地下倉庫の怪 〜【G3】捜索!〜

■ショートシナリオ


担当:えりあす

対応レベル:1〜3lv

難易度:やや易

成功報酬:0 G 78 C

参加人数:5人

サポート参加人数:-人

冒険期間:09月29日〜10月04日

リプレイ公開日:2004年10月07日

●オープニング

「あ、よく来てくれたね。ちょっと、知り合いが困っているんで協力してほしいのよ」
 依頼を受け、指定された場所で待ち合わせをしていた冒険者達。
 そこに現れた依頼者はブリジットと名乗る女性だった。
「知り合いの貴族の大切な手袋がどっかに消えちゃったみたいなの。それを探して欲しいの」
 手袋? と冒険者は少し疑問に思ったであろう。
 しかし、その手袋は重要な意味を持っている。
「その貴族、荷物の引渡しの時に手袋を見せるの。貴族が左手で、他は右手。つまり、取引の印って訳ね。手袋がないと、重要な取引が出来なくて大変みたいなのよ」
 なるほど、それは大変だ。
 でも、手袋は何処に?
「いつもは、地下の倉庫に鍵をかけて厳重に保管されているみたいなんだけど、最近異変があったんだって。何でも、屋敷のメイド達が地下倉庫で変な声を聞いたらしいの。いやらしい、下品な声だったとメイド達が言っているので、あたしはインプの仕業じゃないかって思ってるんだけどね」
 悪戯好きなインプなら手袋をオモチャにしている可能性はあるかもしれない。
「地下倉庫はすごく広くて、普段手袋はすぐに取り出せるように入り口の近くに置いてあるそうなの。それが、昨日見たら消えていたそうなの。鍵はかけたままだったから、広い倉庫のどこかにまだ手袋はあるはずよ。近々、重要な取引があるみたいだから、早く手袋をみつけなきゃ!」
 そう言って、こぶしを握り熱血しているブリジットと名乗る女性。
 しかし、その心中は‥‥
(「インプって一応悪魔なのよね。普通の武器じゃ効かないみたいだから‥‥だったら、逆にオモチャにしちゃおう☆ 縛ってテムズ川に沈めるのも面白いかもv」)
 何やら企んでいる様子であった。

●今回の参加者

 ea3418 ブラッフォード・ブラフォード(37歳・♂・ナイト・ドワーフ・イギリス王国)
 ea4591 ミネア・ウェルロッド(21歳・♀・ファイター・人間・イギリス王国)
 ea6082 天草 乱馬(35歳・♂・忍者・人間・ジャパン)
 ea6686 鳳 蘭花(28歳・♀・武道家・エルフ・華仙教大国)
 ea7263 シェリル・シンクレア(21歳・♀・ウィザード・エルフ・フランク王国)

●リプレイ本文

「イタズラ好きなインプの仕業だと思うから、ちょっと厄介ね」
 消えた手袋を探索する為、エンフィルド家の地下倉庫に集まった5人の冒険者と依頼代理人のブリジット。
 3人の女性冒険者とブリジットは屋敷から借りたメイド服姿である。
「この度は大変な目に遭いましたね〜。頑張って取り返しましょう♪」
 ケンブリッジ魔法学校の印の入ったほうきを手にニコニコ微笑んでいるシェリル・シンクレア(ea7263)。今日は長い髪をポニーテールに結っている。
「あはは♪ 今回のお仕事は、インプさんを懲らしめればいいんだね♪」
「悪戯好きなインプですか‥‥それは退治をした方がいいですねえ‥‥何とかいたしましょう!」
 今回の冒険者の中で最年少のミネア・ウェルロッド(ea4591)が明るく愛嬌のある笑顔を振りまき、鳳蘭花(ea6686)もインプ退治の為に気合をいれる。
「インプから手袋を取り戻すのか、手間取りそうだ。玩具にされてるなら原型留めてるだろうか」
 ブラッフォード・ブラフォード(ea3418)はオモチャにされていると思われる手袋を心配した。手袋もそんなに丈夫なはずがない。無茶な扱い方をすれば引きちぎれてしまうだろう。
「広い倉庫の中で手袋探しですか。インプが持ってるかもしれないとはメンドーですね」
 腕を組みながら天草乱馬(ea6082)がボソリと呟く。
「準備は大丈夫ね。じゃあ、入りましょうか」
 ブリジットが地下倉庫の鍵を開け、扉を開く。
 中は薄暗く、蝋燭の明かりを頼りに進んでいく。

 *

「近くにいたら怖いですぅ」
「バラバラでは危険かもしれん。全員で回るほうがいいだろう」
 冒険者達は早速、手袋の探索に取り掛かった。蘭花はインプがいないか、入り口近くを慎重に調べる。ブラッフォードはインプが外に出れないように扉を施錠し、周囲を見渡した。入り口近くはテーブルや燭台など、パーティー用品が置かれている。
「ロープか何かないでしょうか‥‥ありました。これで‥‥」
 乱馬は倉庫の隅からロープを見つけてきて、それを器用に網状に編んだ。ナイフを重りに投げ網の完成。これで、インプを捕まえるようだ。
「いたずらっ子はどこでしょうか♪」
 シェリルはブレスセンサーでインプの居場所を探す。
 倉庫は東西南北4つのエリアに区切られており、一行は東から順に倉庫を調べていくことにした。
「どうやって捕まえようかな? 筒か何か用意して、そこにエサでも入れておいたら入ってくるかな!?」
「ミネアちゃん、インプは猫じゃないんだから」
 ミネアの意見を優しく却下するブリジット。彼女はミネアのことを気に入ったのか、一緒に手を繋ぎながら倉庫を回っている。

 一行は東西のエリアを探索したがインプは発見できなかった。
 そして、南エリアに入った時‥‥。
「あれ、何でしょうか?」
 倉庫の奥に浮かぶ小さな影。
 耳を澄ますと‥‥。

 ――ウギャギャ♪ 楽しいギャ♪

 下品な笑い声が聞こえてきた。
 薄暗い倉庫。
 ミネアが目を凝らして奥を見ると‥‥。
 コウモリの羽を生やし、先端が矢尻のようになった長い尻尾を持った小悪魔‥‥インプが浮かんでいる。インプは手袋に足を入れたり、無理矢理かぶったりしようとしている。
「悪魔さんってブレスセンサーじゃわからないんですね」
 シェリルは各エリアでブレスセンサーを使っていたが、探知はできなかったようだ。
「楽しそうだけど、あんな事しちゃ傷付いちゃうよ!」
「そうですね。早く回収しましょう」
 ミネアが手袋を心配すると、乱馬は先程作った投げ網を浮かんでいるインプに投げつけた。
「ウギャ! なんだこれギャ!」
「うふふ。インプさん、探しましたよ♪」
 投げ網に掛かり、もがくインプにシェリルがニコニコしながら近づいた。
「楽しそうなところ悪いんだけど、これ大事な手袋だから返してねぇ☆」
 蘭花が手袋を取り上げようとすると、インプは爪で引っ掻いた。
「あ! いったーい! 何するの!」
「これは俺のモノだギャ! 誰にも渡さないんだギャ!」
「‥‥悪い子には‥‥お仕置きが必要のようね」
 ブリジットはホイップを取り出すと、ビシッと床を叩く。
「さぁ、返してちょうだい」
「嫌だギャ!」
「なるほど。痛い目に遭いたいようだな」
 ブラッフォードはロングソードを鞘から引き抜くと、インプの首筋に突きつけた。
「そんな人間の使う武器なんか痛くも痒くもないギャ!」
「ほう‥‥これでもか?」
 悪魔に対しては通常の武器は通用しない。だが、ブラッフォードはオーラパワーでロングソードにオーラを宿すと、その剣先でインプの胸を突いた。
「ウギャ! いてぇぇぇぇ!」
 すっかり油断していたインプは、痛みに飛び上がる。通常の武器は効果が無くても、魔法などで強化された武器は悪魔にも効果があるのだ。
「えへへ♪ オシオキだよ♪」
 ミネアもシルバーダガーでインプの背中を突っつく。もちろん、銀製の武器も悪魔に対しては有効だ。
「いてぇぇぇギャってんだ、コンチクショー!」
 インプはダメージに耐え切れず、コウモリに変身して逃げようとした!
「逃がさんぞ!」
「お待ちなさいっ!」
 ブラッフォードがオーラホールドで逃げようとするインプの動きを鈍らせると、蘭花がオーラショットを撃ち込み、シェリルもウインドスラッシュを放つ。
「あギャ〜!」
 オーラの弾と真空の刃を同時に受けたインプは床に落下。
「普通の武器が効かないのですね‥‥じゃあ、私の稽古のお相手になってもらいましょうか」
 墜落したインプに近づき、不敵な笑みを浮かべる乱馬。忍者刀を引き抜くとインプに容赦なく切り掛かる。刀はインプの胸に当たったが、刃は食い込まずインプは傷つかない。それをいいことに、思う存分己の技を叩き込む。
「では、私も‥‥えい♪」
 シェリルもほうきでインプを叩き始めた。
「私もやるぅ〜♪ えい!」
「最近、イライラしてるのよね! ボッコボコにしてあげるわ!」
「小悪魔ごときが調子に乗るでない!」
 全員で袋叩き。皆、楽しそうな顔でインプを蹴る、殴る、武器で叩きのめす。悪魔相手なら容赦はない。
 半殺しにされたインプは、ブリジットの用意していた麻袋に詰め込まれた。
「それ、どうするんだ?」
 ブラッフォードがブリジットに尋ねる。
「ちょっと気になる事があってね。ほら、悪魔って溺れ死ぬかなーって。そういうの、ちょっと興味あるでしょ?」
「いや、無いですが‥‥」
 ブリジットがサラリと悪魔のような事を言うと、乱馬は首を横に振って否定した。
「このまま、重りを付けてテムズ川に沈めてみるのv」
「えへへ♪ おもしろそう♪」
「人間だとあまりこういうこと出来ないからね♪」
 ‥‥今、あまりって言いませんでした? ‥‥って事は‥‥と、内心思っても口に出来ない乱馬であった。

 *

 無事に手袋を取り戻した冒険者達は地下倉庫を出た。
「おーい! 手袋はまだか!」
「今、見つかったわよ! すぐに持っていくね!」
 ブリジットが答えると、手袋をミネアに渡した。
「ミネアちゃん、これを入り口まで持っていってちょうだいね」
「はーい!」
 ミネアが手袋を受け取ると、屋敷の入り口まで走っていった。
「‥‥おい! あれはまだか!」
 入り口では、違う冒険者達が荷物を運んできていた。どうやら、これが今回の取引のようだ。
「ゴメーン! 遅くなっちゃった」
 ミネアが衛兵に手袋を渡すと、冒険者も同じ手袋を衛兵に見せた。ミネアが持ってきたのは左手で、冒険者の持っているのは右手。こうして、無事取引を済ませたようであった。
「よろしければ、是非パーティーへ御越しいただけませんか?」
 冒険者を労う為、屋敷ではパーティーが準備されていた。どうやら、他の冒険者達も一緒のようだ。もちろん、全員パーティーに参加することを希望した。
『かんぱーい!』
 用意されたジンジャー・エールで乾杯。ガチョウのローストと生姜入りのパンも運ばれてきた。
 パーティーには他に17人の冒険者も招かれている。
「あ、バードの人も来てるんだ」
 パーティーでは2人の冒険者による竪琴と横笛の演奏が披露されて盛り上がっていた。
 その演奏に耳を傾ける者、歌う者、踊る者。
 こうして、楽しい時間が過ぎていく。
 冒険者達は次の冒険へ向けて英気を養い、キャメロットへと戻るのであった。

 なお、後日談になるが‥‥。
「うーん、逃げられたか」
 テムズ川にインプを沈めたブリジット。
 川から麻袋を引き上げてみると、どうやら袋から逃げ出したようであった。
 インプにも変身能力がある為、魚にでも変身したのであろう。
 その後、インプの行方は誰も知らない。