ジャパン)

●リプレイ本文

●未知との遭遇
 ぴゅうう、と風が鳴った。破壊された扉が音を立てて寒風に奪われていくのを氷雨鳳(ea1057)は黙って見送る。
「‥‥寒いな」
 バスカ・テリオス(ea2369)が思わず呟けば、
「寒いですね‥‥」
 大宗院透(ea0050)が感情なく呟いた。
 
「そんなわけでして、千歳さまは『少々』お手が早くていらっしゃいますのでよろしくお願い致します」
 畳に額を擦り付けるように使用人の老人が一礼した。説明は一切なかったが、衝撃の初顔合わせをした以上、何が改善点なのはよくわかった。
 ちなみに玄関の扉を破壊した千歳は八重の背後で小さく震えている。背後を取った九十九嵐童(ea3220)に向けて繰り出される拳はちょっとうっとりするぐらいの破壊力だったが、今の千歳からは想像もつかない。
「何やの、ちょっと玄関壊したくらいで。今回は治療費請求される事もないんやで!」
 八重は優しくフォローを入れたが、その内容に首を傾げる大宗院鳴(ea1569)。間違ったフォローに涙を流し始める使用人。
「と、とにかく私達と変われるきっかけを見つけましょう」
 ね? ね? とラティール・エラティス(ea6463)が全員の顔を伺った。が、そんな仲間の取り成しもどうでもいいのか、大宗院亞莉子(ea8484)がアレックス・ヤシチ(ea8423)を突き飛ばして透の隣に座り直し、
「向こうが美人姉妹なら、こっちは美人三姉妹ってカンジィ」
 などとのたまった。鳴も実に嬉しそうに、
「お姉さん達と一緒の依頼なんて嬉しいです」
 なんて事をほのぼのと口にする。

●美人姉妹と性格矯正
「女の呪いだ何だと言って自分達の教育が出来てなかった事を正当化しては御座らんか?」
 アレックスは突如として出現していた。
 商い用の荷を解いていた夫妻は、一体いつからいたのかわからない男をポカンと見つめる。
「大体一度結ばれた女性を捨てるなど言語道断。まず其処からして云々」
 あのぉ。従業員でもないアナタは一体誰? そして何故語りに入っているの?
 夫妻は自己紹介はいつ聞けるのだろうかとひたすらアレックスの説教を聞くのだった。

「こほん、八重さん」
 バスカは連れて行かれる千歳を見送っていた姉に近寄ると、おもむろに声をかけた。頑張れ、自分。
「貴女は魅力的で妹想いという素晴らしい女性です」
 嘘は言っていない。
「‥‥」
「あ、煽ててると思ってるでしょう。そんな事はごはあっ!」
 語る前に八重の肘鉄を食らっていた。
「あかん、やっぱ心配や! うちもついてこっ」
 床に沈んだバスカには一瞥もくれず、駆け出した。
「バ、バスカさん?」
 恐る恐るラティが揺り動かしたが、白目を剥いていたのでそっと一室に運び込み、姉の後を追うのであった。

「いやあーっ!!」
 千歳は無我夢中で拳を振り上げていた。ぶうんと風が唸り、透めがけて繰り出された拳が空を切った。
「女装もダメか‥‥」
 土遁の術によって地中へと逃げ込んだ透を見守り、鳳が唸る。透の女装姿は完璧だ。むしろそこらの女性より器量がいい。それでもダメとは如何なる理由か。
 同じく並んで見守っていた嵐童がぼそりと呟いた。
「面白そうだからと首を突っ込んだは良いが‥‥どうにも面倒な依頼だな、これは」

「あーっもぉ、いっそほんまに一発ぶちかませばええのに!」
 物騒な事を言いつつ見守っているのは八重である。左右にジャイアントのラティと鳩尾を押さえたバスカ、にこにこ笑っている鳴が立っている。
「八重さんは本当に妹さん想いなんですね、わたくしにも姉妹はいますから‥‥妹さんが羨ましいですわ」
 純粋に感動している鳴の発言にラティは苦笑し、バスカは『絶対誤解してるぞ』と思ったが、やっぱり何も言わなかった。
「あ、またちっこいのに避けられたっ。下手くそやなぁ、鳩尾とか喉仏とか男のアレとかいっくらでも決め所はあるのにっ」
 暴力を応援してどうする、いやそんな事より男のアレって何。
 純情ジャイアントガールは真っ赤になってあさっての方向を見、鳴は首を傾げ、バスカは黙って股間を押さえた。

「さて、一応女性の私なら・・‥近づくことはできるかな」
 職業を忍者としている二人を相手に、見事なファイティング・スピリッツを見せている千歳に鳳は近づいた。自分は男装しているが、中身は女。無問題。
「私は氷雨鳳、人間の浪人だ。宜しく、千歳」
 息切れしている千歳に改めて挨拶をすると、ほっとしたように微笑んだ。やはり本性は穏やかな性質なのではないだろうか。
 疲れたらしい透と嵐童が地面に寝転がる。すぐに亞莉子が飛んできて嵐童を蹴飛ばし、透の傍らを陣取った。
「千歳は男の人って恐いのぉ?」
 千歳が恐がるあまり暴力を揮ってしまう男に抱きつき、亞莉子が尋ねた。
「わかりません‥‥背後を取られた瞬間に手や足が勝手に」
「まぁ、ギルドから人員を出すくらいだ‥‥よっぽどの事なのだろうが、具体的にはどうしたいんだ?」
「‥‥暴力を揮いたくないんです。姉さんに迷惑かけちゃうから‥‥」
 そう、あの姉はいつも自分を守ろうとしてくれるから。

「日本女性はおしとやかで男の三歩後ろへ付き従うもの。拙者はその事を素晴らしい事だと思うで御座る」
 冒険者と姉妹が同居生活を始めて早三日目。
 千歳は日々透、嵐童を相手にファイトを繰り返し、そして姉の八重はアレックスに四六時中付き纏われていた。
「‥‥」
 そうか、今日は厠でもなく風呂場でもなく寝室にきたか。
 八重は何となくその執念の隠密行動に感動し、その度に敬意を示した。
「一緒に入るか?」
 そしてその度に顔を真っ赤にしたラティと鳴に引きずられていく。その後どうなったかは知らないが、日に日に生傷が増えていっているのは確かなようだ。
「その意味で御主は少々日本人らしからぬ性格をしているで御座る。そんな意味では嫁の貰い手も無いで御座るし、其れではご両親も悲しむで御座ぶへはあっ!」
「‥‥」
 深夜にバスカが何かを引きずる姿を見た者がいて恐怖のドツボに陥れたようだが、そんな事は依頼遂行に関係ない話だ。

「今日は今まで迷惑をかけた人達に謝罪をして頂こうかと思います」
 にこ、とラティは微笑んだ。鳴や生傷の絶えないアレックス、最近ストレスが溜まり気味のバスカもついている。
 嫌がるか、惚けるか、果たして。
 八重の反応を待った面々は、その直後に混乱のドツボに叩き落された。
 ラティの胸元をじーっと見つめ、こうのたまった。
「ラティって胸でかいな!!」
 思わず確認してしまうバスカとアレックス。真っ赤になって慌てる純情ラティ。
「やっ、八重さん!」
「そ、そんな事は大和撫子が言うことではござらん! ジャイアントの女性はそれ相応の胸であるのはやむをえぬことで‥‥って、あっ」
 焦るアレックス。力任せに怒る純情ジャイアントガール。そして一緒に怒られるバスカ。
「あっはっは、墓穴ー」
 八重は笑っていた。鳴は依頼遂行に暗雲を感じ始めている。

「これで少しは暴走しないで済むだろ。‥‥何か少し泣けてきたけど」
 嵐童の変わり果てた姿に絶句したのは、千歳だけであった。
「超似合うって感じィ」
 亞莉子は喜び、透は無表情に惚けた。
「着物は、キモイ‥‥」
「ま、まぁそう言うな。何というかな、ちゃんと男性とは向き合って関係を持たないと‥‥ぶふっ、いけ、いけ、いけないと思うぞ? そう、別にきゅきゅ急に慣れろとはうぶぷっ」
 ちゃんと喋れば至極まっとうな説得なのだろうが、いかんせん鳳の肩は震え、口元は歪んで目尻に涙が溜まっている。
 おかしい。透で女装は見慣れた筈だったのに、それが何ゆえ嵐童になるとこうも可笑しいのか。
 嵐童は黙殺した。依頼第一、お客さま第一、恥は捨ててしまえ。
「人目を気にしてあがった時、周りの人間を野菜だと思えってのがあったよな。‥‥あんたも、相手に殴りかかりそうになったら、相手は男じゃなくて野菜だ、って思ってみたらどうだ?」
「は‥‥はい」
「それじゃあ今度はぁ、千歳の番って感じィ?」
 理美容スキル保持者。亞莉子はにっこりと微笑んだ。

「もっと人を思いやって下さい」
 真摯というよりむしろ必死な声でバスカは八重に『お願い』した。
 八重が何か一言言う度にアレックスと自分は生傷を負っている気がする。そして今日はもう四日目。
「思いやる心。貴女は既に妹さんに持っている。ならば、何故その思いの輪をもっと広げないのですか?」
「んー‥‥気分?」
「少々お待ちを」
 八重のぞんざいな台詞に、だだだっとバスカは駆け出し、彼方でどかーんと派手な衝撃波がした。
「お待たせ致しました」
 つくづくソードボンバーを会得していて良かったなぁと思うバスカであった。

「むっ、無理です、亞莉子さ〜ん」
 亞莉子によって見事色っぽく変身させられた千歳は、人通りの多い橋の上まで移動させられていた。必死に手すりにすがりつき、背後を取られないようにする千歳。ううむ、傷は深い。
「大丈夫なのか?」
 ナンパをするなどと言い出した亞莉子を見て、荒療治じゃないのかと透と嵐童に尋ねる鳳。
「進展がないですから‥‥。私の人遁の術も‥‥女装も、男装もダメ‥‥となると、依頼が‥‥」
「時間がないからなぁ‥‥大丈夫だろ、いざとなったらスタンアタックで止めるよ」
 重症の千歳に男性陣はお手上げらしい。
「ほらぁ、千歳、挨拶ぅ」
 既に男二人組に声を掛けられていたようで、顔面蒼白の千歳と余裕で応じている亞莉子が男と談笑を始めていた。
 見てるとどもってはいるが、亞莉子のフォローがあるからか会話には成功しているらしい。徐々に強張りが解けてゆく。
「御茶屋? いいじゃん〜、行こ行こ、千歳ぇ」
 千歳を先に押し出し、一人の男の袖を引っ張った。
「‥‥あ? 何をするつもりだ、あいつ」
 嵐童が不審がる。
「あっ! あーっ!!」
 後ろから、抱擁。千歳相手に決してやってはならないだろうの事を回避能力のなさそうな男にやらせてしまった。
 慌てて千歳に駆け寄ろうとする面々。しかし、千歳はすぐには行動に移さなかった。
「千歳? おい、大丈夫か?」
「千歳さん‥‥?」
 鳳と透が声をかけると千歳は震えていた。そっと男の腕を取り、外す。そしてそろそろと歩き始めた。
 一体、どこへ?
 ぞろぞろと冒険者達がついて行った先は民家がまばらになってきた辺り。そこでぴたりと足を止めた。足元には何に使われたのか、分厚い板切れが幾つも落ちている。
「これ、持って下さい‥‥」
 嵐童と透にそっと板切れを持たせると、深呼吸。
「恐かったですぅーーーっっっ!!!」
 大絶叫と共に、板切れは粉砕されていた。

「妹さんには話せない事があるのなら、わたくしに聞かせていただけませんか」
 それはアレックスとバスカが一時休憩(別名ストレス発散時間)に行っている間に鳴が言い出した事であった。
「一人で悩みを抱え込むのはよくありませんわ」
 何かを見抜いた目で鳴が八重の目をまっすぐに見つめていた。ラティは首を傾げている。
「アレックスさんやバスカさんはともかく、わたくしやラティさんには随分と対応が違われたように思うのです。そう、普段の言動はあえてそうしている、という風に」
「わざと?」
 鳴の台詞に驚きを隠しきれないラティ。そんな事をして一体何の得があるというのか。
「‥‥さすが冒険者さんやなぁ、やっぱり騙されへんわ」
 苦笑して八重が言った。バレたか、と。
「あの子、ほんまええ子やろ? けど、暴力癖は昔からあってん。だからこそ、周りがそういうもんやって見るから‥‥何やってもああ千歳やからか、って。暴力理由を突き止めて、それを治す方法なんか考える事なかったんよなぁ」
 ぶらぶら歩きつつ、語り出した。自分がとんでもない言動を取り出した理由を。
「でも普段はええ子やのに、そういうのって誤解やん? そやったらもっととんでもない姉がおったら? 姉よりはマシ───そう思われへん?」
 ラティと鳴を見た。二人は顔を合わせ、納得する。
 確かに、姉は対策が取り辛い───そういう話は幾度も出ていた。
「悪いけど、千歳の暴力癖が治るまではこの演技はするつもりやねん。ごめんな」
 向かい合って謝る八重の肩越しに、息を切らして走ってくる一つの影が見えた。背後には彼女を担当した冒険者達が晴れ晴れとした笑顔で付いてきている。
 それを見て、確信した。依頼は成功したのだ。
「八重さん、後ろを振り返ってご覧下さいませ」
「もう演技は必要ないですよ」
 鳴とラティの笑顔に、八重が振り返った。
「姉さんっ!」
 千歳が駆け寄り、八重に飛びつく。
「私、暴力衝動を抑えることが出来たみたいで───ううん、これからもきっと出来る!」
 拳は腫れていたが、妹の顔は喜びに光っている。後ろに控えた冒険者達も笑って頷いた。
「うそ、ほんまに、ほんま───!?」

●恋せよ乙女、男も女もオールハッピー
「変な“姉妹”の更正はこれでお“しまい”です‥‥」
「透、相変わらずうまいねぇ」
 しーんと静まり返った中で亞莉子の拍手だけが響いた。言った本人の透はどういうつもりなのか表情は変わっていない。
 冒険者の威厳を取り戻すためにも、鳳と嵐童が千歳に最後の言葉をかけた。
「姉という存在は頼もしいかもしれん。が、甘えてばかりではな? 暴力解決も何にもならんし」
「暴走した時、山鬼も裸足で逃げ出しそうな勢いだったんだ。その笑顔のままでいろよ」
「はい。これからは暴力衝動をなくす努力をしたいと思います」
 笑顔に曇りはなかった。その表情に自分達の努力の甲斐を感じ、千歳の手を取る。
「二つあるのでな、一つ千歳にやるよ。大切にしてくれ」
 持っていた紅小鉢を渡した。自分も普段男装してる分、あまり使ってはいないのだが───そう、自分も千歳も女、なのだ。
 恐れる気持ちに負けず、女としての人生をまっとうして欲しい。
「ありがとうございます!」
 千歳は本当に嬉しそうにその紅小鉢を姉に見せる。その姿に、鳴もラティも微笑んだ。
「そういえば、姉妹なのに全員同い年なんて面白いですね」
「美人三姉妹の私達とぉ、美人姉妹の二人ィ〜」
 楽しそうな亞莉子達の笑い声をよそに、アレックスとバスカは二人で寺に行く相談していたのだが‥‥それはまた別の話だ。