預言の前兆(災禍)
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■ショートシナリオ
担当:DOLLer
対応レベル:11〜lv
難易度:普通
成功報酬:6 G 65 C
参加人数:8人
サポート参加人数:2人
冒険期間:11月28日〜12月03日
リプレイ公開日:2006年12月06日
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●オープニング
『神聖歴一千一年 十一の月
驚くべき知らせがもたらされる
土に犯されし死のつかいはすべてを飲み込む
橋の北、魚の形、折れ曲がった剣は戻ることなく
つかい通ったのち、都のぞむ村は消失するだろう』
その預言がパリに激震をもたらしたのは、11月も終わりを迎えようとするある日のこと。
それはアルマン地下坑道崩落の報せであった。
アルマン地下坑道は古来よりノルマン王国の重要な鉱物資源の供給してきた鉱山であり、主には鉄や炭などを産出していた。近年、長く続いた採掘作業により大地を蝕み、落盤の危険性は公然と囁かれてはいた。
しかし、坑道事態はそんな噂に加えて産出量の低下、コボルトの侵入などの不幸が続き、ついには廃坑となっていた、落盤の可能性は噂のまま立ち消えたのである。
いや、立ち消えてしまう災害となるはずであった。
しかし、最近になってフローライトの大鉱脈の存在が発見され、坑夫が進入、採掘は再開された。所有者の居ない鉱山では掘った者が掘った分だけその『上がり』を手にすることができる。廃坑に伴い職を失っていた坑夫にとっては一攫千金のチャンスであり、寝る間、休む間も惜しんで乱掘を敢行したのであった。
そのうちの何人かは、鉱毒を受け身体を害したり、いつ徴発を受けるかわからないという不安から新天地を求めたが、フローライトという高額の収入源を得た約半数の人間はそんな懸念もどこ吹く風と採掘を続けていた。
そしてそれが致命傷となり、アルマン坑道は崩落を起こすに至ったのである。
崩落の影響は想像を絶した。
古来からずっと拡大し続けていた地下坑道はかなり広範囲に広がっており、その上にあった地上の土や岩はすべからく一瞬のうちに広がった数十本の亀裂に呑み込まれ、巨大な振動とともに砂礫と貸した。
見渡す限りの緑の牧草地は次の瞬間には茶けた荒野となり、牛馬を数百匹と牧童の集団を巻き込んで、巨大なクレーターへと姿を変えた。鋭い五感を持った動物たちでさえ、その広域の被害に逃げることは叶わなかったのである。翼を持つ鳥でさえ、足下から崩れ落ちた木々に打ちのめされ崩落の被害となった。
被害はそれだけにとどまらなかった。
アルマン地下坑道には巨大な採掘場がいくつも存在していた。それらは長年の雨水を受けて巨大な『貯水池』へと変貌しており、崩落の影響でその水が鉄砲水と化して地上に出現したのである。
鉄砲水はその勢いでかろうじて耐えていたいくつもの『貯水池』の壁を壊して合流し、やがて巨大なうねりとなって陥没した大地からセーヌ川へと向かって雪崩れたのだ。
その勢いはまるで聖書に出てくるリヴァイアサンのようであったと語られる。農村1つを10分足らずで無人の荒野に書き換え、数十ヘクタールもの田畑を鉄分を含んだ赤茶けた水で覆い隠したのだから。
セーヌ川が血と泥で赤く染まったとの報せは、パリの住民を混乱させるのに十分であった。
予言が当たったのだと大騒ぎした。
また、悪魔の再来だと吹聴して回るものも出た。
だが、それすらもこれから起こることに比べれば些細な予兆にすぎない。
これからもノストラダムスの預言は成就していくのだから。
そんな最中、冒険者ギルドにやってきたのは王国騎士団の一人であった。
依頼内容はその崩落現場とセーヌ川の被害状況確認、である。
特に鉄砲水を受けたセーヌ川は多量の土砂が堆積し、これから大雨などの影響で容易に二次災害、三次災害を引き起こす可能性がある。土砂の除去作業は急務ではあったが、それらの準備と視察を同じ体で行っていてはとてもではないが時間が足りない。そこで冒険者に状況の確認をしてもらいたい、ということであった。
騎士はその上で声を潜めて言った。
崩落は以前から囁かれていたとはいえ、専門家である坑夫が全体を崩すような進め方をしたとは考えにくい。それに地下奥深くの『貯水池』が地上に吹き出し、鉄砲水と化すには複数の条件が必要である。そんな偶然を目の色を変えた坑夫の無計画さが招いたとは、いささか虫の良い話である、と騎士は言った。
とどのつまり今回の崩落には、何かしらそれ以外の要因が混ざっているのではないか。それが彼らの見立てである。
被害状況の確認のついでに、まだ推理の上でしか存在しない何者かの現実のものとする証拠を見付けてほしいのだそうだ。
●リプレイ本文
神聖歴1001年11の月
驚くべき知らせがもたらされる
土に犯されし死のつかいはすべてを飲み込む
橋の北、魚の形、
折れ曲がった剣は戻ることなくつかい通ったのち
都のぞむ村は消失するだろう
●クレーターと化した大地
アルフレッド・アーツ(ea2100)の帽子を撫でるように雨交じりの冬の冷たい風が吹く。
雨の所為で視界が悪い。ノルマン王国の大地はほぼ平野であるため、視界が良ければ数十キロ先の大地も眺めることができる。今日それが叶わなかったのは、ある意味でセーラの慈悲なのかもしれない。
心からそう思った。
アルフレッドの足元より先はすべて瓦礫の世界であった。眼下の世界は地図上でこそ丘陵を含んだ平野であったはずだが、今はもう盆地と呼んでも良いぐらいに沈み、坩堝か何かのように、混沌とした世界が広がっていた。
大陸の地図を描くこと。それを夢にしていたアルフレッド・アーツ(ea2100)はこれから地図の訂正をしなければならない人々の姿を遠くで思い浮かべた。それが彼に出来るぎりぎりの想像であった。この中に坑夫がいて、村があって、飲み込まれているだなんて。現実のレベルに想像がついていかないのだ。
所々で大きく陥没しているのはきっと採石場であったところであろうか。まるで流星が降り注いだようであった。
「これほどまでとは‥‥前回私たちがもっと強く説得していれば、この事態は防げたのでしょうか」
アルフレッドの横に立つアディアール・アド(ea8737)も気持ちは同じようであった。
いや、アガートによって予言されていたのだから、そのショックは更にひどかったとも言える。この状況に自分の判断が一部も入っていない、とは断言できなかった。
「でも‥‥少しでも説得してくれたから‥‥こうして、地図がもらえたんですから‥‥」
そう言って取り出した何枚かの布には、事細かな坑道の地図が記されていた。フローライトの濫掘を行った坑夫の内何人かが、この落盤が起こる前に冒険者によって説得されて他に退避していたのであった。
「そうはいいますが‥‥飲み込まれた植物や大地が回復するまでにどれだけの時間がかかるのかと思うと‥‥」
アディアールの顔色は優れなかった。
分かっているのだ。気持ちを切り替えて。心を痛めるからこそ、被害を拡大させないように尽力する必要がある。
しばしうつむくと、アディアールは顔を上げた。
「すみません、弱気でした。調査を開始しましょう」
「僕は空から‥‥現在の状況を確認します‥‥まだ崩れそうなところも確認しますから‥‥気をつけて進んでくださいね‥‥」
シフールとエルフはそうして雨の降り注ぐ荒野へと足を踏み出したのであった。
「右手が採石場‥‥です。直径は300m前後‥‥ここが一番奥になります」
アルフレッドが一度アディアールの居る近くまで降りてきて、そう説明した。
確かに彼の言うとおり、右側には他の荒れ地より一段と低くなっており、雨水が作る大きな水たまりがいくつも生まれていた。
「このままだと土石流は再び発生する可能性がありますね」
「そうですね‥‥この辺りは最奥じゃないかと‥‥」
坑道の入り口はずっと西だ。そこから東、パリに向かうようにして坑道は掘り進められている。
他の人が来たときに問題の箇所がどこか、目星を付けることができるように、目印をつけるアルフレッドにアディアールが尋ねた。
「鉄砲水はここから発生したものだと考えて良いのですよね」
「最奥から、入り口に向かって‥‥他の貯水池を巻き込んで‥‥ですね。上から見ると‥‥良くわかります」
鉄砲水の噴出口になったのは、坑道の入り口だ。陥没したなかでもモグラが這ったような跡がうかがえるのは、きっとその水道管代わりになった坑道の道筋であろう。坑夫が作業していた場所は生存した者の言葉から、最奥だと断定できる。
が、採掘場跡があると分かっていて、無闇な堀り方をするのであろうか。
アディアールはその場に立って、辺りを見回した。
「‥‥?」
いつもは薬草を香りを鋭く感知する鼻が、そこに異なる香りがあることに気がついて、アディアールは動きを止めた。
土と雨の匂いに混ざってはいるが、確かに何か別種の香りがする。異臭ではないが、どことなく場違いな‥‥
「鉄砲水はどうやって発生したのでしょう」
「おそらく‥‥採掘場跡の岩壁を誰かが誤って破壊したんだと‥‥」
「水は高いところから低いところへと流れ込みます。最奥の採掘場跡はそんなに高い位置にあったのでしょうか」
アディアールの問いにアルフレッドは地図を確認した。複数枚の地図は平面図だけではない。概要ではあるものの断面図を用い、坂の位置もその傾斜も確認している。伝聞なので確実ではないが、この現場と照らし合わせる限りそれほど大きな間違いはない。
「どちらかというと低い方ですね‥‥」
「低い位置にある水を高いところに呼び込むには‥‥」
アディアールはその香りの正体に気がついて、座り込んだ。
別種の香り、これは海の香りだ。潮の匂いというべきか。この鉄砲水はセーヌ川に注ぎ込んだだけで海には何ら関係していない。というか数十キロも離れた海と関連が在るはずがなかった。
だが海水はここに存在している。
まだ、証拠ではない。だが、その不可思議な海水が何かの痕跡であることをアディアールは直感した。
●鉄砲水にさらされた村
そもそもこの坑道が崩壊に至るまでも十分、おかしな話は続いていた。
一連の流れは整然としているが、この事件は整然とし過ぎている。ナノック・リバーシブル(eb3979)は最初から自然災害などとは思っていなかった。
「どうかしたのか?」
同じように村の様子を確認に来た李風龍(ea5808)が考え込むナノックに語りかけた。
「いや、この災害はどうも仕組まれているような気がしてな」
「ああ、この現状から何かをつかめればいいのだが」
風龍が少しばかり非難するように眉根を寄せる。
彼らの周りはクレーターと化した坑道跡よりも規模は小さかったものの悲惨さは一等上であった。鉄砲水は土砂を多く含み、村はその顔のほとんどを削られた。家屋はところどころ顔を見せてはいるが、大きく傾いで、鉄砲水に襲われた方の面は土砂で頭を隠していた。
村には近づくだけでむせかえるような腐臭が漂っていた。雨の匂いがそれを逃さず持ち続けている。
「生存者は今のところなし。再生できるといいのだが‥‥」
風龍の言葉にふと、ナノックは一瞬ばかり記憶がフラッシュバックした。幸せな頃の記憶がチクリと騒ぐ。
「それは‥‥」
ナノックがそう言った瞬間だった。風龍が拳を振り上げた。
拳は必要最低限の回転をして、そのままナノックの足元へと気の溜まった拳を突き出すと、肉の破片が飛び散った。
「気をつけろ。動いていたぞ」
「ズゥンビだと!? まさか」
デビルだとばかり考えていたナノックは一瞬目を大きく見開き、剣を引き抜いた。確かに地面を改めてみれば、おかしな動きをしている手足がいくつかあった。
それらのうちいくつかがゆっくりと土砂から姿を現す。
泥に汚れたシャツ、そしてバンダナ、腐ってみる影もないがかろうじて残っている肌は浅黒かった。
「坑夫‥‥じゃないな。船乗りか。なんでこんな奴らが」
生ける屍、ズゥンビの服装を見て、風龍が言った。
元がどんなものであったか、判断するのは困難であったが、痩せた身体は坑夫向きではなかったし、露出の少なめの服は坑道にはいるような服装ではなかった。
「考えている暇はない。来るぞ」
みればあちこちで、屍が踊っている。完全に出てきた者はまだ狙いを付けやすかったが、土に埋もれたままの相手は見えにくいし攻撃もしにくい。この辺りにどれだけこんなズゥンビがいるのか想像ができなかった。
「後れを取るつもりはないが、少し不利だな」
そう言った刹那であった。甲高い風切り音がしたかと思うと、一匹のズゥンビに天罰を与えるかのように嵐の名を冠する魔剣が空から下り、貫いた。続いてヒポグリフに騎乗していたデュランダル・アウローラ(ea8820)が大地に降り立った。
「土に犯されし死のつかい、か。ひどいものだな。怪しげな預言など信じるつもりはないが、世に害なすものがその裏にいるなら放置しておくわけにはいかない」
デュランダルはそう言い放つと、風龍やナノックとそれぞれ背を向けて武器を構えた。
「こいつらをどう見る?」
無防備に襲いかかってきたズゥンビをなぎ払いながらナノックはデュランダルに尋ねた。
「坑道の方では海水が発見されたそうだ。そして今動いているのは船乗りのズゥンビ。そして水害」
「自然災害ではないことは間違いない、ということだな」
「そのうち、船幽霊でも出てきそうだな」
歩み寄ってくるズゥンビを片っ端から行動できないレベルまで叩きつぶしながら三人はそんなことを話し合った。
起こっていることは自然災害だ。
だが、間違いなく人為的な手が加えられているという感触を得ながら、三人は突破口を開いたのであった。
●セーヌ川と真相
「あ、ズゥンビだ」
マート・セレスティア(ea3852)は川の中でそれと出会った。
身動きを重視していたのか上半身が裸で、下半身も簡単なズボンしか身につけていなかった。土砂に流されてきたのか、顔の半分は崩れ落ち、その駆けた部分から、泥とも脳髄ともとれそうなものが、ボタリボタリとしたたる。
「こちらに襲ってくるのでしょうか‥‥」
シクル・ザーン(ea2350)は小舟を漕ぐのを止めて、ズゥンビの様子をじっと見た。
それにしても、ズゥンビは川の中に二歩の足で立っている。膝よりも少し上ぐらいであろうか。
「なーんだ、この川意外と浅いんだね。でも寒そうだしなぁ」
あそこに何かしらのヒントが隠されていると踏んだマーちゃんは川の底をじっと見つめた。
「まだここは3m近い水深があります。本来はもっと深いはずなのに」
シグルはできるだけマーちゃんが飛び込まないように制止をかけながら、その川の様子をオール代わりにしている長尺棒で川底を測っていた。
鉄砲水が運んできた大量の土砂はもうこの辺り一帯に大量に沈んでいるようであった。岸辺を見れば川の中に収まりきらない水が近くの草むらから寄り道をするように流れ出ていた。今現状でこれだ。もう一度鉄砲水のようなものがここより上流のどこかで起こり、水量が一気に増すようなことが在れば、たちまちの内に、ここで水は陸地へと溢れることになる。
川から少し離れるだけで街などの住居、妖精の森などの多くの生物が住む場所が点在している。上流の安全な場所で堤防を切るという話をちらりと聞いたが、それらが成功とならなければ、この辺りは目も当てられない、常に危険を抱え込んだ状態になることは自明であった。
これはすぐにでも報告しておかねばならないな、シグルはそう思っていた。
「ねー、シグル兄ちゃん。もう少しあっちに寄せらんない?」
「底が浅いから難しいですよ。乗り上げすぎると船が平行を保てなくなりますし」
困ったようにマーちゃんの好奇心をなだめようとするが、それくらいで引き下がるようなマーちゃんではなかった。
「じゃ、泳いでいくからさ。そのまるごとしゃーく着させてよ」
しょっく!!
防寒のためにまるごとしゃーくを身につけていたシグルはピタリと動きを止めた。
「こ、これはダメです!!」
「ちぇー」
これが料理だったら返答も聞かず食べていたであろうが、幸い引っぺがしてどうこうしようという気はないマーちゃんであった。
そうこうしていると、翼の音が二人の緊張の間に割って入ってきた。
白い翼と黒茶の翼が二人の近くに舞い降りてきたのだ。クレア・エルスハイマー(ea2884)とデュランダルだ。他の面々も遠くから近づいているのが見えた。
「皆さん大丈夫でした? こちらでもズゥンビがいましたの?」
「それでは、他にも!?」
クレアの言葉にシグルが驚きの声を上げた。ここにズゥンビがいること自体、かなり奇妙な光景であるのに、他にもいるだなんて。
テュランダルは目を細くして、川に立ちつくすズゥンビを見やった。
「あれは村にいたズゥンビと違って、坑夫のようだな‥‥生存者は結局、いなかったか」
「ねえ、姉ちゃん。空から見てあの辺りに誰か来ている様子はあった?」
「いいえ、足跡は見ませんでしたわ」
不思議そうな顔をして答えるクレアに対して、マーちゃんはふむ、と唸った。誰かが仕組んでいるとするならば、絶対にその後始末、もしくは仕上げの動作が入ると狙っていたのだが、茫洋に立つ置き去りにされたズゥンビではさっぱり読めない。
「とすると、誰かが仕組んだとかはなかったのかなぁ」
「いえ、少し解明してきましたわよ。相手は人を使うのがとても上手なようですわね」
クレアの言葉にデュランダルが続けた。
「これが人為的な仕業であるとするならば、目的は何であるか‥‥」
「預言の成就ではないんですか? でないとするならば、預言の補助する計画‥‥そうだ。これだけ土砂が堆積すると、セーヌ川が氾濫を起こした際、大災害になるんです」
シグルの言葉は自分に再確認させるように言って、そして結論に至った。
クレアがその理解を口にして言う。
「そう、これは下準備ですわ。下流域で災害を引き起こし目をそちらに向ける」
「その間に、上流で何らかの方法を使って川を氾濫させる。川の水はこの土砂にぶつかって溢れ、近郊の街や森を飲み込む。二段構えの戦略だ」
デュランダルの言葉にマーちゃんは、ああ、と川の中のズゥンビを見た。
「海水とズゥンビ、そして坑夫が今回の崩落を解く鍵になるようだ。少し不明な点はあるが、また皆で考えれば答えも出てくるだろう」
風龍は続けてアディアールに問い尋ねた。十野間修から助言を得たとおりの坑夫やアガートに対しての接触を彼とアルフレッドに任していたからであった。
「坑夫はフローライトのこと、採掘について他の人物と出会ったとか言っていなかっただろうか」
「あるみたいです。腰まである黒髪を持った神秘的な女性が話を持ちかけてきたようです」
「アガートさんは‥‥何も知らなかったみたいで‥‥崩落の報せを聞いた後‥‥酷く悲しんで街から出て行ったって‥‥言ってました」
しばし沈黙が降りる。しかし、最初アルフレッドが見た自然の暴挙に対する恐怖やシグルが感じた暗雲の募る先行きに対する恐怖は軽減していた。
「まだ希望はありますわ」
クレアのその言葉はきっとこのセーヌ川に関する依頼を受けた冒険者の励みになるであろう。
翌日、彼らの成果は冒険者ギルドを通じて王宮に報告が入ったのであった。詳細な調査により派遣人員の計画も進んでいるようだ。
それよりも何よりも、王宮も真相解明に向けての動きを本格化させるのであった。