Higher state of consciousness
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■ショートシナリオ
担当:えりあす
対応レベル:1〜3lv
難易度:やや易
成功報酬:0 G 65 C
参加人数:8人
サポート参加人数:-人
冒険期間:09月04日〜09月09日
リプレイ公開日:2004年09月13日
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●オープニング
『狂った連中をどうにかしてくれ!』
*
「うひゃひゃひゃひゃひゃぁ!!!」
キャメロット郊外。
ある新月の夜、暗闇の中に響く怪しい声。
「うひゃひゃ! より高い精神状態になれば、人は人を超えることができるのだ! 神に近づくことも夢ではないのだよ!」
「キャァー!!!」
轟く悲鳴。
被害者Aさんは帰宅途中、奇人と遭遇した。
この怪しい人物、上半身は裸で下半身はかなり丈の短いスカート。さらに、体中に縄を縛り付けている強者だ。
こんなのが目の前に現れたら驚かずにはいられないであろう。
「うひゃひゃ! 狂ってしまえば、今までの悩みや苦悩がウソのように消えてしまうのだよ! さぁ、我々と一緒に発狂しようではないか!」
「イヤァァァァァ!」
被害者Aさんは何時の間にか現れた数人の信者に囲まれていた。
信者は奇声を発しながら、変態的かつ複雑なダンスを被害者Aさんの周りで踊り始める。
「「「「「アタ! アタ! アタ! アタ! アタ! アタ! アタ! アタ!」」」」」
「ヤメテェェェェェ!」
その怪しいダンスとリズムに被害者Aさんの精神は崩壊寸前。
そして、ブレイク。
信者は踊りを止め、一斉に両手を空に向かって上げた。
その時、すでに被害者Aさんは燃え尽きていた。
*
最近、キャメロット周辺で怪しい宗教団体が暗躍しているとの情報を入手した。
この宗教団体は「発教」と呼ばれ、夜な夜な奇声を発しながら全裸に近い状態で街を走り回ったり、勧誘活動を行っているという。
このままでは治安悪化も懸念されるので、早急にこの宗教団体を潰してほしい。
●リプレイ本文
其の夜更けて、深夜のキャメロット。
空を見上げれば、覆いつくすのは闇。
新月の下に人影は無く、街は静寂が支配している。
と、その時。
誰もいないはずの裏通りに美声が響き渡る。
歌っているのはエリン・コナハト(ea6008)。その声から紡ぎ出される歌は、とある伝説の武道家をモチーフにしているようだ。
「何事もガッツですよ〜♪」
最近、この近辺で怪しい宗教団体が現れて、勧誘活動を行っているという。エリンはそれを承知でこの場にいる。
彼女の目的はその宗教団体をおびき寄せることなのだ。
そこへ、エリンの歌声を掻き消すかのように下品な声とリズムが近づいてくる。
――アタ! アタ! アタ! アタ!
「来ましたね〜♪」
何時の間にかエリンは5人の異様な集団に囲まれていた。この集団は怪しく腰を動かし、リズムに合わせてダンスを踊っている。エリンを囲んで踊り狂う様は、何かの儀式を行っているようにも見えた。
しかし、エリンはまったく冷静を装い、その様子を伺っている。
この集団、全員上半身は裸、下半身は丈の短いスカートで体を縄で締め上げているという、まさに変態そのもの。
こんなのを見たら普通は驚かずにいられないであろう。
「うひゃひゃひゃ! お嬢さん、なかなか素質あるねぇ。さぁ、我々『発教』と共に神を目指そうではないか!」
5人は踊りを止めた。その中からリーダーらしき人物がエリンに語りかける。
しかし‥‥
「えい♪」
エリンはその言葉も聞かず、突然信者達のスカートを捲り始めた! さらに、その様子を見て一言。
「ぷっ♪ 」
「な、なっ‥‥」
さて、何と言ったのであろうか。エリンの一言に信者達は崩れていく。その言葉はかなり屈辱的だったらしい。
「何をするのだ!」
「ふふふ。あなたも☆ えい♪」
さらに、リーダーのスカートまで捲ってしまう! まじまじとその様子を眺めると、エリンはリーダーの耳元で何やら囁いだ。
「ぬ! ぬぅおぉぉぉ!」
その囁きにリーダーはショックを隠しきれない。
この時点で、すでにエリンは『発教』を超えていた。
そこへ、新たな影が近づいてくる。
「発教だか発狂だか知らないけど、その程度でハイになってトリップしていたつもり!?」
現れたのはレニス・クレイブ(ea0963)とミケーラ・クイン(ea5619)。
レニスはすでに崩れている発教信者の1人を踏み付け、熱く語り始める。
「ふっ、甘い! 甘すぎる! 私はもっと上のハイでトリップな事が出来るわ!! そして、そのキーワードそれは『兄・妹・愛』よ!!」
「な! 何ぃぃぃ!」
レニスの驚きの言葉に信者はさらに崩れた。
「そうだ。『兄妹愛』とは『発教』以上にすばらしいものだ!」
ミケーラも熱く信者に『薔薇』という教えを説く。
「そう! 血の壁を超えた許されざる禁断の愛こそ、もっとも美しく、もっとも燃え上がる愛なのよ!」
「こ、こいつ! 一線を越えたのか!」
「お、オレにはそんなことできねぇ!」
「か、神だ!」
決して人前では言えない熱い想いを語るレニス。その陶酔ぶりはすごいものがある。ハイになったレニスの熱弁を聞き、信者は驚愕した。
「困難があってこそ愛は素晴らしいものへと昇華するのだ! 発狂などと小さいものなぞ比べ物にならんのだ! ふははは〜♪」
ミケーラも目を輝かせながら信者を説き伏せる。時折、理解不能な言葉が聞こえるのだが、信者の悲鳴に掻き消されよくわからなかった。
妄想大爆発中、騒然としている裏通り。
また、新たな影が現れた!
「我は【獅子】。闇を愛でる者。闇を見つめし黒獅子也。我牙を持ちて汝ら屠らん!」
「我は【音】。死なる旋律を奏でるもの。闇に響く断罪の音色を響かせましょう!」
「「我らは『Anareta』 殺戮の星より生まれし死の獣、我等が牙で汝の罪を断罪せん!!」」
声を合わせて名乗りを上げたのはサラ・ミスト(ea2504)とレオナ・ホワイト(ea0502)。キャメロットに現れた謎の宗教団体の噂を聞きつけ、殲滅する為にやって来たのだ!
「また、変なヤツらが現れた!」
2人の姿を見て逃げ出そうとする信者。
「お前達に言われたくは無いわ‥‥ってことで、月に代わってお仕置きよ☆」
背を向けた信者にムーンアローを放とうとするレオナ。
だが、その台詞を聞いて信者は一斉に空を見上げた。今宵は新月。月は出ていない。
「あぁ! 何かバカにした!? 腹立わね!」
信者の行動にキレたレオナは躊躇無くムーンアローを乱発!
「うわ! やめんか! 当たったらどうするんだ!」
「巻き込まれても文句言わないことって言ってあるわよね? 貴方の犠牲は忘れないわ‥‥」
「バカ! ヤメロー!」
飛び回る月光の矢に驚くミケーラが文句を言うが、レオナは泣く振りをしてお構いなしにムーンアローを打ち込んでいく。
「ク、クソッ! では、これでどうだ?」
「キャー!」
リーダーはレニスを人質に取った。
「こいつがどうなってもいいのか!」
だが、リーダーの脅迫にも動じず、平然とした表情でサラが近づいていく。
「それが? 私の役目は異端者の排除。そいつにはいってある‥‥『捕まったら一緒に突き飛ばす』って」
「そ、そんなぁ〜」
チラッとレニスを見るが、サラは冷笑と共に剣抜き、
「さて‥‥トイレはすませた? 神様にお祈りは? 部屋の隅でガタガタふるえて命乞いをする心の準備はOK?」
躊躇なくリーダーに突撃を敢行。チャージングを受けたリーダーは吹き飛ばされて失神した。
「いやぁ〜! 鬼ぃ!」
半分は演技であるが、もう半分は本気であり、レニスも一緒に巻き添えをくらい転倒した。
何やら激しさを増してきた裏通り。
軒先から仲間の戦いを見つめる1人の男がいた。
「異端狩りの『Anareta』がいますか。例のプランは止めて置いた方が賢明ですね。あくまで『今回は』ですがね」
その男はマスカレードに入手困難な六尺褌という、発教信者とためを張れる、いや、それ以上の姿であった。
彼の名はザキ・キルキリング(ea3130)。混沌を是とする異端集団『大龍家』に所属するウィザードである。
だが、レオナとサラの姿を確認すると徐にローブを羽織り、用意していた灰を使いアッシュエージェンシーで分身を作る。
「宗教家は嫌いですから、早々に潰しましょう」
呪文を唱え終わると、信者に分身を向かわせる。
「では、あの発教信者を抑えなさい」
灰で作られた分身は、ザキの命令に従い信者を押さえつけようとした。
「うわ! な、なんだ!」
ゆっくりと近づいてくる灰の人形を見て驚く信者。その無表情な様子は不気味である。掴みかかる人形を振り解き、信者はその無表情な顔面を殴りつけた。すると‥‥
――グシャ!
殴りつけたと同時に人形は崩れ始める。
「うわぁぁぁー!」
信者は腰を抜かした。人間だと思ってたモノが灰となったのだから無理もない。「あわわわ」と動けないところを袋叩きにされ御用となった。
リーダーと仲間が倒れ、残った他の信者は散り散りに逃走を図る。
そのうち、2人が逃げたのは細い路地裏。
ここまでは追ってこないだろうと思い足を止めたその時、1人の信者を黒い影が覆った!
「ぐわぁぁ!」
黒い影に覆われた信者はその場に倒れ、もがき苦しむ。
「ひぇぇぇ!」
「ふん。異端者が、、、」
そこに現れたのはジーン・グレイ(ea4844)。クルスソードを構え、怯える信者に近づいていく。
「黒き父の名のもとに、人心を脅かす異端者には死こそが相応しい」
「お、お許しを〜!」
必死に命乞いをする信者。しかし、ジーンはニヤリと笑い、死の魔法「デス」を発動!
蹲っていた信者の動きがパタリと止まった。
「あああ‥‥」
「ほう‥‥生きていたか‥‥」
抵抗した信者はあまりの恐怖に硬直した。ジーンは不敵な笑みを浮かべながら、ゆっくりとクルスソードを振り上た。
「さて‥‥発教の神とやらにお祈りは済んだのか?」
静寂の夜、路地裏に悲鳴が響く。
もう1人、別の方向へ逃げた信者がいた。
必死に逃げる信者であったが、突然コアギュレイトによって呪縛され転倒する。
「人に迷惑掛けるような宗教は絶対に間違ってるんだから! みんなが幸せになれるようなのならいいけど、行き過ぎちゃったら危険なだけだもん」
そこに立ちはだかったのはレフェツィア・セヴェナ(ea0356)。動けない信者を捕まえ、その汚れなき瞳で信者の目を見つめながら語り始める。
「いい? キミ達は人より精神を高揚させて人を超える、即ち、神になろうと考えてる。でも、神というのは偉大な力によって救いを求める人々を助けてくれるんだよ。キミが神になったところでそういう人たちを救うことができるの? 慈愛の神・聖なる母であるセーラ様は、救いを求める人やそれを助ける人に惜しみない加護を下さるの。人々は愛を持って‥‥って、ちゃんと人の話を聞くときは、相手の目を見るのが礼儀だよ! そう、愛は何よりも最強の‥‥」
それはすごい陶酔ぶりで、長々と説教を続けるレフェツィア。
信者はすでに燃え尽きていたようだが、この説教は日が昇るまで続いたそうだ。
こうして、それぞれの冒険者の活躍によってキャメロットを騒がせた宗教集団は姿を消した。
冒険者達に祝福あれ!