花の香、想ひ出の香(サクラ)
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■ショートシナリオ
担当:DOLLer
対応レベル:フリーlv
難易度:易しい
成功報酬:4
参加人数:6人
サポート参加人数:4人
冒険期間:03月31日〜04月03日
リプレイ公開日:2006年04月10日
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●オープニング
「をををっ! 仏御前さぁん」
あんにゅいな空気の漂う昼下がり。空ろな目つきで資料を整理していた受付員の顔がぱっと輝いた。
受付員の目の前には、いつぞや依頼をしにきた白拍子の仏御前が立っていた。白拍子の水干姿とは違い、袖の短い旅姿で土で汚れているところもあったけれども、白磁のような白い肌や繊細な作りの顔から醸し出される魅力は全く損なっていない。深い黒の瞳が受付員の視線を僅かばかり受け止めただけでもう彼はすっかり骨抜きの笑顔になってしまった。
「お久しゅう、ございます」
ゆっくりとした仕草で、会釈を交わす御前。舞以外で見せる立ち居振る舞いも彼女の雰囲気を一切壊すことなく、動き一つ一つが受付員の心を踊らせる。
「いつ見てもお綺麗ですね。僕もう感動ですっ。はぁ、天女様っていうのはあなたのような方を指すのでしょうね」
「あの‥‥」
「ああ、ごめんなさい。依頼ですね。今度はどこの馬鹿野郎ですか? もう鬼殺しの英雄でも牛殺しの勇者でも、ご紹介致しますよ! 仏御前さんを独り占めしようなんてやつぁ豆腐の角で頭ぶつけて卒倒させてやればいいんだ」
一人息巻く受付員の姿に、御前は口を少し開いて次の言葉を発することができずにいた。
「さぁ、何でもおっしゃって下さい。冒険者ギルドは全力であなたを応援しますから!」
今日もまた胸を張る受付員。しかし、御前は静かに頭を垂れるだけであった。
「おかげさまで、先日冒険者の方々にご教授いただいてから、大きな問題は起こっておりません。森での過ごし方も覚えることができ、森の空気に癒されるようにもなりました。その節は大変お世話になりました。心よりお礼申し上げます」
このように言われては、燃えていた受付員も御前の礼儀正しさに当てられて、かしこまっては同じようにお辞儀をした。
「あ、いえいえ、こちらこそ」
「本日は、さる御仁からお茶をいただき申したので、皆様に是非振る舞いたくお願いに上がった次第でございます」
「お、お茶? 仏御前さんがお茶を淹れて下さるんですか?」
仏御前はこくりと頷いた。茶道も先日学んで、心にゆとりを持つことができるようになったという。そこに偶然お茶の葉をいただいたので、それなら是非茶会を催したいと考えたそうである。
「少し都より外れますが、時を重ねた見事な薄墨桜が咲いている所を見つけましたので、花見も兼ねましてお茶を召していただければと存じます。そこで、皆様の嗜み事やお話などご披露いただければ、これ桜咲く頃の思い出となるかと」
桜の下で語り合い、また桜の咲く季節になれば蘇る思い出‥‥。
受付員のぼぅと憧れるように虚空を見つめる姿に、御前は覗うように小声で尋ねた。
「冒険者の本分とは随分かけ離れたお願いでありますけれども、お聞き入れ下さいますでしょうか?」
「も、もちろんです。冒険者に不可能はありませんっ! 大丈夫です! あ、仏御前さんっ。僕も参加させてもら‥‥」
「却下、だ」
後ろからぬぅっと現れた長が受付員の言葉を制する。
「い、いや、その日はお腹が痛くなるんです! 持病の仮病が発作を起こす日なんですっ。30代前のご先祖さまの法要がぁぁぁ」
受付員くんは、そのまま奥の部屋へとずるずる引きずられて行ってしまったのであった。
南無。
●リプレイ本文
●1
「こちらでございます」
林を抜けた仏御前は小さな広場に少し先行すると、降り注ぐ陽光を背にして、一行に向き直った。ぬばたまの黒髪が別の生き物のように大きく揺れて彼女の動きを大げさにトレースした。
「これは‥‥」
ヴァージニア・レヴィン(ea2765)は彼女が迎える光景に言葉を失った。広場の中央に鎮座するのは、年を経た一本の薄墨桜だ。木肌はよく目をこらせば万色の色相と湛え、枝は一行を迎えるように大きく手を伸ばしていた。巨木には淡雪のような桜が衣のように身に纏い、また広場一帯にも、花びらが絶えることなく舞い散らせる。
「舞う花びらも幻想的で素敵ね。ここまで来たかいがあるというものだわ」
花東沖総樹(eb3983)は広場に一歩足を踏み入れた。途端に足元から舞い落ちた花びらが沸き立つ。総樹はまるで新しい世界に来たかのように、目をあちらこちらへと向けて、この景観を楽しんだ。
「ふむ。いい目の保養になる」
「あぁ、慎ましやかながらも切なさを感じさせるその姿‥‥」
神山明人(ea5209)は顎に手をやりながら、少しだけ小さな溜息をついた。荷物を載せた馬『タンス』を引くヲーク・シン(ea5984)も同様に溜息を吐きながら、その美しさに見入っていた。
「どっちを見て言ってるんだ」
二人の視線が桜ではなく、仏御前しか目に入っていないことに気がついて、天城烈閃(ea0629)は苦笑いして二人に突っ込んだ。二人とも表向きはともかく花より団子、ではなく花より女子なのだから。
春霞でけぶる空に時折、小さな影が走る。天城はその存在を確認して、少し微笑った。彼女がお気に召してくれればいいのだが。
「こんな秘境を探し当てられるのに、随分、森を歩かれたのでしょう。お元気そうなことがよく分かりましたよ。」
御前にそう言ったのは、前回彼女に追っ手の撒き方を教授したクライドル・アシュレーン(ea8209)だった。彼の言葉に御前は深々とお辞儀をして、答えた。
「おかげさまで、健勝にさせていただいております。馬に乗って、こちらを歩いている時にこの桜と出合うことがせできました。これもクライドル様をはじめ、皆様がいらっしゃってこそ。心よりお礼申し上げます」
「こちらこそ花見の宴への招待ありがとう。こんなに綺麗な桜だとは思わなかったわ。この桜の下で舞う仏御前さんのお姿はとても素晴らしいでしょうね。楽しみにしてきたの」
ヴァージニアの言葉にもう一度頭を垂れると、簡素でございますが用意はできております、と桜の根元まで案内した。
花宴の始まりである。
●2
桜の根元では、佐上瑞紀とシルフィリア・カノスのコンビにより敷物が敷かれ、お茶の用意がなされていた。道具からして大仰そうな雰囲気を感じたヴァージニアは少し遠慮がちに声を上げる。
「あの、作法とか知らないから教えていただけたら嬉しいわ。それと、正座はちょっと‥‥」
ジャパンの面々がそうしていたように、正座をしてみたものの、これは結構厳しく、五分と経たないうちに足に電気が走ったようにピリピリとした痛みが走ってきた。これはヴァージニアだけでなく、ヲークも同じようであった。
「大丈夫でございますか? 立派な茶席でもありません故、さほど気にされることもないとは存じますが‥‥」
その言葉があって、ヴァージニアやっと少し足を崩すことにした。
お茶のいただき方。いわゆるお点前というのは次の通りと簡単に説明してくれた。
しかし、言われてそのまま実行するのは難しい。多少の熟練を有している天城や総樹がそれを実行してみせる。見れば簡単そうなのだが。
「ええと、お辞儀して‥‥」
少しぎこちない。
「まあ、本当のお茶席ならお話はあまりできないし、気軽にすればいいと思うわ。今回はみんなの楽しい話や興味深い話を楽しみに来たのよ」
総樹がくすりと笑ってそういうと、さっそくどんなお話を聞かせてくれるのかしら? とヴァージニアに問いかけた。
「私からでよろしいのでしょうか? 私のお話しするのは『湖の姫と妖精王の石版』というものです」
彼女は桜の幹に立てかけておいたローレライの竪琴を手に取ると、一弦、軽く爪弾いた。途端に音の波紋が広がり、舞い舞う桜が音の波に漂い始めた。ヴァージニアが竪琴をかき鳴らすごとにそれに合わせるかのように桜も舞うのだ。
そして彼女は歌い出す。
妖精と手を取りしケンブリッジ 我らが故郷
妖精王の言葉をいただくために 我らは目指す森の湖
湖は鏡の如く 我らを写す
悪しきには悪しきを 善きには善きを 喜びには喜びを
そして純粋な心には 純粋な心を持つ湖の姫が
我らは呼びかける 守護女神ダムデュラックに
この竪琴つま弾く時 鏡は揺れ動き女神は顕現す
偉大なる言葉と共に アヴァロンの至宝へと導く道と共に
「綺麗な歌ですね。光景が目に浮かんできそうですよ。イギリスの地でいろんな活躍してこられたのですね」
音が静まると共にクライドルが拍手と共に感想を述べた。確かに彼女の曲は脳裏に見たこともない世界を見せるかのようであった。
「私が思い出深いのは、サントマリーという仕入れ屋さんのところでドラゴンの調教をしたことですね」
「ドラゴン!?」
総樹が驚いた声を上げる。ドラゴンといえば、あの、ドラゴンだろうが、調教って。
天城も静かに茶を飲んでいたが、ピクリと反応する。
「ドラゴンは最初は興奮に近い状態でして、宥めるのに非常に苦労しました。こちらは手を出す訳にはいかないので、私は魔法が成功するまでの間、ずっと盾で攻撃を受け止めて耐えていましたよ」
そうしてクライドルは自ら身につけていたシールドソードをみせた。確かにそこには深い爪痕が大きく刻まれている。それ自体がドラゴンのものかどうかは判別できる者はいなかったが、その大きな傷跡は並の生物ではないことは誰でも理解できた。
「ふむ、鷲羽とそれほど変わらないな」
「ええ、フィールドドラゴンでしたから‥‥しかしドラゴンと接触出来る機会は少ない上に、色々と学ぶ事もありましたので、有意義であり、印象深い依頼でした」
にこやかに答えるクライドルだが、ふと呟いた天城の言葉におかしなものを感じた。
鷲羽と、‥‥変わらない?
そう思った瞬間、広場に強烈な風が吹き込んできた。天から舞い降りる若きロック鳥、鷲羽の姿が見える。全長10メートル。その勇姿は見る者を圧倒させた。
「最近の趣味として、飼っている若いロック鳥の背に乗っての空の散歩がある。仏御前に興味を持ってもらえたなら、ぜひ一緒に乗って体験してもらいたい」
「い、依頼で犬と仲良しになったことはあるけど、ペットっていっても色々あるのねぇ」
唖然とする総樹の横で、天城は笑って御前に問いかけた。
ところが、その返答は意外なところから返ってくる。
「だーっ!! 風で鍋がひっくり返りそうになっちまっただろ!!」
本日のお弁当を、簡易かまどを作って温め直していたヲークが悲鳴を上げる。見れば鍋がひっくり返りそうなのを必死に必死に抱えてカバーしていた。
「あ。すまん」
「で、空中の散歩は俺達も一緒に体験してよいかな? できれば、皆で帰る時にな」
明人の声が聞こえて、天城は全員乗るのは難しいと抗議しようと思ったが、彼が何故そんなことを言ったのか、すぐに理解できた。
鷲羽の烈風は大地に眠っていた、そして桜の枝から舞い落ちようとしていた花びら大量に巻き上げ、明人をはじめ、この場にいる参加者を花びらだらけにしてしまっていた。鍋にとりかかっていたためしゃがんでいるヲークなど花びらで埋もれそうな気配だ。
「空の散歩、楽しみだな」
明人はにーっこり、と笑ってそう言った。
笑顔が怖い、とはまさにこのことだろう。明人には、二人っきりにさせるか、という別の思惑があったりなかったりするのだが、それは内緒である。
「お申し出、大変嬉しく思います。しかし神山様の仰る通り、皆で体験を共有できることがきっと大切だと存じますので、もし願いが叶うのでしたら、皆で乗ることはできませんか?」
御前にまでそう言われては仕方ない。
「一度に全員乗せるのは難しいと思うが、分かった。やってみよう。風や光と共に空を舞うという、気持ちの良さを感じてくれ」
●3
「おまちどうさまっ。具沢山の煮込み料理の完成だっ」
桜吹雪の嵐が過ぎたところで、ヲークの料理が完成した。それまでの話にほとんど参加もせず、御前や他の女の子にもアタックもかけず、魂を注いで作り上げた料理はとても良い香りがする。
「最初にかまどを作っていたから、びっくりしたけれど、とても美味しそうね。こんなところで温かい料理が食べられるとは思わなかったわ」
総樹が嬉しそうに微笑んで、湯気の立つ鍋をみやった。鶏からとった出汁の香りが鼻孔をくすぐると、もうお昼ご飯にしても十分な時間であることを示唆していた。
「これはうまそうだ。どれ一つ‥‥」
この良い香りには、皆も期待が高まるというものだ。明人は鍋をのぞき込んで少し味見を、思ったが、それはヲークにぴしゃりと止められた。
「だーめっ。仏御前さんと女性陣が先」
イギリス紳士のレディファーストの精神をよく表しているような言葉であったが、明人はそれが下心から来ていることを即座に感じ取った。
「さぁ、どんどん食べてくれよ」
ヲークは器を取り出して一人一人に注いで渡していく。受け取った人は誰も彼も嬉しそうに料理を受け取るものの明人とヴァージニアだけはやや複雑そうな雰囲気だ
「ヲークさんの料理、ねぇ‥‥」
一度、イギリスで依頼を共にした経験のあるヴァージニアは少し不安そうだった。
そんな懊悩をよそにヲークは料理の解説をしていた。
「これはこの冬においしい料理を求めた女性のために作った料理なんだ。少し具材が手に入らなかったりしたのもあるから中身は少し違うけど、この料理で優勝したんだぜ。とにかく具沢山だぜ。まず愛情が。そして煩悩が。さらには下心が。垂れ流さんほどに‥‥」
‥‥カラン。
「あ、花東沖さん。お箸が落ちましたよ」
この美味しそうな料理の隠し味が、愛情と煩悩と下心だと知ると、思わず箸の持つ手の力も抜けてしまう。
クライドルの指摘に引きつった笑いをしながら、総樹は答えた。
「あ、ご、ごめんなさい。ちょっとぼーっとしてたみたい。は、は、はは‥‥」
「下心が浮いて見えるのは、食いたがらんと思うがな」
「なにをー!?」
明人の言葉にヲークは食ってかかるが、明人は気にする風でもなく、ヲークの手作り料理に舌鼓をうっていた。
「あ、あまり暴れちゃダメよ? と、ところで私の思い出深かった話なんだけど!」
なんだか喧噪が激しくなりそうだったので、総樹は思い切って話を切り替えた。
「私が思い出深かったのは、寺田屋で春のお品書きを作ったことね。他の人も趣があったり、流通のことまで考えてあったりして楽しかったわ」
「花東沖様がご提案されたのはどのようなものだったのでしょう?」
料理の合間にいただくための茶を差し出す総樹は、尋ねた御前にウィンクしてそのお茶を見せた。
「ふふ、コレ、よ」
不思議そうに見つめる御前の目の前で、茶の水面に桜の花びらがひらりと、浮かんだ。それを見て、クライドルが合点のいったかように頷く。
「桜茶、ですね。満開の桜の下で桜茶をいただくというのも大変風流ですね」
その言葉を聞いて天城もいただいたお茶の水面に目を落として僅かに驚きの声を上げた。
「このお茶を考えたのは、お前だったのか。なかなかいい感性を持っているな」
「そぉ? そう言ってくれると嬉しいわ。私が営んでいる湯屋でも今度出せないか考えてみるわ。湯屋の屋号もさくら屋、だしね」
また一緒に来ていた明王院月与は、パリにいる知り合いの恋愛譚を話していた。知り合いの女性の方は最近、病弱になって少し心配だと付け加えながら。
●4
「俺の依頼の話は‥‥花見には重いのが多すぎるしな。代わりと言ってはなんだが、ジャグリングを余興にしたいと思う。素人芸で申し訳ないが楽しむのが目的なので許してもらいたいところだな」
そう言うと、明人は旅芸人小道具一式からジャグラー用の短剣を取り出すと、次々と宙に浮いては、円弧を描いて、明人の手中へと戻ってくる。
「すごい、まるで短剣が意思を持っているみたいね」
ヴァージニアが拍手をしながら、それに見入っている。
「まだまだこれからだ」
明人はそういうと、さらに高く短剣を投げ上げて、さらに複雑な軌道を作り上げる。その輪の中に桜がふわりふわりと漂う様子は幻想的ですらあった。
明人はちらり、と目をやり言葉を続けた。
「さて、ジャグリングといえば、お手玉もよくある芸だが、もう一つ芸があってな」
と、そのまま手に帰ってきた短剣をそのまま左方に投げつけた。
「ぅをっ!?」
途端に、御前に急接近中のヲークから悲鳴があがる。
人の芸の合間にナンパをしかけようとした方が悪いのかどうかはしらないが。
「や、やってくれたなぁぁぁぁ!!? この愛戦士ギルスタリオンに勝負を挑むとは良い度胸だ!」
「を、ヲークさん。落ち着いてくださいっ。」
クライドルが慌てて止めに入る。
だが、ケンカも花見の醍醐味か。にぎやかな喧噪が桜の広場をしばし賑わせた。
●5
「皆様。本日はご多忙の中、ご参集下さいまして本当にありがとうございました」
料理もあらかたなくなり、日も少しずつ大地に向かって下り始める頃、仏御前は皆にそう言って頭を垂れた。
「歌、お話、お料理、芸事。全て楽しく思いました。何より楽しいことは、私の知らぬ世界を生きてこられた皆様と本日ここで時を共にさせていただいたことです。思い出は桜と共に。また年が明けてもきっと皆様と過ごさせていただいたこの瞬間をこれからも大切にして参りたいと存じます」
御前が頭を上げると、ヴァージニアがおもむろに竪琴を爪弾き始めた。弦を一つずつ爪弾く物静かな音が。
シャンララ テントン トトン
咲けば散る 咲かねば恋し 薄墨の
思ひ絶えせぬ 花の上かな
テントン シャンララ
散る桜 思えば恋し ありし日を
やんごとなきは 香の上かな
シャンララ テントン トトン
●6
「今日は、舞を見れたり話を聞けて楽しいひと時だった。こういう依頼だと楽しくていいな」
「今日は花見の宴への招待ありがとう」
「片付けも終わったぜ。こんな綺麗なところ汚しちゃいけないからな」
「これからも互いに元気でいましょう」
「今回はみんなの楽しい話や興味深い話も聞けて楽しかったわ! これでまた一つ、お土産話ができたってわけね」
それぞれが言葉をかけて、そして薄墨桜の広場を後にした。
「それじゃ、いくぞ。振り落とされないように気をつけてな。鷲羽。頼んだぞ」
鷲羽が甲高い声を上げると、大きく羽ばたいて空へと走っていった。