マキンシア女史からの依頼
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■ショートシナリオ
担当:江口梨奈
対応レベル:2〜6lv
難易度:普通
成功報酬:2 G 3 C
参加人数:8人
サポート参加人数:1人
冒険期間:06月22日〜06月27日
リプレイ公開日:2005年06月30日
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●オープニング
どのくらい血のつながりがある関係なのかは分からないが、ともかく、マキンシアのところに、その叔父の遺産が入ってくる話になった。ただし、条件がある。叔父の屋敷から自分自身で運び出さなければならない、屋敷の処分も含めて。
額は、うれしいことに彼女のこれからの生活をほんの少しだけ潤わせる程度にはあるらしい。
それなのに他の親戚が手を出さないというのは、叔父という男は変わり者だったそうで、わけのわからないがらくたが財産以上にため込まれているらしいのだ。いただける財産はつまり片付け賃だと考えた方がよい。手間を考えれば、それは割に合わない額なのだ。
「どちらにせよ、一度見てみよう」
マキンシアはそう思って、とりあえず叔父の屋敷へ向かった。
中に入る。
蜘蛛の巣だらけだ。
そして本当に、がらくたばかり。
脚の折れた椅子、顔のない石像、腐りかけの獣の皮、奇抜な肖像画‥‥?
「そうね、まともな形のものは売ってお金になるでしょうけど、でもこれを全部運び出すとなるとねえ‥‥」
4本脚の机、12体揃いの人形、きつね皮の襟巻き、ジャパンの美人絵‥‥これらならいい値がつくだろう。マキンシアは部屋のあちこちを見て回り、損得の計算を繰り返していた。
と、彼女の爪先に何かが当たった。床に突起がある。誰も気付かなかったのか、埃が分厚く積もっている。
「何かしら‥‥?」
それをひっぱると、なんと床が大きく開き、隠れていた扉が現れた。
「うわっ、なによ、これ!?」
マキンシアは顔を突っ込む。地下室という立派なものではなく、洞窟のような空間が広がっている。奥に行くほど広くなっており、立って歩くことができるほどだ。
壁に燭台があるということは、叔父はここを頻繁に利用していたのだろう。
マキンシアも中に入ってみる。
何かが動いた。
「‥‥? ねずみ? こうもり??」
違う、そんな小さなものではない。
マキンシアの背丈ほどもある影が3つ、あったのだ。
その方向にランタンを向ける。
マキンシアは悲鳴を上げて逃げ出した。
間違いない、あれはウッドゴーレム。
なぜこんなところにいるのだろうか?
変わり者の叔父が、何かの番人として置いたのだろうか?
マキンシアは冒険者ギルドに依頼を出した。
『地下室にひそむウッドゴーレムを退治してくれる冒険者求む』
地下のことなど無視して、屋敷をさっさと売り払ってもいいようなものなのに、マキンシアにはそんな非道なことは出来なかった。
それに、あの奥に宝が隠されているのではないかという淡い期待もあったのだ。
●リプレイ本文
冒険者達が洞窟に入るのはこれで2度目だ。
洞窟の作りを調べるために昨日降りたからだ。ウッドゴーレムは侵入者が近づくと反応する。マキンシアが走って逃げきれたように、遠ざかればそれ以上深追いすることはない‥‥はずだ。だから、これから床の扉を開けると、すぐに顔を出すなんてことはないと信じたい。
リアナ・レジーネス(eb1421)が発したブレスセンサーでは、生物の気配は感知されなかった。ウッドゴーレム以外のモンスターがいる可能性は低い。
扉を開ける。
待ちかまえてはいない。
「相変わらず暗いな‥‥」
「足下にも気をつけて下さいね」
ジャッド・カルスト(ea7623)がまず最初に洞窟に入る。肩の上にランタンを抱えたマルティナ・ジェルジンスク(ea1303)を乗せて。その後に広瀬和政(ea4127)がマルティナの灯りからはぐれないように続く。杜乃縁(ea5443)は闇に怯えながらそうっと入り、レイエス・サーク(eb1811)は奥に潜んでいるかも知れない秘宝にときめきながら飛び込み、シャラ・アティール(ea5034)はその秘宝の守護神と出会えることに心をはやらせ、そして彼らのずっとあとを、インシグニア・ゾーンブルグ(ea0280)が狭い入り口に苦労しながら重藤弓を持ってあとを追った。
マキンシアは、一人部屋に残って、はらはらしながら皆を見送った。
(「ああ、ウッドゴーレムを止める手段が見つかっていたら!」)
何故叔父は、あんなものを?
叔父は全ての謎を持ったまま、神の元へ召されてしまっていたのだ。
ギルドから到着した日は朝から晩まで、この屋敷の掃除をしていた。
リアナがこう尋ねたからだ。
「叔父さんの遺産ですが、『実はウッドゴーレムもその1つで、部屋の中に止める方法が書かれたものがある』とは聞いていませんか?」
「いいえ、ウッドゴーレムがいるなんて、初めて知ったし、知っていたなら来なかったわ!」
マキンシアは恨めしそうに肩をすくめた。こんな厄介ごとに巻き込まれるのなら、欲を出してのこのこ相続人の名乗りを上げるのではなかった、と言いたげに。
「しかし、停止させる方法ぐらいはあったはずだ。そうしないと、叔父が中に入れないからな」
和政が言った。その方法を見つけ出せれば本当は一番よいのだが、それは雲を掴むような話だと彼も分かっている。
「インシグニアさんのお友達はウッドゴーレムと戦ったんだよね、その時はどうだったの?」
最後は結局戦うことになった、らしい。
「止める方法じゃなくても、たとえば地下の見取り図とか、そんなの残ってないかな?」
レイエスは部屋の中を見回す。埃はかぶっているが、家具は一通り残っている。引き出しの類も誰かが触った様子はない、中もそのままなのだろう。
「どちらにせよ、このありさまじゃ、ねえ‥‥」
マキンシアはもう一度溜息をついた。なにせ初めて見る家なのだ、どこに何があるのか全く分からないし、聞き知った叔父の性格では、正しい場所に正しいものをしまっているとは思えなかったからだ。
「でも、ちょっと調べる時間ぐらいはあるんじゃないですか? 止める方法でも、見取り図でも、探す価値はあると思いますよ」
マルティナがそう言ったので、じゃあせっかくだから、と皆で部屋を調べることにした。
「臭いな、臓物の干物か?」
「きゃっ、蛇の脱け殻!?」
「その脱け殻、この貼り絵の一部じゃない?」
「う〜ん‥‥この彫像、いいかも‥‥」
「これは矢羽根? 凝った作りね」
「意外といいものが出てくるのね‥‥」
肝心のものは出てこない。その代わりに、出るわ出るわ、大小さまざまながらくた達が。
がらくたの山に埋もれたマルティナは、マキンシアの顔をちらりと覗いた。
(「地下の事件が片づいたら、‥‥ちょっと期待しては駄目かしら?」)
結局手がかりになるものは何もなく、3体のウッドゴーレムはすべて破壊するという方針で、地下室へと臨んだのだ。
相変わらず暗いな、足下に気をつけて‥‥冒険者達は、手元の灯り以外どこからも光の入ってこない洞窟を、慎重に進んでいた。最初は狭く、中腰で這うように進んでいたが、間もなく立って歩けるようになった。
「もう少しだね‥‥」
レイエスはそこまで言って、急に黙り込んだ。
「な、なにか‥‥?」
「シッ」
こんなに近かっただろうか?
昨日は、もっと先にいたはずだ。
ここで、待ちかまえていたというのか?
「マルティナ、天井すれすれのところを伝って少し前へいってくれ」
ジャッドに頼まれマルティナは前へ進む。もう少し前へ。前へ。
がたん。
音がした。
間違いない。ウッドゴーレムはここで侵入者を待っていたのだ。
「後ろには下がれない‥‥狭すぎます」
縁は狼狽えている。戦いやすく、もっと広い場所へ誘導しようにも、一番広いのは今ウッドゴーレムが立っている、その場所なのだ。そしてウッドゴーレムは少しずつ、侵入者である冒険者の方へ近寄っている。中腰で進んでいたこれまでの通路へ行かせてしまっては、こちらは全く身動きがとれなくなる。
「なら、もっと奥だ」
和政はわざと、ソニックブームをウッドゴーレムから外したところに向かって撃った。岩壁に当たって派手な音を立てる、その方向へウッドゴーレムは気を取られた。
「今だ!」
その隙に和政は壁際を走って、洞窟の更に奥、入り口の反対側に回った。
「どっちを向いてるの?」
砕けた壁、回り込んだ和政、そのために完全に入り口から視線を外したウッドゴーレムの後頭部に、シャラは思い切りハンマーを打ち込んだ。
バキッと音がして、頭が割れた。しかししぶといウッドゴーレムは、今度はシャラに向かって動き出す。
「楽しませて貰えそうだな」
そうこなくては面白くない、とジャッドは聖者の槍を握りしめて、渾身の力で割れ目に突き刺した。刃は、頭から股まで勢いを弱めることなく貫いた。
「まずは1体!」
「もうすぐ2体になるよ」
レイエスは不敵に笑い、ランタンをぐるぐる動かした。自分がここにいる、とウッドゴーレムに教えるために。
もちろん、派手に動く灯りにウッドゴーレムは向かってくる。
「頭を下げて!」
レイエスの前にはリアナがいた。たった今、詠唱を終えたばかりのリアナが。
「『ライトニングサンダーボルト』!」
リアナの手から飛び出した稲妻は、まっすぐウッドゴーレムの胸を撃った。木の焦げる臭いがする。だが、それだけだ。
(「もう一度‥‥」)
1撃で倒せるとは思っていない。続けて詠唱を始めるリアナ。間に合うか。モンスターは速度を弛めることなく、こちらに近づいている。
「今度はこっちです!」
またランタンの明かりがうろうろとする。
マルティナだ。
天井にいるマルティナが、先ほどのレイエスのようにランタンを動かしているのだ。
「ありがとう、マルティナさん」
再び発生した雷は、同じ場所を撃った。同じ場所を繰り返し、繰り返し。
倒れるまで。
「まだ残っているぞ」
インシグニアが最後のウッドゴーレムに向かって、矢を放った。
「やったか?」
まだだ。動きは止まらない。インシグニアは足を狙って撃つ。もう一度、右と左を、関節の部分を。
最後の1体はしぶとかった。ゴーレムに感情など無いだろうが、まるで2体の仲間の仇を討つかのように執拗に冒険者に迫っていた。しかし、それも数には敵わない。
地面は木偶人形の欠片で散らかってしまった。
「ところで、この奥には何があるのかな?」
興味深そうに、シャラは覗き込んだ。
「それはマキンシアに任せておけばいいのではないか?」
「え? 和政さん、気にならないの?」
どうやら気になる者の方が多数らしい。揃って、更に奥へ進んでいく。
間もなく洞窟は突き当たり、そこには箱が置いてあった。
「ほら、やっぱり何かある!」
罠などはなさそうだ。それでも慎重に、蓋を開ける。
「‥‥何かしら、これ」
椅子の脚、顔だけの石像、獣の骨が全身分、大きな額縁‥‥?
その他、中途半端なものがぎっしり詰まっていた。
「もしかして‥‥」
もしかして、部屋にあったがらくた達の半身ではないか?
だとすると。
「運び出すものが倍になったということですか?」
縁は目眩を起こして倒れそうになった。