ネヴェちゃん達からの依頼
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■ショートシナリオ
担当:江口梨奈
対応レベル:2〜6lv
難易度:やや易
成功報酬:1 G 36 C
参加人数:10人
サポート参加人数:-人
冒険期間:07月20日〜07月25日
リプレイ公開日:2005年07月30日
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●オープニング
「お母さま、お母さま、これなあに?」
棚の奥に宝石箱を見つけたネヴェは、それを抱えて踏み台から飛び降りると、母親の元へ駆け寄った。
「まあ、懐かしい。実はね、おまえのお父さまが、私に最初にプレゼントしてくれたものなのよ」
古い宝石箱の中から出てきたのは、色とりどりの石で飾られた首飾りだった。土台は金で、キラキラと眩く光っている。
「なんてきれい! ねえ、お母さま。来週お友だちとピクニックに行くの、その時に貸して」
「外遊びの時に着けるものじゃないでしょう。それに留め具が弱くなってるわ、元の箱に入れてしまっておきましょうね」
「‥‥はあい」
その時は素直に引き下がったネヴェだが、首飾りのことは頭から離れなかった。
そしてとうとう、ピクニックの当日、黙って持ち出してしまったのだ。
「わあ、きれい」
「ネベちゃん、すてき」
「お姫さまみたいー」
友人達はみな、首飾りを褒めてくれる。ネヴェはすっかり得意になり、一日中、首飾りを着けたままでいた。
陽も沈みかけて、帰ろうとしたときだ。
「‥‥ねえ、なんだか騒がしいよ」
友人の一人が不安そうに言った。何かが、頭上で、ぎゃあぎゃあ鳴いているのだ。
「カ、カラスだよ‥‥」
と、ネヴェは空を見上げた。
確かに、そこにはカラスがいた。
‥‥本当にカラスなのか? 鷲や鷹ではないのか? 頭上に群がるそれらは、カラスと呼ぶには大きすぎる。
「早く帰ろう、早く!」
女の子達は駆けだした。
同時に、カラス達も枝から離れた。
やつらが狙っていたものは。
キラキラ輝く、ネヴェの首飾りだ。
首飾りの留め具が壊れていなければ、おそらくネヴェはカラスの爪と嘴で大けがをしていただろう。だから、首飾りを取られただけで済んだのは不幸中の幸いと言うべきか。
いいや、ネヴェにとってはこれこそが最大の不幸だ。
「どうしよう、どうしよう‥‥お母さまに叱られる」
「取り返さなきゃ。ああいうカラスは、巣にため込むらしいわよ。だから巣を見つけて、取り返そう」
「どうやってよ。どこに巣があるのよ」
「探すのよ」
「だからどうやってよ」
少女達はあれこれ考えた。そして、結論を出した。
「ネヴェちゃん、お金はある?」
「え? どうして?」
「ギルドに行くのよ! 冒険者の人たちなら信用できるわ。絶対に、ネヴェちゃんのママには内緒で取り戻してくれるわよ、決まってるわ!」
●リプレイ本文
ネヴェは口から心臓が飛び出しそうだった。母親に黙って冒険者ギルドなる場所へ行き、受付の男性に話した事情が、人の集まる壁に貼り出されたのだ。
本当に冒険者がこれを見てくれるのか、そして仕事を受けてくれるのか‥‥不安に押しつぶされそうになりながらも予定の時間に待ち合わせの場所へ行く。
そこに10人の冒険者が既に集まっているのを見て、とうとうネヴェは泣き出してしまった。
「ああ、ああ。泣かないで。私たちに任せてくれれば、大丈夫ですからね」
女の子が近づいてきたかと思ったら突然泣き出すものだから、セラ・インフィールド(ea7163)は驚いてしまった。
まだ名乗ってはないが、この少女が依頼主なのだろう、とクーラント・シェイキィ(ea9821)は優しく頭を撫でてやる。
「ジャイアントクロウなんか俺たちの敵じゃない、絶対首飾りは取り返しすからな」
「ん〜? クーラント、やけに優しいじゃないか。その子から見れば、おまえはオジサンだぜ?」
「なッ‥‥? 違うぞ、そんな趣味じゃない! 妹を思い出しただけだ」
マレス・イースディン(eb1384)にからかわれて、全力で否定するクーラント。
「うわ、軽い冗談だって、本気にするなよ」
「妹を持つ兄心は繊細なんですよ」
フェザー・フォーリング(ea6900)が間に入る。
「それをからかっちゃいけません。私にも妹がいますからね、よく分かりますよ。ねえ、レイにゲふッ」
「だーれーが、誰が妹だ! 俺は男だ、弟だ!!」
次に見たときには、フェザーは遙か彼方へふっとばされ、後には握り拳に血管を浮き上がらせたレイニー・フォーリング(ea6902)が立っていた。
「‥‥ぷっ。クスクスクス‥‥」
彼らのやりとりがおかしかったのか、ネヴェは笑いを堪えきれないというふうに噴き出していた。
「そうじゃ、女の子は笑っておる方がいい」
それでようやく場が和み、ザンガ・ダンガ(ea7228)は改めて自己紹介をした。
「落ち着いたところで、ネヴェちゃん、取られた首飾りと、カラスがいた場所のことを詳しく教えてくれますか?」
ミオ・ストール(ea4327)が尋ねると、冷静になったネヴェはしっかりとした口調で、分かりやすく、詳しく教えてくれた。実はネヴェ達はピクニックといいながら、(子どもの冒険心ゆえなのか)木々深い山の中へ入り込んでいたらしい。
「やれやれ‥‥」
テスタメント・ヘイリグケイト(eb1935)は溜息をつく。何というおてんば娘だろうか、と。
「ネヴェ殿」
長寿院文淳(eb0711)が少女の目線にしゃがみ込む。
「子どもだけで、危ない場所にいってはいけない‥‥幸い今回は怪我をしなかったが、次もそうとは‥‥限らない」
「まあまあ、今はその話は置いておきましょう」
シュンとするネヴェを庇うように、明王院未楡(eb2404)は言う。
「ネヴェちゃんも、そこはよく分かってますよね? もう二度としないって、約束できる?」
「はい」
素直な返事をしたネヴェに、未楡は納得して頷いた。
さて、問題のカラスの縄張りへと移動した冒険者達だが、何の目印もない初めての森の中。住み着くカラスは大きいとはいえ、どこにその巣があるかは分からない。
「ジャイアントクロウの縄張りはどこ?」
グリーンワードの使えるミオが、片っ端から周囲の木々に質問を投げかける。いくつもの問いを総合して、おおまかな位置は予測できるが、しかし目的とするカラスの巣はひとつだけ。ネヴェの首飾りを奪ったカラスの巣は、この壁のように生えている木の上の、たった一カ所なのだ。
「本人に案内してもらうのが一番だな」
そう言ってマレスは、本人、もとい本烏をおびきだすべく罠を仕掛けることにした。道中に集めておいた食料の残りを餌に、寄ってきたところを板きれで打ち付ける仕掛けのものだ。
「その罠に微力ながらご協力しましょう」
と、セラがおもむろに取りだしたのは、微力と言うには強烈な匂いの保存食。カラス以外の動物も呼び寄せてしまいそうなそれを罠の真ん中に置いて、冒険者達は物陰に隠れ、じっとカラスの来るのを待った。
「‥‥来ませんね」
「おおっ、何か来たッ」
「あれはタヌキだな」
「ああ、全部食べられてしまいました」
何度か餌を置き直してみたが、なかなか目的のカラスは現れない。
「他の動物が狙わない餌が、必要じゃないでしょうか‥‥?」
文淳が言った。カラスだけが狙う餌とくれば‥‥?
「やはりコレか?」
ザンガが意味ありげに笑いながら、腰の雑嚢に手を入れる。そこから取りだしたのは数枚の金貨。しかもぴかぴかに磨いてある。
「それを囮に使うのですか? なんて勿体ない」
フェザーは思わず声を上げた。
「カラスとて、飲み込むわけじゃなかろう。後で取り返せば済むことじゃ」
ザンガは言い終わる間もなく、先ほどの罠の中央に、自分の金貨を置いた。
餌が無くなって、獣たちは見向きもしなくなった。
静寂が広がる。
冒険者達は、獲物がかかるのを、じっと待った。
(「‥‥近い、か?」)
空間を引き裂くような、激しい羽ばたきの音を、テスタメントの耳は捉えた。
「大きいわね。‥‥一羽かしら?」
未楡ももちろん、その音に気付いている。バサッ、バサッ、と遠慮のない音を立て、光る円盤に気が付いているのか、上空をゆっくりと旋回しているのが分かる。
と、巨大なカラスが一直線に金貨目掛けて滑降してきた。
「後を追うぞ!」
フォーリング兄妹が交互にブレスセンサーを用いて、カラスの逃げた方角を追う。
「今の詠唱の切り替えはよかった。さすが俺の妹だ」
「それ以上言うとあのカラスに喰わせるぞ!」
カラスは追っ手の存在に気付いているのかいないのか、進路を変えることなくある方向へ飛んでいる。
「ぐっ‥‥」
レイニーは息をのんだ。
金貨をくわえたカラスは、1本の木の上で止まった。
そしてそこには、同じような大きさの生き物の気配が、もう3体、あったのだ。
「‥‥仲間、か‥‥」
「倒すことが目的じゃない、あくまで首飾りを取り返すことだ」
クーラントは木に登ろうと、背負っていた弓を置く。
「おお、任せたぞクーラント。カラスは下から追っ払ってやる」
まさか腹がつかえて木に登れないなどと言えないザンガは、これ幸いにクーラントに全てを任していた。もっとも、全員でぞろぞろ登っても仕方がないのは確かだ。残りの者はカラスを引き離すために動いた方がもちろん良い。
「ほら、これに気付きますか?」
セラはこれ見よがしに、胸元を開けて銀のネックレスをゆらめかした。
「こちらにもありますよ」
文淳の首にも同じものがかかっている。
まず1羽。これは簡単だった。飛んできたところを叩き落とす、あっという間に片づいた。
だが次には、仲間をやられたと知った残る3羽が、一斉に襲いかかってきたのだ。
「鳥の分際でギャッ、覚えてろイタッ、焼き鳥にして喰ってやるぞー!」
ジャイアントクロウは冒険者達に大きな爪でつかみかかり、嘴で目をえぐろうとする。そのたびに払い落とし、時には羽を切り、しかしカラスたちが巣に戻らないように皆は応戦する。
間もなく、クーラントがするすると降りてきた。握った手の間から、金色の鎖が見えている。
撤退だ。
「‥‥陰に生きし邪なる者よ‥‥その身を以て捌きを受けよ」
カラスがテスタメントの放ったブラックホーリーに包み込まれたかと思うと、森中に響き渡るような悲鳴をあげた。
「今のうちだ」
殺すことが目的ではない。撤退する隙が出来れば、あとはさっさとこんな森を出て行けばよい。
冒険者達が無事に戻ってきたのを見て、ネヴェはやっぱり泣いていた。
「ネヴェちゃん。首飾りはお返しします。それから、この事をどうするか、あとはあなたにお任せします」
受け取りながらネヴェは、じっとミオの顔を見た。
「嘘をつき続けるのはとっても辛いことです。貴女にも、貴女のお母様にも」
「‥‥‥‥」
黙ってしまったネヴェを、未楡はそっと抱いた。
「きちんと、自分から『ごめんなさい』、言えますね?」
「‥‥はい」