戦バカ一代
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■ショートシナリオ
担当:夢想代理人
対応レベル:1〜4lv
難易度:やや難
成功報酬:1 G 44 C
参加人数:6人
サポート参加人数:-人
冒険期間:02月01日〜02月08日
リプレイ公開日:2005年02月07日
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●オープニング
「うぅ、寒い寒い‥‥‥」
「そうだなぁ、こういう時は早く酒場に行って一杯やるにかぎるよ‥‥急ごうぜ」
冷たい月光が降り注ぐ中、2人組の商人は足早に歩いている。
「‥‥ん、何だあれは?」
2人が街外れの酒場に続く橋に差し掛かった、その時だった。
「いざや、いザや、いざ給エ‥‥」
「あ‥‥?」
橋の向こうから、奈落の底に響くような歌声が聞こえてくる‥‥。
「強き真ノ戦人、通りたければイざ給エ‥‥」
ガチャガチャと鎧の擦れる音。ランタンの灯りを遠くへ向ける、するとどうだろう。鎧に身を包んだ身の丈180cmはあろうかという、2人の大男が立ちふさがっているではないか!
しかも兜の奥は人間のそれではなかった。青白い炎が中で揺らめき、それに驚いた商人は腰を抜かしてしまった。
「我が名はアリスティド!」
「我が名はエドワール!」
2人の騎士はそれぞれの武器を構える。
「我が主君イ×××(発音が不明瞭な為、不明)の勅命により! この橋を守り申す!!」
「通りたくれば、力尽くでかかって参れ!!」
「ひっ‥‥! ひえええええぇぇぇっっっ!!?」
恐怖で震え上がった商人たちはランタンを投げ出して退散してしまった。石造りの頑丈な橋の上、2人の亡霊騎士は少し寂しそうにそれを見送った。
「『真の戦人』デは、ござらヌか‥‥」
●冒険者ギルドにて
「よっ、久しぶりだな。元気してたか?」
毎度お馴染み、筋肉質な女性ギルド員が君に声をかける。
「ここから3日ばかし歩いた街のはずれで、どーもレイスがでたそうだ。街の方から退治してくれと依頼が出たよ」
レイス‥‥厄介な相手だ。通常の武器ではまるで効果がない。この言葉を聞いた途端、魔法やオーラの使えぬ者達はそそくさと退散してゆく。
「あ、そうそう。なんかそのレイス、生前の鎧とかに憑依しているらしくてよ‥‥。ちょっとヤバイ相手だぜ」
君の頭の中で、一瞬『退散』の2文字が横切った。
●リプレイ本文
冷たい月光が降り注ぐ石造りの橋の上。今宵も騎士を見ようと街の物好きたちが集まり、さながら祭のような雰囲気である。
「いざや、いザや、いざ給エ‥‥」
見物人の視線などどこ吹く風、かの亡霊騎士は力強い剣舞を披露し、己の闘争本能に火をたきつけている。
「強き真ノ戦人、通りたければイざ給エ‥‥」
踊りが終盤に近づき始めた、その時。とうとう彼らは現れた。
「やれやれ、亡霊なんて見ていて楽しいものでもないでしょうに。随分な数の見物人ね‥‥」
銀髪を夜風になびかせ、エルザ・ヴァリアント(ea8189)が感想を述べる。
「おノれ、何奴!?」
亡霊騎士、エドワールが冒険者らに向かって槍を構え、いきり立つ。
「此度は依頼にて貴殿らと戦いに参った‥‥我々は六人で貴殿らをお相手する‥‥」
「‥‥悔しいが、あたいらはあんたらより力不足だ。だから、1対2で勝負する事を許してもらえないだろうか?」
ゆらりと刀を抜刀する近藤 継之介(ea8411)にフィラ・ボロゴース(ea9535)の言葉が続く。さらに次いでドルス・バルデル(eb0713)の声も辺りに響いた。
「我々は、この橋を人々が自由に往来できるようにすべく、おぬし達に戦いを申し入れる。おぬし達は主の勅命を貫徹する者として、我々は橋を渡る者達の代行人として、いざ尋常に勝負せよ!!」
亡霊騎士の返答は早かった。
「よかろウ! 我等ハ我等の意地ヲ通す! いざ、かカって参レ!!」
この問答を受け、わっ、と見物人たちから拍手と歓声があがる。まるで劇のような展開。人々は手に汗を握り、これからの戦いに熱狂した。
「皆、僕頑張るから宜しくね〜ッ!」
兎のごとく飛び跳ねるルティア・アルテミス(eb0520)、一部の男性ギャラリーが鼻の下を伸ばして手を振り返す。黄 麗香(ea8046)は少々あきれつつも、おもむろに見物人の一人に賭けの話を持ち出す、が‥。
「コラァッ!! 死者を使って賭け事をするとは何事かぁっ!!!」
街の神父とおぼしき爺さんに発見され、こっぴどくお叱りを受けた。見物人をたった一人でいさめる老神父の横で、かくて彼女はションボリとしつつ準備運動を始めるのだった。
●VS エドワール
冒険者たちの準備が終わったのを見計らってか、一人の亡霊騎士が橋の中央へと進み出る。両手にそれぞれスピアを持つという風変わりな装備。亡霊騎士エドワールだ。
「さあ! 我と戦う者は誰ゾ!!?」
「私だぁっ!!」
鋭い調子の声と共に、橋の上に紅い影が躍り出る。橋の手すりに足をかけて飛び跳ね、一回転して騎士の前に着地する。
「黄派十二形意拳『子』式、黄・麗香! 戦乙女に代り黄泉路の水先案内を仕るッ!!」
見物人の歓声があがる中、さらに冒険者側の方から一人の戦士が中央へと進軍してきた。
「ドルス・バルデル! ゆくぞっ!!」
振り回したウォーアックスは空を切り裂き、ヒュンと音を立てる。2人の名乗りを受け、かの騎士もそれに応えた。
「我が名はエドワール! 我が主君イ×××(発音が不明瞭な為、不明)の勅命により! この橋を守り申す!! いざ!!」
かくて勝負ははじまった。
「さぁ、過去の妄執に囚われし亡霊達に敢然と立ち向かうは我らが冒険者達! 彼らは見事レイスを打ち倒し、その呪縛を解き放つことができるのか〜!? 実況は私、灼熱の魔術師エルザ・ヴァリアントでお送りします!」
何故か見物人の一席に陣取り、エルザが解説をはじめている。一体どうした事だ。見物人は驚いたが、すぐにその注目は橋の上へと戻っていった。
「はあああぁぁぁぁッッ!!!!」
黄の炎を纏った掌打の嵐がエドワールに襲い掛かる! そして、この機を利用しドルスも突撃を仕掛けるが、そうそう騎士もやられ続けはしない。
「なンのぉッ!!」
スピアの一つを放ち、ドルスを牽制する。彼が動きを止めた隙に、その巨躯からは想像も出ないような素早さで後ろに飛びのく! 距離が置かれた、そしてそれの意味するところは‥!
(「まさか‥っ!?」)
次の瞬間、数十kgはあろうかという鎧が異常な速度で黄に突進してきた。スピアの先を咄嗟に拳でいなそうとするが、勢いに押し負けてそのまま鉄塊の体当たりが炸裂する!!
「っ‥!!!?」
地面と空が反転した。石の橋に数回激突した後、橋の向こう側まで転がってやっと止まった。周囲から悲鳴とどよめきの声があがる。
「麗香さん!!?」
エルザも実況を放り投げ、思わず声をあげる。彼女は死んだのか? 否。
「私の‥‥私の牙は、まだ折れちゃいない!」
覗けば後ろの景色が見えそうな横腹の傷を手で塞ぎつつ、口に溜まった血を吐き捨てて黄は立ち上がった。まだ戦える。自分にそう言い聞かせて再び拳を構える。
「ムゥ‥!!」
騎士が彼女の勇姿に心打たれる。だが戦いはまだ終わっていないのだ。ルティアの青白い稲光がエドワールを貫く。
「‥!! 勝機ッ!!!」
チャージングによる硬直と、ライトニングサンダーボルトの一撃。この二つの要因に助けられ、騎士の死角にもぐりこんだドルスがウォーアックスを天空へ掲げる!
「ウオオオオオオオオオオッッッッ!!!」
カールス流絶技、スマッシュEXがエドワールの脳天に直撃した! 鉄の兜をバターのように切り裂き、そのまま中の幽体にまで到達する。
「グアアアッッッッ!!!?」
騎士が咄嗟に反撃すべくドルスの方を振り向く、それが致命的ミス。
「‥お返し、だぁ―――――ッ!!!」
黄の全体重を乗せた鉄拳が亡霊騎士を捉える。会心の一撃は鎧に拳の跡をつけ、エドワールを陥落せしめた。
「黄‥麗香、ドル‥‥ス・バルデ‥ル! 見事ナり‥っ!!」
青白い炎、レイスの本体が消滅する。
「決まったァァァァ―――――ッ!!!」
見物人たちから頭が割れんばかりの拍手が送られる。エルザは隣の見物人の首を絞めているが、大丈夫なのか。
●VS アリスティド
初戦の興奮さめやらぬ中、最後の亡霊騎士が橋の中央へと進み出る。右手に剣、左手に盾。決闘用の武装で挑むは亡霊騎士アリスティド。
「さあ! 我と戦う者は誰ゾ!!?」
その言葉を受け、二人の冒険者が橋の中央へと進み出る。
「あたいの名はフィラ! フィラ・ボロゴース! 月に忠誠を誓うものだ。真の戦人とか興味ないが、強者との戦い、楽しませてもらおう!」
「近藤継之介‥。参るッ!!」
「僕は蒼雷のルティア! 僕の事も忘れないでよねッ!?」
先の戦いで名乗り忘れたルティアがあわてて続く。
「我が名はアリスティド! 我が主の勅命により! そして我が友エドワールの名誉の為! この橋を守り申す!! いざ!!」
かくて勝負ははじまった。
「はぁッ!」
近藤の日本刀が突き出し、先手を取った。アリスティドの剣とぶつかり火花を散らす。近藤が距離を置いた瞬間、ルティアのライトニングサンダーボルトが亡霊騎士を捉えるが、今度はしっかりと抵抗をされたようだ。
「‥‥」
狙いの行動をすべく、刀を上段掲げてじり、と近藤が近づく。アリスティドも、彼を迎え撃つべく改めて武器を構えなおした。
「オオオオッッ!!!」
「ヌゥぅぅぅッ!!」
アリスティドが盾で武器を受けた、その瞬間だった。亀裂の入った音がしかたと思うと、盾が木っ端微塵に砕け散る!!
「何ッッ!!?」
「北辰流‥。初伝目録‥切落‥!!」
「いったあぁ―――ッ!! 我等が近藤、盾破壊に成功しました! これでもう盾受けはできないぞ、どうするアリスティド!!?」
驚嘆の声が漏れる見物人サイドにて、エルザが魂の実況を行う。首を絞められていた見物人の目が少し虚ろになってきてる、大変だ!
「なラば‥!!!」
「!?」
アリスティドは右足を近藤の左腕めがけて蹴り上げる。手に電撃が伝わるような衝撃の後、ミドルシールドは宙を舞って観客の方へと投げ込まれた。
「こレで勝負は互角ナり!!」
「近藤、『アレ』取ってこい!!」
フィラが素早く前に飛び出し、アリスティドの攻撃をなぎ払う。すぐに近藤は後ろに下がり、エルザもそのタイミングで彼の向かう方へと走り出した。
「勝負の途中デ相手に背ヲ向けるとは何事ダ!!」
「安心しな‥あんたの相手は、あたいがやる!」
騎士の腹を蹴り飛ばし、改めて間合いを計る。この一対一の状況ならば、カウンターもやりやすい。
「かかってきな‥!」
目論見どおり、かの亡霊騎士は凄まじい咆哮とともに剣を振り上げ、フィラに飛び掛ってきた。瞬間、相手の攻撃に視界が大きくブレる。左鎖骨が砕ける音が聞こえたが、戦いで興奮した脳に痛みがくるのはまだ先の事だ。ここまできたら後は全てを賭けた一撃を放つのみ!!
「月狼の爪よ! 汝が敵を叩っ斬れぇええええッッッ!!!」
「ヌグォォッッッッ!!!?」
確かな手ごたえ。フィラは亡霊騎士の胴鎧を叩き切った。流石の衝撃にアリスティドも思わずよろついて後方に吹き飛ばされる。
「な、ンの‥これしキの傷‥!!!」
よろつきながらも武器を構えなおす、亡霊騎士。そこへあの男が戻ってきた。
「北辰流は盾を使う事が極意ではない‥、何ゆえ北辰流が極星の名を冠すか、お教えしよう‥‥」
燃え盛るジャイアントソードを両手に持った近藤が大上段に構える。アリスティドもそれに呼応し、己の剣を天に掲げ、必殺の一撃を見舞う事をアピールする。
「次で決まる‥勝負が」
静まり返った一同の中、エルザが呟く。嫌な沈黙が数秒流れた。
「!」
突然のつむじ風、皆が風に目を細めた、その時だ。
「ウオオオオオオオオッッッッ!!」
「北辰流‥‥。本目録‥!!」
全身の筋肉を奮い立たせ、己の武器に渾身の力を込める。
「流星ッッッ!!!」
けたたましい爆裂音が、空に響いた。
●エピローグ 〜戦士達の休息〜
夜が明けた橋の横にて、2つの墓の前に6人の冒険者が佇んでいた。
「死してなお主への忠義を通し、真の戦人を待ち受けた者達へ‥‥」
死者への手向けか、ドルスは彼らの武具で作られた粗末な墓の前にワインをかけ、残りを一気に飲み干した。
「貴方方の武人の誇りは我が拳に‥忘れない」
「強者と戦えて楽しかった。感謝するよ、アリスティド!」
黄、フィラもそれぞれの思いを墓の前に残してゆく。彼女等の追った傷は街の神父が治療に応じてくれ、すっかり完治している。
「どうか安らかに眠るんだよ‥‥。これが、僕がキミ達に贈る手向けだよ!」
祈りを込めたルティアの稲妻が、空に吸い込まれていく。
「‥久しぶりに、義に厚き武人に出会えたな」
稲妻が消えていった空を眺めつつ、最後に近藤は呟いた。