【五条の布令】丹後の山焼き(掃討戦)

■ショートシナリオ


担当:DOLLer

対応レベル:4〜8lv

難易度:普通

成功報酬:2 G 88 C

参加人数:14人

サポート参加人数:6人

冒険期間:04月28日〜05月03日

リプレイ公開日:2006年05月09日

●オープニング

「ほぅ、丹後には土蜘蛛が蔓延っておるのか」
 黒の直衣を身に纏い、艶やかな黒髪を肩までに切りそろえた上に烏帽子を被る少年は、父とそれほど代わらぬような歳の男を前にそう尋ねた。目つきはどこか鋭く、墨色に統一された印象から、どことなく冷徹な雰囲気さえ感じられる少年は目の前の男を完全に平伏させていた。
 それは彼の体に流れる血故のものか。それとも自身が持つカリスマ故か。
「は。丹後の山全てと言ってよいほどに土蜘蛛は潜み、村落、また旅人を度々襲っている由にございます」
 両拳を畳について、頭を垂れたまま少年に丹後の様子を報告するのは一色義定。丹後の代官であった。本来武士の流れを組む義定は貴族の衣を着ることは少なかった。雅なだけで実戦向きでない直衣など義定は着たくなかった。常在戦場を旨とする典型的武士の義定にとっては、貴族の服など無用であるとさえ考えていた。
 が、今この少年の屋敷に召喚された以上、その場に応じた服を召さねばならなかった。
 何故なら上座におわす少年はこのジャパンの神皇家の血筋を持つ者だから。数百年の昔から今までジャパンを統括してきた神皇家は義定でなくても絶対的な何かを感じさせた。
「なるほど。そちも難儀であったであろう。主と仰いだ平織虎長は死に、国に戻れば土蜘蛛がおる。内憂外患の中で今までよう頑張ったものだな」
 神皇家の少年、五条の宮は優しく微笑んだ。義定はその笑みを見ることはなかったが、言葉尻からどのような表情をしているかくらいは覗うことができた。
「勿体ないお言葉にございます‥‥」
 そういう義定に五条の宮は答えるでもなく、何かしら考えているようであった。
 春の陽光と風だけが、しばし室内を謳歌した。
「義定よ。丹後に冒険者を遣わせよう」
「冒険者、でございますか」
 うむ、そういうと五条の宮は弄んでいた扇子を鳴らした。
「そちの財政事情では、冒険者と言えども多くは雇えまい。少人数では土蜘蛛を攻めるはおろか守るに徹するのが精一杯であろう」
 義定は直感した。この男、既に前回の土蜘蛛退治を冒険者に依頼したことを顛末まで含めて知っていたのだ。多くの報償を払えなかったがために土蜘蛛の数に対して、攻めに転じれず、民とのギャップを浮き彫りにさせたということさえも知っていたのだ。
「ご賢察、恐れ入ります‥‥」
「巣や山を攻めるなら最低20人は必要だとも聞く。少し少なめにして実力がそこそこある者を中心に雇えば、そこそこの効果は期待できると考えるのだが、いかがであろう?」
 明るい声で提案する五条の宮。年相応にさえ思わせるが、その背後には高い情報力と分析力が備わっていることがうかがい知れた。祖父の代に神皇の座を争って破れ、流刑にされたものの、文武はもとより実行力に卓越した才、そしてどの勢力にも属さぬ中立性から、虎長の暗殺により空位となった京都守護を任されることとなった五条の宮は、あるいはその権力を取り戻せるかもしれないと思わせるに足る人物であった。
「ご厚情に感謝の言葉もございません‥‥五条の宮殿下の想いを泡沫に帰すことのないよう、これまで以上に内政に精進いたしまする」
 深々とお辞儀をする義定に五条の宮は重々しく頷いたのであった。

●今回の参加者

 ea6354 小坂部 太吾(41歳・♂・志士・人間・ジャパン)
 ea6358 凪風 風小生(21歳・♂・志士・パラ・ジャパン)
 ea8445 小坂部 小源太(34歳・♂・志士・人間・ジャパン)
 ea8755 クリスティーナ・ロドリゲス(27歳・♀・レンジャー・ハーフエルフ・イスパニア王国)
 ea9929 ヒューイ・グランツ(28歳・♀・レンジャー・エルフ・イギリス王国)
 eb0971 花東沖 竜良(34歳・♂・志士・人間・ジャパン)
 eb1529 御厨 雪乃(31歳・♀・浪人・人間・ジャパン)
 eb2021 ユーリ・ブランフォード(32歳・♂・ウィザード・人間・ノルマン王国)
 eb2690 紫電 光(25歳・♀・志士・人間・ジャパン)
 eb3501 ケント・ローレル(36歳・♂・神聖騎士・人間・イギリス王国)
 eb3600 明王院 月与(20歳・♀・ファイター・人間・華仙教大国)
 eb3601 チサト・ミョウオウイン(21歳・♀・ウィザード・人間・イギリス王国)
 eb3933 シターレ・オレアリス(66歳・♂・ナイト・人間・神聖ローマ帝国)
 eb4668 レオーネ・オレアリス(40歳・♂・ファイター・人間・フランク王国)

●サポート参加者

キルスティン・グランフォード(ea6114)/ デュランダル・アウローラ(ea8820)/ アルディナル・カーレス(eb2658)/ ジークリンデ・ケリン(eb3225)/ ネフィリム・フィルス(eb3503)/ 花東沖 総樹(eb3983

●リプレイ本文

「約束通り蜘蛛ども潰しに来たぞ!おえらいさン達ぁ、お前らを見捨てなかったぜ!」
 ケント・ローレル(eb3501)の威勢のいい声に、土蜘蛛との争いに使う武具の手入れを行っていた丹後の土侍達はその声に顔を上げた。
「おぅ、この間のじゃねぇか」
「さて、今回の戦いで少しでも状況が良い方に傾けば良いのだが‥‥」
 ユーリ・ブランフォード(eb2021)は連なる山々の姿を見てつぶやいた。この村に限らず、丹後の村のほとんどは、山に囲まれ、海に面している。山紫水明の景色とも言えるこの中に、土蜘蛛が雲霞の如く隠れ潜んでいると思うと、どこかくすんで見えてしまう。
「なぁに、あたしがついてんだ。突っ込めばなんとかなるよ」
 と豪気な言葉を口にするのはクリスティーナ・ロドリゲス(ea8755)。無理、無茶、無策、無謀と一通り揃っているものの、案外緻密な作戦行動を立てる知恵者でもあるのは、前回の作戦でも明らかであった。
 クリスティーナと同じように弓を背負っているのは、ヒューイ・グランツ(ea9929)。彼女は山の一つ一つを窺うように眺めている。
「すまないが、大江山、というのはどの山かな?」
 その言葉に村人は凍り付いた。不吉な言葉を聞いたかのように皆血の気の引いた顔でヒューイの顔を見るが、当人はその言葉の指す意味がわからず、何故村人の様子が変わったのだ? と逆に悩まねばならなかった。
「大江山に、行くのか‥‥?」
「土蜘蛛が最も多い山なのだろう? 巣を潰すためにも必要なのだが」
 花東沖竜良(eb0971)もその情報は必要だと感じていた。どこから土蜘蛛は来て、どこに群がっているのか。原因が何かあれば、解決の糸口につながるかもしれないと考えていたからだ。
「大江山に土蜘蛛はいねぇよ。あそこは鬼の巣窟だ‥‥丹後であって丹後でねぇ。別世界さ」
 土侍はそこまで言って、言葉を切った。
「鬼の巣窟、ですか‥‥」
 土蜘蛛に加えて鬼もいるのか。敵の多いところですね。花東沖は顔を曇らせながらそんな話を聞いていた。顔色があれだけ変わるということならば、実被害も決して軽いものではないのだろう。
「わかりました。ありがとうございます」
 花東沖は早々に頭を下げて、大江山に対する話を打ち切った。後々の憂いを消すつもりであったが、それはまた別の機会に考えなくてはならないようであった。


●戦1 待ち伏せ
「土蜘蛛が来るぞ。数は‥‥30!」
 二日目。冒険者達は村で一通りの準備が済むと早速山へと入った。魔法使いや弓使いを中心にして、戦士達が囲うように円陣を組み、村人達が奨めるポイントへと進んだ。
 先行して土蜘蛛の巣を刺激し、おびき寄せるのはケントの役割だ。彼の動きを元に追いかけてくる『呼吸』の数えて報告するのは紫電光(eb2690)だ。
 山がやたらにうるさい。そしてこちらに駆けてくる足音も一行の耳によく届いていた。
「何処まで役にたてっかはわからんけど、いっちょう頑張ってみよっかね」
 御厨雪乃(eb1529)の言葉と同時に、ケントが皆の元に姿を現した。
「待たしたな! それじゃ頼んだぜ!!」
「それでは参ります」
 微かな笑みとともに、小坂部小源太(ea8445)は自分の分身に松明と油を持たせケントの来た方向へと向かっていく。
「それでは‥‥参りますね」
 土蜘蛛の足音がもうまもなくこちらに到達しようとする時、チサト・ミョウオウイン(eb3601)がスクロールを広げた。魔力が森に放たれ、土蜘蛛を絡め取る巨大な網を形成していく。フォレストラビリンスだ。
「深追いはしないで下さい。私たちが迷ってしまうかもしれませんから‥‥」
 チサトの言葉に一同は頷いて、土蜘蛛が迷い、足音が乱れるのを待ったが、土蜘蛛達の足音は乱れることなく着実にこちらに迫ってくる。
「しまった。すっかり失念していた」
 ユーリは舌打ちをするとすぐさまファイアーボムの詠唱に入った。事が思うようにいかないことを悟った御厨も得物を構えながら、ユーリに問うた。
「いったいどげんしたとね?」
「フォレストラビリンスは精神に作用する魔法だ。土蜘蛛のような虫に、迷うような高尚な精神は持ち合わせていない」
 土蜘蛛退治にあたり以前から生態を探っていたユーリだからこそその間違いにすぐ気が付けたのだ。チサトも後ろでその過ちにようやく気づいて、絶句した。
 と、同時に響き渡る爆炎の立つ音。仕掛けたファイアートラップが発動したようだ。
「ともかく。討ち漏らさないようにいくぞ」
 ユーリはファイアーボムを放ち、土蜘蛛の姿が見え始めた茂みに向かって打ち込んだ。小源太の灰による分身にうまく着火したようで、途端に緑の世界が赤色に変貌していく。
「千覚。ファイアウォールの準備を。取り囲まれないようにして」
「ふむ。延焼は大丈夫かな。わし1人で食い止めることもできそうだが」
 明王院月与(eb3600)が妹のチサトにそう言うのを聞いて、シターレ・オレアリス(eb3933)はそんな森を真正面から見据えてつぶやいた。
「火がひどくなる前にワシが止めて進ぜよう‥‥維新組が火の志士のわしの仕事じゃな」
 小坂部太吾(ea6354)が自らの槍に炎の魔力を込めてそう言った。
 まもなく火のついた茂みからとうとう土蜘蛛が姿を現した。毒々しい黄色と黒のコントラスト、脚を広げれば1メートルは超える体長は決して見慣れるものではなく、それが折り重なるように幾匹も姿を現せば、おぞましさを覚えさせる。
 構える一行と土蜘蛛との顔を合わせてからの最初の攻撃はクリスティーナとヒューイによる矢の一撃からであった。醜悪な顔に2本、3本と続けざまに突き刺さる。
「臭いモノには蓋をしろ、とジャパンではいうのだろう?」
「二度と出てこれねぇように念入りにな!!」
 続いて飛び出てきた土蜘蛛はその身を完全に茂みから脱する前に、太吾の槍によって差し貫かれた。同時に、レオーネ・オレアリス(eb4668)の一撃が新手の土蜘蛛を瞬滅していく。
『ギィィィィィ、ギィィィィィィ‥‥』
「まとめてこっちから出てくるよ!!」
 凪風風小生(ea6358)は直感した。この声は断末魔などでは決してない。急いでライトニングサンダーボルトの詠唱に入る。
「まとめてこちらから来るのならばむしろ好都合だ。ルークの守りは鉄壁!! 土蜘蛛ごときに敗れようはずがないっ」
 レオーネもGパニッシャーを構えて押し寄せてくる土蜘蛛の気配に立ち向かった。
「悪いけどゆっくり付き合うほど暇じゃないんだよ!!」
 月与もレオーネの側に並んで、月桂樹の木剣を構えた。蜘蛛がいまさら横から不意打ちすることもないだろう。
 ファイアウォールの完成によって、土蜘蛛の動きは制限されたことにより一方的な戦いとなった。戦の後、太吾のプットアウトで山火事も防ぐことができ、完全勝利を得たといってよいだろう。


●戦2 遭遇
 三日目。次の待ち伏せポイントと選んだ場所に向かう前に既に敵はいた。土蜘蛛達が山を下ってくるのと同時だったのだろう。一行を半円状に取り囲むようにして、土蜘蛛達は構えていた。
「取り囲まれていますから、ファイアウォールは‥‥使えません」
「全部、しとめちまえば問題ないよっ」
 クリスティーナの豪語と共に放たれた矢が開戦の合図となった。
「黄雀。わしらの討ち漏らした土蜘蛛をよろしく頼んだぁよ〜」
 御厨は鷹を飛び立たせると、桃の木刀で手近な土蜘蛛を叩き切った。土蜘蛛は案外柔らかく、返す刀で頭部に連続してたたきつけるともうほとんど動かなくなっていた。
 一方その左手ではこちらでは維新組の二人が武器を構えて、10匹以上の土蜘蛛と対峙していた。
「光。行きますよ」
「了解でっす!」
「「維新組志士が、戦術奥義、雷火扇陣!!」」
 二人の振るった剣から赤と黄の剣風が土蜘蛛を襲った。密集していた土蜘蛛は二人の攻撃に一瞬で半壊していく。
「ほぅ、腕は‥‥上がっておるようじゃのぅ」
 太吾はそんな二人の様子をみて、微かに目を細めた。
「それにしても、数が、多いですね‥‥!!」
 花東沖ケントと共に一匹一匹、確実に土蜘蛛を倒してゆく戦い方で戦を進めていたが、土蜘蛛からの反撃に手間取っていた。一匹をかわしても、その横から上から土蜘蛛は牙をむいた。
「くっ‥‥」
 土蜘蛛の牙が小手に突き刺さった。鈍痛が響く。このまま傷を受け続ければ、きっと体の自由を奪われていくことだろう。
「花東沖っ、大丈夫か!? ちくしょう、来るならこっちに来やがれってンだ!」
 ケントが攻め込んでくる土蜘蛛の勢いを生かして、そのままカウンターをたたき込んで沈めるが、数が圧倒的に違う。花東沖を庇おうと大振りになれば、今度は彼の足下にも牙が突き刺さった。
「っのぉぉぉ!!!」
 足の感覚が急速に薄れていくのを感じてケントは悪態をついた。目の前にはまだ牙をむく土蜘蛛がいるのにだ。新たな土蜘蛛は容赦なくケントに襲いかかった。
 ヒュトンっ!!!
「やらせん!」
 ヒューイの矢がケントを襲う土蜘蛛に突き刺さった。続いて、放った矢は頭部を間違いなく指し貫いた。
 その横ではチサトのウォーターボムが月与の前にいる蜘蛛を押しつぶしていた。月与の飼っている鷹、玄牙が主人を精一杯サポートしている。
「か、数が多すぎる‥‥一撃は大したことないけど、毒が‥‥」
 手傷は何度も負った。その度に毒に耐え、ポイントアタックで相手を倒していたが、少しずつ毒が全身を巡っていくのがわかる。
「解毒剤、飲む‥‥?」
「大丈夫だよ、他の人も毒にやられているみたいだから、そっち優先してよ。あたいまだ大丈夫、だから」
 お姉ちゃん、少し、強くなった‥‥?
 気力だけで武器を振るい続ける月与の背中が少し大きく見えた。
 全体を通して、一番優勢に戦いを進めているのは、シターレとレオーネの親子であった。プロテクションリングをはじめとする強力な装備に土蜘蛛の牙は一切立たず、Gパニッシャーが振り下ろされる度に、確実に土蜘蛛を無力化していった。
「こちらの方はこれで最後のようだな」
 レオーネの脛にかみつこうと無駄に牙を剥く土蜘蛛に真上から、Gパニッシャーを振り下ろして、レオーネは周りを見た。前衛の仲間のほとんどは毒に犯され、回復と後衛の攻撃だけで持っているような状態だった。まともに渡り合っているのはうまく敵の攻撃をかわしている御厨くらいなものか。
「うむ、数が多いので少し手こずったな。倅よ。手分けして援護に向かうぞ」
 シターレの声にうなずくと、親子の獅子奮迅の働きが再開された。


●戦3 敗走
 四日目。前日使えなかった待ち伏せポイントを利用しての攻撃が行われた。
「お、おいら、こんなたくさんの敵初めてみたよ」
 遠目と音で確認する凪風は言葉をやや無くしそうになりながら、迫り来る敵を眺めた。
 50匹くらいか。しかし足まで含めれば1メートルはある土蜘蛛の群れを森に配置すると、木々を除ければ30メートル四方の敷地を埋め尽くしていた。
「解毒剤の数ももう前回の戦いで半分以上使ったっちゃよ‥‥」
「あたしは、矢昨日で撃ち尽くしたよ」
 御厨が荷物の中身を思い出しながら報告する。クリスティーナに至ってはヒューイから矢を借りている始末だ。
「こんなにいなければ、やりあえたと思うんだけど、難しいね」
「しかし、これだけの数の敵を放っておくわけにもいかないな。俺が最前線で戦う。防御力には自身がある、皆にに損害が行かないように先駆けとして率先して戦おう」
 肩をすくめる光の横でレオーネが一歩前に進み出る。
「仕方あるまいな。無理は、するなよ」
 ヒューイが矢を番えるのを見て、一同も同様に武器を構えた。
「魔力が尽きるまで、つきあわせてもらうよ」
 ユーリがファイアートラップの詠唱に入った。最後の戦いは近い。

「レオーーーネッ!!」
 戦は散々なものだった。前回よりも数が増えたのに従い、フォレストラビリンスの魔力を打ち破った土蜘蛛も前回より多く、3つの出口を見破られた。その前にユーリのファイアーボムとファイアートラップ、凪風のライトニングサンダーボルトで若干の数を減らしたもののほとんどが多少の手傷だけで攻め寄せることになった。
 真正面で多くの攻撃を引き受けていたレオーネは、牙に対しては絶対の防御力をもって土蜘蛛の足を止めていた。
 しかし今、レオーネは完全に押さえ込まれていた。土蜘蛛が一斉に押し倒しにかかったからだ。無類の防御力を誇るルークも、単体ではその攻撃を完全に止められずに、起きあがろうにものしかかられた体重をはねのけられない。
「おぬしら、どけ、どかぬか!!」
 シターレが一撃、また一撃と土蜘蛛を叩き潰しながら、レオーネへと向かってゆく。
「シターレさん、おいらが道を作るよっ!!」
 凪風がそう叫ぶと、渾身のライトニングサンダーボルトを放った。木々や山の凹凸に阻まれてそれほど遠くまでは飛ばなかったが、確かにそれはシターレに道を開いた。
「押し寄せてくる敵なら、僕が止める」
 ユーリもファイアーボムを唱え、レオーネの背後にまだ残る敵を吹き飛ばした。そんなユーリに向かっても土蜘蛛が攻め寄せるが、クリスティーナとヒューイの弓矢によって動きが封じられる。
「てめぇら、生かしちゃおかねぇ!!」
「手加減も容赦もせんぞ!!」
 それでも寄せる土蜘蛛には小源太と光の雷火扇陣がことごとく吹き飛ばし、毒を負った者にはチサトが薬を持って走った。
「これで大丈夫です‥‥あと少しがんばりましょう」
 それでも残った敵には、太吾と花東沖、そして御厨と月与が四方を固め、確実に潰していった。
「維新組の名にかけて、負けるわけにはいかんのでな」
「俺の剣で守れるものがあるなら、多少の犠牲は厭わない。仲間の命をとらせたりはしない!」
「まだやれるんよ。そやきにあんたらの好きにはさせんよっ!」
「もう誰も傷つけさせるもんか。奪わせるものかっ!!」
 シターレの一撃がレオーネを押さえ込んでいた土蜘蛛を叩きつぶした。自由になったレオーネの右手がGパニッシャーを強く握る。
ギィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィ

土蜘蛛の鳴き声が響いた。




●結果
「冒険者の働きはどうであった?」
「は、打ち倒した数は100に足りませんでしたが、その働きは丹後の民に輝きを与え、自らがより一層土蜘蛛や鬼を退治し、自らの国を守ろうとする者が増えております」
「そうか、人民に影響を与えることができるとは、なかなかに優れた冒険者ではないか」
「これも偏に五条の宮殿下のお働きにございます」
「それほど頭を下げるでない。みっともなかろう」
「いえ、あの平織は丹後を攻めはしませんだが、国の援助をこのようにしたこともなかった故、殿下の心遣いには深く感謝しております。この義定。五条の宮殿下にこれからも付き従ってまいります」
「そうか。これから頼むぞ。義定‥‥」