マルーと奇妙なかどわかし
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■ショートシナリオ
担当:夢想代理人
対応レベル:5〜9lv
難易度:やや難
成功報酬:3 G 30 C
参加人数:4人
サポート参加人数:3人
冒険期間:11月24日〜12月01日
リプレイ公開日:2005年12月01日
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●オープニング
「あー、なんか事件おこんないかなー」
のっけから物騒な事をほざく冒険者一名。我等が冒険者マルグレーテ。通称マルーはやる気のない表情でギルドの片隅を占拠していた。
「でも、あんまり事件が起こるとみんな困っちゃうし、これくらいでいいんじゃないかなー?」
その横にはお馴染みぽややんハーフエルフ、ラシェルが石を積み上げるというどうでも良い作業に熱中していた。
「何言ってるの。厄介ごとで飯を食うのが冒険者ってもんでしょう? だから冒険者が生きるためには、世の中が適度に荒れてくれないとダメなのよねー。あー、早く魔王の一人や二人ぐらい出てきて、世界征服でも目指さないかしら」
「えー」
見かねたギルド員がどすどすと歩いてきて、邪魔者に天罰あれといわんばかりの表情で注意する。
「おまえら‥‥。依頼を受ける気がないんなら、とっとと失せろ」
「いや、依頼があるなら受けるよ?」
「殺すぞ」
「ごめんうそうそ。軽い冗談だってば」
何かCOの一つでもかましそうなギルド員の殺気におののき、思わずマルーは一歩退く。
ギルド員ははぁ、とこのダメダメコンビに失望した後、黒板に書かれた一つの依頼を指差した。
「そんなに言うなら依頼をよこしてやるよ。アレを受けて来い」
『最近、我が領内で人攫いの一団が潜伏しているとの情報が入った。
早急に犯人一味を見つけ出し、拘束して欲しい。一味の生死は問わない。
オーギュスタン・アークフォンより』
●???
「‥‥さて、これでノルマにまた一歩近づいたかな?」
「ええ、そうね。でもまだ不十分だわ‥‥。13人‥‥13人はそろえないと」
白い髪のエルフに、黒く長い髪の人間。二人は物言わぬ部下をしたがえつつ、森の奥へと分け入っていった。
●リプレイ本文
―アークフォン家・領内
領主の屋敷の一室を与えられた冒険者たちは、そこを拠点に調査活動をしていた。
古びた木のテーブルには、情報を整理している冒険者の姿が見える。
「さて‥‥。こんなものか?」
アークフォン領の地図の写しにガッポ・リカセーグ(ea1252)は赤い×印を書き込んでいく。
印は地図の中に適度に分散し、一見とりとめのないように思える。ガッポの肩から地図を覗き込んでいたマルーが思わず疑問を口にした。
「ふーん。ねえ、これって意味あるの?」
「あるともさ。被害が集中している箇所があれば、その付近に犯人たちが潜んでいる可能性が高い」
へー、と相槌をうつマルー。暫くすると、情報収集を終えたキャプテン・ミストラル(ea2248)やアディアール・アド(ea8737)、そしてアルク・スターリン(eb3096)が戻ってきた。正確には、アルクだけは屋敷の地下牢から戻ってきたのだが。そこで何があったかは彼のみぞ知る、だ。
「ただいま戻りました。興味深い情報、いくつか手に入りましたよ」
アディアールが言う。ガッポや、マルーはテーブルから身を乗り出し、早速その情報に耳を傾けるのだった。
「‥‥ふーむ」
「‥共通項は、どれもこれも『子供』ですね。身代金の催促がない事をかんがみると、金銭が目的ではないようです」
唸るガッポの横で、アルクがつらつらと思ったことを述べる。アゴに手をあて、何事か思慮していたミストラルは面を上げ、険しい表情で口を開いた。
「黒薔薇‥‥」
「はい‥‥?」
ラシェルがぽやんと首をかしげる。他の者も彼女が何を言おうとしているのか、注目する。
「黒薔薇逆十字団‥‥。かもしれないです。精気のない集団、腕章‥‥。また子供を売りさばく為に活動しはじめたのかも‥‥」
しん、と静まり返る部屋。
「イカれた悪魔崇拝者じゃないかと心配していたが‥そうか‥‥。いずれにせよ、タチの良い連中じゃないな。こりゃひと波乱ありそうだ」
やれやれと肩をすくめるガッポ。
「目撃情報から推察するに‥‥。一味はここ、『環状列石の遺跡』付近に潜伏しているようですね‥‥」
「よっし、それじゃあ明日はそこを中心に探そうっ!」
アディアールの言葉を受け、ふんぬと気合を入れなおすマルー。一同も同じ気持ちなのか、小さく、しかし力強く頷いた。
●マルーと奇妙な環状列石の遺跡
次の日、冒険者達は遺跡の付近の森を探索していた。先頭はアディアールとガッポ。共に森での調査に向いた冒険者である。それらに続く形で、マルー、ラシェル、そしてミストラルとアルクが隊列を組んでいる。
「ふむ‥‥かなり近づいているようですね。ここを通った後を、意図的に隠そうとした跡があります。かなり『慣れた』者の手口のようですが‥‥さてはて」
念のためにとグリーンワードで植物に簡単な質問をぶつけ、確認をとるアディアール。
「‥ねえ、アレって何かな?」
唐突に、マルーが声をあげる。冒険者達は彼女の指差す方向に一斉に振り向く。
「‥‥もしかして、大当たりって奴じゃないですか?」
ミストラルの言うとおり。
それは一見しただけではわからないよう巧妙にカモフラージュされているが、『それ故に』一度気がついてしまえば、非常に不審な洞窟のそれであった。
「見張りはいないようですが‥‥。どうします? こちらから、今すぐに奇襲をかけますか?」
アルクがロングソードの柄に手をかける。ガッポはそれに待ったをかけると、首を横に振った。
「いや、奴等が寝静まる夜まで待とう。こちらの人数の方が少ない可能性があるんだ。万全を期したい」
―数時間後
太陽が沈み、月明かりのみが世界を照らす。黒い戦闘装束を身にまとった一団は、例の洞窟に戻ってきた。
「さてさて‥‥今日もよく働いたものだな?」
白髪の女エルフ、狂える星のドミニクは己の雇い主であるミドウという男に振り向く。彼の後ろには、泣きつかれて逃げる気力も失せた子供を担ぐ黒い戦士たちの姿があった。
「ええ‥まったく。こういうのは趣味ではないのだけれど、仕方ないわ。あんまり派手に動きすぎると、すぐに嗅ぎつけられるご時世だもの」
「はは、同感だ。まったくやりにくくなっ‥‥ッ!!?」
瞬間、どす、という音が夜の森に響く。
「‥たく、夜行性ならそう言え。どんだけ待ったと思ってるんだ」
ガッポの足元には、樹上からの不意をついた一撃で早くも意識を失った黒い戦士の姿。相手に考える暇も与えず、ミドウに斬りかかる。
「ミドウ、下がっていろ!!!」
だが敵も二流三流の相手ではない。即座にこの状況に適応すると、ドミニクは腰のショートソードを抜いてガッポの一撃を受け流す。それを火蓋に動き出す黒い戦士達、そして‥冒険者。
「そうそううまくは立ち回らせませんよ‥‥‥!!」
アディアールの手を離れ、しゅるしゅると蛇のように地を張って動き出すロープ。まるで意志があるかのようにロープは敵の足元にたどり着くと、そのまま己を巻きつけて敵の動きを封じ込める。
「‥! ‥‥!!」
「そこぉっ!!」
ロープを切る為に注意がそれたところで、すかさずマルーの追撃が決まる。横一直線に振りぬかれたショートソードが、敵の顔面をぶった斬った。傷口から血が吹きだす。
「ひ、ひぇぇぇ!!」
「大丈夫です、落ち着いてラシェル!」
震えて縮こまるぽややんを庇う形で前線に立つミストラル。矢で狙いを定めるが、視界が悪くあまり戦果が出ない。
「‥‥まだ矢には余裕があるけど‥! こっちの方が効果的ですねっ!!」
弓矢を地に放り投げ、ラシェルから日本刀をひったくる。ミストラルはアルクの援護をするべく、敵の中に飛び込んだ。
「クソッ‥! そこをどけっ!!」
「そうはいかないな! ミドウがやられては私が困るんでね!!」
剣を交えてから数回目の火花。
ガッポの一撃一撃を受け流し、回避し。攻撃されなければ攻撃する。ドミニクのしつこい戦い方に、思わず舌打ちが漏れた。
「ふっ‥‥!!」
長さ1mの鉄塊が相手の額にめり込む。こちら側に崩れかかってくる敵を蹴り飛ばし、アルクは素早く武器を構え直した。
「なんなの、こいつら‥!!? こんだけやってやったってのに‥‥!!」
なかなか倒れぬ相手に、斬りつけられてもろくに悲鳴もあげない相手に、マルーが思わずたじろく。
その隙を敵が見逃すはずもなく。側面から襲い掛かるは黒い戦士の刃。
「‥‥ッ!!」
が、そんな攻撃はアディアールが『許可』しなかった。まるで剣をはじくかのように、腕を振る。
「!!?」
見えない力が、攻撃の軌道を歪ませた。剣はむなしくも木の幹に命中し、それに気がついたマルーに逆に反撃の手痛い一撃をもらう。
「気をつけてください! 抵抗されれば、今の技は成功しないんですから!!」
「ごめん、ありがと!」
数では若干の不利を被っていたものの、奇襲する事で何とかそれを五分以上にもっていった冒険者たち。彼らの活躍により、かの一味は1人2人と倒れ、その数を減らしていく‥。
「さあ、ここまでですよ! 観念なさい!!」
ミストラルは血糊で汚れた日本刀をドミニクに向け、最後の降伏勧告をする。
「観念‥ねぇ‥‥」
「何がおかしい!!」
メイスでガッポが一撃を放つ、それを受け止めるドミニク。今度はドミニクが素早く左手を出し、彼の左腕を掴んだ。両者がにらみ合う形となる。
「おまえ達は景気よくそこらの奴等と戦っていたが‥‥。そこに『魔法使い』はいたか?」
「‥‥!!」
「逃げろォォォォ――――ッッッ!!!」
突如ガッポの声が森にこだまする。間髪居れず、球体となった火炎が異常な速度で飛び込んできた。
「っ〜〜〜〜〜!!!?」
耳をつんざく爆音と衝撃。そして熱風。
「そんな‥‥! そ、そっちの仲間だっているのに‥‥!!」
爆心地から比較的離れた距離にいたアディアールが咳をしながら、土煙があがった周囲を見渡す。木の枝に、誰のとも知れぬ腕だけがぶら下がっていた。
「‥‥‥!」
思わず口を押さえる。
「あ、アルク‥‥!!」
焦げた臭いが充満する中、マルーはかの火球の爆風を盾で受け止めたアルクに声を掛ける。
「‥ぐ、げほっ‥げほっ!! ‥たいしたものです、少々焦げ目がつきましたが、なんとか持ちこたえてくれました」
咳を繰り返しつつ、アルクは言う。目だった負傷こそないが、消耗は誰よりも激しそうであった。
「‥!? あ、こら待てーッ!!」
そしてこのどさくさに紛れ、背を向けて逃亡するドミニクに気がつくミストラル。
追跡しようと体構えに傾くが、ふとある事を思いだす。
「子供は!!? ‥子供は、無事なんですかっ!!?」
「だ、大丈夫だよ〜‥‥」
「‥ラシェルさん!?」
アディアールをはじめ、皆が彼女のほうを振り向く。そこには、子供と一緒に木のうろに隠れて震えている彼女の姿があった。
そしてその後、敵のアジトを探索した冒険者達はさらわれた子供全員の救出に成功する。
●エピローグ
「そうか‥‥仔細はわかった。ご苦労だったな」
冒険者達の報告を受け、依頼人であるオーギュスタン子爵はうむと頷く。
「今回の件は、単なる活動の再開だったのか、はたまた別の目的があったのか‥‥。それはよくわかりませんが、これで暫くの間、活動を鈍らせることができるはずです」
「そうだな、できれば生き残った者から情報を引き出せればよかったのだが‥‥。かのような強引な手段で口封じするとは‥‥」
ミストラルの言葉に、子爵はそう返す。
「‥。いや、しかしご苦労であった。こちらでも領内の治安維持に努めるようにしよう」