パンジーの花
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■ショートシナリオ
担当:DOLLer
対応レベル:フリーlv
難易度:やや易
成功報酬:0 G 39 C
参加人数:7人
サポート参加人数:-人
冒険期間:09月01日〜09月04日
リプレイ公開日:2007年09月19日
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●オープニング
西のかた、
そこには小さな花があって、
それまで乳のように真っ白だったものが、恋を受けて、たちまち唐紅に変じてしまった。
その汁と朝露を眠れし者の目蓋に塗れば、
男であれ女であれ、たちまちの内に目を覚まし、
最初に見た者に対して、
その頬もまた唐紅に染めるのである
「それがこのパンジーの花だったっていうわけさ」
冒険者は花の蜜を集めた袋を受付員の前に置いてにまっと笑った。受付員が袋の中を覗き込むと皮の袋にぼんやりと光る薄紫の液体がゆらゆらと揺れているのがみえて目を円くした。
「妖精のおまじない?」
「取りに行った場所は確かに妖精がたくさんいたね。光って見えただろ。月と朝の雫だって言ってた。依頼主もそれを知っていてそこまで使いにやらしたんだと思うが」
依頼主の少年がそれを依頼したのは兄のためであった。兄は有能な騎士で、家族の皆からも信頼されているのだが、どうしても恋には奥手で、密かに想っている娘がいるのだが、立場だなんだとつい避けてしまうのである。そんな奥手の兄に恋を。そんな依頼であった。
「もっと直接的な方法を依頼すればいいのにねぇ」
冒険者ギルドには色んな依頼がやってくる。告白大作戦やら、ダイエット教室やら、直接的な仕事はいくらでもあった。それでも少年がおまじないに頼ったのは、きっと兄に自分たちの気遣いを見せつけたくないという気持ちがあったからだろうか。
「まあ、それはおかげでちょっとした冒険もできたし、おれは満足だったぜ」
くすくすと笑いながら、冒険者はパンジーの汁を包んだ袋の口を締めて、しばしその冒険談を脚色たっぷりに話し始めた。あまりにも熱が入りすぎて、ギルドにいた同業者どころか、近くにいた人達まで何事かと覗き込むような始末である。
そんな熱演は、人垣をかいくぐるようにして入ってくる少年によって終わりを告げた。
「あの、すみません。三色スミレの汁を取ってきてくれたと覗ったのですが‥‥」
「おお、今その話で盛り上がっていたところだよ。ほら、この袋がそうさ」
冒険者は立ち上がり、妖精のおまじない、つまりパンジーの汁が入った袋を少年に手渡した。
これで依頼は終了で、え?
「え」
「あら」
「!!」
袋が少年と冒険者の目の前で消失する。
目をぱちくりとしている間に、床で何かががさっと動くのに気がついた。
「ど、どろぼぉっ」
「パラかっ、畜生、誰か止めてくれっ」
一瞬で、その影は人の足の間を細かに動き回って、人垣の向こうまで出て行ってしまう。止めてくれと呼びかけられた人間は逆に押し合いへし合いで混乱する一方である。
「な、なんだあいつは‥‥!?」
互いに顔を見合わせるが、誰も顔に覚えはなかった。
唯一考えつくのは、あまりにもたっぷりファンタジーな冒険談に心躍らせて、その妖精の薬を欲しくなってしまった愉快犯であろうということぐらいだった。
「この場合ってどうなるんだ? 依頼失敗?」
「その前に取り返してくださいよぉ」
こっちもこっちで大混乱であった。
一方そのころ。
「妖精の薬かぁ。眠った人の目蓋に塗って、その人が目覚めて最初に見た人と深く恋をする、か」
こそ泥は妖精のおまじないの袋をくるりと振り回して、くすくすと笑った。
「えへへー、アンナちゃん‥‥」
こそ泥はだらしない顔をしながら、妄想に耽る。
「異種族でも効果あるのかなぁ。ピピちゃん‥‥」
まて。
「コルネットちゃん、ティアナちゃん、エルミーさん、フォレスタちゃん、ガーナちゃん、ヒルサリスちゃん、ミーネちゃん‥‥」
こらこらこらこら!
こそ泥の妄想はふくらんでいく。
町が混乱に陥る前におまじないをどうか取り返して欲しい。
●リプレイ本文
「もっとすらっとしていて〜、その目は情熱に燃える炎のようでしたわ〜。ぽっ」
似顔絵を見せられたパラの女の子は周囲の空気を真夏に戻しそうなほどの空気を垂れ流しながら、そんな惚気みたいなセリフを延々と吐き続ける。聞き込みしているエヴァーグリーン・シーウィンド(ea1493)とレティシア・シャンテヒルト(ea6215)の営業スマイルがちょっぴり引きつりつつある。
「似顔絵が少し違っていたのでしょうか‥‥?」
「確かにちょっと似てない気もするけど」
ハートマークを当て所もないところへ飛ばし続けている女の子をよそに、二人は改めて自身が作成した似顔絵を見直した。レティが目撃者情報を集めファンタズムで作成したものをエリが書き写すという方法で作ったもの。
確かに普段絵なんか全くかかないので、ちょっと下手な気もするが。
ちょっと。あくまでちょっとだけ。と、言い張ってしまったのが不味かっただろうか。と今頃反省。
「これ以上、聞き込みをしても効果は上げられそうにありませんから、作戦を変えましょう」
「そうね。こっちから出向かなくても、来てもらえばいいわけよね」
レティの目がキラーンと光る。その瞳の先には、最近恋人(?)のために艶やかなのは抑えめにしていた大宗院奈々(eb0916)の姿があった。だが、今日は久々に解禁。歩くだけでフェロモンが舞い踊り、すれ違った男も女も次々と振り返っていく。
「エリ。目撃情報は集まったか?」
ふらふらとフェロモンに惑わされて言い寄ろうとする男を上手くかわして奈々は、エリに問いかけた。
「看板娘と呼ばれる女の子をあたってみましたが、実際何人かは被害にあっているみたいです。本当に効果あるようですね。おまじない」
先ほどのパラは明らかに恋をしている言動であった。おまじないというが、効果が実際にあるとするとそれはかなり笑えない。自分がそのおまじないをされた時のことを思うとぞっとする。
「そんなものを使って恋愛を楽しめるわけでもないのにな。恋愛の醍醐味はやはり、絶妙な男と女の駆け引きにあると思うんだ‥‥そんな過程をすっとばして得た恋なんて長続きもしないし、面白くもなんともない」
奈々は自分の恋愛観を語りながら、おまじないとやらの存在に少しだけ眉をひそめた。ナンパ好きといってもやはりポリシーがあるのだろう。
「それで、おびき寄せる作戦にでようと思うので、奈々さん、協力してくれます?」
「ああ、その為の化粧だからな。フラン以外の男に好かれるのは余り好ましくないのだが、仕方ないな」
こんな時に思い人の名前がさらっと出てくるあたり、その思いの強さがうかがい知れる。どっかで彼はくしゃみでもしているかもしれない。
「それでは、私はここでお友達と炊き出しをしますね。おまじないの薬を奪っていったのが、冒険者の話を聞いていたからだとしても、行動範囲であるはずだから」
顔がいまいちはっきりしていなくても、経過を辿っていれば、こそ泥パラが好奇心旺盛なタイプだということはなんとなくわかる。それを逆手に取ってやればいいのだ。
こそ泥パラに対するワナが少しずつ形成されていく。
●
「‥‥ぼうず、隠し立てすると身のためにならんぜ〜」
「はい。それじゃえーと、これが新しい財布なのです。それから、青い鳥さんの羽根と〜。今晩のおかずです」
にっこりと笑った漂泊者エウレカを見て、カラット・カーバンクル(eb2390)は次の言葉に悩んでしまった。馬鹿正直にも自分の荷物を見せて、はいどーぞ。と手で指し示されると言葉に困る。
「花の蜜をもってるパラを見てねーか?」
「リュカくんのことです?」
意外にもさらっと出てきた名前に、カラットは目をぱちくりする。隣で一緒に聞き込みをしていたシルフィリア・ユピオーク(eb3525)も顔を近づけて、名前を問い返した。
「はい。ろまんすのぷりんすなんですよ♪」
趣味悪っ。
多分、本人がそう名乗ったに違いない二つ名を聞いて、シルフィリアは思わず笑顔が砕けそうになった。
「そ、それで、そのリュカってーのはどこに‥‥?」
「おれをとめるんじゃねーぜ。ぼへへ。あまたの女がおれを呼んでいるんだ。世界中の美女はおれの嫁。なので忙しいからしばらく会えないって言ってました」
スペシャルにアレでナニな奴だ。
できれば会うのはご遠慮したいなー、と思ったがそんなわけにはいかない。
それにしても。とシルフィリアは頭を悩ませた。エウレカは宿無し生活を送っているはずである。とすれば仲良しだろうと推測されるリュカというのも宿を持っているとは思いがたい。
「たぶん、恋をさせることに成功したのなら、その子の家にこっそり匿ってもらうことだってできるだろうね」
「はー、そうですねー」
シルフィリアの言葉に、カラットは何となく視線を横にそらしながら、曖昧に相づちをうった。
シルフィリアと合流する前に、事前に人相の悪いお友達がたくさんいるところに顔を出し、候補者をある程度見繕っていたため、それが自分とも『遠いお友達』ということは感じていた。それがエウレカの言葉ではっきりとしたのだが。
下手に捕まえると後がまずい。特に自分自身の立場が。
穏便に済ませないとまずい。
カラットは一生懸命頭を悩ませていた。
●
「うどんはいかがですか? ジャパンのお料理はいかがですかー」
ほんわりと小さな声でチサト・ミョウオウイン(eb3601)が声を上げて、臨時開店した露店料理店の呼び子をする。本当は許可がいるものだが、幸いツテには事欠かなかったので、儲けは基本的になし、という条件で認めて貰ったのだ。
「たくさん食べていってくださいね。どうぞー」
エリもうどんを湯がきながら、笑顔で客の呼び込み。まだ暑気が抜けきらない時季だ。湯がくのも結構大変なものである。額から玉のように汗を浮かべても辛い顔をしないのは、料理が好きな性格が高じてか、それとも仲間と共にこそ泥を捕まえたいと思うからか。
想いはどうあれ、露店に客はそこそこ入っていた。その客層を大きく分けると二つ。物珍しいうどんなるものを食そうとする者、そしてもう一つは、スタッフの女性達目当ての人。
チサトにエリに。手伝わされてレティ。そして極めつけは女帝、奈々。もうそのバリエーションに富んだ色気に男が来る来る。鬱陶しいくらいに。
「‥‥肝心な奴が来ても、これじゃ対処できないぞ。本当にこれでやってくるのか?」
不埒にも尻を撫でようとした男に猫の仏蘭の爪アタックを食らわせて、奈々は溜息を付く。男がたくさんいるのは嬉しいのだが。
「この近くにいるようなのですが‥‥」
十野間空(eb2456)はダウジングペンデュラムを地図の上に垂らしてその動きを見つめていた。地図はそれほど大きくもなく精度もそれほど高いわけではない。これでしっかり判別するのは難しいのだ。
「陰陽師の修行をされた空お兄ちゃんでも難しいのですね」
ぐさ。
恋人の片腕となるべく、学問にかなり力をつぎ込んだせいで、本職の方がちょっと疎かになっていたとはあまり言えない。
「他の方法と組み合わせて見た方が良いかもしれませんね」
そう言いつつ、空はチサトの愛犬焔を見つめた。よく訓練されている焔なら、パンジーの花の香りをかぎ取って、この群衆の中に混ざっているかも知れないこそ泥らを見つけ出すことができるかもしれない。
「匂いはもう覚えさせたでしょうか?」
「あの、それが‥‥パンジーの花が見つからなくて」
問いかける空にばつが悪そうに答えるチサト。
パンジーことサンシキスミレというのは北欧が原産で、ノルマンではもう少し寒くならないと咲かない花だ。タネの植え方では夏に楽しむこともできるようだが、それでも見つけるのは困難だろう。
「そうですか。それは残念ですね‥‥」
「採りに行った冒険者さんのお話ですと、真夏なのにとても涼しい森の、しかも真夜中に見つけたそうなんです。きっととても涼しい場所で咲いたと思うのですけれど、この辺りではなかなか」
「真夏の夜にできたおまじない、ですか」
詩人が好みそうな話題だと想いながら、空はさてどうしたものかと思案していると、レティが不適な笑みを浮かべて心配は無用と答えた。
「大丈夫。思案しなくても絶対に来るし、すぐわかるわよ」
既に凄い美女がこの辺りで露店を開いているという噂は流している。突然の開店にもかかわらず、これだけ客が大勢集まってくるのが何よりの証拠。これならこそ泥パラもきっとその噂に引かれてやってくるに違いない。
さっきから自分の所にはほとんど声がかかってこないのがちょっと悔しいけど!!
なんだか、違う想いが巡り、やっぱり大した情報を得られなかったカラットとシルフィリアが戻ってきたその時、奈々が不機嫌そうな声が一行の耳に届いた。
「こら、やめないか!」
「お姉さんの色香にもうメロメロ〜、ぼへへ」
笑い方がどことなく親父クサイと思ったのは何人もいたが、実際その姿を見てみると、人間の子供と間違えそうなほど可愛らしいパラが、奈々の太ももに抱きついて恍惚の表情を浮かべている。
‥‥。皆の直感に何かがひっかかる。というより、奴しかいなさそうだ。ペット達まで一様に怪しそうな視線をパラに注ぐが、本人は意外と気づいている様子はない。
「あれだね」
シルフィリアがぼそりと呟く。
その言葉に、皆は顔を見合わせて、何を言うでもなく頷き合って、パラに近づいていく。
「いらっしゃいませ。わあ、可愛いパラさん」
エリがしゃがみ込んで、パラの頭をよしよしと撫でる。するとパラはまるで憑き物が落ちたかのように、奈々の太ももから離れ、エリに向かっていじらしげな態度を見せる。見ようによっては可愛らしいが、中身がおっさんだということは既に承知済み。違和感以外の何物でもないのは秘密だ。
「本当だねぇ。どうだい。冷やしうどん食べていかないかい」
シルフィリアも軽く髪をかき上げながら、色っぽい微笑を浮かべると、パラもでれーんと顔を弛めながら、食べる食べる〜。と両手を挙げて賛成を示した。
「そう、それじゃ、こっちのお席にどーぞ」
レティも笑顔で一番逃げにくそうな奥の方へと案内しようとするが、パラはレティの顔をじっと見ると首を左右に振った。
「ボクは、ここがいいなー」
と奈々を抱き締める。
‥‥色気がないからか!? そうなのかっ?!
思わず、絞め殺したくなる衝動を抑えるレティであったが、そこはそれ。合理的な彼女はぐっとその言葉を飲み込むのにそれほど苦労はしなかった。捕まえた後でめいっぱい鬱憤を晴らせば良いのだから。
「そうかそうか。よし、それじゃ私の胸に飛び込んでこい」
「ううーん、手を広げて迎え入れる様はまるで女神、恋の嵐が呼んでるぜー」
改めて腕を広げる奈々にパラは歓喜して飛び込んだ。
豊満な胸に納まった瞬間、奈々はすかさずその頭を腕で抱き込み、ホールド体勢に移動する。
「よし、捕まえたぞ!」
「んん? そんなに強く抱き締められると困っちゃうなぁ」
すぽんっ。そんな音がまるで聞こえてくるかのように、パラは奈々の腕から抜けだし、ひょいと間を置く。かなりの身のこなしだ。確かに街中で堂々とスリをやるだけのことはある。エリがすかさずスリープを唱えようとするが、その前にパラは人混みを利用して、視界から姿を消した。視認ができなくなれば当然魔法も発動しない。無理をすると一般市民を巻き込んでしまう。
「早い‥‥!」
「荒っぽいことはしたくなかったのですが、仕方ないですね‥‥月の光よ、矢となりて敵を撃て。敵の名は妖精のお呪いを盗んだパラ!」
空はムーンアローを唱えると、真上から光の矢が群衆の中に降り落ちた。もちろん、街中で魔法が発動されたのだから、周りの人達は大混乱。確かにパラに当たったようだが、逃げまどう人に邪魔されて思うように進めない。
「ええい、もう仕方ないねっ。どきなっ」
シルフィリアがカラミティバイパーを操り、まだ逃げようとしていたパラを絡め取った。腕ごと封じられたパラは芋虫状態になり、もはや歩くことすらできない。そこにレティがそっと近づいた。
「随分、手間をかけさせてくれたわね。シーフギルドのメンツを潰すつもり‥‥? リュカ‥‥」
自分はシーフギルドの人間だと匂わせながら、パラに近づく。彼の名前は既に分かっている。こうして威圧することで、色気を出しても無視された鬱憤を晴ら‥‥じゃなくて、相手を観念させるのだ。
「あわわわ、レティシアさん。それは‥‥」
カラットが何やら後ろで慌てているが気にせず、レティは続ける。
「ギルドに許可なく盗みを働こうとは良い度胸してるわね。当然、覚悟はできているわね?」
「んん、シーフギルドって‥‥」
すぱぁぁぁんっ!!
「と、とにかく、悪いことをしたら相応の痛みを伴うものなのですよっ。ていっていっ! さあ、おまじないの薬を返しなさいっ」
「わ、わかったよ。あいたたたた」
「あの‥‥」
何が何だか良く分かっていないレティにカラットは例のおまじないの薬を押しつけるように渡すと、ぐいぐいと手を引っ張った。
「さあ、姉御。さっさとずらかりましょう」
カラットには、逃げまどう人影の向こうから騎士と衛兵達がこちらに向かっている姿が見えていた。いくら相手が悪いといえども、直接的手段に出てしまったこっちの方が分が悪い。
「こらぁ、そこの女の子達、ちょっと待ちなさい! 街中で魔法使用をしたと‥‥ま、まちなさーい!」
衛兵に追っかけられてはもはやお仕置きどころではなく、後で散々お詫びをしなければならなくなった一行であった。勿論リュカはその間にどこかへと逃亡してしまったのは言うまでもない。
●
「ありがとうございます! 兄もきっと喜ぶと思います」
「お兄さんが素敵な恋に巡り合えると良いですね」
空の言葉に、依頼人の少年はにっこりと笑った。
「しかし、何もそんなおまじないなんか使わなくても‥‥」
「いえ、意中の女性も兄のことを気にしているのは知っているんです。二人とも奥手だから‥‥」
そう言うと、少年は薬の袋を広げた。すると袋の中から、薄ぼんやりと光る何かがふわりと皆の目の前に姿を現す。
「あら、ブリッグル‥‥」
チサトはその姿の正体にすぐさま気がついた。
月が奇麗な夜に空を漂う精霊で、月夜と音楽と色恋ざたを好み、自分の本心を打ち明けることができない切ない恋をしている者に憑依して、恋の手助けをすると言われている。
「パンジーの蜜を月として、ここまでついて来てしまったようですね。本当はきっと‥‥結ばれるべく人の元に届けられて、心を繋ぐ切っ掛けになる為に使われるおまじないなのでしょう」
その言葉が暗示した通り、あなた達は新しい物語を街角で聞くようになった。
真夏の夜の夢が見せた奥手な二人を結ぶ妖精物語を‥‥。