聖夜祭(あなた)の贈り物(プレゼント)。
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■ショートシナリオ
担当:DOLLer
対応レベル:フリーlv
難易度:易しい
成功報酬:0 G 52 C
参加人数:7人
サポート参加人数:-人
冒険期間:12月27日〜01月01日
リプレイ公開日:2008年02月16日
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●オープニング
「セーラ様。ジーザス様。お許し下さい。私は短慮な娘です」
ミーネは小さな広場の掃除をしていた一人のシスターに告解を申し込んでいた。本来は教会の一室ですべきことであったが、彼女はすぐにでもこの気持ちを表して懺悔したかったし、シスターもその意図を酌んで、静かな場所に案内してくれた。
今ベンチに座るミーネは普段、シャンゼリゼの厨房スタッフとして精力的に働く姿とは全く違い、そこにいるのは気弱で物憂げな彼女であった。
「どうしました?」
「エウレカという子供がいます。どこかから旅をしてきたようでいつもボロボロの服一着きりなんです。初めて知り合った夏も秋も同じ服でした。そして冬も。お金もなくて食事もまともなのを食べていないような子だったので、きっと宿もありません。だから、私、服を買ったんです。聖夜祭のプレゼントとして」
シスターはゆっくりと頷いて、ミーネの気持ちを受け止めてくれることに不思議な安堵感を覚える。
年はそれほど変わらないように見えるのに、後悔の念でいっぱいのミーネを見て声をかけた。人の心を見抜く力があるのか、それともミーネ自身が心配されるほどに悲愴な顔をしていたのかわからないが。そんなことがシスターに対する信頼を作るのかもしれない。
「温かい心の子なんです。いつも私の方がはっとさせられるくらい、思いやりがあって。だから寒くないように。って。最初はとても喜んでくれました。でも、次の日には、その服着ていなくて。服はどうしたの? って聞いたらあげちゃった、って言うんです」
「思い切りのある子ですね〜」
シスターがそう言うと、ミーネはそうなんです。と俯いた。
「財布だって盗られても、財布が旅立った、で済ませちゃいますし。財布の中も小石とかそんなのばかり。それもすぐ落としたり、あげたりするんです。でも、私があげた服は大切にしてくれるだろうって思っていて、だからあげたって聞いて、腹が立って、悲しくて‥‥叩いちゃいました。それも思いっきり。顔も見たくないって言ってしまいました」
ため込んでいた気持ちが、涙と一緒にあふれ出てくる。見つめる地面に向かってぽたりぽたりと滴がこぼれる。シスターは黙ってミーネの背中をとんとんと叩いてくれた。とても自然に。その温かさに触れて、胸がつかえて息すらままならない状態から少し安らぎを得て、ミーネは言葉を続ける。
「その時はもうそれでいっぱいだったんですけれど。後で。知ったんです。私のあげた服、寒そうにしている猫の家族のベッドにしたんです。寒いのは犬も猫もみんな一緒だって。あの子、エウレカ、自分が温かくなるより、もっとたくさん温かくなる方がいいよねって」
「それで、申し訳ない気持ちでいっぱいだったんですね」
こくこくと頷くミーネの背中を変わらずトントンと叩きながら、シスターは彼女が落ち着くまでじっと待っていてくれた。
そして。
「すでに神様がお許しになっている方に、私から何か言うなんてできません。あ、お水飲みます?」
不意に差し出された革袋を目にして、ミーネは泣きじゃくるのもしばし忘れたように固まった。
今は結構、と断るのも悪いし、と思いおずおずと受け取った革袋の中は一口分もないほどに小量しか水が入っていない。何かのリドルかしらと水を見やるミーネにシスターは微笑んで言った。
「足らなければ、また注いできますよ。たぶん、古ワインになると思いますけど。ついでに冒険者さんにも相談しましょう。冒険者の人もきっと協力してくれますよ。うん、シャンゼリゼのスタッフさんですからね。恩返しにいろんな案を考えてくださいますよ。きっと」
突然の話の展開に、しばらく呆然とするミーネにシスターは言葉を続けた。
「ごめんなさい。と言ってもう一度プレゼントすればそれで丸く収まります。ただその人、友達多そうですし、きっとまたあげちゃうでしょう。友達全員分あげれば一番いいとは思いますけれど、それって難しいですよね。だからこの際、冒険者も巻き込んでエウレカさんとその友達だけじゃなくて、みんなの知り合いも含めて出来る限りのプレゼントを差し上げたら、みんなも幸せになれるじゃないですか」
シスターユーリはころころと笑っていった。
●リプレイ本文
●
そこは街の広場。誰もが知っていて、誰もが知らない。近くて遠い。不思議な場所。
耳を澄ませてごらん。石畳がくすくす笑ってる。閉じた世界に音を満たしてくれる人の声が聞こえる。
「これはどこに置けばよろしいですか?」
広場に最初に現れたウェルス・サルヴィウス(ea1787)は荷物をたくさんぶら下げながらもしっかりとした足取りで広場に足を踏み入れた。肩につるしたロープからはワインがカチラコチラと早くも揚々音を鳴らしてる。祈りの鐘にも似た音がするのは、きっと祈りのこもったワインだからかも。
「これに‥‥載せるそうです。というか、誰か一人ぐらい手伝ってくれてもいいんじゃないですか?」
アウル・ファングオル(ea4465)がテーブルをもって姿を現す。それに続いてひーふーみー。後ろで大人の色気を振りまいている大宗院奈々(eb0916)は、そんなアウルの言葉にくすりと笑った。
「それが男の甲斐性だ」
「‥‥ま、いいんですけどね」
すっかり愚痴を言う気を失ったアウルはため息をついた。後は十野間空(eb2456)と十野間修(eb4840)だがまだ合流していない。
「あ、テーブルこっちにお願い〜」
調理道具を背負い込んだ明王院月与(eb3600)はアウルに指示をすると、意気揚々早速調理の準備を始める。
「もう祭の気分ですネ」
持ちきれない調理道具の一部を運んできたエウレカはいつも通りほんわりとした声で言った。エウレカは非力だから鍋は頭に、蓋を手に、すりこぎを左手に。大釜の蓋を前掛けにして。
「おう、少年! どこかに冒険にいくみたいだなぁ。ドラゴン退治か?」
カラット・カーバンクル(eb2390)が片手にどらごん君を持ちながら語りかける。エウレカくんはカラットがこの広場に向かう道中に『偶然』出会って誘ったのだけれども。どらごん君の自虐ネタにもエウレカはニコニコ。
「お鍋退治デス♪」
「大丈夫。みんなにいきわたるようにするから」
後ろから食材を追加してもってきたミーネが息を切らせつつそう言った。
「そうです! 鍋退治は冬の伝統行事なのです。さしあたってまず馬刺しを」
「積載品はともかく馬は違うと思う‥‥」
別の角から姿を現したのは暴走シスターのユーリとその肩に止まっているのはルフィアだ。その姿を見て奈々が手を挙げる。
「おお、ルフィアにユーリ。この前はありがとうな。おかげでフランとの愛が進展したぞ」
その言葉が出るやいなや、物陰からひっくり返るような音。
「まあ、あんたも年貢の納め時ということです。ついでにいうと手伝ってくれませんかね」
ひっくり返った本人も確認せずに、アウルが声をかける。ふわり揺れる金の髪と中性的な顔立ちを見ればすぐ気づく。ブランシュ騎士団随一のおとぼけ隊長だ。
「そんな言い方しますか」
「こちらの利になるなら迷わない。叛逆の人鬼と言われたオレですよ」
「わかりました。では天敵で対抗しましょう」
「‥‥人を勝手に出汁にしないでくれる? ワインが飲めるって聞いたから来たのよ」
銀髪の女があきれかえった声を出して姿を現す。
「遅くなりました。やれやれ、兄は人使いが荒いから‥‥」
「ふえ‥‥うう、うあ〜いっ」
修に手を出されて馬車から飛び降りてきたのは元騎士見習いの少女。ずっと修道院にいたけれども。今まで見たことの無いような笑顔で馬車を駆け下りる。
その後ろから空が降り、差し出したその手に手を合わせ。
来賓が揃ったところで賑わいの始まりだ。
●
「神聖ローマに?」
「はい、帰ることにしました。それで暇つぶしも兼ねて最後の挨拶と思いまして」
アウルの言葉に、ディアドラはそう。と小さく呟いた。
「こんな出会いの日に別れ話っていうのもなんだか連れないわね」
「楽士の件ですが、今年はあまりお役にも立てませんでしたが。まぁあと十年もすれば俺も、他の冒険者も、ディアドラさんも成長してるでしょう」
お互い生きていればね。と笑いながら、アウルは濃濁としたお茶を差し出すが彼女はウェルスにいただいたワインを離そうとはしなかった。
「あなたがどこに行っても、私が何をしようと、それは永久にね。神は罪を赦す。だけれどもその罪を消してくれるほど都合よくはできてないわよ」
「背負うから剣や盾は、撒き餌程度の使い捨てにする、と」
くすり、横から意地の悪い笑顔をみせるのは修だ。
「そんなにやわじゃないと思いますし、教会はもっと物に感謝して使えと教えているんだと思っていましたがねー」
「あら、言うわね」
少し言葉を考えるそぶりをみせてディアドラは笑った。
「罪を贖うとはそういうだと思うわ。出会った経験は最大限活かしなさい。撒き餌のまま捨てられたくなければ、止揚しなさい。私も含めて人にはその力がある」
そしてアウルにワインの杯を突きつけて語った。
「私のこと考えてくれてたのね。ありがとう。ローマにいてもどこにいても共に居た経験は不滅よ」
「共にという部分は承諾しかねますが、その願いが叶い無事に幸福な結末を迎えられる事を、願っていますよ」
それでは、と言ってアウルは突き出された杯に容赦なく茶を注ぎ入れた。
響いた絶叫は誰のものか、わからない。
●
「こう被ればおしゃれだぞ」
きゅぽっとルフィアにふわふわ帽子をかぶせてあげながら、微笑んだ。
「ありがとう。お姉ちゃん」
ルフィアってこんなに明るい笑顔を浮かべるんだった。邪眼として目覚めた最初の時も、喜ぶ顔はあったけれど、それは不幸を打ち消すために必死の喜び顔だった。
ああ、乗り越えたんだ。奈々はふとそう直感した。
「じゃ、プレゼントのお返しね」
そういうと、ルフィアは顔の前にまで飛び上がり、前髪に何かをくくりつけた。ルフィアが元の位置に戻った後、手で確認すると、それは何かの蔓のようであった。柔らかくて平らなものもある。葉っぱか花びらかもしれない。
「恋のおまじない。ここに恋の妖精さんが目印にして飛んできてくれてね、恋をつないでくれるの」
「へぇ、そいつはいいな」
くるり。奈々はそのままフランの方へ向く。
偶然にも視線が重なる。表情はいつも通りのどことなく柔和にみえて飄々として印象。
だけど、その目はそんなに真摯的だった? 一瞬、自分の胸の方が跳ね上がりそうになる。
「なあ、フラン」
オーズレーリルを取り出して、さりげなく距離を詰めたその瞬間。エルフの腕が背中からからみついて、微妙な距離を一気に0まで引き寄せる。
顔が近い。
細い体なのに。とても大きく感じる。
「ど、ど、どうしたんだ。形に残ったらいけないんじゃ」
逆に内心慌てながら、オーズレーリルとラグティスの瓶で錯乱しそうな心に壁を立てて。
「奈々」
「な、な、なんだ?」
ルフィアの恋の魔法はちょっと効き過ぎだっ!
心の中で奈々は嬉しい悲鳴を上げた。
「焼き鳥、焼けましたよ」
目の前にかぐわかしい焼き鳥がぬいっと出てくる。
‥‥何が焼き鳥だ。
●
「きれーい、きれーぃ」
エウレカがウェルスから貰った木の実や小石をみて、横で見ていたテミスがきゃっきゃと喜んだ。
「ジャルダンで拾ったんです。草原のようなところですが、至る所に木の芽が出ている場所なんですよ。将来はきっと森になると‥‥」
「お宝いっぱいデスネ。おひとつどーゾ」
エウレカは嬉々として、小石や木の実をテミスに差し出した。
「んぅ〜」
掌で輝く子どもたちの宝石を眺めて真剣に悩むテミス。そしてその横でなんだか所在なさげにうろうろとする少女。
「ひょっとしてヤキモチやいてます?」
「え、や、今はパン焼いてます!!」
カラットの問いかけに馬鹿正直に明後日を向いた答えを返すミーネ。
「もし良かったら、一緒にエウレカくんの昔話聞きません?」
「でも、パンの焼き加減みてないとっ」
くるり回れ右をしてミーネは慌ててフライパンで作る簡単なパンの焼き加減を確認しに戻る様子を見て、カラットが少し大きめの声でエウレカに問いかける。
「エウレカくんってどこから来たのでしょー?」
「南からきましタ。北は自由で素敵だよって教えてもらってのデス」
南にあるのは。イスパニアか神聖ローマ帝国か。
そういえばエウレカくん、この前のお茶会の時、耳の先が欠けて‥‥
「その耳、どうしたの?」
「おまじないなのデス。悪い人に襲われないためですヨ」
エウレカはにこにことしながら答えた。いつもは怖いお母さんがおまじないをして旅に出してくれたのだと。
「‥‥そうですか」
それ以上は、さすがに気まずくて聞けなかった。
「じゃ、これがいぃの」
そうこうしているうちにテミスが木の実を一つ選び出した。櫟(イチイ)の果実を拾い出した。
「テミスさん。私からはこちらを‥‥」
凛々しい女性騎士の立ち姿が描かれたその絵を目の前にして、テミスの顔が急に曇り始めたかと思うと、すがるようにそれを抱きしめる。
「おねーさま‥‥」
まだ少し早かったかもしれない。ウェルスが自分の浅慮に心を痛めたが、それもすぐ大丈夫だと思えるようになった。たぶん、先程までならそのまま取り乱していたかもしれないが。今は小さな櫟の実が彼女の掌で癒してくれている。壊れそうな気持ちをもう負けないと踏みしめる。
もしかしたらアガートの遺志がそこに宿っているのかもしれない。
ウェルスは彼女が落ち着くその時まで祈りの言葉の心の中で繰り返した。
●
「料理ができたよぉ〜!!!」
広場に広がる大きな声。
それと同時に、小さな賑わいに地響きが加わった。町には人がいる。彼らには知り合いが居る。たくさんの人がいる。感謝の想いを伝えるなら、一番自分らしく想いを籠められる方法を取るのが一番だと思う。その月与の言葉に従って、ミーネも一生懸命に作った料理の温かな香りは、音よりも遠く人々を引きつける。
そう、広場に入りきらないくらいの人たちが。
「ら、ら、ライス長官〜!!!?」
ひしっと抱きつくカラットを守るかのようにライス長官はご主人様を守るべくズーン、と仁王立ちしている。鉄の絆だっ
ライス長官の鋭い眼光にうらぶれた男達が踏みとどまる。
寄らば、喰う。
「食べちゃだめですよ?」
そんなやりとりを混ぜつつ、何とか落ち着きを取り戻したカラットは、同じく冷静さを取り戻した人たちに笑顔を振りまいた。
「はーい、二列に並んでくださいねー」
「「うぃーす」」
顔と雰囲気が悪いだけで根は良い人が多いようだ。中には列の整理を買って出てくれる人までいて。
「いつも悪いな。ねーちゃん」
「あ、前に遭ったことありましたっけ?」
お給仕中にそんな事をいわれてカラットは調子を合わすのを忘れて、つい正直に問い返してしまう。カラットの目の前にいる男は裏路地ならどこにでもいそうな男だが、ちょっと身なりはいいような気がした。身なりが良いならチェック済、いやいや気付いていると思うんだけど。
「前の時にな。あんた達が御飯をくれてそれでなんとか食いつなげたんだよ。今は定職にもついた」
カラットはそんなこともあるんだと本気で感心しながら、男の顔をまじまじと見つめた。
「それもこれもあんた達のおかげだ。感謝するよ」
感謝するための炊き出しなのに、逆に感謝されちゃった。不思議な感じ。
「あはは、まぁそんなこともありますよー」
いつかお礼は現金で。そんなことをちょびっと言ってみたくなるカラットであったが、そこはそれ。曖昧にごまかしてお給仕に回るのであった。
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「役に立てないって辛い‥‥」
アストレイアはごった返す人を見つめていた。お手伝いを申し出たものの、危うく鍋をひっくり返しそうになり、頼むからヤメテ、と言われて今は遠くから見守る立場である。
「確かに様々な事を学び、実践する必要はあります。但し、それを一人で背負う必要はないんです。貴方の周りには多くの仲間が居るのですから。担いあいましょう」
「それは、わかっていますけれど」
「あ、そうそう。酒場で和菓子の話題をしていたと聞いて、月与ちゃんが作ってくれたんですよ」
空はアストレイアを慰めるようにそう言うと、包みから手作りの和菓子を取り出して渡すと、彼女の表情が驚きに染まった。
「聞いていたんですか?」
「直接お会いできたらとは思っていたのですけれど、あ、それと。ブランシュ騎士団のイヴェット様から私達の幸せを願い、贈ってくれた物です」
小瓶の中ではキラキラと光が煌めきあう。互いに照らしあうその砂をアストレイアは見つめていた。その目は幻想的な光を帯びて少女のよう、あれ、目が冷たい。
「‥‥そういえば、私のことを他の領主の方をはじめ、様々なところで話をしている聞いたのですが」
「はい。少しでもそちらの方や、また貴女にも喜んでいただきたくて」
「悪いとは言いませんが、先方にもかえって気を遣わせることがありますから、十分注意してください」
‥‥嬉しいですけど。とほとんど誰にも聞こえないような声でつけたすアストレイアに何か言葉をかけようかと思案している間に、和菓子を二つに割り、そこねて潰してしまったが、それを空に渡した。
「あ、そうだ、月与さんにお礼をいわなければいけません」
「あはは、お礼だなんていらないよ〜」
いつの間にやら炊き出しの片付けも終わっていた月与が立ち上がったアストレイアにそう声をかける。空が振り向けば、見慣れないぬいぐるみを間に挟んで、修と共にこちらにやってきたところであった。頬がやたらに焼けた色をしているのは、炊き出しの残り火のせい?
「とてもおいしいお菓子をありがとうございます。今度またお願いしてもよろしいですか?」
アストレイアの言葉に月与は感激して飛び上がる。心の躍動がどうしても体に出てしまうから。修のその時の言葉は。
「おや、予約が増えてしまいましたね」
「予約の解消は受け付けていないからね」
何のことかわからず、二人の言葉にアストレイアは理解ができず、顔を交互に見つめるだけであったが、二人のお兄さん的な立場で今まで見つめていた空にはすぐわかった。
それぞれの手に自らとアストレイアがしている物と同じ指輪がはまっていることを。月与の目尻に少しだけ火の輝きを星の輝きに変える光があることを。
「今宵は素敵な日ですねぇ」
空はくすりと笑った。
その背後でも。
「ミーネさんがんばるのです!」
「あ、あのあのあの、エウレカくん」
挑戦しようとしているのがいるみたい。
ここは特別な場所。ここはなんてことない場所。
今日は特別な時間。今日もいつもの時間。
互いの気持ちを再確認しあうことで、何でもないその瞬間が特別な日に早変わりする。
それが聖人が残してくれた記念日なのかもしれない。
このパーティーは、薬酒で酔っぱらい馬鹿騒ぎをして謹慎させられた記録係と、
楽しい冒険者ギルドのメンバーの提供でお贈りいたしました☆