Break the ties that bind

■ショートシナリオ


担当:えりあす

対応レベル:1〜3lv

難易度:普通

成功報酬:0 G 78 C

参加人数:8人

サポート参加人数:-人

冒険期間:09月04日〜09月11日

リプレイ公開日:2004年09月13日

●オープニング

「ここが冒険者ギルドと呼ばれる所か‥‥」
 夕方頃、静かになりつつある冒険者ギルドに1人の男が入ってきた。
 手には皮袋と似顔絵が描かれた羊皮紙が握られている。
「依頼を頼みたいんだが、この男を倒してくれる冒険者を雇いたい」
 男は受付に銀貨と保存食が入った皮袋を置き、係員に羊皮紙を見せた。
「なぜ、この似顔絵の男を倒さなくてはいけないのですか?」
 ギルドの係員が男に尋ねる。
「こいつは俺の親友‥‥だったヤツだ。今ではただの悪党だが。」
 男は少し悲しい表情で言った。
「こいつは小さい頃から一緒に育った、たった1人の親友さ。でも、博打に手を出して大きな借金を作っちまった。こんなバカでも、一度痛い目に遭えば目が覚めると思って助けてやったりもしたが‥‥。こいつ、人として絶対やってはいけないことをやっちまった」
 男は羊皮紙を握りつぶし、目には涙が浮かんでいる。
「結局、借金が払えないからと殺人を犯しやがった。しかも、それに味を占めたのか人を殺しては金を奪っている。俺にも簡単に金が手に入るからと誘ってきやがるんだ。そんな事できる訳が無い。もう、こいつを更生するのは無理だ。俺の変わりにヤツを倒してくれ!」
「なるほど、そういうことでしたか。それでは、後日冒険者を派遣します」
 受付で契約を済ませた男は最後にボソリと呟いた。
「やつらは俺の村で悪事を働いている。これ以上、人に傷を付けることは止めないといけない。本当は俺がやるべきなんだろうけど‥‥。やはり、いろいろあってな‥‥」
 悪党と言えども、昔からの友の絆というものがある。それを断ち切るのは、やはりつらいであろう。
 縛られた絆を断ち切るため、彼の代わりに友を倒して欲しい。

●今回の参加者

 ea0956 フォルセ・クレイブ(26歳・♂・レンジャー・エルフ・イギリス王国)
 ea2182 レイン・シルフィス(22歳・♂・バード・エルフ・イギリス王国)
 ea2998 鳴滝 静慈(30歳・♂・武道家・人間・華仙教大国)
 ea3542 サリュ・エーシア(23歳・♀・クレリック・人間・神聖ローマ帝国)
 ea3800 ユーネル・ランクレイド(48歳・♂・神聖騎士・人間・フランク王国)
 ea4295 アラン・ハリファックス(40歳・♂・侍・人間・神聖ローマ帝国)
 ea5386 来生 十四郎(39歳・♂・浪人・人間・ジャパン)
 ea5678 クリオ・スパリュダース(36歳・♀・ナイト・人間・ビザンチン帝国)

●リプレイ本文

●潜入
「静かな村だとは思ったが、どこにでもいるもんだなこの手のクズは。ゴキブリと一緒だ」
 村の様子を眺めながらアラン・ハリファックス(ea4295)が呟く。
 先行して村に入ったアランは、自らを冒険者と名乗って村人から情報収集を行っていた。
 村人も悪党どもを何とかしたいと考えており、大変協力的であった。聞き込みの結果、悪党がよく出入りするという酒場を突き止めることができ、アランもその酒場に入った。酒場の奥には、他の客と明らかに違う雰囲気があるテーブルがある。人数は9人。
「こいつらか‥‥」
 アランは念のため、他のテーブルで8人が例の悪党かどうか確認した。答えはイエス。
「居場所は掴めた。出来れば、仲間に伝えたいところだな」
 今回、冒険者達は商人の護衛を装って悪党をおびき寄せる作戦を立てている。
 確認を取ったアランは、悪党の居場所を護衛班に伝える為に酒場を後にした。

 悪党は8人のはずである。
 テーブルには9人。
 この中に冒険者のユーネル・ランクレイド(ea3800)が混ざっており、悪党とダイスで賭博を打っていた。
「へへへ。兄ちゃんの負けだな。有り金全部置いていってもらおうか!」
「か、金なんてねぇよ!」
 さて、演技か実力か。見事、賭博に負けたユーネルはその場から逃げ出そうとした。
「金が無いなら、身包み全部置いていきな!」
 逃げ出そうとするユーネルを悪党が取り囲む。
「た、助けてくれ! 体で払うから! そ、そうだ! 金になる話を教えてやるから!」
「本当か! 嘘だったら命が無いと思えよ!」
「嘘じゃねぇ! 本当だ!」
「それで、どういう話だ?」
 ユーネルの言葉を聞き、悪党を仕切るリーダー格の人物、依頼人の親友である人物が近づいてきた。
「あぁ、商人が大量の荷物をこの近くに運んでるって話だ。それを襲えばいい金になるぜ」
「なるほどな。それは、どこに運んでる?」
 リーダーが話しに食いついた。こうしてユーネルは悪党のグループへ潜入した。

●誘導
 アランから報告を受けた鳴滝静慈(ea2998)とクリオ・スパリュダース(ea5678)が、悪党の溜まり場となっている酒場に到着した。
 静慈は衣類を泥で汚し、それらしく見せかけている。クリオは女主人役なので汚れは少ないのであるが。
「では、作戦決行だな」
 静慈が酒場の扉を開け、中に入った。
 クリオも中へ入り、酒場の主人と会話をする。横目で辺りを見回すと、奥のテーブルにそれらしき雰囲気の集団を発見した。
「あいつらですぜ!」
 悪党集団に紛れ込んでいるユーネルもクリオと静慈を発見し、リーダーに伝える。
 そこへ、静慈が集団の方へ近づいていく。
「ちょっと、頼みたいことがあるんだ。力がいる仕事でね。多い方が助かる。少し骨が折れそうでな」
(「本当だったろ?」)
 ユーネルがリーダーに耳打ちする。
「へへへ。どんな頼みだい? 力仕事ならオレたちにまかせな!」
「荷車が泥濘にはまってね。うちの者では力が足りなくてね、ヒマなら手を貸してくれ」
 肩を竦めながらクリオが用件を話す。
「礼はする。約束に遅れたりすると、金持ちってのはうるさいからね」
「そうかい。それなら、力をかしてやってもいいぜ!」
 どうやら、悪党たちは話を信用しているようであった。これなら作戦はうまくいきそうだ。
「それで、荷物やらってなんだい?」
 1人の悪党が荷物について尋ねた。
「荷物は大量の酒だ」
 静慈が荷物の中身を答えると、リーダーは一瞬ニヤリと表情を変えたが、すぐに真剣な顔に戻った。
「なるほど。そりゃ、力がいるってもんだ。じゃあ、そこに案内してもらえるかい?」
「少し遠いが向こうの道で止まってる。頼んだよ」
 そう言うと、クリオは酒場を後にして存在しない荷馬車へと誘導するのであった。

●奇襲
「遠いな。どこまで行くんだ!」
「‥‥もうすぐだ」
 悪党達はイライラしていた。
 どこまで行っても目的の荷馬車はない。
「来ました‥‥行きますよ、フォルセさん!」
 悪党が誘い出されてきたのを確認したレイン・シルフィス(ea2182)が、隣で弓を構えているフォルセ・クレイブ(ea0956)にそっと声をかけた。フォルセは無言で頷き、やってきた悪党の背中に狙いを定める。
「もうすぐって、どこまでだ!」
 声を荒げる悪党にクリオが冷静に言う。
「‥‥おたくらの墓場がね」
 その時。
 茂みの中から矢が飛び出た。
「ぐわぁ!」
「ど、どうした!」
 突然の出来事に悪党達は混乱した。
「悪党が! 騙されてやってきやがって!」
 フォルセの放った矢は悪党の背中に命中した。
「悪く思うな、これも戦いなのでな。恨むならばキミ達の犯した罪にしたまえ。因果応報、これはその報いなのだよ」
 静慈もフォルセの攻撃と同時に悪党へ襲い掛かる。素早いワンツーから回し蹴りを叩き込み、近くにいた悪党を倒した。
「用意しておくべきだったかな。おたくらの死体を運ぶ荷車をさ」
 クリオも隠していたダガーを引き抜き、悪党に牙を向いた。
「我が手より出でて‥‥白銀の矢よ、罪人を貫け!」
 そこへ、レインがムーンアローを打ち込む。さらに、月光の矢を受けた悪党をクリオが蹴り倒した。
「聖なる力で邪悪を倒さん‥‥ホーリー!」
 外套を脱ぎ捨ててサリュ・エーシア(ea3542)がホーリーで攻撃。詠唱中、来生十四郎(ea5386)がサリュを庇うように立っている。
「悪党風情が‥‥近づくんじゃねぇ!」
 近づく悪党を十四郎が切り倒す。
「お前ら、力の無い一般人を殺し続けただけで自分がお偉くなったとでも思ってるつもりか? 戦いを甘く見るんじゃねえぞ、クズ!」
 退路から現れたアランが大槌を振り回しながら戦闘に加わった。
「自分のやってきた事を地獄の底で永遠に後悔して、逝け!」
 悪党には容赦は無い。その無慈悲な一撃で悪党を叩き潰す。
 悪党に交ざり様子を見ていたユーネルが、突然ブラックホーリーを唱えた。ユ−ネルの放ったブラックホーリーは悪党に命中。
「な、何するんだ!」
「残念だけど、俺は敵でねぇ‥‥」
 正体を明かしたユーネルがリーダーを取り押さえようとする。しかし、それをすり抜けショートソードを構えた。
「お前の相手は俺だ」
 そこへ、十四郎がリーダーへ切りかかる。だが、リーダーは十四郎の攻撃を素早く避けた。
「その程度で!」
 十四郎の切りを避けたリーダーが反撃。しかし、十四郎は峰打ちでリーダーのショートソードを叩き落とした。
「くそっ!」
 腕を押さえ後退りするが、ユーネル、十四郎、クリオに囲まれ逃げ場が無い。
 残った悪党は逃げ出そうとするが、サリュのコアギュレイトによって捕まえられる。
「た、助けてくれ!」
「俺は生憎と、外道共にかける情けと言う物は持ち合わせては居ないのでな!」
 動けない悪党へフォルセは躊躇なく弓を放つ。放たれた矢は悪党の胸を貫いた。
 こうして、リーダー以外の悪党は地に伏せた。


「この者達の処分はどうするのですか? 生かしておけないのは分かりますが、本当に僕達が手を下すのですか?」
「依頼はこいつを殺すことだ。怨みはないが、生かしておく価値も無い」
「人として最低のことをしてきたけど、私達が始末してしまっては関係者の心はすっきりしないはず。依頼人と面会して、自分の罪を認めてもらうのがいいと思うわ」
 戦いが終わった後、悪党達の処遇について話し合われた。アランはそのままリーダーを殺そうとするが、サリュは生かして依頼人に合わせたいと考える。
「なるほど‥‥ジェイクのヤツだな‥‥」
 リーダーは突然ショートソードを取り、自分の心臓に突きつけた。
「な、何をするの!」
 慌ててサリュが止めようとするが、
「ヤツに言っておけ。友は自らの手で命を絶ったと」
 ショートソードは自分の心臓を貫いた。
 彼も自分のやってきたことを理解していた。自らの手で命を絶ち、罪を償うこと。これが、親友として最後の友情であったのだろう。

●顛末
 悪党を倒し、その結末を依頼者に報告した冒険者。
 ジェイクと呼ばれた依頼者は、ただ「そうか‥‥」と悲しい表情で呟くのが精一杯であった。
「人の心の闇と欲望は、やはり恐ろしいものだな‥‥」
 依頼を振り返り、フォルセが溜息混じりに呟く。
 その頃、鳴滝は村人達に事の顛末の報告していた。
「とりあえずは終わった‥‥だが、後はキミ達次第だ。再びこのような悲劇が生まれないことを祈る」
 そう言って鳴滝は一人村を後にした。
「この村にはいないのか‥‥」
 アランは悪党達の遺族を探して村中を回っていた。
 しかし、村にはどの悪党の遺族もいなかったのだ。
 人が正しい道を踏み外す理由はいくつもある。自らの欲望の為、中には生きる為に仕方が無く犯罪を犯す者もいる。
 自分の倒した悪党は後者だったのであろうか。
 しかし、その境遇を断ち切ること。それが、今回の使命であった。