ハングリー狂騒曲 〜ＶＳ 大自然〜
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■ショートシナリオ担当：夢想代理人 対応レベル：1〜4ｌｖ 難易度：やや難 成功報酬：1 G 40 C 参加人数：8人 サポート参加人数：-人 冒険期間：01月30日〜02月08日 リプレイ公開日：2005年02月04日 |
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●オープニング
古ぼけた教会の中に、村の男集が集まっている。彼らは今、村の存亡をかけた会議に参加している真っ最中であった。
「村長、このままじゃあ、おら達‥‥」
「うむ‥‥‥」
村長と、呼ばれた初老の男性は顔を曇らせる。顔に刻まれた深いシワは苦悩の表れか。
「もう秋に収穫した蓄えもねえ！ このままじゃあ、飢え死にだぁ！！」
「直訴すっべえ！ 領主様に助けてもらわにゃあ！」
口々に村人は声をあげ、立ち上がる。大分困窮しているのであろう。皆の頬がこけていた。
「直訴っつっても‥‥追い返されるのがオチでねえか？」
その言葉を聞き、村の一同は消沈する‥‥が。
「んなら‥‥無理にでも倉庫を開けさせるしか‥‥」
『無理にでも』。その言葉を聞いた途端、話の流れは急転する。
「‥‥やるしかねえ！！ このままじゃぁ、飢え死にだ！」
「そうだ！ このまま飢えて死ぬくらいなら！！」
空腹の限界にさらされた村人らはもう我慢がならなかった。誰も彼も目を血走らせ、戦いの雄叫びをあげる。
「決起じゃぁ！！ 全員、武器を取れえぇ！！」
「オオオォォォォ―――――――ッッ！！！！」
●冒険者ギルドにて
「ああもう、私はどうしたらよいのかわかりません‥‥」
しくしくと泣きじゃくるは中年の男性。身なりからしてどこぞやの領主なのだろうが、その哀れな姿は微塵の威厳も感じさせなかった。
「自分の領内で村人の決起ねぇ‥‥そりゃ一大事ですな」
ギルド員の女性はどこか呑気に耳の掃除をしながら（！）対応している。
「なんとか村の代表者と話をつけ、一端は抑え込んだのですが‥‥。彼らの目つきからして、絶対次回があるに違いありません！！」
「はぁ‥‥まぁ、とにかく。それで、ウチんトコの冒険者に何をさせたいんで？」
「うむ、料理が得意で狩りの上手な連中を８名程貸して頂きたい‥‥」
ギルド員の女性はずっこけた。
「そりゃまた変わったご要望で‥‥」
「私が所有する森は、普段村人の立ち入りを禁じている為、まだ野生の動物がいるはずです‥‥。
それを狩るだけの技能をもった者と、『炊き出し』の補助ができる、料理の得意な者が必要なのですよ」
「はぁ‥‥なるほど、しかし炊き出しは一時的な解決にしかならんのでは？」
「いえいえ。一度、こういった仕組み、秩序がある事を村人に認識させればそれで良いのです。
今回でしっかりと狩りと炊き出しの仕組みを作れば、後は村の者と私で、春までは何とかしのげるでしょう」
「ふむふむ。それでは、食料調達、及び炊き出しの補助という事でよろしいですな？」
「うむ。ああ、それと‥‥村人は今現在、空腹で非常に殺気だっている。混乱も十分に考えられるから注意してくれ」
かくて、冒険者ギルドに新たな依頼が舞い込んだ。
●今回の参加者
ea3191 夜闇 握真（40歳・♂・忍者・人間・ジャパン）ea7235 ルイーゼ・ハイデヴァルト（26歳・♀・神聖騎士・エルフ・フランク王国）
ea7815 相麻 了（27歳・♂・忍者・人間・ジャパン）
ea7968 アニマ・フロイス（22歳・♀・クレリック・シフール・イスパニア王国）
ea8210 ゾナハ・ゾナカーセ（59歳・♂・レンジャー・エルフ・ビザンチン帝国）
ea8951 トゥルム・ラストロース（22歳・♀・レンジャー・ハーフエルフ・ノルマン王国）
eb0758 際 銀輪（26歳・♂・武道家・エルフ・華仙教大国）
eb0877 木野 芒（40歳・♀・志士・人間・ジャパン）
●リプレイ本文
「おお、これはこれは‥‥！ 遠路はるばる、よく来てくれた！」冒険者到着の報せを受け、今回の依頼人である領主が小走りで屋敷の外まで迎えに来る。
「さあ、わたくし達が来たからにはもう大丈夫ですわよ？ しっかりと依頼をこなしますから、大船に乗った気持ちでどうぞ」
『うむ、まったくだ。神無月流厨房術、家事達人の腕前をとくと披露してしんぜようぞ！』
木野 芒（eb0877）の言葉に夜闇 握真（ea3191）が続く。夜闇はジャパン語以外は話せない為、依頼人は何を言っているのか理解できなかったようだが‥。仲間に一人、彼の通訳を買って出た者がいたが、一体どこにいったのだろう？
「村の方々と、改めて交渉をする必要もあるでしょう。皆様命がかかっているから、必死なのもわからないではありませんが‥‥」
非常に落ち着いた様子でルイーゼ・ハイデヴァルト（ea7235）は誰ともなしに呟く。肝が据わった（ように見える）彼女に依頼人も感服したのか、うんうんと頷いて同意している。
「さて、それでは挨拶もこれくらいにして仕事に取り掛かろうか？ 調達できる食料は多ければ多いほどいいからな」
「そうですね‥。それでは、私は村の人々に協力をとりつけてこようかと思います」
ぱん、と手を叩いて話題を転換するゾナハ・ゾナカーセ（ea8210）の言葉を受け、トゥルム・ラストロース（ea8951）も自分のできる事をすべく気持ちを入れなおす。旅の荷物を領主宅に預け、皆それぞれの行動を開始した。
「しかし、後の２人はいずこへ‥‥？」
森に入る直前、際 銀輪（eb0758）は後ろを振り返って呟いた。
「ぐぉぉぉぉ‥‥」
「もう、しっかりしてくださぁい！」
何故か地面にうずくまっている相麻 了（ea7815）の上にまたがり、アニマ・フロイス（ea7968）はぷりぷりと頬を膨らませて彼をゆすっている。『ライフワーク』と称される彼の行動に一部の女性陣がリミットブレイクし、必殺の一撃を見舞ったに違いない。
「黒き獅子は‥砕けないッ‥‥！」
そりゃ何より。
●ＶＳ 村人
「ウシャシャシャシャ―――――ッッッ！！！！！」
「キュワアァァァ〜ッ！！？」
村にこだまする奇声と悲鳴。トゥルムは全力疾走で飢えた野獣（普段は善良なる村人）達から逃げていた。食料の調達や調理を手伝ってもらうべく保存食を持って出向いたはいいが、『飢え』に理性と常識を破壊された一部の村人と遭遇してしまい、こんな展開になってしまったのだ！
複数の野獣相手にオフシフトもへったくれもなかった。囲まれて背後から攻撃されてしまえば、特殊な技能を持った以外の者は素人同然の反応しかできない。とにかく頑張れトゥルム、捕まると食われるぞ！
―――それから暫くの後
「ぜーっ、はーっ、ぜーっ‥‥」
「‥ど、どうしたのですか？」
村長らと炊き出しうんぬんの交渉を終えたルイーゼが、汗だくになって息を切らすトゥルムを発見して領主宅へと一緒に戻った。なお、交渉は成功し、一部の急進派を覗いては村人は静観を維持する事で合意したようである。これは食糧倉庫を守っている冒険者達にも有利に働く事であろう。
●ＶＳ 大自然
「それッ！」
ゾナハは勢い良くスリングの石を獲物に投げつけた。野鹿の額に石は直撃し、よろついた所にさらにとどめの一撃を放つ。
「なんとか、仕留めたなぁ」
野鹿をロープで縛り上げ、相麻がふぅ、と息をつく。野生の動物は非常に警戒心が強い。そもそもスリングの射程に入る前に逃げられてしまうケースが圧倒的に多く、狩りの方は非常に難航していた。
「何ゆえ、猟師達が弓矢や罠を好んで使うのか、わかった気がしますわ‥」
歩き疲れからか、木野は足をさすりながら天を仰ぐ。ライトニングトラップの射程は僅か３ｍ。近くに人間がいては動物が近づくはずもなかった。
「うんうん、これは食べられますねぇ」
宙をかろやかに舞い、アニマが木の実の選別をしている。植物に関する知識が卓越しているというわけではないが、まあ食用か否かを識別するにはそれ程高度な知識は必要ないだろう。
「なるほど、確かにゾナハさんの言うとおり、木の実は意外と落ちているものですね」
袋を肩に背負った際が、木の実を手にしてはひょいと袋へと放り込んでいく。普段村人が立ち入ることのできない森だけの事はあってか、そういったものは豊富に残っているようだった。
「しかし、木の実だけというのは‥。野鹿も仕留めましたが、少々ものたりないですね」
やや不満そうなトゥルムに、木野はにやりと笑って答える。
「どうやら今度は大きな獲物がいそうですわよ？ 大きさからして、人よりも一回り大きい‥動かないところをみると、『熊』かもしれませんわ」
「‥‥ほう、大きな獲物だな。よし、案内を頼むぞ？」
ゾナハの言葉に木野は頷き、歩を進める。
一同が森の奥に消えてから数刻、天空に『熊、獲ったどー！』という謎の咆哮が響き渡った。
●エピローグ マンプクー狂騒曲
領主の敷地から少し離れた広場にて。食欲をそそる匂いが辺りを満たす。
その匂いにつられてか、村から人々がぽつぽつと出てきては広場に足をはこんでくる。が、それ以上歩を進めようとはしなかった。何故なら‥。
「私、少し料理には自信あるんだ、手伝わせて貰えますかぁ？」
『フフ‥さあ、ここでワインをぶちこみだな‥』
『怪しすぎる』。黒い布で隠された空間から匂いが漂ってくる事は間違いないのだが、わざわざ布で隠しているという不可解さが村人たちを警戒させた。近づきがたいオーラをこれでもかと発し、領主もハラハラしながら見守っている。
「ハイヤー！！ 華国三千年の歴史が誇る『銀輪鍋』、まだまだこんなものじゃないですよー！！！」
何故か奇声も中から飛び出してくる、何をやっているんだー！？ とガクガクブルブル震える村人も出てくるが、気にしてはいけないのだ。
「味を調整しましたぁ、どうですか？」
「‥‥うむ、これぞ東洋の秘伝『ムソウ鍋』だ！」
「何言てますかー！ これ『銀輪鍋』、心も体も温まるですよ！！」
『ハーッハッハ！ さあ踊るぞ回るぞ歌いまくるぞ！ 続けぇー、ものども！！』
「だ、大丈夫なんでしょうか‥‥」
「‥‥うーむ」
食器を並べながら、不安げに天幕の方を見やるトゥルムにゾナハはただただうなるしかなかった。
「皆様、落ち着いてお待ちください‥！ 今いる皆様の分はしっかりあります。急がずに、こぼしてしまっては元も子もありません！」
慌しく碗にできた料理をそそぐルイーゼが村人たちに落ち着くよう指示を飛ばす。木野、ゾナハをはじめとるする他のメンツも村人たちに料理を渡し、食いはぐれる者がでないように注意深く辺りを見回している。
「‥‥」
しかし最初のデモンストレーションが強烈すぎたのだろうか。村人たちは形容しがたい色と化したその料理をじっと眺めるだけだ。
「何を恐れることがあるのか！？ さあ、食ってみなければ味はわからんぞ！？」
相麻の翻訳を受けた、夜闇の言葉が広場に響く。数秒の沈黙の後、一部のチャレンジャー達がその料理を口に運ぶ！
「‥‥。こっ、これはぁ！！？」
料理を一口いれた瞬間、村人が驚愕の声をあげる。
「肉にしみこんだえもいわれぬ葡萄の香り、そしてそれを引き立てる黄金色の穀物！！」
「何だこの料理は！？ はじめて食べた！ しかし抵抗なく喉を通る！ そう、これは‥！！」
「「「「うまいぞ―――――ッッッッ！！！！！」」」」
村人たちは口や目から光を発し、謎の衝撃波をあちらこちらで飛ばしている。いや、これは記録者の目の錯覚なのかもしれないが、とにかくそんな異常な雰囲気が広場を満たしていた。
「やれやれ‥。これで何とか村人の不満も落ちつくであろう。いやご苦労だった、諸君」
村人たちが落ち着いたのを見計らってか、領主が冒険者達に告げる。
「‥‥いえ、お役に立てて何よりです。しかし、私達がここを出払った後はどうなさるおつもりなのですか？」
「うむ、あの森を開墾してゆき、畑を広げるつもりだ。この冬の間にどこまでできるかはわからんが、こちらとしてもタダ飯をいつまでも彼らに振舞い続けては身がもたないのでな」
ルイーゼの問いに領主は苦笑しながら応える。
かくて、依頼は取りあえずの成功を収めた。今回振舞われた鍋の味は村人らにとって大層印象深いものだったらしく、このままゆけば村の郷土料理なんぞになってしまうかもしれない。
名前については様々な説が村人の中で飛び交っているが、現在『黒布鍋』という名前で決着がつきそうだとかそうでないとか。
