森は紅く染まる

■ショートシナリオ


担当:えりあす

対応レベル:1〜3lv

難易度:やや難

成功報酬:0 G 93 C

参加人数:10人

サポート参加人数:1人

冒険期間:10月04日〜10月11日

リプレイ公開日:2004年10月12日

●オープニング

『単独でゴブリン退治に出かけたレンジャーを助けてくれ!』

 今回の依頼は、ゴブリンの集団が住み着いている森に潜入したレンジャーの救出である。
 このレンジャーはゴブリン退治の為、単独で森に入り込んだ。
 5日後に戻る予定であったが、期日になっても帰ってこない。
 近隣を捜索したが足取りが掴めず、恐らく森の中でトラブルがあったものと思われる。
 情報では日数分の保存食しか保持していなかった事。
 時間が経てばレンジャーの生存が危うくなる。
 依頼を受領した冒険者は可及的すみやかにレンジャーが潜入した森へ向かい、救出活動をせよ。

 *

「このレンジャーね。何でも“踊る紅い死神”って言われているスゴ腕のレンジャーなのよ!」
 何故か受付嬢が熱っぽく依頼について語り始めた。いや、救出対象のレンジャーについてと訂正しよう。
「彼の名前はリオっていうの! 以前、ある依頼のコボルト掃討作戦で一躍その名を知られるようになったレンジャーなのよ! 称号の由来は、彼がいつも真紅の装備を身に付けるのがポリシーで、その弓の腕でモンスターを倒して周辺を血で紅くすることから‥‥」
 受付嬢の説明は止まらない。聞きたいのは、森の事やゴブリンの事についてなのだが‥‥。
「あ、そうそう、この森なんだけどね。ゴブリンの集団が住み着いて、近隣の村の畑を荒らしたりして被害を出しているわ。今まで冒険者が何回か森に入って討伐を試みたんだけど、その数が多くて殲滅には至っていないそうなの」
 どうやら、この森にはかなりの数のゴブリンが住み着いているらしい。
「この森のゴブリンを倒せば1匹あたり1Cの報酬が支払われるけど、今回の目的はリオ様の救出と言うことを忘れないでね! あ、それとリオ様に逢ったらコレを渡して欲しいの♪」
 そして、受付嬢は救出に出発する冒険者に手紙を渡した。
「え〜っと、その‥‥重要な手紙だから絶対見ちゃダメよ!」
 何故か顔を少し赤らめ視線を逸らす受付嬢。
 手紙を受け取った冒険者は冷たい視線で受付嬢を見ていたと言う。
「それと、この森のゴブリンはかなり組織的に行動しているそうよ。その辺りも注意しないと大変な事になるわ」
 最後に受付嬢の忠告を聞き、冒険者達は森に向かった。

●今回の参加者

 ea4688 フレィム・ドラーディン(20歳・♂・ウィザード・エルフ・イギリス王国)
 ea5434 リデル・ハート(25歳・♀・神聖騎士・エルフ・イギリス王国)
 ea5592 イフェリア・エルトランス(31歳・♀・ナイト・人間・イギリス王国)
 ea5810 アリッサ・クーパー(33歳・♀・クレリック・人間・イギリス王国)
 ea5936 アンドリュー・カールセン(27歳・♂・レンジャー・人間・イギリス王国)
 ea6382 イェーガー・ラタイン(29歳・♂・レンジャー・人間・イギリス王国)
 ea6679 雪村 初音(29歳・♀・忍者・人間・ジャパン)
 ea6957 永倉 平太郎(39歳・♂・志士・人間・ジャパン)
 ea7000 エルネーズ・ソワレ(35歳・♀・ファイター・人間・イギリス王国)
 ea7059 ハーヴェイ・シェーンダーク(21歳・♂・レンジャー・エルフ・イギリス王国)

●サポート参加者

アルフォンス・シェーンダーク(ea7044

●リプレイ本文

 ゴブリンの住む森の近く、歩いて1時間程の場所に小さな村がある。冒険者達はこの村に立ち寄り、準備を整えることにした。
「レンジャーの救出を行いに参りました。彼の得た情報が森のゴブリン共を殲滅する有効な情報となりましょう。その為にお力添えをいただきたいのです」
「お願い、人の命がかかってるんだよ!」
 永倉平太郎(ea6957)と雪村初音(ea6679)は村にベースキャンプを設置する許可を得る為、村長の家を尋ねた。
 この村は森が近いので、以前から何度も被害に遭っている。もし、冒険者が村に滞在してくれれば、その間にゴブリンの襲撃があっても安心できる。村にとって有益になると判断した村長は、快くベースキャンプの設置を承諾した。
「リオは森について何か話してなかったかな?」
 ハーヴェイ・シェーンダーク(ea7059)はリオについて情報を集めていた。彼も森に入る前にこの村を訪れており「ゴブリンのリーダーを探す」と言っていたそうだ。
「森の大きさや特徴、またゴブリンについても知っていることがあったら教えていただけないでしょうか?」
 平太郎と初音も作戦の為の情報を収集している。
 森については大まかな地図を貰う事ができた。ゴブリンについてだが、警戒心が強く、罠などに過敏に反応するらしい。この村では罠を常に新しくする事でゴブリンに対応しているようだ。

 ベースキャンプは古小屋を利用することになった。そして、貰った森の地図を広げ、作戦が練られる。基本的に捜索班とゴブリン対処班に分かれ、1日の捜索終了毎に結果を話し合って効率よく探索を進める方針である。
「神の御許にまだ行く必要のない方を見過ごすわけには行きませんね」
 作戦決行前。アリッサ・クーパー(ea5810)がリオの無事を願い祈りを捧げる。
「リオさんを見つけたら宜しくお願いします‥‥お気を付けて‥‥」
「ありがとう。そっちも気を付けてね」
 イェーガー・ラタイン(ea6382)は今回単独で探索を行うイフェリア・エルトランス(ea5592)に袋を渡した。中にはヒーリングポーションと解毒剤、お守りとしてラーンス・ロットの金髪が入っている。
「それでは、作戦を開始する。全員無事で帰還し、任務を遂行できる事を願う」
 アンドリュー・カールセン(ea5936)の号令の元、冒険者達はレンジャー救出の為にゴブリンの巣食う森へと足を踏み入れた。

 *

 森のは広い面積を有し、ただ闇雲に探すだけでは短い期間内に探し出す事は困難である。
 初めて入る森の中、探索で頼りになるのは己の直感と土地感。だが、その能力ですら広大な森の中で通用するかどうかはわからない。
 そこで必要なのは仲間との連携。1人1人が協力することで、探索範囲を広げ、危険を回避する事もできる。

 1日目。
「特に変わったところはありませんね」
 捜索班はフレィム・ドラーディン(ea4688)を中心に探索を展開していた。森林についてはある程度、専門的な知識を有し、比較的五感の鋭いフレィムは捜索班の中心に適任であろう。そして、彼を取り囲むようにリデル・ハート(ea5434)、アリッサ、エルネーズ・ソワレ(ea7000)、アルフォンス・シェーンダークが護衛とサポ−トをする。
「スコップは持ってきたよ! どうにか役に立てるかな!」
 後方では初音の用意したスコップを使い、アンドリューが落とし穴の設置をしていた。ハーヴェイはゴブリンの襲撃を監視しつつ、捜索班の周囲に草を結って足止めを設置していく。
「仕上げにこれを置いて‥‥完了」
 最後に強烈な匂いの保存食を置いてトラップ設置が完了した。
「左前方に人間大の呼吸を3つ探知。ゴブリンの見張りでしょうか?」
 平太郎はブレスセンサーでゴブリンを探知していた。これにより、ゴブリンの監視をすり抜けて順調に捜索が進む。平太郎が数回ブレスセンサーを試みた結果、ゴブリンは3匹1小隊で行動していることがわかった。つまり、呼吸が1つの場合、それがリオである可能性は高い。ゴブリンが組織的に行動しているのが探索には都合が良いという結果となった。
 この日、リオは発見できなかったが、冒険者達は手ごたえを感じていた。

 2日目。
「な、何で急にゴブリンが増えたの!」
 イフェリアは迫り来るゴブリンを振り切り、必至に逃げていた。
 イフェリアはリオが水を確保できる場所に移動している可能性が高いと考えて水源を探していたが、今日森に入ると前日以上にゴブリンの警備が厳しくなっており、彼女の技能でもやり過ごす事ができなかった。

 前日。
 冒険者はこの森に罠を仕掛けた。
 だが、ゴブリン達は罠を仕掛けた侵入者を好戦的と捉え、縄張りの監視を強化したのだ。侵入者を徹底的に駆除する為、警備隊と防衛隊の数が多くなっている。
 ハーヴェイは自らの存在を知らす事を危惧し、追跡の足止め用の最小限の罠に留めたが、アンドリューと初音が行った罠の設置はほとんど意味を成さなかった。

「これ以上、深入りするのは無理ね‥‥」
 何とかゴブリンの追撃を逃れたイフェリアは、傷ついた左腕を押さえながらベースキャンプに戻った。

「キャー!!」
「大丈夫か!」
 主力の捜索隊も強化された包囲網に掛かり、苦戦している。逃げる際にリデルが逃走に遅れ、ゴブリンに取り囲まれてしまった。
 リデルは今回の危険な依頼の為に準備を怠らなかったが、用意した装備品は彼女の扱える重量を超えていた。結果、戦うどころか、ろくに走る事もできず、9匹のゴブリンに囲まれて集中攻撃を受ける。
「私が引き付けます! その間にリデルさんを!」
 平太郎とエルネーズがリデルを救う為にゴブリンに向かった。
「これも『メイドの高み』に上り詰めるための試練ですのです!」
 平太郎がリデルに絡むゴブリンにスマッシュを放ち、エルネーズもダブルアタックで切り刻む。
「緊急事態。直ちに攻撃開始」
 アンドリューが矢を放つと、続けてイェーガーとハーヴェイも矢を射る。その間に初音がリデルを救出し、彼女の持っていたリカバーポーションを口に含ませた。
「危険な状態ですね‥‥」
 アリッサも駆けつけリカバーでリデルの傷を癒す。しかし、状態はかなり深刻であった。

 ――この状況で最も効果のある方法は‥‥

 フレィムは冷静に状況を判断し、決断を下した。
「皆さん、少し伏せてください」
 ゴブリンが矢を受け、少し引いたところを狙ってファイヤーボムを撃ち込む。火球はゴブリンの後衛を吹き飛ばし、前衛を怯ませる。
「今の内です!」
 隙を見て一行は逃走を開始。命からがら森を脱出した。

 3日目。
 冒険者達はとても探索を行える状態ではなかった。
 リデルは深手を負い、アルフォンスのメタボリズムを受けて回復するまで休息をとることになった。
 他の冒険者もゴブリンの追撃で何人かが怪我をし、手当てを受ける。
 ベースキャンプを覆う重い空気。ただ、沈黙だけが小屋の中を支配する。

 4日目。
「このまま、引き下がる訳にはいかないですから」
 イェーガーの言葉に全員無言で頷く。再び、探索が開始された。
 森は2日目より警備は薄かった。
 3日目に侵入者を発見できず、撤退したと考えたのか。
「これが最後のチャンスです‥‥」
 エルネーズが呟く。これ以上のミスは許されない。

 イフェリアは再び水源を探していた。
 森のほぼ中央に泉が湧き出ているポイントを発見したが、周囲にゴブリンが沢山いる。この場所にリオがいるとは思えない。
「仕方がないわ。危険だけど、森の奥を探さないと‥‥」
 水が必要なのは人間もゴブリンも一緒だ。特に敵の領地で水源を確保するのは難しい。

 4日目は予想以上に広範囲に渡って探索ができた。徐々に範囲を絞り込み、5日目に全てを賭ける。
「近くに1つの呼吸が存在します」
 平太郎がブレスセンサーで人間の呼吸を感知した。
 ゴブリン対策班が周囲を警戒する中、フレィムが辺りを慎重に調べていく。
「リ、リオさん‥‥でしょうか?」
 茂みの奥。草木に隠れるように人が蹲っていた。
 全身真紅の装備を身に纏った狩人の姿。
 間違いなく“踊る紅い死神”リオであろう。
「キミたち‥‥助けに来てくれたのか」
「はい。リオ様を助けにきました」
 リオは少々傷ついてはいたものの、アリッサのリカバーとエルネーズの応急処置ですぐに治療される。アリッサが食料を差し出したが、それは必要なかったようだ。彼も一流のレンジャー。きのこや薬草を食べて飢えを凌ぎ、水溜りの水を服で漉して飲み、喉の渇きを潤していたようだ。
「なぜ、単独で森に入ったか教えて頂けませんか?」
 イェーガーが尋ねた。リオはゴブリンのリーダを討てば混乱を招くことができ、殲滅が容易になると考えて単独で森に入ったようだ。しかし、予想以上のガードの固さに苦戦し撤退した。逃走の際、不覚にも道に迷い、ゴブリンから身を隠しながら出口を探していたとの事だった。
「要救助者を確保、撤退する」
 アンドリューが撤退の準備を開始。冒険者達はリオを引き連れ、森を脱出した。

 *

 リオを救出し、何とか一行は村まで辿り着いた。
「これキミ宛の手紙です、冒険者ギルドの受付嬢からお預かりしました」
 フレィムがリオに手紙を渡した。エルネーズと少々もめたようだが、結局彼が渡すことになったようだ。しかし、その様子をエルネーズはニコニコしながら眺めていた‥‥。リオに渡された手紙の差出人は‥‥誰だったのであろう。
「これは返すわ。私がリオを見つける事が出来なかったから‥‥」
 イフェリアは薬の入った袋をイェーガーに返した。
「任務、完了だな」
 アンドリューの言葉を聞き、ようやく冒険者達は安堵の笑みを浮かべるのであった。

 リデルは重傷を負ったが、アルフォンスのメタボリズムで徐々に回復してきている。次の冒険までには完全に回復するであろう。