ポイズンドギーファイト
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■ショートシナリオ
担当:夢想代理人
対応レベル:1〜3lv
難易度:やや難
成功報酬:0 G 93 C
参加人数:6人
サポート参加人数:-人
冒険期間:12月04日〜12月11日
リプレイ公開日:2004年12月08日
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●オープニング
「依頼だ! 依頼を出したい!! どうすればいいんだ!?」
ギルドのカウンターにどやどやと声が響く。暫くの後、毎度お馴染みあの胡散臭いギルド員の男が面倒くさそうに応対を始めた。
「‥‥ぁンだい、旦那ぁ? 依頼ですかね?」
「うむ、その通りだ。 腕の立つ連中を少々貸して欲しい」
「ぅん、モメ事ですかい? 暗殺なら、ソレ系のギルドに任せたほうが確実かと‥‥」
「馬鹿言え、誰が‥‥! モンスターを退治して欲しいんだ! モンスターを!!」
その依頼人‥‥どうやら武器商人らしいが、彼の話を要約すると、こういう事らしい。
在庫品を保管する為に、彼はいくつかの倉庫を所有しているらしいのだが‥‥その倉庫の一つに、コボルト達が棲みついてしまったというのだ。
「はぁ? 旦那ぁ、そいつぁマジですかい?」
驚いたギルド員は素っ頓狂な声をあげて目を丸くする。
「冗談なぞここまで来てわざわざ言うものか! 暫く使っていなかった倉庫を、奴ら何を勘違いしたのか自分達の住処だと思っちまったんだ! 大至急、あの犬コロどもを退治してくれ!」
なお、肝心の倉庫はパリから3日ほど歩いた所にある森の中、少し奥まったところにある。森は湿気が多く、倉庫内にまでカビやキノコが生えやすいのでほとんど使われていなかったようだ。
「犬コロ‥‥ははぁ、コボルトですかい。あいつら武器に毒を塗るから、厄介なんスよねえ‥‥」
サラサラと依頼書を書きつつ、男は適当に相槌する。
「うむ‥‥ワシの所の腕っぷしのいい奴らでは対応できなくてな‥‥。何せあいつら、倉庫に放置してあった弓矢や槍で武装してるときたもんだ」
「へぇ、弓矢や槍‥‥。‥‥。弓矢ぁ!!!?」
●リプレイ本文
「お前ら‥‥保存食はもっていけ、いや、マジでマジで。食い物持って行かなかったら、飢え死にしちまうぞ?」
依頼出発前、偶然冒険者達を見送る事になったギルド員の男が保存食を持たない者に対して、苦笑交じりに忠告をする。言われて気がついた者達は、出発前に6日分の食料を30Cで調達した。
●茂みの中から
突き刺すような寒さが支配する森の中、6名の冒険者が石造りの倉庫を茂み越しに眺めている。
倉庫には時折コボルトが出入りするくらいで、大きな変化は見受けられない。リーダー格のコボルトは未だ姿を見せていない事から、倉庫の内部にいるであろう事が伺えた。
「‥‥ほいほい、そいじゃあ、面倒くさいけどガンバりましょーかっ」
フィルサイド・フェアヴェンツ(ea8291)の頭に乗っかっていたシフールのネル・グイ(ea5768)が軽やかに宙に舞い上がる。
「倉庫を住処と勘違いしたのが、運の尽きですわね。かわいそうですか、退治させていただきましょう」
次いで、ブレスセンサーの探知を止めたルメリア・アドミナル(ea8594)が攻撃魔法詠唱の為の準備を始める。
「ディリオール、アナスタシア、俺の後ろに回れ。後は打ち合わせ通りにな‥‥」
ラドラム・バルシュタイン(ea8646)がディリオール・ラクスワルト(ea8969)、アナスタシア・ホワイトスノウ(ea9033)の盾となるべく一歩前へ踏み出す。
冒険者達は着実に作戦の下準備を完了した。あとは実行するのみ。
●ポイズンドギーファイト
「ウガウッ!!?」
「おぅわっ! いきなりビンゴってヤツ!?」
窓から侵入したネルが、倉庫の2階でいきなり体格の良いコボルトと鉢合わせる。おそらくはこれがリーダー格のコボルト戦士だろう。付き添いの部下として、さらに2匹のコボルトもいる。
「グルァッ!! ウガァウウ!!」
やかましい声をあげ、リーダーのコボルトが部下に指示を飛ばす。2匹のコボルトは短剣を構えると、さっそくとばかりにネルに突進を仕掛けてきた。
「はははっ! ほらほらっ、できるものならあたしを捕まえてみなっ!!」
回避術が既に達人の域まで達しているネルに一撃を加えるのは並大抵の事ではない。空中を踊るように旋回する彼女にコボルトはひたすら翻弄されるしかなかった。
「ガァァアッッ!!!」
しびれをきらして怒り狂うコボルト戦士にアカンベエをしてネルが窓の外に飛び出す。当然のようにコボルト戦士は追撃すべく、弓矢に装備を持ち替えて窓に身を乗り出してきた。まさにこちらの目論見どおり。
「当ったれぇ! ダブルシューティングッ!!」
フィルが2本の矢をつがえて同時に放つ。だがこれは外れた。この技術が命中率を犠牲にするのと、倉庫が遮蔽物となってそもそも的が非常に小さくなっていた事が要因だろう。
石壁に2本の矢が弾かれて折れた音に驚き、コボルト戦士がフィルの方に振り向く。思えば、ここで倉庫内に逃げ込んでいれば良かったのだろうが‥‥。
「風の怒り‥‥閃光と為りて走れ‥! ライトニングサンダーボルトッ!!」
「ギャアアアアッッ!!!?」
危険に気付いたときにはもう遅い。光速で突き進む電撃がコボルト戦士を貫く。
「よーしっ! 二人とも、イイ感じぃ!」
上空からはネルの黄色い(?)声援が飛んでくる。フィルとルメリアは互いに顔を見合わせ、小さく笑った。
倉庫2階で起きた惨事に反応し、1階のコボルト達も殺気立つ。自分達のリーダーに手傷を負わせた者どもを駆逐すべく、槍で武装したコボルト達がわらわらと飛び出してくる。
「完全に近づかれる前に、少しでも数を減らしておきましょう‥‥」
アナスタシアはそういって詠唱を開始する。
「チッ‥‥数が多い。ラドラム、防ぎきれるか?」
「やってやるさ‥‥。それができなけりゃ、こっちが死ぬだけなんだしな」
ショートボウに弓をつがえ舌打ちするディリオールにラドラムが答える。ヘビーシールドで矢の攻撃に注意しつつ、じりじりと前進を開始した。
「‥‥くらいなさいっ!」
アナスタシアのライトニングサンダーボルトが炸裂し、一匹のコボルトに命中する。その一撃にディリオールの矢が続いた。急所に命中し、相手を絶命せしめる。
フィル、ルメリアの援護も入り、射程距離で勝る冒険者たちは接近される前に、コボルト達に対して大打撃を与えてゆく。
「ガゥアッ!!」
電撃と矢を潜り抜けてきた1匹のコボルトがラドラムに飛び掛る。このコボルトは今回で一番不幸かもしれない‥‥。
「‥‥むっ!?」
ラドラムはすかさず盾で相手の攻撃を受け流し、カウンタースマッシュの体勢に入る。
―――想像してみて欲しい。
「オオオオオオオオオォォォォッッ!!!!」
―――3m以上もの高さを持つ打点から、鉄の塊が振り下ろされたらどうなるか‥‥。
「〜〜〜〜ッ!!」
哀れなコボルトは悲鳴をあげることすらかなわない。ぐしゃっ、と潰れる音がしたかと思うと、次の瞬間には肉の塊に変わり果てたコボルトの姿があった。非常識な破壊力を誇る一撃に敵も味方も戦慄を覚える。
「ウ‥‥ギ‥‥‥‥」
そして恐怖は容易に伝播する。生き残ったコボルト達とて好き好んで死ににいくほど愚かではないのだ。己の形勢がどれ程不利な状況にあるかを痛感した彼らはじりじりと後退してゆき‥‥。
「‥‥」
「キャウンキャウンキャウンキャウン‥‥‥!」
ラドラムが一歩を踏み出すと、コボルト達は武器を投げ捨てて一目散に逃げ出してしまった。
「内部に突撃するまでもなかったか‥‥」
ディリオールがコボルトの死体から矢を抜きつつ、思わず苦笑する。幸いにも、矢は再利用できそうだった。残念なことに、ライトニングサンダーボルトやコボルトが倒れた際の衝撃で解毒剤のビンはことごとく割れてしまっていたが。
「まだ油断はできませんよ、2階のコボルト戦士の生死を確認しなければ‥‥」
実際アナスタシアの言う事は正しかった。何故なら‥‥。
「ガウァァッ!!!」
「ッ!!?」
一同が咄嗟に2階の窓を見る。弓矢を構えたコボルト戦士の最後の抵抗が今まさになされようとしていた。
「っ、させるもんかぁ!!」
フィルが素早く矢を構え、コボルト戦士に狙いを定める。瞬間、集中する彼女の耳から全ての音が消えた。
1匹と1人の弓から、ほぼ同時に矢が放たれる。
「ぐぅっ!!!?」
フィルの右肩に毒矢が突き刺さる。電気が流れるような激痛に顔をしかめ、おもわずその場にうずくまる。
「コボルトはっ!!?」
ルメリアが窓を見上げる、すると‥‥。
「‥‥‥ギ」
フィルの放った矢は、相手の眉間ど真ん中に命中していた。次の瞬間には、どたりと倒れる音が森に響く。
「フィル、しっかり!!」
すかさずネルがフィルに近づく。痛みか毒のせいか、フィルの顔は死人のように真っ青になり、手が震えていた。
「解毒剤‥‥! あのリーダーのコボルトのが無事かもしれない! ネル、急げ!」
この場に解毒剤を携帯している者はいなかった。ディリオールはコボルト戦士が持っているであろう解毒剤の存在に希望を託し、大声をあげる。
「りょ、りょーかいっ!」
ネルはすぐさま飛び上がり、2階の窓から倉庫に入り、仰向けに倒れたコボルト戦士の体を物色する。
それはあった、コボルト戦士が仰向けに倒れた事が幸いし、ビンは無事に懐に収まっていたのだ。急いでそれをひったくるとフィルの元へと急行し、早速それを彼女に飲ませる。
「よし、これでもう大丈夫‥‥」
ネルの言葉にほっと胸をなでおろす一同。
「‥‥‥」
「‥‥フィル?」
しかし、彼女の異変に気付いたディリオールがふと声を漏らす。フィルはうつむいたまま、目を伏せて硬直している。
「おい、どうした!? 大丈夫かっ!!?」
ラドラムが声を荒げ、彼女を揺さぶる。だが反応がない。一同の頭を嫌な予感がよぎる。
「そんな! 解毒剤は確かに飲んだはず‥‥!! フィル、フィルってば!」
ネルの悲痛な叫びがこだまする。嫌な予感が淡い絶望へと変わろうとした、その瞬間だった。
「エへへ、もう食べられない‥‥。ZZZzzzz‥‥‥」
「「「「「‥‥‥」」」」」
「どういうオチですか‥‥」
アナスタシアがこめかみを押さえながら呟く。他の者達も今まで本気で彼女の事を心配をしていた自分に激しく脱力すると、そのまま無言で帰り支度を始める事にしたのだった‥‥。
かくて、コボルト達は倉庫から一掃される事となる。
依頼人の商人はそれはもう大喜びで、今度何かあったときはまた君たちに来て欲しい、と冒険者達に何度もお礼を言っていたそうである。