【収穫祭】とりっく あんど とりーっく

■ショートシナリオ


担当:DOLLer

対応レベル:フリーlv

難易度:普通

成功報酬:0 G 65 C

参加人数:4人

サポート参加人数:-人

冒険期間:11月02日〜11月07日

リプレイ公開日:2009年11月09日

●オープニング

 パリから離れたとある町。距離もはなれていれば伝わってくる情報もずいぶん遅い。場合によっては情報は歪んで入ってくることも珍しくない。

「おい、『はろうぃん』って知っているか?」
 そんな中でここ最近の話題はハロウィンについて。威張りんぼうな子どもが別の子どもに問いかけた。
「知ってる〜。カブでお化けの顔を作ってね、お菓子をせしめるんだよ〜」
 微妙に違う。だけど、それを違うという者もいなければ、おかしいと思うものもいないのが離れた町の恐ろしいところである。
 威張りんぼうの子どもは胸の前で腕組みをしてうんうん、よく言ったぞ。とにこにこ顔の子どもを褒めた。
「そうだ。その時の合い言葉はな、『とりっく あんど とりーっく』っていってだな、いたずらをして驚かせて、お菓子を強奪するんだ!」
「ごーだつ! ごーだつ!! 悪戯した上にお菓子までいただけるなんて最高だね」
「うん、収穫祭最高のイベントだ。是非やらないといけないぞ。おい、みんなにも声をかけよう」
「そうだね。僕、みんなに『とりっく あんど とりーっく』の意味教えてくるよ」
 そして子どもたちによるイタズラ大会が幕開けする。

 続いては大人たちの会話。
「おい、『とりっく あんど とりーっく』って知っているか」
「ああ、子どもたちが話しているのを聞いた」
 男達もまた、間違った知識であることを気づかず、子どもたちの動向からその話題を入手したのであった。
 田舎って怖い。
「このままだと子どもたちにやられっぱなしになってしまうな。おい、俺たちもそのイベントをやろうぜ」
「いいな、子どもたちを逆にびっくりさせてやろう。大人がやっちゃいけないだなんてルールはないはずだ」
 大人たちも収穫祭の祭の雰囲気に酔っぱらって、タガがはじけ飛んでいるらしい。
「よし、『とりっく あんど とりーっく』の意味、みんなに伝えてくるよ」
 そして大人たちもイタズラ大会へと参戦を決めていく。

 そして、とうとう話は冒険者ギルド支所にまで回ってきた。
「『とりっく あんど とりーっく』って知っているか?」
「はぁ? ”Trick and Treat”の間違いじゃないですか? お菓子を渡すか、悪戯か、と子どもたちが家々を回ってお菓子をもらうやつでしょう?」
 冒険者ギルドの受付ともなれば語学や外国知識には堪能だ。それが間違いであることくらいすぐわかる。だが、椅子に座っているだけの受付員では、イタズラ大会が開催されようとしている外の状況など知るよしもない。
「ちっちっち、甘いなぁ。今行おうとしているのは『とりっく あんど とりーっく』だぜ。誰がどんなイタズラしても許される聖なる日! 冒険者のみんなも良かったら参加してみたらどうだい」
「そういうのをギルドを通じて呼びかけたら、エラいことになりますよ。だーめーでーすっ」
「ちぇっ、厳しいなぁ」
 男は残念そうにしながらすごすごとギルドを後にした。
「全く‥‥」
 ため息をつく受付員。
 だが、彼は気づいていなかった。男はこっそり依頼掲示板に『とりっく あんど とりーっく』の趣旨が書かれた張り紙を貼り付けていったことを。
 かくして冒険者にもイタズラ大会の存在が知れ渡ることになったのである。

 イタズラ大好き冒険者、参加募集中。

●今回の参加者

 eb3525 シルフィリア・ユピオーク(30歳・♀・レンジャー・人間・フランク王国)
 eb3759 鳳 令明(25歳・♂・武道家・シフール・華仙教大国)
 ec0828 ククノチ(29歳・♀・チュプオンカミクル・パラ・蝦夷)
 ec4441 エラテリス・エトリゾーレ(24歳・♀・ジプシー・人間・神聖ローマ帝国)

●リプレイ本文


「収穫祭の手伝いとは、いったいどんなものなのか‥‥」
「きっと子どもたちと仲良く遊んだりするんじゃないかなぁ。ハロウィンだし」
 とある町の入り口で、ククノチ(ec0828)が町のゲートを見上げながら、ぽつりと呟くのをエラテリス・エトリゾーレ(ec4441)が聞きつけにこやかに笑って見せた。ククチノが少し心配そうな面持ちだったから、それを吹き飛ばそうという思いがあったのかもしれない。
 しかし、ククノチはハロウィン、という言葉にますます疑問を深めたような顔をする。
「ハロウィンっていうのはね、子どもたちがカブをくり抜いて作ったお化けのかぶり物とか、仮装とかをして、大人からお菓子をもらう日なんだ。悪い霊を追い払う古代の儀式にちなむみたいだけれどね」
「なるほど。そういう日なのか」
 シルフィリア・ユピオーク(eb3525)がハロウィンの説明をすると、ククノチはようやく少し理解したのか、ほむ。と頷き、また、困ったようにうつむく。
「困った。お菓子は持ってきていない‥‥」
「じゃあ、ボクの分、少しだけ分けてあげるね」
 そういうと、エラテリスは腰につけた袋からお菓子を取り出すと、ククノチの両手にわたしてあげた。
「準備がいいのだな。それにしてもこんなにいいのか?」
「えへへ、子供にねだられても大丈夫なようにってたくさん買ってるんだよ。配りきれなかったら、それは責任とってボクが食べるつもりだだったから大丈夫!」
 そんな言葉にも少々申し訳なさそうにするククノチにエラテリスは全然構わないよ〜、と言って笑った。その横からまるごとわんこを被った鳳令明(eb3759)がぴょこんっと顔を出す。
「これからそのお菓子が大切な『命』なっていくにょ〜」
「い、命?」
 お菓子が命だって? なんのことやらさっぱりわからず、ククノチもエラテリスもしばし目を丸くする。
「そうにょ、みんなお菓子を狙ってくるにょで、気ょつけるにょにょ」
「ど、ど、どういうこと!?」
「まあ、町につけばすぐにわかるさ」
 おろおろするエラテリスに、シルフィリアはにこにこして答えた。そんなにこにこ顔がちょっぴり不気味に感じるエラテリス。
「と、とりあえず走っていこー。町につけばどんなことをしているのかもわかるしっ」
 いやな予感を振り切るように、エラテリスはぴかぴかっと金色の光に包まれる。陽魔法を使った証だ。
「何の魔法を使ったんだい?」
「レジストサンズヒートだよ、この時季でも、日焼けには注意しないとねっ。それじゃ先、町に入っているね。後でまたよろしくっ」
 エラテリスはそう言うと、居ても立ってもいられない様子で足踏みし始め、たったと駆けだしていく。
「あ、そんなに急ぐと‥‥」
 シルフィリアの言葉も風のように過ぎ去ってしまう。道をまっすぐ駆けて、丘の上に立つ町へと一直線‥‥。

 とぅるんっ。

 視界がいきなり一面の青空に変わる。
「もう戦いは始まっているにょ〜」
「これは戦いなのか‥‥?」
 ククノチがそう尋ね返す時、エラテリスの視界には星が飛び回っていた。



「だあぁぁぁぁぁぁぁ」
 エラテリスは走っていた。
 しかも全速力で。
 町の入り口からなだらかに続く坂道にはどうやら潤滑油が仕込まれていたようで、ただでさえ快調なエラテリスの足はどうにも止まらないようだ。
「これはどうしたもの、か‥‥」
 エラテリスの横でククノチも順調に快走。上半身では頬杖をつきつつも足だけはシャカシャカ動いてる。共通しているのは悩みも足も止まらないということくらいか。
「どうしたらいいだろう、イワンケ殿」
 ククノチは悩みの末に自分にしっかりついてきてくれているイワンケを振り返ってみた。

 イワンケはどっしり座っていた。走る二人と同じ速度で進みながら。
 そう、まるで滑り台で遊ぶ熊のごとくあたふたせず、流れに乗ってしまっている。

「なるほど。こんな時こそ落ち着いてことにあたれ、というわけだな」
「よし、ボクらも流れにのっちゃおう!」
 エラテリスもイワンケの姿を見て、思い切って足を止め、氷の上を滑るかのようにバランスをとる。元々、走る!元気娘と呼ばれていただけあり、そのバランス感覚は抜群だっ。
 ククノチはバランスをとるのに失敗し、あわや転けそう、というか、転けたところを大きなイワンケが抱き留めてそのまま滑り落ちていく。
「イワンケ殿‥‥」
 大きな体に包まれ温かさを感じる‥‥
 のもつかの間。潤滑油ゾーンはそこで終了。
 いきなり摩擦係数は跳ね上がるわけで、

 びったーんんんん!!!!

「こんなのばっかり〜!」
 思わず悲鳴のエラテリス。そしてククノチはといえば、イワンケもいきなり止まったものだから、そのままイワンケの腕の中から放り出され。

 ひゅるるるるるるーん ずべしゃぁっ ごんごらろらろろらろんっ。

「‥‥痛い」
 ひどい話である。
「ひっかかった、ひっかかった、とりっく あんど とりーっく♪」
 そこにようやく現れたのは町の子供たち。みんなでたたたっと走り、エラテリスとククノチを取り囲んで囃し立てた。
「とりっく あんど‥‥???」
「それ、お菓子を奪い取れ〜」
 わけもわからぬままに、お菓子を強奪されていく、エラテリスとククノチ。
「うわわ、何するんだよ〜。ボクのお菓子がぁぁ」
「食べ物に困っているのだろうか‥‥」
 いや、たぶん困っているわけではないと思うんだが。
「そんなこと言っている場合じゃないよ。第二陣が来る〜」
 第二陣。それは子どもたちにとってかわって大人たちが手にインクやら、焼いてない焼きごてやらを手にいじりよってくる姿だ。
 もはや悪戯になっていない気がするのだが、危うし二人っ!
「おーい、そこの人たち」
 そこに遠くからシルフィリアが声をかけると、大人たちの動きがぴたっと止まる。
「悪戯するなら、このあたいにしてみないかい?」
 言葉と共にいたずらっぽく光る瞳、艶っぽさを強調させるポーズ。
 こらこらこら、悪戯の意味がちょっと変わっちゃってるぞ!!
 男たち一同悩殺。
「悪戯させていただきやーすっ」

 どどどどどどど、ずどんっ。

 男たちは一斉に走って、道のど真ん中に隠されていた落とし穴に先鋒の一人がはまり、後は押せや押せやの大騒ぎのためにそのままレミングスのように次から次へと自殺的にはまっていく。
「おっととと‥‥あぶね」
 最後の一人はなんとか持ちこたえたものの。
「この甲斐性無しがっ!!」
 嫁さんらしき人に蹴り落とされて、結局落とし穴へイン!
 向こう岸ではシルフィリアと子どもたちがハイタッチして喜んでいる。
「ひどい、ひどすぎるよ‥‥」
 エラテリスの言葉は、道のど真ん中に迷惑顧みず掘られた巨大落とし穴の存在のことを言っているのか、多くの男性を虜にしたシルフィリアの魔性の魅力をさしているのか、それとも悪魔のごとき憤怒の形相をしている奥様方のことを指しているのか分からないが‥‥ともかくひどいありさまだった。
「これで終わってはいけないにょ」
 令明はそういうと、よいせ、よいせってその体で引っ張りうる限りの力で卵の山を運び出してくる。奥様方はそれを手に手に。
「とりっく あんど とりーっく!!」
 と、高らかに叫びつつ、男たちのはまった落とし穴の中に卵を叩きつけていく。

 かしょん、ぺちゅぁ、ぐちゃっ、げちゃぐちゃ、の゛る゛るるるーん。

 もはや祭の名前を騙る憂さ晴らし大会だ。落とし穴の中は詳細を書くのもおぞましく思えるほどの阿鼻叫喚地獄と化している。
「い、今の内に逃げた方が良さそうだね」
「同感だ」
「あ、あたいも一緒に行くよ」
 エラテリスとククノチとシルフィリアはすたこらさっさとその場を後にした。
 残ったのは令明一人。
「今度はとりもちをプレゼントなにょにょ〜」
 楽しそうに、阿鼻叫喚地獄をさらなる混沌へと導いていた。



「よくぞ生き残った我が精鋭たちよ!」
「すっかり日も暮れてしまった‥‥」
 令明がまるごとばあるででん、と胸を張っている時、ククノチ達はぜーはーと肩で息をしながら一軒の宿の前に立っていた。
「シルフィリア殿、これは何かの試練なのだろうか。出会う人出会う人に、何かしら攻撃を受けている気がするのだが」
「なぁに、そんなに神妙になるこたないんだよ。とりっく あんど とりーっく。楽しまなきゃ」
「出会う人々と真剣のやりとりを楽しむのだな。巴里には、江戸や京都を模した村があるというが、この町はきっと忍びの里のようなものなのだろう。常に錬磨していくという‥‥私は未熟だった。そんなことも気づかないとは」
「そこまで、深く悟らないでも‥‥これ、いちおーは遊びなんだからさ‥‥」
 うむ、全くである。
「それよりさ、今日はここで休まない? ボクももうくたくただよ」
 エラテリスが改めて宿の看板に魔法の光で照らしつけると『やすらぎの草原亭』という文字が浮かんで見える。
 やすらぎ。なんて甘美な響きだろう。今日ほど安らぎが恋しいと思ったことはない。一同は思わずほっとした空気を浮かべながら、扉をくぐった。
「いらっしゃいませ。ようこそ、やすらぎの草原亭へ」
 穏やかな声が飛び込んでくる。
 あれ、でもどっかで聞いたような。
 一行を迎えたのは、長い金髪を片房だけ編んだ中性的な人物で、ウェイトレスの衣装を身にまとっていたが、その長身には少々丈が短いようだった。もう、わかる人はどんな格好をしてようがわかる。どこぞの騎士団の分隊長だ。女性の格好をしていても堂々としている様はある意味潔い。
「なんであんたがここにいるんだい‥‥?」
「ウェイトレスがここにいたら不思議ですか?」
 爽やかな笑顔でそう受け流されると誰もそれ以上突っ込めない。
「にょにょ〜。フラ、もというぇいとれすどにょはおりが呼んだのだにょ〜。オレサマ マルカジリ」
 かぷっとフラ‥‥もといウェイトレスは令明に頭からかぶりつかれても笑顔のままである。
「ははは、そんなに喜ばなくても」
 笑顔のまま、令明をはぎとり、ポットから異様な色の液体をその口に流し込んでいる。笑っている割にはちょっと怒っているのかも。
「何をするにょにょ〜‥‥げふっ、げふっ」
 ともかく、液体を注ぎこまれた令明はのたうちまわっていたが、しばらくすると、ぴくりとも動かなくなってしまった。
 やすらぎの宿なのに、やすらげない微妙な空気が流れる。
「さて、ところで、今日一日さぞやお疲れのことだったでしょう。当店自慢のメニューで疲れを是非癒してくださいまし」
 何事もなかったかのようにウェイトレスは一行に向き直り、メニューを差し出す。
 おそるおそるシルフィリアがメニューを手に取り開いてみてみると。

「お茶いっぱい Free」

 それだけしか書かれていない。
 ページをめくろうにも、とりもちのようなもので固定されていて、それ以外開ける場所がない!!
「さぁ、何になさいますか? お勧めはお茶ですよ」
 どんなお茶が出されるのか、誰も何も言わなくてもなんとなくわかってしまうところが、このウェイトレスが持つ凄いところ。
「い、いゃ、あたいは疲れてないから」
「ははは、やすらぎの草原茶亭にまで来て気を張る必要はないじゃないですか」
 草原茶亭って。名前変わってるじゃん。
「‥‥すまぬ、私は未熟者だ。度胸が足りない‥‥イワンケ殿‥‥」
 思わず助けを求めて振り返るククノチ。
 そこに立つイワンケの姿を見て、ククノチははっとした。
 今まで暗い町の中で気がつかなかったが、色とりどりに染められたイワンケの毛。ところどころにはリボンがなされ、顔には○やら×やら色々悪戯書きまでなされている。
 だが、イワンケは何も言うことなく、ずっとそばに立ってくれていたのだ。
 これぞ耐える姿!
「イワンケ殿‥‥決して怒らず 何時も静かに笑っている その佇まい」
 思わずほろりと来たククノチは涙を拭いて、振り返った!
「そのお茶、いただこうっ」
「はい、その言葉お待ちしていました。ささ、どうぞ」
 忘れてはならない 平常心。
 心を落ち着かせ 精神を研ぎ済ませれば 如何に未熟な私でもっ
「いざ、まいるっ!」
 ごくっ

 ぽてっ

「さぁて、次はどなたですか」
 ウェイトレスはふりかえると、奇怪な匂いが漂うポットを手にじりじりと近づいてくる。
「ちょ、待って‥‥」
「ははは、そう遠慮なさらずに。苦しいのは一瞬だけです。すぐに花畑が広がりますから」
 シルフィリアが後ずさり、逃げようとした瞬間、達人的な技で間合いを詰めると、シルフィリアの体を抱き寄せ、顔を間近に近づける。
「わ、近‥‥」
 思わず赤面してそう口走った瞬間、開いた口にポットの先が入れられる。

 こぽぽぽぽぽぽぽ。

 シルフィリア撃沈。
「さぁ、最後はあなたです」
 そうウェイトレスは言い、ポットを持ってエラテリスに近づいていく。エラテリスはと言うと、俯いたままだ。
「ぼ、ボクは‥‥」
「逃がしませんよ」
 そう言って、ウェイトレスが一歩足を進めた瞬間、エラテリスは思い切って顔をあげた。
 しかし、エラテリスの顔には表情がなかった。それどころか、目も口も失われた無貌がそこにあるだけだ。
「口がないから飲めないんだよ〜」
「うわっと」
 くぐもったエラテリスの声に、さすがのウェイトレスも驚いたようで、近づいた足を思わずひっこめた。
 そこに、ちょん、ちょん。と何方かが肩を叩く。
 ウェイトレスがそちらをむくとそこには、デビルの形相がっ!
「まーけーてーなーるーもーのーかー」
「!!」
 思わず後ずさりし、壁を背にする。
「にょにょ〜、ウェイトレスどにょ、ひっかかったにょ」
 いつのまにやら、起き上がっていた令明が含み笑いをしながらウェイトレスに宣言する。
 そう、釣り糸でトリモチを誘導準備していたのだ。
「それだけではないにょ〜。お前はGを感じるか、作戦だにょ〜」
 のっぺらぼうエラテリスとデビルの形相のククノチの二人を共にして、令明は動けないウェイトレスに向かって黒くてニックいGを解き放つ。
「くっ、なかなかやりますね。ここは潔く負けを認めましょう」
 ウェイトレスはそう言うと、ぼむんっ、と煙に包まれ、中から大量のお菓子が飛び出てきたっ。かわりにウェイトレスの姿は忽然と消えていて。
「た、助かった‥‥」
 エラテリスはその場でへなへなと崩れ落ちる。
「よくやったにょ。それではお菓子も手に入れたことだし、改めてパーティーだにょー」
「パーティー?」
 ようやく起きあがったシルフィリアが問い返すと、令明はにやりと笑って高らかに宣言する。
「もちろんハロウィンパーティーにょ〜。 今こそおりたちの時代がやってきたにょ〜。とりっく あんど とりーっく!」
 その言葉に全員見事にずっこける。

「「「もう、とりっく あんど とりっくはこりごりだよぉぉぉ」」」