Can not stay a dreamy girl☆

■ショートシナリオ


担当:えりあす

対応レベル:1〜3lv

難易度:易しい

成功報酬:0 G 52 C

参加人数:8人

サポート参加人数:-人

冒険期間:09月01日〜09月06日

リプレイ公開日:2004年09月08日

●オープニング

「うわぁ〜ん! 助けてくださいっ!」
 昼下がりの冒険者ギルド。
 突然、1人の青年が飛び込んできた。
 青年の年は17,8歳くらいだろうか。ちょっと頼りなさげな雰囲気もあるが、整った顔立ちで割とイイ男の部類には入る。
「たっ、助けてくださいぃ! 殺されちゃうんです〜!」
「は〜い、落ち着いてくださーい。どうしたんですか」
 冷静にギルドの受付嬢が青年に尋ねる。
「殺人予告が僕のとこに届いたのです! 来週の誕生日に暗殺者が僕を殺しにくるんですぅ!」
「殺人予告ですかぁ。じゃあ、それ見せて下さい」
 こんなことも日常茶飯事なのか、事務的に青年に応対する受付嬢。
「こ、これですっ!」
 青年が見せた殺人予告とは一体何なのかっ!

『予告状☆

 今まであたしに盗めなかったモノはないわ。
 あたしが一番欲しいもの。
 それは‥‥ア・ナ・タ☆
 1週間後の誕生日にアナタのハートを奪いに行きますv

 怪盗・ブリンクキャット☆』

 ブチッ!
 何かがキレる音がした。
「あの‥‥相談する所が違うんじゃないですか」
 受付嬢の額に青い筋が浮かび上がっている。
 まぁ、確かにどう見てもラブレターにしか見えないのであるが‥‥。
「ど、どうしてですかぁ! 僕の心臓を盗まれるんですよぉ! 僕はズゥンビにされちゃうんだぁ!」
 青年は涙に咽ながら叫んだ。‥‥それは激しい勘違いであるが。
「ですから‥‥お友達にでも相談してもらったら?」
 何かすでに投げやりな受付嬢(彼氏いない歴●年)。
「まぁまぁ。このブリンクキャットっていう盗賊、盗難などの容疑で指名手配されているようだから、冒険者に依頼して捕まえてもらうのもいいんじゃないか?」
 そこに先輩係員が口を挟む。
 ブリンクキャットはその首に賞金が賭けられており、捕まえれば報酬を得ることができるみたいだ。
「ほ、本当ですか! では、お願いしますぅ!」
 と、言うことで契約成立。
 暫くして、ギルドにこのような依頼書が張り出された。

『怪盗から大切なハートを守ってください!』

 日も沈み、黄昏時。
 ある民家の屋根の上に、腕を組んで沈む夕日を見つめる1人の少女がいた。
「あたしを惚れさせた代償は大きいからね! でも、人を好きになるって初めての事だし‥‥うぅん! がんばらないと! 夢見る少女じゃいられないんだから!」
 犬に吠えられつつも「グッ!」っと拳を握り、何か熱いものを込み上げさせている少女。
 そう、彼女が(自称)怪盗・ブリンクキャットである。

●今回の参加者

 ea0413 マリエナ・エレクトリアム(29歳・♀・ウィザード・人間・ノルマン王国)
 ea2207 レイヴァント・シロウ(23歳・♂・ナイト・エルフ・イギリス王国)
 ea2638 エルシュナーヴ・メーベルナッハ(13歳・♀・バード・エルフ・ノルマン王国)
 ea2890 イフェリア・アイランズ(22歳・♀・陰陽師・シフール・イギリス王国)
 ea3497 レーリ・レインフィールド(25歳・♀・ファイター・エルフ・イギリス王国)
 ea3665 青 龍華(30歳・♀・武道家・人間・華仙教大国)
 ea5556 フィーナ・ウィンスレット(22歳・♀・ウィザード・エルフ・イギリス王国)
 ea6401 ノイズ・ベスパティー(22歳・♂・レンジャー・シフール・イギリス王国)

●リプレイ本文

「こんにちはー! エルね、おにーちゃんの依頼を受けて来たの。よろしくね☆」
 一足先に依頼人の家に来たエルシュナーヴ・メーベルナッハ(ea2638)が、元気良く依頼人・ジーンにご挨拶。この気弱な青年、ちっちゃくて可愛いエルフの少女を見て「本当に依頼を受けた冒険者?」と、一瞬疑問を浮かべた。しかし、その悩ましく潤んだ青い瞳を覗いて、疑問が違う感情へと変化した。今までの人生で感じたことの無いその感情に、青年の心は熱くなった。だが、ジーンは知らない。その感情が魔法によって作り出された感情だということを。
「エルね‥‥おにーちゃんのコト好きになっちゃったみたい‥‥」
「え、そんな‥‥。まだ、会ったばかりなのに‥‥」
 言葉では否定するが、ジーンの心はすでにエルシュナーヴに操られていた。
「うんとね。怪盗さんからハートを盗まれない方法、エルが教えてア・ゲ・ル☆」
 そう言うと、エルシュナーヴはジーンの胸にダイブ。ちっちゃな体を摺り寄せ、耳元に甘い吐息を吹きかける。こうして、エルシュナーヴ先生の特別授業が始まった。
「こんにちは‥‥って、エルちゃん! 何してるの!」
 暫くして、同じく依頼を受けてやって来た青龍華(ea3665)がジーン宅を訪れた。エルシュナーヴに抱き付かれているジーンを見て、そりゃもう気まずい雰囲気。
「あっ、ちょっと! とにかく、離れて!」
 龍華が強引に2人は引き離すと、ジーンの顔に予告状の写しを叩きつけた。
「いい!『アナタのハートを盗む』って言うのは、本当の心臓を盗むんじゃなくて『アナタを私に惚れさせるわよ』って意味なの! つまり、これは殺害予告なんかじゃなくて、ただのラ・ブ・レ・ター!!‥‥別にあんたを安心させようとかで嘘言ってる訳じゃないからね!」
 ジーンの顔にグリグリと写しを押し付けながら、彼の予告状に対する曲解を解こうとする。しかし、余程鈍感なのか「さっぱり理解できませーん」というような眼差しを龍華に向けた。
「あー、もう! これでもわからないなら、わかるまで頬抓るわよ!」
 その態度に少しキレた龍華が、張り付いた笑顔でジーンの頬を抓って強引に「わかりましたー!」と言わせたようであった。
「あらあら‥‥何やら大変なことになってますね‥‥」
 すでに暴走気味といった感じの依頼人宅。そこにフィーナ・ウィンスレット(ea5556)が眠そうな眼を擦りながら入ってきた。「ふぁ〜」とあくびをすると、ジーンの傍に来てまじまじと顔を見つめる。
「好みの女性のタイプってどんな人ですか? あと、誕生日に貰うなら何がいいでしょうか?」
「え! そんな‥‥。急に聞かれても‥‥」
 この青年、すでにわかっているかと思うが恋愛経験が無い。どんな娘がいいかと聞かれても、どう答えたらいいのかわからなかったりする。今はチャームの効果でエルシュナーヴに好意的な感情を抱いているのだが。
「では‥‥最近、誰かと会ったとか、知り合ったということはありませんか?」
「うーん、ないですよぉ。前、女の子がぶつかってきて転んだとかそれくらいです〜」
 ――キュピーン
 フィーナの問いに答えたジーンの返答を聞き、龍華の目が輝いた。女の勘というやつであろうか。
「ふーん。で、その娘、どんな娘だったの?」

 *

「‥‥つまらない怪盗ですね」
 酒場を中心に情報を収集していたレーリ・レインフィールド(ea3497)が、怪盗の噂を聞いて脱力していた。
「リボンとかお人形さんばっかり盗むなんて、可愛い怪盗さんだね!」
「‥‥窃盗には変わりないから、指名手配されて当然です」
 マリエナ・エレクトリアム(ea0413)の言葉にさらに力が抜けるレーリ。ブリンクキャットという名の(自称)怪盗、盗む物は可愛い物だけという変わった怪盗だ。だが、なぜか一部で人気が高く「オレのハートを盗んでくれ!」という強者もいたりする。
「でも、捕まえたら怪盗なんて物騒なことをしないように説得しないとね! あと、あの鈍い依頼人さん! オ・ト・メ・ゴ・コ・ロがわかってないよね!」
「‥‥そうね。私でも意味が分かるのに、鈍いにも程があると思います」
 色恋沙汰に興味津々の夢見る乙女・マリエナは、ウキウキしながら街に戻っていった。
 その背中を見つめながら、レーリは溜息を吐く。
「‥‥恋愛とは良く分からないものですね。まぁ、余り興味もありませんが」

 *

 夜も更けた頃。
 月光の下に佇む一つの影。
「う〜ん、どうしよぉ〜! 彼のハートをガッチリ掴む方法ないかしら?」
 と、何やらお悩みの少女。彼女の名はブリンクキャット。
 そこへ、背後から近づく怪しい影。
「ふふふ、華麗に怪盗! 素敵に無敵! ブリンクキャット参上か!?」
「だ、誰っ!」
「ハートのAの仮面騎乗兵見参!!」
 マスカレードを装着したレイヴァント・シロウ(ea2207)が、怪しいセリフと共に登場。
「何なのあんた? そんな仮面なんか付けてカッコわるいわね!!」
「ふっ、そんな口を叩けるのは今のうち。さあノイズ君、イフェリア君、出番だ!」
 レイヴァントの掛け声と共に、彼の背後から飛び出す2つの影!
「これが初めての依頼だからがんばるよ!」
「ねーちゃんには悪いけど、これも仕事やさかい! 逃がさへんで!」
 勢い良く飛び出したのは、イフェリア・アイランズ(ea2890)とノイズ・ベスパティー(ea6401)のシフールコンビ。
「わぁ〜ん! そんなの聞いてないぃぃ!」
「言う訳ないだろう。さあ、怪盗ブリンクキャットを捕獲しろ!」
 レイヴァントの指示で、逃げ出そうとするブリンクキャットを2人のシフールが追撃! イフェリアとノイズの手には釣り糸が握られており、ブリンクキャットの体に絡ませて身動きを取れなくした。
「いやーん! やめてぇ! 変態ーっ!」
 ジタバタ暴れるブリンクキャットに、様子を伺っていたレーリが近づき、首筋にダガーを突きつける。
「‥‥つまらない事で死にたく無いでしょう。遊びのつもりならすぐにやめなさい。‥‥同じ事を繰り返すようなら川に浮かぶ事を覚悟することね」
「うぇ〜ん! 死にたくないよぉ‥‥」
 レーリの冷淡な口調の脅しに泣き出してしまったブリンクキャット。
「じゃあ、僕達の言うこと聞いてもらおうかな☆」
 ブリンクキャットの頭上でくるくる飛び回っていたノイズが、彼女の肩に乗って言った。
「僕達はキャットさんを捕まえるのが目的じゃなくて、お手伝いをしたいんだよ」
「えぇっ!」
「そうやな。依頼人のにーちゃんも、えらく勘違いしとるようやしな」
「い、依頼人って、もしかしたらジーンくん?」
「うん。何か予告状のこと凄く誤解してるんだ」
 ノイズとイフェリアが依頼人のことを話すと、ようやくブリンクキャトは泣き止んだ。
 そこに、フィーナとマリエナも場所を突き止めてやって来た。
「やっと見つけました。もし、あなたがこれ以上、怪盗行為をしないと誓うのなら、ジーンさんの情報を教えてあげてもいいですよ」
「そうや。うちらが告白の手伝いしたるから、もう怪盗から足洗いや。」
 フィーナとイフェリアが怪盗から足を洗うように説得。ブリンクキャットもコクリと頷く。
「恋をかなえたいと思うのは悪くないけど、怪盗としてじゃなくて、自分自身でぶつかっていかなきゃ。大丈夫! 熱い気持ちでぶつかっていけば、向こうもわかってくれるよ! 恋する女の子は誰よりも強くてかっこいいんだから☆」
 マリエナも熱を入れて説得。
「OK♪ 2人だとけっこう良いカップルになると思うんだよね☆」
 ノイズが再びブリンクキャットの頭上を飛び回る。そして、レイヴァントがマスカレードを外し彼女を見つめた。
「では、一芝居演じていただこうか」

 *

 誕生日当日。依頼人宅にて。
「エル‥‥おにーちゃんにハートを盗まれちゃったみたい。おにーちゃんのコト、こんなに好きなんだもん‥‥」
「あ‥‥そんな‥‥」
 エルシュナーヴはジーンとイチャついていた。傍から見れば、もうすでにラブラブカップル。
 そこに、「バーン!」と戸を開けて予告どおり怪盗参上☆
「アナタのハート奪いにきまし‥‥って、彼女いたの!!」
 ブリンクキャットは、イチャイチャしているジーンとエルシュナーヴを見て呆然。
「わー! 心臓奪いに来たー!」
「だから、違うって言ってるでしょ!」
 ばこーん☆ と、冷静にツッコミを入れる龍華。
 さらに、次から次へと現れる乱入者!
「ついに見つけたぞ、キャット! 古来より怪盗娘ちゃんは、とてもここでは言えないようなキツーイ御仕置を受ける訳であるので、ギルドに突き出す前に一つお付き合い願おうかね?」
 それはもう、恐ろしいほどの邪眼悪人面でブリンクキャットに手を伸ばすレイヴァント。右目をギラーンと怪しく輝かせて彼女に襲い掛かる!
「いやぁ〜☆」
 何か緊張感の無い叫び声を上げるブリンクキャット。
「おにーちゃん! あのおねーちゃんを助けてあげて!」
 怯えた振りをしてエルシュナーヴがジーンに叫んだ。
「え! う、うん!」
 言われるままに、正しき怒りを持ってレイヴァントに立ち向かうジーン!
「ちっ! 邪魔が入ったか」
 ジーンが行動を起こしたのを確認して、レイヴァントは舞台から飛び降りた。その時、すでにエルシュナーヴの姿は無かった。
「あ、ありがとう! あ、あたし、、、」
「え、あ、、、うん」
 舞台が終わり、そこはもう2人だけの世界であった。その後、2人はどうなったかは言うまでも無い。
「恋って人を狂わすこともあるけど、僕も早く経験してみたいなぁ」
 ノイズは2人を羨ましく思いながら舞台を後にした。

 2人の傍には1枚の羊皮紙が落ちている。
『道化芝居はこれにて閉幕。ブリンクキャットという怪盗の人生、確かに頂いた』
 後日、ブリンクキャットは怪盗から足を洗ったそうだ。