お化け神社に挑戦(あたっく)!

■ショートシナリオ


担当:DOLLer

対応レベル:3〜7lv

難易度:やや易

成功報酬:1 G 64 C

参加人数:8人

サポート参加人数:1人

冒険期間:09月14日〜09月19日

リプレイ公開日:2006年09月24日

●オープニング

「神様、仏様。どーか歌と踊りが上手になって、たくさんの人に喜んでもらえますよーに!!」
 自称歌って踊って戦える『あいどる』少女シャナは、ぱんぱんと柏手を打って礼拝した。
 ここは都より数日下ったところにある豆彦神社。ご神体は浄人王という、歌い踊って父親の病を治したという伝説の人。彼女が思わず手を合わしたくなるのも当然のことだ。
「おや、お嬢ちゃん。参拝かい?」
 ふと振り向くと、この辺に住んでいるっぽいお爺さんがいた。鍬を担いでいるから間違いない。
「うん、おじさんも参拝? 舞手のような感じじゃないけど」
 獅子舞なら顔はわからないけど、少なくてもこの曲がった腰じゃ普通の踊りはしんどそう。あ、いや、どじょうすくいならむしろぴったりかも!
 そんな心の中の独り言をお爺さんは露知らず、にこにこ笑って神社を指さした。
「わしはこの向こうに住んでおるだけじゃ。それより、もし踊りが上手になりたいというなら、数日後に開かれる祭に参加してはどうじゃ? 祭ではこの社に入って、一番奥にあるお面をとってくるという神事があるんじゃ。その面を被って踊ると、将来踊りで大成するそうじゃぞ」
「ほんとですか? やるやる!!」
 思わず二つ返事に答えてしまうシャナ。
 そう。いまいち踊っても振り向いて貰えない彼女は最近ロクに稼いでいない。おかげで服はボロボロ、草履はすり切れ、御飯は毎日泥棒猫との争いだ。これはまさに神様からの啓示!
 それに神事というからには、無事に面を取ってきたら、お祝いでお供えの食物にありつけるかもしれない。チャンスよ。ええ、起死回生の一大チャンスだわ! とシャナは意気込んだ。
「そかそか。ではちゃーんとお祓いしてもらうんじゃぞ。お嬢ちゃんの踊り楽しみにしておるからな。やぁ、神事が開かれるのは何年ぶりじゃろ。楽しみじゃなあ」
「まっかせて! って、え。オハライってナニ? 何年ぶりって、もっしもーし?」
 有頂天の彼女でもギリギリその怪しげな言葉を拾うことは出来たようだった。

 豆彦神社のご神体、浄人王は病払いとして仮面を被り、舞踊ったという。その面には神が宿っているそうな。社から取ってくる面というのはまさにそれ。ただしその云われから、奉納されたお面などがたくさんあるらしい。間違えてとってきたらそれはアウト。本物のお面は月光の元でとても綺麗に輝くそうだ。
 この神事がなかなか成り立たないのは社に憑いた家鳴りのせい。面を取りに社に入れば、仮面がびゅんびゅん飛ぶわ、笑うわ、帰れと連呼するわで、普通の踊り手は肝を潰して気絶してしまうそうな。ただしこれは浄人王がお面を被るにふさわしいかどうか試しているのだという。
 で、近場の人たちはみんな怖くなって誰も挑戦しなくなってしまった。元々舞手志望なんてそんなにいるわけでもなし。長らく封印された神事になってしまったそうだ。仕方ないので最近は代わりのお面をつけた人が祭の席で舞い踊ることで落ち着いているそうだけれど。

「お祓いってじゃあ、家鳴りのため?」
「そうじゃ、たまに冒険者が退治してしまいそうになるが、あれは浄人王だといわれておるので退治してはいかん。その中を駆けて駆けて無事に本物のお面を取った者が、ちゃんぴょんと言う訳じゃ」
 シャナ。お化けはあんまり強くない。
 しばらく、血の気の引いた顔でいろいろ考えていたが、空腹はもう限界。えい、逃げて餓死するくらいなら、前向いて死んだ方がいい!
「負けないもん、シャナ、がんばるからね!!!」
 とりあえず冒険者の人に相談してみようと誓うシャナであった。

●今回の参加者

 ea4258 紅桜 深緋(29歳・♀・忍者・人間・ジャパン)
 ea4885 ルディ・ヴォーロ(28歳・♂・レンジャー・パラ・イギリス王国)
 eb0503 アミ・ウォルタルティア(33歳・♀・レンジャー・エルフ・インドゥーラ国)
 eb3402 西天 聖(30歳・♀・侍・ジャイアント・ジャパン)
 eb4906 奇 面(69歳・♂・陰陽師・人間・ジャパン)
 eb5009 マキリ(23歳・♂・カムイラメトク・パラ・蝦夷)
 eb5228 斑淵 花子(24歳・♀・ファイター・河童・ジャパン)
 eb5475 宿奈 芳純(36歳・♂・陰陽師・ジャイアント・ジャパン)

●サポート参加者

鷲尾 天斗(ea2445

●リプレイ本文

●さぷらいず!
「シャナさん、お手伝いにきましたよー」
 そう言って、ぱたぱた手を振るのはアミ・ウォルタルティア(eb0503)。依頼人のシャナとは以前、彼女の絵を描くからのお友達。そんなアミの姿を見てシャナはパッと顔を輝かせた。
「アミちゃんが来てくれたんだ。やったぁっ!」
 見知った顔が来たことにせき止めていた気持ちがあふれ出たのか、ダッシュで駆け寄り、アミに抱きつ‥‥
「ぐぇ」
 潰した。
「あっはは、随分元気いいね。これなら怖いところでも大丈夫じゃない?」
 そんな様子を見て、くすくすと笑いながら手を差し伸べるのはルディ・ヴォーロ(ea4885)だ。そんな彼は色とりどりで織りも模様も様々の鮮やかな布を背負っていた。
「その布はなに?」
「ああ、これはお供え物だよ。ここの神様は舞の神様でしょ? だからヒラヒラした布はその象徴なんだって。仮面借りてきちゃうのに、手ぶらで行くのももね?」
 へー、とそんな事前情報さえも知らずにいたシャナは布を手にとって眺めた。それほど良い布ではないが、確かに舞い踊るにはなかなかいいかもしれない。そんな思いでシャナは布をめくっていき、最後の布をめくり終わった。そこにあったのは闇ではなく、緑と黄色の素敵なコントラストのお顔。
「一枚たりなーい」
 布の下から出てきたのは、斑淵花子(eb5228)の顔であった。いや、ルディの体の後ろでそんな様子を(ちょっとばかりの悪戯心を込めて)眺めていただけなのだが。でも、河童の顔がいきなり目の前にあったとしたら?
「ぎゃゃゃぁぁぁぁああ、でたぁぁっ!!?」
「まだら淵の花子なのです。楽しく逝きましょうねー」
 そのままでにっこスマイルで挨拶をした花子であったがそこにはもうシャナの姿はなかった。宿奈芳純(eb5475)の後ろで涙目になりながら隠れている。
「大丈夫ですよ。仲間です。彼女を怖がっていたら仮面を取ることはできませんよ。何でしたら少し屋台でも周りましょうか。一緒に過ごしていたら気持ちもほぐれてくると思いますよ」
 宿奈は猫なで声でしがみつくシャナに言って、ほらほらと頭を撫でた。大丈夫ですよーっと体で表現する花子の姿にほっと溜息をついて、シャナは改めてお辞儀した。そして、宿奈を見て‥‥月光に背にした女の面をしたその顔が浮かび上がっている光景に声にならない悲鳴をあげる。
「大丈夫?」
「まぁ、慣れていますので」
 今度は紅桜深緋(ea4258)の後ろに泣きついているシャナの姿に苦笑しながら宿奈は仮面の頬を僅かに掻いた。
「皆で一緒に行くのですから、恐くないですよ。私達が守りますから。それに‥‥」
「それに?」
「何もないところで転んでも大丈夫です。気にすることありませんから」
「な、何故それをっ!?」
 うふふふ。笑みを浮かべる深緋はその理由を決して答えなかった。ただ、非常に親しげな笑みだけを浮かべていたという。
「さぁ、それではご一緒に行きましょう」
「いや、あの、もしもーし!?」

●はんどぱわー
「へー、意外と大きいんだね。すぐ行き止まりかと思ってたけど」
 マキリ(eb5009)は社の中を歩きながらそうぼやいた。広大な大地を駆け回っていたマキリとしては、どうもこのさまよい歩かなくてはならないような巨大な建物というのは好きになれなかった。雨除けにはいいかもしれないけど、崩れたら危ないし、何よりも視界が制限されるのはいただけない。
 彼が先行して一歩踏み出すと、足元の板からギシギシィィと今にも朽ち折れてしまいそうな音が響く。
「と、途中で抜け落ちたりせぬじゃろうな」
 やや不安げに見回すのはパラのマキリとは身長が1.5倍も違う西天聖(eb3402)だ。
「お化け云々は対して怖くはないが、実際に崩れ落ちて来ることの方が怖く思うのじゃ」
「ふん、どうでもいいが涙を浮かべながら言う台詞ではないな。ワシとしては社が壊れようがかまわんが、家鳴りを調査する邪魔だけはしてくれるなよ」
 奇面(eb4906)は奇妙な仮面の下でそうぼそりと呟いて、のしのしとマキリの横を歩いていった。
「え、あれ。今回の依頼は家鳴りの調査だっけ‥‥?」
 そんな言葉にルディは思わず皆の顔を見た。ただ一人何度か冒険を共にした経験のある聖だけは、あやつはああ言う奴なのじゃ、と苦笑混じりにそう言った。
 そんな言葉に機嫌を損ねたのか、どんどんと一人で先に進む奇。
「あ、そんなに一人で進んだら危ないよ。家鳴りがどうやって驚かせてくるかわからないんだから。そこの襖とか」
 と、ルディの言葉に奇が振り返り、廊下の右手にある襖を指さす
「これか? むしろ好都合だ。この襖から何か出てくるというのなら楽しみじゃないか」

 バシュュュュァァァッ!!?

 その奇の言葉に甘えるかのように、襖を突き破って数十本の腕が飛び出してきた。それは巧妙を求める亡者の腕の如く、秩序もなにもなくただそこにいる奇に向かって伸ばされる。
 その腕のほとんどは黒い影のようなもので生身であるのか、屍であるのか、はたまたツクリモノであるのかはわからなかった。だが、突然出てきたそれらは、見た者の鼓動を跳ね上がらせるには十分であった。
「な、何かが飛んでくるだけだと思っていたけど‥‥」
「ちょっと来ます、ですよ」
 アミも思わず手をパタパタするのを止めてその様子を見入ってしまった。恐怖に弱いシャナは目が完全に硬直してしまっている。しかし奇はこれくらいでは諦めない。
「上等だ! 何者か調べてやる!」
 と逆にその腕を引っ張ろうとする。剛胆さもここまでくればなかなかなものだ。だが、数十本の腕と引っ張り合いというのは分が悪い。あっと思ったし次の瞬間には全身を掴まれて襖の向こう側に連れられていってしまった。
「大丈夫ですー? ああ、びっくりした。胸がはみ出ないように注意していて良かったですよ」
 そんなことを宣うはち切れんばかりのバストを持った花子が覗き込んだ先には、ガラクタの山に埋もれた奇の姿があった。


●あっちのせかい
「きゃああ!?」
 そんな声が響いたのは、探索の終わった部屋を出ようとしたときであった。シャナがやや高くなっている敷居をくぐった瞬間に躓いてすっころんだのだ。
「大丈夫ですかー?」
 おでこを思い切りぶつけたシャナを心配して、敷居をゆっくり超えてきたアミが心配して尋ねた。仲間達が持った明かりがゆらゆらと社の壁を照らしている。しかし、それは少しずつ遠ざかっているではないか。
「あら、みなさーん、置いていかないでください」
 アミは少し肝を冷やしながら、遠ざかる明かりに向かって呼びかけたがまるで気づく様子もなく潮が引いていくように、明かりはゆらぎながら、消えていく。
「な、なに? なんで?」
 軽く錯乱するシャナにアミはしばらく考えてにっこりと笑った。
「ふみゅー。ジャパンは不思議がいっぱいですねー」
「そんな暢気なこと言っているばわい!?」
 容赦なく首をがくがく振るシャナであったが、ジャパンの妙に出会えたアミは、どきどきわくわくしますですねー♪ と何処吹く風。
 慌ててシャナは自分のずっこけた入り口に戻り、高い敷居を跳び越え、ようとして、ビタン!! という小気味の良い衝突音を奏でてひっくり返った。
「い゛だ‥‥」
「どうも透明な壁があるみたいですねー」
 冷静に分析するアミ。そしてこんな時にこそ、と彼女はバックパックに手を入れてお札を取り出した。
「こんな時には魔よけのお札でご利益をいただくのですよ♪」
 そうして彼女が透明の壁に向かってお札を突きだした瞬間、透明の壁は甲高い音と共に破壊された。アミの方に向かって。細かい破片を浴びながら、呆然と立つ彼女の前には聖の剣がきちり、と向けられていたのであった。
「鏡の中で、二人が騒いでおったから、助けようと思ったのじゃが‥‥」
 『外側』からぶち破った聖も間一髪の間合いであったことに、たらりと汗を流す。この社、相当たちが悪い。
 金属の破片を全身に浴びたアミは、ほらね。とシャナに微笑みかけた。お札を作った坊さんの徳がもう少し低ければヤバかったのではないかと感じたのは一人ではなかったが、あえて誰も突っ込まなかった。



「かっぱっぱっぱ、そろそろいっぱいです」
 花子はにこやかに笑いながらそう言った。何が一杯かというとびっくりメーターが。家の鍵かけてきたかしら、などなど気持ちが少しトんでしまっている隙に、恐ろしいことが続いて顔色がやや悪い。
「いっぱいいっぱいって言われても、戻るのも勇気いるよ。これ」
 マキリは先ほどまで歩いていた床を振り返りながら、ぼそりと言った。その床は艶やかに磨かれた面は欠片もなく、埃とささくればかりの板であった。行く前までは確か綺麗な床だったはずなのだが。歩いている途中にひっくり返ったのだ。くるくると。
「ここまで来ると、悪意を感じるよね。ご神体の化身っていうけど」
「しかし、試しているという点は当たっていると思いますよ」
 宿奈の言葉にルディも確かに。と頷いた。反射神経や洞察力は結構重要な気がする。そして何より、恐怖に対する強い心がないといけない。後は理不尽にも動じないタフな精神とか。
「何にしてもあそこにある仮面を取れば最後ですよ」
 シャナの恐怖と安堵の入り混ざった顔を、和らげるようにして宿奈はそう言った。カウンセリングの知識を持った彼が所々で後ろ盾になってあげられるような言葉をかけてあげられなかったら、彼女は途中で折れていたかも知れない。
 一行の目の前には長い階段とそしてそこに飾られているいくつかの仮面があった。舞の為に作られているといわれるその面は遠目から見ても非常に精緻で、翁をはじめ、穀神、男、武人、神女、悪漢、狐、田舎女、鬼女。と様々な物が並んでいる。
「どれだろう、どれか一つが本物、だよね? 村の人に聞いたら、奥殿にある面が本物らしいんだけど。まさかいくつもあるとは思わなかった」
 マキリの言葉に一行は顔を見合わせる。確かに最後の宝は一つと相場は決まっているはずだが。
「人数もいることだし、全部貰っていってもいいんじゃないかな。多分毎回取りに来た人が選んでたと思うな。でも、それじゃ選ばれない面もあるだろうし、勿体ないよね」
 ルディの言葉になるほどー、とポンと手を打つシャナ。確かにアレが全部本物であるという可能性もあるわけだ。
「それじゃ、上まで一緒に行こうか」
 一行が階段を昇り始めて。
 そしてお約束。
「す、滑るっ!!!!」
「かっぱぁぁぁぁぁぁぁぁぁ〜」
 花子が脱落。
 シャナも花子と同じく頭から滑り落ちそうになったが、それはすかさず深緋が助けた。
「シャナさん、もう一息ですよ」
 握る手が少し強くなり、そしてシャナは何とか自分を取り戻して走った。

「ひゃぁぁぁぁ!?」
 仮面を取る最中、花子は下で大暴れしていた。何かから逃げまどうように、また立ち向かう素振りをして右往左往としている
「ど、どうしたんですか?」
「家鳴りじゃないですよー? 幽霊がいっぱいいます、と、飛び回ってます〜!!!」
「うん? これも家鳴りの仕業か?」
 妖蓑をしっかと被っての姿勢は確かに戦闘姿勢のものだ。だが、奇や宿奈が周囲に気を配っても、耳を澄ませてもそれらしい動きは一つも感じられない。
「幻覚、ですかね?」
「お、おたくそんなところに立ってたら危ないですよー!?」
 そんなこんなしている間に、面を片端から、布包みに入れたシャナが降りてきた。その布は一応ルディ発案のお供え物だったのだが、一枚だけこうして風呂敷代わりに使われることになったのだ。
「面はゲットしたのじゃな。それでは長居は無用じゃ!」
 そういうと聖は外へと一行を案内して、先陣を切って走り始めた。その間、ずっと花子は「かえれー、の連呼です。あ、助けてーなんて言っている人もいます。意味不明〜!!」と叫び続けたのであった。


●おまつり
「面をすると顔に化粧をしても見て貰えぬのが残念じゃな」
 聖は化粧道具をしまって、シャナの顔をじっくりと眺めた。聖の達人級の技術によって施された化粧は、元気娘のシャナの色気というものを十二分に引き出し、どことなく妖艶な感じさえ醸し出すことにも成功した。
「ふみゅ。すごーい、シャナさん美人ですよー♪」
 水干姿で千早を纏ったアミも思わず目を円くしてその様子を見る。元の顔からは想像もできない変身ぶりなのだから。
「そ、そんなに変わった?」
 恐る恐る聞くシャナにルディも満面の笑みを浮かべて答える。
「もう全然。別人かって思うくらいだよ。あ、でも、紅も綺麗に引いてるし、これじゃ差し入れ食べられないかな?」
 ルディがくすっと笑って差し入れの食べ物を見せると、シャナは化粧が一気にはげそうなくらいに破顔して、食べるーと飛びつきかけたが、これは聖によって諫められた。
「せっかくの舞に食べかすが口に付いていたら大変なのじゃ」
「あぅぅぅ。ご飯‥‥」
「さっき僕の保存食一緒になって食べてなかった?」
 しょんぼりする彼女の姿に、実はとてつもなく食い意地が張っているのではと思い直したルディであった。
「それじゃ舞が終わったら、一緒に屋台を廻りましょうです♪」
 そんなアミの言葉に勇気づけられ、シャナは神女の仮面を被るとすっくと立ち上がった。
 そして見送る皆に典麗な礼をすると、舞台へとゆるりと上がっていった。
「すっごいなー。面を被ったら別人みたい。プロって感じだよね」


「何て言うか、あたしは面の力を借りなくても来年辺りにはシャナは大成する片鱗を見せてくれそうな予感がしてたのですよ」
 舞の舞台で、ルディの言葉に答えるようにして、落ち着きを取り戻した花子はそう言った。そしておもむろに横笛を吹き鳴らす。その音は篝火に照らされる夜空に吸い込まれるように響き渡った。

 〜♪♪♪〜〜〜♪〜♪〜♪♪♪〜♪♪〜

 その音に合わせて、深緋が間の手をリズムをとって打ち始める。そうしている内に村の人々から歌声があれよあれよと混ざってくる。
 祭のメインが冒険者達によって花開いていく。

 踊れ 今宵は幸祐の時
 舞ませ 我らは清新の時を得た
 〜♪♪♪〜〜〜♪〜♪〜♪♪♪〜♪♪〜
 古き魔を払い 光陰の因縁を打ち破り
 解き神を得て 覚醒の命運と巡り会い
 〜♪♪♪〜〜〜♪〜♪〜♪♪♪〜♪♪〜
 さあさ、約束しよう 豊穣を
 さあさ、春の息吹を