鍾乳洞に巣食うモノ
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■ショートシナリオ
担当:えりあす
対応レベル:1〜3lv
難易度:やや難
成功報酬:0 G 78 C
参加人数:8人
サポート参加人数:-人
冒険期間:09月08日〜09月13日
リプレイ公開日:2004年09月16日
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●オープニング
冒険者達の出入りが多くなる昼頃、冒険者ギルドにて。
「うわぁぁぁぁぁん! 仲間が食べられちゃったよぉ!!」
ギルドの受付で泣きながら飛び回っているのは、シフールの新米冒険者・ピックル君。
「はいはい、男の子なら泣かないの。それで、仲間は何に食べられちゃったの?」
受付嬢が尋ねるが、ピックル君はわんわん泣いてばかり。
「だからね、事情がわからないとこちらも対応できないのよ」
「わぁ〜ん! 仲間がぁぁぁ! 僕が悪いんだぁ!!」
何を言っても返ってくるのはそんなことばかり。
一向に泣き止まないピックル君に、お姉さんはついに‥‥。
「‥‥って、何も言わなかったら、どうすればいいかわからないじゃない!!」
「ひぃ!」
キレた‥‥。
怒号がギルド中に響き渡る。
その迫力にピックル君は黙り込んでしまい、結局事情が判明したのは夕方頃であった。
*
今回の依頼は、鍾乳洞に存在するモンスターの正体を確認し、撃退することである。
以前より、この鍾乳洞にモンスターが存在することが確認されている。
最近でも、鍾乳洞を調査していた冒険者が謎のモンスターに襲われ、1名が死亡したものと思われる。
これまでの情報では、モンスターは触手を生やしており、その触手には毒があるという。触手に触れたものは毒の影響で体が麻痺するらしい。
情報が少ないので危険度が高いと思われるが、十分注意して依頼を遂行していただきたい。
●リプレイ本文
出発前、キャメロットにて。
「ようやく、依頼に有り付けやがりました〜♪ 先日もシフールが食べられた♪ 私もシフール〜♪ 食べられるかも〜♪ ‥‥ハァ」
今回、初めて冒険に出るカナ・デ・ハルミーヤ(ea4683)が、その気持ちを歌いながら飛び回っている。しかし、今回はシフールを食べてしまったというモンスターが相手なので、少し不安なのか大きな溜息を吐いた。
「食べられたシフールなんですが‥‥生きていて欲しいものですね」
御蔵忠司(ea0904)も食べられたというシフールの安否を気遣っている。
「それにしても、皆さん遅いですね」
忠司は食べられたシフールを救出できたらと考えており、その為に早く目的の鍾乳洞に到着しなければと思っていた。事前に街で情報を収集し準備は万全だったのだが、一緒に行動する冒険者が集まらない。
「早くしないと消化されてモンスターの栄養になりやがります」
カナも忠司の肩に乗って遅れている冒険者を待った。
そして、一行が揃ったのは半日後であった。
「一人足りませんが、これ以上待つのは難しいです。我々だけで出発しましょう」
一部の冒険者は、冒険に必要な保存食の準備などで集合が遅れたようだ。しかし、あと一人はいくら待っても集合場所に姿を現さなかった。当初8人で鍾乳洞へ向かうはずだったが、仕方が無く7人で出発することになった。このような状況でモンスターを無事倒すことができるのであろうか? 心配である。
*
予定より大幅に遅れたものの、冒険者達は目的の鍾乳洞に辿り着いた。入り口が狭くあまり目立ってはいない為、場所を探すのにも時間が掛かってしまった。
「ここが入り口か‥‥どんなモンスターが出てくるんだろうな」
最初にフェルナンド・エスペリオ(ea6644)が先頭で鍾乳洞の中に入った。そして、足元を注意深く確認し、後列の仲間に大丈夫だと合図を送った。
「あたしが照明係だね」
フェルナンドの斜め上にはネル・グイ(ea5768)が松明を持って飛んでいる。明かりに照らされた鍾乳洞。天井は石灰岩でできた岩のつららで埋め尽くされており、ポタポタと岩つららを伝って落ちてくる水滴が冒険者達の体を濡らす。
「ちょっと肌寒いわ。少し厚着にしてこればよかったかしら」
エルザ・デュリス(ea1514)が迷わないように目印にと小石を置きながら身震いした。中は湿っぽくじめじめしており、外との気温差がある。
「マッピングでもしようと思ってたけど、そんな必要もなさそうだな」
シュナ・アキリ(ea1501)が周囲を見渡しながら呟いた。鍾乳洞の中は思っていた程入り組んではおらず、エルザが置いた小石を辿れば迷うことはない。
「さて、どんなモンスターが出てくるのか。兎に角、触手の毒には注意しなければ」
ウェントス・ヴェルサージュ(ea3207)は後列で背後に気を配り、不意打ちに備えている。
「触手があって、麻痺しちゃうなんてイソギンチャクじゃないかな〜」
松明を持つネルが笑いながら答えた。
「触手があって麻痺毒を持ってるから、何かの軟体動物かしら?」
「そうだな。シフールを食っちまったって言ってたから結構大きいかもな。でも、特定しない方が柔軟に対応出来るんじゃね?」
エルザとシュナも正体不明のモンスターが何なのか気になっている。しかし、情報が少なく実物も確認していない状況では何なのかはわからない。注意するのは触手と毒。
「魔物〜出ない出ない♪ 出たら怖い怖い〜♪ わたしを食っても美味くありやがりません‥‥ハァ」
カナはエルザにしがみ付きながら小さな声で歌っていた。さすがにシフールを食ったモンスターと聞けば怖いであろう。
「どんな敵であっても油断はできません」
怯えるカナをなだめながら忠司が冷静に言った。
しばらく進むと、鍾乳洞の通路は狭くなってきた。エルザはこれまでずっと小石を置いて目印を付けてきたが、もう必要はないであろう。奥に進むにつれて湿気は多くなり、足元が滑りやすくなる。
「危ないから気をつけろよ」
鍾乳洞が湿っぽいせいか、ネルの持つ松明は少し早くその役目を終えた。代わりにフェルナンドが松明を片手に先頭を歩く。
「あ〜あ。長い通路だな〜。暇になっちゃうよ」
余程暇なのか、ネルがフェルナンドの頭で休んでいた。だが、周囲を見渡してモンスターはいないか確認は怠らない。
「挟み撃ちされたら不味いですね」
鍾乳洞は進むにつれてその通路を狭めてきた。忠司が襲撃に備え背後を固める。
*
さらに、鍾乳洞の奥に進む冒険者達。狭くなる一方だった通路が突然広くなった。
「注意してくださいね」
「ああ。ここに何かいるかもしれん」
フェルナンドが広くなった鍾乳洞の周りを見渡した。
――ピチャ、ピチャ
水の跳ねる音が響く。音の聞こえる方を向くと‥‥
「い、いやがりましたぁ〜!!!」
カナが驚いて忠司の背中に隠れた。そこにいたのは触手を生やした不気味な生物。
「冗談で言ってたけど、本当にイソギンチャクだなんて!」
「ほう‥‥これは巨大な磯巾着ですね。ジャパンでは見たこともありません」
「確か西洋名はローパー。名前は聞いたことがあります」
ネルと忠司もその異形の姿を見て反応した。それは、1.5mもある巨大な磯巾着の怪物。エルザも松明の明かりに照らされたモンスターの正体を確認した。
「では、ファンタズムで反応するか確かめやがります」
カナがローパーの近くで自分の幻影を作り出した。しかし、ローパーは反応しない。
「これが謎のモンスターの正体って訳か。仕方が無い、やってやろうじゃないか!」
シュナがダーツを構え、臨戦態勢に入った。ローパーも獲物の生気を感じたのか、長い触手を伸ばしてくる。だが、それより素早くシュナがダーツを放った。なるべく皮膚の薄そうな部位を狙ったが、この腔腸動物はどこを狙っても同じである。ダーツが命中すると、ローパーは小さくすぼめていた口を大きく開けて、さらに触手を伸ばし獲物を絡め取ろうとした。
「うわ! 気持ち悪い! 近寄るな!」
大きく開いた口には小さな歯が沢山生えており不気味である。
「じゃあ、こいつはどうかな。エルザ、頼んだぞ」
「まかせてよ!」
フェルナンドが手にした松明をローパーに投げつけた。投げつけられた松明はローパーの傍に落ち、エルザはファイヤーコントロールでその松明の炎を増長させた。燃え広がる炎はローパーの皮膚を焦がし、いくつかの触手は焼け落ちた。
「よし! 今がチャンスだ!」
ウェントスが触手を避けながらローパーの体にロングソードで斬りつける。ローパーも近づいたウェントスを絡め取ろうとするが、それをミドルシールドで防ぐ。
「一気に叩きましょう!」
忠司が新たに松明を準備し、その炎で触手を払いながらローパーに切りかかる。
「キャ! もう1匹いた!」
その時。
突然、別の方向から触手が伸びてネルに刺胞毒を撃ち込もうとした。だが、回避には自信のあるネルはそれを簡単に避ける。
「大丈夫か!」
「こっちはあたしが引き付けるから、さっさとそっちの倒して!」
「わかった!」
ネルが囮となって新しく現れたローパーを引き付ける。その間、オーラパワーで気合を入れたフェルナンドがローパーに攻撃を仕掛けた。
「こいつ、動かないのか」
フェルナンドが大きくウオーアックスを振り上げ、思いっきりローパーに叩き付けた。振り上げたときバランスが崩れたのだが、ロ−パーが動かなかったおかげで大斧は命中した。強烈な一撃は巨大な腔腸動物の体を真っ二つにし、その生命活動を止めた。
「ネル君、大丈夫ですか! 今そっちに行きます!」
「じゃあ、後は任せたよ! あたしは後方に避難するね!」
忠司がもう1匹のローパーにターゲットを移す。ネルは迫り来る幾つもの触手を振り切り、後方へ脱出した。ネルを逃したローパーは、新たに近づく獲物‥‥忠司を飲み込もうと大きな口を開け、触手を伸ばしてくる。
「その程度で俺を捕まえることはできません!」
しかし、忠司は近寄る触手を切り落とし、ローパーの体に刀を振り下ろした。
――グシャ!
振り下ろされた刀はローパーの体を幾つかの触手を同時に切り裂いた。切り口からがドロドロと体液が噴出す。
「触手さえ気をつければ、こんなモンスター相手じゃねぇぜ! 一撃必殺!」
フェルナンドも相手が回避しないのが判ると、容赦なく自分の持てる全ての力を注いで大斧をローパーに振り下ろす。大斧はローパーの体を削ぎ落とし、何本もの触手も切り落とされた。
「これで終わりだ!」
最後にウェントスがロングソードを突き刺し、とどめを刺した。
こうして、鍾乳洞に存在した謎のモンスターは冒険者達の手により倒されたのだ。
*
戦いが終わった後、忠司がローパーの体を調べて食べられたシフールを探した。しかし、シフールの姿はなかった。
ローパーの屍骸の傍に小さなバックパックが落ちている。
「彼の物でしょうか‥‥」
これ以上、仲間を待たせる訳にはいかない。忠司は遺品を手に鍾乳洞を後にした。
キャメロットに帰還後、遺品は仲間のピックルに届けられたそうだ。