【収穫祭】(即席)演劇団の冒険者ライフ!

■ショートシナリオ


担当:DOLLer

対応レベル:フリーlv

難易度:普通

成功報酬:0 G 65 C

参加人数:5人

サポート参加人数:1人

冒険期間:09月24日〜09月29日

リプレイ公開日:2009年09月30日

●オープニング

「座長、今年の収穫祭の演し物どうします?」
 とある劇団のとあるテント。向かうはノルマンの中心部パリ。
 そう、地獄とつながってこの世の終わりが来るとか、なんだか色々騒がれていたものだが、しっかり今年もやって来てはいるのだ。農作物をはじめとして、数々の実りをお祝いする一大イベント収穫祭が。
 様々な場所に巡業して回る劇団、旅団も収穫祭とあらば稼ぎ時。計画を練ってあちこち公演に回らなくてはならない。そうなんてったってこれからがかき入れ時なんだから!
「なんかこう、新しいのやりたいですよね」
「うん、新しいのはいいね。だいたい普通の演し物は他の劇団と被ってくるのが多いし、今年はオリジナルの演し物を用意しておきたいなぁ」
 座長は、団員の言葉にうんうんと頷くが、さりとていきなりポンと飛び出てくるような素敵なアイデアが生まれてくるわけでもない。
 意見は前向きだが、結論までたどりつくことって案外少ないもんだ。だからといって、いっつもおきまりの劇をやるってのも味気ない。
「新しい風、いれないとダメだねぇ。うちらじゃ何にも思い浮かばないよ」
「新しい風、っていうと劇団員増やすんですか? それとも脚本家雇いますか?」
 劇団員を増やすとなると色々大変だ。決して閉ざした劇団ではないが旅をするには色々ちょうどいい数っていうものもあるもんだ。さりとて脚本家なんか雇うなんて王立の劇場で公演できる超人気劇団ぐらいなものだ。旅三昧のこちとらには縁も無ければGもない。
 さて、どうしたものやら。
 どうしたものかというと。
「座長、ちょっといい案があるんですけれど‥‥」



「で、冒険者に演劇やってもらうんですか」
「はい、そうです。出演から脚本まで全部やってもらおうと。ああ、もちろん、大道具なんかはいくらでも用意できますし、どんなはちゃめちゃでもこっちは手慣れた劇団員がいますから、何かあっても何とかまとめちゃいます」
 そういや、その昔、そんなことをやっていた劇団があったような、なかったような。
 ギルド員は遠い目をしながら、新しい風と信じて疑わない、きらきら目を輝かせる劇団員を見つめた。
「いいですよ。でも最近の冒険者は高名な人も増えて、色々大変ですよ〜」
「むしろ、それが大歓迎なんですよ。オーガーすら一刀両断する技力はきっと観衆を沸かせるに違いありません。強大な魔法一つや二つ使われたとしても、観客にさえ被害がなければ大スペクタクルってなものです」
「でも、本番までまだ少し時間があるんじゃないですか? 収穫祭用の演し物なんでしょう?」
「冒険者の皆さんが作ってくれた演し物そのままだと迫力はありますが、冒険者の皆さんだって当日は色んなところに見て回りたいでしょうし。冒険者の動きを私たちがカバーして当日はみせてやります!」
 そこまで言い切った劇団員は初めてかもしれない。彼の所属する劇団員はよっぽと新しいものに飢えている割には技術力は本気で高いようだ。
 本当に技術のある劇団なら、普通の劇をやっても十分に人が集まってくるものなんだけれどね。
「それで、劇をするにしてもテーマは何かあるんですか? 何もないところからとりあえずシナリオから手がけろと言われても何もないところから作るとなると冒険者だって辛いですよ」
「大丈夫です。テーマはあります。ずばり『ザ・冒険者ライフ』です。冒険者による冒険者らしいお話しを作ってくれたらそれでもう」
「わかりました。冒険者ライフね。あー、最後にペットの持ち込みなんですが、ちょっと危険なのもいるかもしれませんが、いいですよね」
「もっちろんです」
 こいつ、ペットのレベルを知らないのか、知ってて自陣満々なのか。おそらく前者だろうが。
「はい、わかりました。あと、損害請求は受け付けませんのでそのおつもりで署名をお願いします」
 ノリノリで馬耳東風とばかりの劇団員にさりげなくひどい約束を交わしながら、契約はこうして成立した。


「さあさ、とにもかくにも冒険者の皆さんによる冒険活劇の始まり始まりでござーい」

●今回の参加者

 ea0050 大宗院 透(24歳・♂・神聖騎士・人間・ジャパン)
 ea2741 西中島 導仁(31歳・♂・ナイト・人間・ジャパン)
 ea3502 ユリゼ・ファルアート(30歳・♀・ウィザード・人間・ノルマン王国)
 eb2905 玄間 北斗(29歳・♂・忍者・人間・ジャパン)
 ec0290 エルディン・アトワイト(34歳・♂・神聖騎士・エルフ・ノルマン王国)

●サポート参加者

クレア・エルスハイマー(ea2884

●リプレイ本文

●序幕
 舞台が幕を開けると、舞台は半分に分かたれ、向かってその右手、円形のテーブルが置かれ、お酒やら調理場やらが覗く背景をした酒場があり、左半分は外側。雑多とした町並みが広がり、そこでは玄間北斗(eb2905)がロープに洗濯物を干している。
「はーい、いらっしゃいませー。冒険者の酒場へようこそ! ゆっくりしていってくださいね」
 その酒場側に立っている大宗院透(ea0050)が観客席に向かってそう挨拶した。
「外は冒険者街なの。今日はどんなお客が来るか楽しみだわ」
 せっせとテーブルを拭いたり、床を掃除していると、早速一番目のお客が現れる。爽やかに白の鎧を身に纏った西中島導仁(ea2741)がお客として現れるる
「いらっしゃいませ。何になさいますか」
「そうだな。それじゃ今日は復興支援を応援するためにアペリティフ・ワインにしよう」
「はぁい、ありがとうございます〜」
 台ふきをなおすと、透は観客席から背を向けて、カウンターで導仁からオーダーされたアペリティフ・ワインの準備をし、導仁はテーブル席に腰を落ち着けたその時だった。
 一匹の子犬が外側で洗濯物を吊していたロープから、まるごとたぬきさんをジャンプして奪い取ると、そのまま酒場の中に走り込んできた。
「いらっしゃいま、あらら〜?」
「あ〜、こら、閃光。待つのだぁ!」
 子犬を追いかけるようにして北斗が酒場の中に駆け込んでくる。
「あ、悪いワンちゃんですね。めっ」
 そういうと、透は準備をしていたアペリティフ・ワインをカウンターにおいたまま、カウンターの向こうに置いていた弓を持ち出し、狙いを定める予備動作もなく、さっと三本の矢をつがえて放つ。それぞれの矢はそれぞれに子犬の行く手を阻むように突き刺さり、閃光に急制動をかけた。その動きに飼い主の北斗も思わず唖然。
「そ、それはさすがにちょっと危険なのだ‥‥で、でもおかげで捕まえることができたのだ」
「そう、大いなる母は全ての命に愛を注ぎなさいと教えてくださっている」
 さらに酒場の向こう側からやって来るのは、神父エルディン・アトワイト(ec0290)。彼は床に刺さった矢を抜き取ると、あら。と思わず手を口に押さえる透にその矢を預けて甘く囁いた。
「危険なことは恋だけにしておくといい。恋の矢は私に刺してみませんか」
 ばしーんっ。
 体ごと引き寄せ囁くエルディンの問いかけに対する返答は、常人では見えないくらいのスピードで放たれた平手打ちだった。
「ふっ、ツッコミはハリセンが良かったなぁ」
「たいへん、大変。みんな、ちょっと聞いて〜」
 そんなドタバタの最中、ユリゼ・ファルアート(ea3502)が冒険者街の端から走ってきた。
「どうしたんだ。そんなに慌てて」
「救護所が悪者に荒らされちゃったの! それで薬草とか奪われちゃって‥‥」
 あわてふためく様子に、声をかけた導仁が、その言葉を聞いて、「何っ!」と立ち上がる。
「ともかく、早くっ」
 その声と共に、皆がそれぞれの用事をおき、真っ正面を向いて立つ。
「みんな、行くぞ」
「「「「了解っ」」」」
 導仁の声にあわせて、4人が言葉を揃えた。
「光刃皇っ」
 その名を呼ぶとペガサスが舞い降り、導仁はその背に。
「フロージュ」
 その名を呼ぶと、霧が辺りを漂い初めその影にムーンドラゴンが姿を現し、ユリゼはその背に。
「ノエル」
 その名を呼ぶと、ペガサスが駆けより、エルディンはその背に。
「五行っ」
 その名を呼ぶと、体格のしっかりした犬が現れ、北斗を乗せ、
「影飛っ」
 その名を呼ぶと、グリフォンが風と共に現れ、透をその背に
「行くぞっ!!!!」
 そのかけ声と共に、冒険者達は舞台から空へ、一匹は大地を爆走し、消えていった。
 そこで一端幕が下りる。

●第二幕
 影飛から降りた透は、観客席の道を通りながら、「救護所を襲った奴をみませんでしたか」など問いかけながら、幕の下りた舞台へと戻ってくる。そして舞台に戻ると、緞帳(どんちょう)の裾をめくり、その向こう側をちらりと覗いて、「見ちゃった!」的な顔を観客席に向けた。
「いました。聞き込みの通り、救護所を襲った悪い人たちがこの向こうにいますっ」
 その後、透が舞台袖に移動するのと同時に、すーっと緞帳は引き上げられた。中は盗賊のアジトをイメージするかのように、薄暗く乱雑に荷物が置かれていた。それらの荷物に何人もの男が腰掛け、談笑していた。
「わははは、うまいこといったなぁ」
「ボスが楽しみにしていた薬草茶、すっごい効くらしいぜ。なな、ちょっと飲んでみないか」
「止めた方が良いんじゃねぇか? ボスに見つかると大目玉だぜ」
 男達が木箱に手をかけて話をしているとき、ぱっと、左手から明かりが降り落ちる。
「待てぇぃっ!!」
「うぉ、な、何者だっ!?」
 ユリゼのペットであるロッテが作り出した光源を背に、左手に作られた崖の上にいつの間にか立っているのは堂々と腕組みをする導仁の姿があった。光源を背にしているためか、男達は眩しそうにそれを見上げるしかできない。
 その崖の下から、微かに立ちこめる霧の中から心を痛めたような表情でユリゼが現れ、男達に語りかける。
「‥‥その薬草は、いいえ、そのお茶は、私たち冒険者でも扱いが難しいのよ。危険すぎる。口にしては駄目その、薬草茶だけはっっ」
「えーい、うるさい。うるさい。これは俺たちが手に入れたものなんだ。俺たちがどうしようと勝手だろう!」
「その薬草茶は強奪したことはわかっているのです。悪党ども、世間の目は騙せても、セーラ様の目は騙せません!」
 のしのしっと舞台袖から歩いて出てくるのは神父の姿、エルディンだ。
「どこにそんな証拠あるんだ、いえるもんならいって‥‥おわぁっ」
 往生際が悪く、しらを切る男達のうち、一人が堂々と足を踏み出した瞬間、いつの間にか張られたロープに足を取られてすってんころりんと転んでしまう。
「お前達の動きはもう読んでいるのだ。しらばっくれても駄目なのだ〜」
 ここで舞台の下に隠れてロープを操っていた北斗が舞台に上がり、全員が揃う。
「えーい、貴様ら、何者だっ!!」
 それと同時に五人がいる辺りの霧が急に深くなり、霧の中から、光、ぼっ、ぼっと生まれ、その中にいる人達の姿が浮かび上がる。皆それぞれ、先ほどまで着ていた個人の服ではなく、形は同じで色違いの服、そしてフルフェイスヘルムを付けての登場だっ!
「‥‥正しき心と強き力を持ち、悪の暴力に屈せず守るべき「もの」のため命を賭けて戦う‥人それを『勇気』という。貴様らに名乗る名前はないが、覚えておくがいい。俺はその勇気をあらわす者、パリン☆レッド! 貴様らを倒す者だ!」
 崖の上から、びしぃっと悪者達を指さし、口上を述べる導仁、いな、パリン☆レッド。
「レッドは相変わらず口上長いのだ。おいらはパリン☆イエロー」
 それを聞いて呆れた声を上げるのは北斗こと、パリン☆イエロー。
 続いて、霧の中からユリゼの声が響く。
「パリン☆ブルー見参‥‥なんてね。ま、通りすがりの冒険者よ 覚えておかなくて良いわ」
 薄くなってきた霧の中、杖を大きく振り回して、その霧を一気に振り払うのはエルディン・ブラック。
「慈愛パワーを受けてみよ! パリン☆ブラック!!」
 そして最後に弓にすでに矢をつがえた状態で立っているのは透だろう。
「観念なさい。私はパリン☆ピンク!」
「五人揃って‥‥」
 五人はそれぞれの色に応じた宝石をはめた腕輪をした腕を天高く掲げて、唱和する。
「「「「「ノルマン戦隊、パリンジャー!」」」」」
 どーん!!
「えーい、やかましい。やっちまおうぜ。みんな。来い!! 冒険者共をやっつけるぞ」
 その言葉に誘われるようにして悪者側の舞台端から、十数人も悪者達が増援としてやってくる。
 数としては大変不利だぞ。パリンジャー!
「どれだけ、数が増えても同じ。いっけーっ!!」
 ピンクが、矢を雨のように撃ち放ち、それぞれ胸に突き刺さっていく。
「ひるむな、ひるむなーぁっ」
 そう言って、先頭を切って走る悪者。しかし、先ほどしかけられていたロープにまたひっかかって転んでしまう。
「もーらいっ、なのだぁ」
 そのひっくり返った男の頭めがけてポカリっ! なかなかせこいぞ、イエロー!
「汝、盗む、べからずっ」
 こちらは相手の攻撃を回避しつつ、説法付きで、法王の杖で相手をぶっとばすブラック! 手も口も体も全部動かせるなんてすごいぞっ。
「ええい、この、あれっ?」
「ふふふ、それは幻影。残念ねっ」
 ブルーの戦い方は光と霧で幻影を見せて、相手のミスを誘う者。さっそく幻影に騙されてしまって呆然とする悪者に横から回し蹴りをたたき込む。
「えーい、こうなれば袋だたきだっ。レッドを集中的に狙うぞっ」
「来いっ」
 どどどっと数人がレッドめがけて突っ込んでいく。観客席からでは取り囲まれて何が起こっているか見えない。だが、悪者達の動きがぴたりと止まると、そのままレッドの足許にずるずる落ちていく。レッドは太刀を構え、腰を落とした状態のまま、深く息を吐き出した。
 気がつけばあれだけいた悪者達も無傷で済んでいるものは誰もいない。ほとんどが地面にはいつくばっている状態だ。
「くそー、ボスー。助けてくださーいっ」
「私の出番のようですね‥‥」
 退却する悪者達と入れ替わりに、エルフの美女が‥‥あれ?
「ち、ちょっと、なんであなたがいるのよ」
「ふ、募集枠が一つ空いていたからどさくさに紛れて、というわけではありませんよ」
 そこにはいたのは、金糸のような長い長髪をした仮面を被った中性的なエルフが立っていた。衣装は黒ずくめだが、どうみたってどっかの隊長‥‥。誰なのか即座に理解したパリン☆ブルーがちょっとげんなりとした声で言葉をかけるが、ボスに気にした風でもない。
「それはともかく、ここの薬草茶を手に入れて、密かにノルマン中のお茶にすげ替える計画をよくも邪魔してくれましたね」
「あんなもの、一般人に飲ませたら危険なことになること請け合いよっ」
「こんな悪い奴はゆるせません。だいたい、ボスはエルフの美女と聞いていたのにっ」
 一歩踏み出し、気合いの入った台詞のブラック。ちょっとじゃなく、それ本音だろう。とみんなが思った。
「さて、それではここでパリンジャーの実力、見せて貰いましょうか。冒険者達も最近は強いとききますしね。手合わせしたいと思っていたところです」
 こきこき首をならして、ボスが近づいてくる。
 やばい。こいつ本気だ。
 とにもかくにも、もう引けるわけがない。ピンクが素早く弓を同時に3本放つが、ボスは最低限の動きだけでそれをかわしていく。続くブラックの法王の杖アタックも軽くいなしてしまう。ブルーの攻撃もひらりとかわし、イエローが背後に回り込むのも黒いマントの裾を掴んで牽制し、近寄らせない。そしてレッドの元に近寄ると、細身の剣を電光石火に早さで抜き払った。厚い鎧の隙間をぬってボスの斬撃がレッドの体に食い込んだ。
「ぬぐ‥‥や、やるな。だが、俺は負けん。ノルマンの民のために、負けるわけにはいかぬ! 人々のあつい思いが俺を動かすっ!」
 レッドはそういうと、全身からオーラを立ち上らせた。切り裂かれた傷口がみるみるふさがっていくではないかっ。
「こうなったら、必殺技だ。みんな、いくぞ!」
「「「「おう!!!」」」」
 5人は飛び下がると、まずブラックの杖を土台にして、上部にピンクの弓を、そして下部にはレッドの剣を備えつけ、それを橋渡しするようにブルーがもっていたミスとロッドをとりつけ、イエローが持っていたロープで一本の武器としてまとめた。
「必殺!」
 5人が武器のそれぞれ一端を手にしながら、それをボスに向けた。
「「「「「ノルマニーック・ファイナルゥッ、スマァァァッシュ!!!」」」」」
 ちゅどーーーーーーんっ。閃光が光り、ファンタズムで作った爆音と閃光を伴った光線が、ボスの身を焼いた。
「やーーらーーれーーたーー」
 非常に気の抜ける声で、ボスはその場でくるくると回転すると、ぽてっと倒れた。
「成敗!」
 観客に背を向けて語るレッド。ブラックもぐっと拳をにぎって観客席に語りかける。
「ノルマンに人々の希望がある限り、俺たちは決して負けることはないのです!!」
「これで悪役も無事退治できたのだ。救護所に奪われた荷物を届けて終わりなのだぁ」
「それじゃ私はこっちの荷物を持ちますね」
 荷物をよいしょと持つイエローとピンク。ちゃんと事後処理を忘れないパリンジャー達であった。
「さあ。戻りましょう。私たちの街へ、冒険者の酒場へ。お仕事も終わったし 久々に蜂蜜クレープが食べたいな。シトロンパンもいい味よね」
 観客から拍手が起こりながら、幕は閉じられたのであった。


●終わりに
「いやぁ、ありがとう大変参考になったよ。冒険者って本当にすごいねー」
「こちらこそ人とのコミュニケーションをとるためのよい修行になりました」
 迫真の演技を見せてくれた冒険者に対して、拍手を持ってむかえてくれた座長の言葉に、透は静かに祈りをこめつつ、そう答えた。
「少しでも参考になってくれればいいのですが」
「収穫祭で、このノルマン戦隊パリンジャーが上演されたら、是非見にいくのだぁ!」
「ああ、それなんだけどね。今年の演目ではやらないことが決まったんだ」
 え。と固まる一同に座長は言葉を付け加えた。
「私たちの演出技術じゃあんなの絶対できないから。飛行するペットもいないし。弓技とか、剣技とか、殺陣の練習しても本物の迫力には到底及ばないからあきらめちゃったよ」
 座長のその台詞は、褒めているのか、やりすぎたことを皮肉っているのか微妙な感じである。
「だから、パリンジャーは君たちだけのものだよ。変身用の小道具として渡したあの宝石類も持って行っていいから。是非、それでワシたちにはできない劇の楽しさをみんなに広めていってくれたまえ!!」

 行け行け、僕らのパリンジャー!
 ちょっとやりすぎたからってあきらめちゃダメだぞ、パリンジャー!
 みんなが君たちを愛してくれる。子供達はきらきらしたその目で「パリンジャー」って呼んでくれるぞ。
 その為の称号と変身小道具の宝石がセットなんだからっ。

 行け行け、僕らのパリンジャー
 ノルマンの明日が待っているぞ!