王様ゲーム! 冬仕立て編

■ショートシナリオ


担当:DOLLer

対応レベル:フリーlv

難易度:易しい

成功報酬:4

参加人数:6人

サポート参加人数:-人

冒険期間:12月20日〜12月23日

リプレイ公開日:2009年03月24日

●オープニング

「冬じゃのう‥‥」
 劇作家ディーは半纏を身にまとい、暖炉の前を陣取りながら、ぼんやりと外を見ていた。粉雪が舞いまう外は一面銀世界。みんな家の中で同じようにしているのか、外からは風の吹く音ばかり。暖炉の中で木が爆ぜる音だけが時々続くだけの世界。
「くわーーーーっ、おもしろうないわーっ!!!!」
 ディーも爆ぜた。しかも急に。
「冬といえば、犬が庭駆け回り、猫はコタツで丸くなり、ミカンと相場は決まっておるのに、なんでこんなにローンリィなんぢゃぁ!!」
「寒いからに決まってるでしょ。冬は早く過ぎ去ってほしいわ。寒いのは私も苦手やし」
 ディーの妻がシナモンミルクを彼の側に置き、揺り椅子に腰掛ける動きには、ディーの(ヘンな方向に)燃える情熱など知ったことではないといった風だ。
「冬じゃぞ、冬。鍋に、温泉、雪合戦に我慢大会と、やるこたぁ山ほどあるじゃろうが」
「どこの習慣? 私は聞いたことないけど」
 膝に乗せた猫を撫でつつ、編み物など慣れた手つきではじめる妻を見て、ディーは地団駄を踏んだ。
「うぬぬぬぬぬ、厳しい冬でもちったぁ楽しんでやり過ごそうとはおもわんのか。いや、その楽しさを知らんだけじゃな。おし、ワシがちょっと見せてやるわい」

 そして後日。

「王様ゲームの招待状‥‥」
 受付員はげんなりした顔で、その手紙を見下ろした。
「おう、お主じゃないぞ。我こそはという冒険者に渡してほしいのじゃ」
 以前、密かに冒険者達が王様ゲームに興じていたことは受付員も知っていたが、まさか正式に依頼として募集される日が来ようとは。世も末である。確かに今年ももう終わるんだけどさ。
「ふふふ、ワシが特設会場を作ったのぢゃ。ジャパンの名所を参考にしてな。雪のつもる露天風呂つき宿じゃ」
「風呂つき宿を、作ったんですか?」
「おう。ちょっと見た目には突貫で作ったとは思えんレベルの出来じゃぞ」
 こういう人間はやる気を出すと止まることを知らない。真面目に活かせば世の中ももう少しマシになるだろうに。一体いくらかけたんだ。
「さらーに、ジャパン、ロシア、エジプト、イスパニア、各国から民族衣装を取りそろえ、食の素材もワールドワイド! さらにはさらには、エチゴヤ協賛で、愛らしい猛獣珍獣ペットが大集合!」
 彼を倒せばきっと世界は平和になるのではないだろうか。受付員は本気でそう思うが、とりあえず口には出さない。
「さて、このありとあらゆるものが揃った状況で、王様ゲームを執り行うのじゃ。テーマは冬。冬らしいイベントを王様は是非是非考えて、数字の偶然で奴隷になった者どもをハメていってほしい」

 ここで念のため。王様ゲームのルール。
1.籤を全員で引きます。籤にはそれぞれ番号が書いてあります。番号がない籤をとった人が王様です。
2.王様に選ばれた人は、それ以外の人に一つ命令ができます。
3.命令する相手は番号で指定してください。命令内容によって何人にふくらんでもOKです。
4.実行し終わったら、再び籤を引き直し。これが続きます。
※今回は依頼者の希望により、命令できる内容は冬に関係したものに限ります。

「了解しました。集まるといいですね」
「ふふふ、ワシの知り合いにも声をかけておる。とも是非伝えておいてくれ」
「はぁ」



 そして。
「アストレイア様、招待状が届いていますよ。後でお目通し願います」

「フラン隊長。もしやこのパーティーに参加するというのではありますまいな?」
「ははは、するどいですね。まあ、『たまには』必要なことです」

「私に手紙? 何かの間違いじゃ‥‥ふむ。確かにディアドラ宛になってるわね」

「まあ、王様ゲームですって、ねえ、セバスチャン。ウィリアム様になれるのかしら」
「エカテリーナ様。そういう意図のゲームではないと思いますが‥‥」

 色んな人まで巻き込んで王様ゲームは開催の日を迎える。

●今回の参加者

 ea6215 レティシア・シャンテヒルト(24歳・♀・陰陽師・人間・神聖ローマ帝国)
 eb0916 大宗院 奈々(40歳・♀・志士・人間・ジャパン)
 eb3600 明王院 月与(20歳・♀・ファイター・人間・華仙教大国)
 eb6702 アーシャ・イクティノス(24歳・♀・ナイト・ハーフエルフ・イギリス王国)
 eb8664 尾上 彬(44歳・♂・忍者・人間・ジャパン)
 eb9449 アニェス・ジュイエ(30歳・♀・ジプシー・人間・ノルマン王国)

●リプレイ本文

●王様ゲーム
──特設会場?
 そこは風情のある空間。
 ジャパン風に作られた板間と、そこに広げられている畳。
 巨大なテーブルの上には、ジャパンからやってきたのであろう板前が腕によりをかけて作り出した豪華な料理の数々。
 そして広げられた窓の外には、湯気をたてている露天風呂が広がっていた。
「よしよし。これでよい。あとは招待客が到着するのを待つばかりぢゃな‥‥」
 劇作家ディーは満足そうな笑みを浮かべつつ、客人がやってくるのを今か今かと愉しみに待っていた。

──スッ
 
 音もなく襖が開かれる。
「失礼します。ご主人様、御客人が到着しました」
「おおそうか!! 早速客間に案内してくれ!! 一休みしたらこっちの部屋に来るように伝えて欲しい!!」
 そのディーの言葉を受けて、一礼した後に部屋を後にする受付嬢。
「よしよし。あとは愉しいパーティーが始まるのを待つばかりと‥‥」
 そう呟いて、ディーは客人が到着するまで窓の外をゆっくりと落ちていく雪をじっと眺めていた。


──さて、その頃
「これがジャパン伝来の浴衣なのね‥‥」
 宿に到着した後、荷物をまず置いてゆっくりと一休みした後、レティシア・シャンテヒルト(ea6215)は用意してあった浴衣に手を通す。
 着付など一切判らなかったが、すでに到着して一息ついていた大宗院奈々(eb0916)や明王院月与(eb3600)の手によって、着付の方法は教えこまれていた。
「そう。そこの袖に手を通して‥‥あら、本衿が少しまがっているな‥‥」
「そこは手を出す場所ではないですよ‥‥ええ、身八つ口っていってね‥‥そこではなくて」
 とまあ、女性が集まって愉しそうに浴衣の着付を行なっているようで。
「アーシャさんの体形は浴衣がよく似合いますね‥‥」
 そうアーシャ・イクティノス(eb6702)に告げる明王院。
「そうですか。よく似合うと言われますとなにか嬉しいですね。」
 そうニコニコと告げるアーシャの近くでは、アニェス・ジュイエ(eb9449)がすでに着付けを終えて、色々と画策している模様であった。
(ふふふっ‥‥面白そうね。タブーなんてなし、無礼講でどさくさにまぎれてあんなことやこんなことが‥‥)
「あら? アニェスさん何を考えているのですか?」
 と、ニコニコしているアニェスに問い掛けるアーシャ。
「なななな、なんで私の心のなかを読めるのよ!!」
 動揺しつつそう叫ぶアニェス。
「ええっとすいません。アニェスさん、口に出ていましたよ」
 とレティシアが告げる。
「あ、ああ‥‥そう‥‥なの。ならもういいわ。徹底的に愉しませて貰いますからねっ!!」
 おおっと、ここにきて宣戦布告するアニェス。
 これは大波乱の予感が!!


──一方その頃
「いい景色だな」
 既に浴衣に着替えおわっていた尾上彬(eb8664)は、ディーの元を訪れて愉しそうにそう夫役。
 窓の外をちらちらと舞い降りる雪を肴に、のんびりと杯を傾けている。
「この浴衣というのは、中々に風情があるものですね‥‥」
 フラン・ローブルも藍色の浴衣に身を包んでいる。
 長く綺麗な金髪はそのまま纏め、邪魔にならないようにしていた。
「いい酒ですね。どこの酒ですか?」
 ほろ酔い気分のフランが、尾上に問い掛ける。
「産地は江戸村特産かな。新酒らしいが、それほど美味しいのか?」
 そう問い掛けて、尾上は『しまった!!』と後悔した。
 既にフランはほろ酔い気分。
 となると、この後の展開は読めてしまっていた。
「呑め‥‥」
 と、フランが尾上に杯を差し出す。
「え、あ、いや‥‥まだ宴会はこれからだし、今からそんなにピッチを上げては‥‥」
──ガララッ
 と、突然襖が開き、さらに来客が室内にやってくる。
「あら、もう始まっているのですか」
「遅れて申し訳ありません。みなさん既に御集まりですか?」
 浴衣に着替えたアストレイアとカチェ姉も到着。
 さらに
──ガララッ
「おや、もう始まってしまったのですか‥‥まだ私の席は空いていますか?」
 ウイリアム三世、華麗にも着流しを装備して参戦!!
「う、ウイリア‥‥」
 動揺してそう叫ぶ尾上に、ウイリアム三世は口許に人差し指を立てる。
「おやおや。どなたと御間違えですか? 私はヨシュアスと申します。よろしく御願いしますね?」
──ガララッ
 と、そんなやりとりの中、女性陣も着替えおわって到着。
「あああっ。国王様!!」
「これは陛下。ご機嫌麗しく‥‥」
 動揺してひざまづくアニェスとアーシャ。
「いえ、私はヨシュアスです。陛下ではありませんのでご安心を」
 ということで、とりあえず無礼講ということらしい。
 そしていつのまにかやってきて、壁際に座っているディアドラ(ポリシー保守の為、浴衣には着替えず)も参戦し、いよいよ王様ゲームは幕を開いた。



●狂気に走る冒険者達
──王様ゲーム会場
「1‥‥2‥‥の3ッ!!」
 奈々の掛け声と同時に、全員が中央に置かれている箱から一斉に札を取る。
『王様だーーーれだ!!』
 その掛け声と同時に、ヨシュアスが手を上げる。
「ええっと。どうやら私のようで‥‥」
 ニコニコとそう告げるヨシュアス。
(い、いや‥‥ちょっとまて‥‥それは洒落にならないのでは?)
 誰しもが心のなかでそう呟く。
「それじゃあ‥‥10番と1番の方で‥‥そこの猫と愉しそうに戯れてください」
 おおっと、ずいぶんと生易しい。
「1番は私だよ‥‥」
 レティシアがそう告げて近くの猫のもとへ。
 おなかを見せていた猫が、警戒の目付き。でもレティシアの撫で撫で攻撃に、ごろりんでんぐり、もっとしてぇん態度に移行。レティシアも楽しそうだが、なんとなく『してやったり』な笑顔で、猫を弄っている気配‥‥いやいや。
 そして。
──ズイッ
 と、フル装備のディアドラも猫に近づいていく。
「10番は私だが‥‥猫と戯れるのか‥‥まあいいだろう」
 そう告げて猫に近付く。
──フギャーーーーーーー
 と、その気配を察知してか、『もっとしてぇん』状態だった猫は逆毛を立てて庭へと逃亡。
「ええっと‥‥この場合は‥‥」
 お題の猫が消えてしまったレティシアがそう呟く。
「まあ、おしまいという事で」
 ということで、全員が札を箱に戻す。

 そして再び
『1‥‥2‥‥の3っ』
 一斉に札を取る。
 そして
『王様だーれだっ!!』
 その掛け声に手を揚げたのは尾上。
「ふう。それじゃあ‥‥6番と8番がジャパンで人気の猫鍋になる!!」
 そしていつのまにか用意されていた巨大鍋と『ところどころ猫装備』。 猫耳、猫尻尾、猫ミトンと一揃い。
「ふぇぇぇぇぇん‥‥6番は私ですぅ」
 と手を上げるアーシャ。
「それじゃあこれを装備して‥‥」
 と月与がアーシャにクロスオン(装備)!!
「もう一人は誰だ?」
 と尾上が告げたとき、フランが静かに立ち上がり、猫装備を黙々と装備していく。
「え‥‥あ‥‥そ‥‥そんなっ!!」
 顔中真っ赤にして、さらに瞳をウルウルとしながら鍋に近付くアーシャ。
「こんな狭い所に二人ではいるのですか?」
 と、フランもまた、尾上に問い掛ける。
「まあ、身体を密着して手足を絡めればなんとか‥‥あ、にゃんこ語もよしなに。猫鍋姿はぜひ絵に残させてくれ」
 と告げる渋ぅい笑顔で告げる尾上。
「そんなぁ‥‥およめにいけなくなりますう‥‥」
 と懇願するも、フランに無理矢理鍋に押し込められるアーシャ。
「これでいいのですか?」
 と、鍋の中でモゾモゾと蠢く二人。
 そして、どことなく淫媚に蠢く二人を見つめている一行‥‥。
 アーシャは奈々の視線がどうなっているか確かめたかったが、フランの腕が邪魔で見えない。って、この後どうなる?

「1‥‥2‥‥の3っ!!」
 色々、気を取り直して再び開始。
 そして。
『王様だーれだっ!!』
 その掛け声に手を揚げたのはアニェス。 徹底的に愉しむ発言の実現に向けてか、さっそくあれこれと‥‥
「それじゃあね‥‥1と5は恋人同士になって。そしてパリの市場で、聖夜祭のご馳走の材料を買い集めて、ここ戻って戻って料理して皆に振舞ってね」
 そう告げると、アニェスは大量の衣裳をズラリと並べる。
「こっちのセクシーメイドドレスは1番の人が、5番の人はこっちの誘惑のスーツを着ていってね」
 そのアニェスの言葉に奈々が手を上げる。
「1番はあたしだな」
 さらに尾上も手を上げて‥‥
「5番は俺だが‥‥ま、よろしく」
「こ、こちらこそ‥‥」
 ということで御着替えターーーーイム。
 無事に着替えた二人は、手を繋いで聖夜祭で盛り上がる街に繰り出していったとさ。
 条件は『腕を組んで、尾行する他の一同に聞こえるようなラブい会話を繰り広げること。
 会話の内容は、
「いやあのそれはちょっと」
「まあまあ、楽しそうでいいのでは?」
 以上、冷や汗じっとりの月与と楽しげな酔っ払いフランの反応から推して知るべし。
 そして買って来た材料で、ジャパン伝来の御祝い膳『おせち』を用意。買ってきたものを詰めただけとも言う。
 そのまま皆でつつきまくり、至福の刻を過ごしていった。

「1‥‥2‥‥の3っ!!」
 満腹。
 室内はそういうオーラで充満している。
 そんな中、気を取り直して再び開始される王様ゲーム。
 そして、
『王様だーれだっ!!』
 その掛け声に手を揚げたのはディアドラ。
「それでは。5番と9番は酒風呂でヒンズースクワット300回」
 その言葉に絶句する5番の月与と4番のレティシア。
「酒風呂なんて用意していないですけど」
 と告げるディーに、ディアドラは一言。
「1時間で用意しろ」
 はいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ。
‥‥‥‥
‥‥‥
‥‥

 1時間後。
 露天風呂の横に作られた特設の酒風呂。
 そこに肌着で入っていく月与とレティシアの二人。
 ちなみに殿方は後ろを向いてその光景を見ないようにしている。
「それでは始めっ!!」
 ディアドラの掛け声と同時に始まるヒンズースクワット。
 酒風呂の湯気に二人とも徐々に酔いがまわりはじめていく。
「はぁはぁ‥‥もう‥‥ダメっ」
「こんなの‥‥初めて‥‥もう‥‥」
 なんかそういう二人の言葉に、ギャラリー達はもっとがんばれーの励ましの声援。
「ああ、でももったいないもんだね。もう飲めないし」
「確かにな。飲兵衛がいたら怒り狂うかな」
「でもお肌にはいいそうですよ」
 声援の合間の会話は、全然応援していないというか、酒勿体無い説が主流。それがディアドラに見張られて動いている二人の耳に届いているものか。
 そんなこんなで二人はどうにか終了。 でも湯あたり(?)がひどいので、しばし休憩と相成った。
「次は水風呂に入れるか」
 誰の一言かは、ま、言わなくても。

 しばし休憩の後。
『王様だーれだ!』
 ゲームは再開されて、今度は復活した月与が王様。
「5番の人が全員分のお茶を用意して」
 命令そのものは、結構普通。が、5番はアストレイア。
 由緒正しい家系の出身だから、お茶の振る舞いくらいお手の物かと思いきや。
「あのあたりの葉っぱと‥‥ここは、以前出来なかった苔茶に挑戦してみるのも‥‥」
 感覚が特殊。苔茶、それは彼女が望んで果たせなかったお茶の新境地‥‥?
 淹れるお茶は王様が検分して許可したものでなければ駄目との付随条件が、皆を救ったかもしれない。それとも新たな珍味との邂逅を阻害したものか。
 王様月与、先程に引き続いて顔色が蒼くなっている。

──そして
「なんぢゃこれでもうおしまいか!! もっと愉しもうではないか!!」
 ディーは賑やかにそう叫ぶ。
 だが、ここに至るまで、冒険者達はかなりの体力を消耗。
 とくにアストレイアが王様だったときの『みんなで雪中行軍1時間』とか、レティシア女王の狙い撃ち『奈々とフラン二人で混浴』など常軌を逸したものまでわんさかと。
 特に後者は『混浴』なんて内容なのに、当人達はじめ誰も狼狽すらせず、奈々がフランを引き摺って行った。レティシアの壁板一枚挟んだ状況をつまびらかに語るおまけ付き。
 艶話記録だったら、詳細に書き留めるところだが‥‥そういう感じ。
 ディアドラが2回目の王様だったときの『全員タロンに改宗しろ』は、何処までが冗談なのかわからないし。
 今は、
「冬といえば鍋です」
 と明言したアーシャが王様自ら作った鍋を、表情顔色ともまったく変化がないディアドラと、すっかり酔いが回って『これがジャパンの冬の風流だ』と浴衣の胸元はだけた姿をご披露している奈々がつついていた。奈々はフランの口にも、無理やり鍋の具を押し込んでいたりもする。
 鉄面皮とどこまで本当か不明の酔っ払い×2が食べているから分かりにくいが、鍋の中身は川魚に海魚、餅菓子に焼き菓子、これらをきっつい塩味でくつくつと。
 どんだけ可愛いふりふりエプロンで完全武装しても、家事の得意な月与が頭痛で横たわり、他も巻き込まれないように距離を置いている代物だ。
「どう? おいしい?」
「食べてみろ」
「おお、まだたくさん残っているしな」
 アーシャが自らライトニングトラップを踏んで、ディアドラと奈々に迫られているが、誰も助けない。
 この世のものとは思えない悲鳴がしたかもしれない、しなかったかもしれない。

 そんな悲鳴が楽しそうに聞こえるのか、ディーはかなりはしゃいでいたのだが。
 実は主催者のくせに、部屋の隅に転がって動けない。雪中行軍が腰に来ている。
「そろそろ御開きにしてはいかがでしょうか? 愉しいことは良い事ですけれど、お身体を壊しそうになるまで続けてはいけません」
 と奥方に諭される全員。
 かくして、狂気とも思える王様ゲームは静かに幕を閉じたのであった。

──つづく‥‥のか?

(代筆:龍河流)