Camelot Go!〜A song for you〜

■ショートシナリオ


担当:えりあす

対応レベル:1〜3lv

難易度:易しい

成功報酬:0 G 52 C

参加人数:10人

サポート参加人数:-人

冒険期間:10月05日〜10月10日

リプレイ公開日:2004年10月12日

●オープニング

『秋と言ったら何だ!
 そう、芸術の秋だ!
 芸術といえば、心を表現する歌である!
 そこで、歌を愛する諸君の為に「第1回歌人芸術大会」を開催する。
 賞金や参加賞も用意しているので、奮って参加されたし!

 キャメロット歌人芸術共同組合』

 *

「何だ? この『キャメロット歌人芸術共同組合』ってのは?」
 依頼を探している冒険者がある張り紙に目を止めた。
「さぁ? 謎の団体だけど、この「第1回歌人芸術大会」絡みで依頼が来ているわよ」
 立ち止まった冒険者に受付嬢が声を掛けた。
「会場警備の仕事ね。まぁ、あんまりやることは無いと思うから、ついでに大会に参加してみたら?」
「う〜ん。まぁ、同時に賞金ゲットできたら、そりゃ美味しい仕事だよな」
 どうやら、仕事ついでに大会にも参加できるようだ。
 歌を愛する冒険者諸君。
 この機会に、自分の想いを歌にして披露してみてはいかがだろうか?

「よ〜し! 僕も参加するぞ!」
 ここに1人のシフールが参加表明をした。
 彼の名はピックルくん。
「へぇ‥‥ピックルくんも、歌に興味があるんだ」
「バカにしないでよ! 今まで冒険者達の歌を聴いてきて、僕も目覚めたんだ!」
 何が目覚めたのかは謎である。
 しかし、やる気はあるようだ。
「わたしも仕事がなかったら参加するのになぁ‥‥この想い、風に託して、届いて、あなたに‥‥」
 受付嬢は恋する少女のような、うっとりとした顔で歌を口ずさんだ。
「‥‥年の割りにロマンチックすぎるからモテないんじゃ‥‥」
「な、何ですって! そんなこと言ったらまた羽根引きちぎるわよ!!!」
 つい、本音を洩らしてしまったピックルくん。
 その言葉に受付嬢(彼氏いない歴●年)はキレた。
「うわぁ〜! ごめんなさいぃぃぃ!」
「こらぁ! 待ちなさい!」
 相変わらず仲の良い2人である。
 こんなドタバタも気にせず、冒険者達は真剣に大会で披露する歌を考えていたそうだ。

●今回の参加者

 ea0275 コウ・ティルソラス(37歳・♀・神聖騎士・人間・イギリス王国)
 ea1321 シーモア・レッドハート(20歳・♀・バード・エルフ・ロシア王国)
 ea1753 ジョセフィーヌ・マッケンジー(31歳・♀・レンジャー・人間・イギリス王国)
 ea2849 パロ・ルウ(33歳・♀・バード・パラ・ノルマン王国)
 ea4327 ミオ・ストール(28歳・♀・ウィザード・人間・イギリス王国)
 ea5838 レテ・ルーヴェンス(25歳・♀・ファイター・エルフ・イギリス王国)
 ea5984 ヲーク・シン(17歳・♂・ファイター・ドワーフ・イギリス王国)
 ea6082 天草 乱馬(35歳・♂・忍者・人間・ジャパン)
 ea6145 柾木 崇(32歳・♂・志士・人間・ジャパン)
 ea6999 アルンチムグ・トゥムルバータル(24歳・♀・ナイト・ドワーフ・モンゴル王国)

●リプレイ本文

『歌は心だ! そして、愛だ! そんな歌を愛する諸君の為、ここに『第1回歌人芸術大会』の開催を宣言する!』
 ──オオオ!
 ここは『第1回歌人芸術大会』会場。
 司会の開会宣言に会場に集まった観衆がざわめく。
 徐々に盛り上がりを見せる会場で、冒険者達は警備をしたり、案内役をしたりと慌しく動いていた。
「席は譲り合って、特にご年配の方や女性を優先して座らせてくださいませ。親御様はお子様とはぐれぬ様お気をつけを〜」
「迷子になったのですか‥‥では、私と一緒に親を探しましょう」
 ミオ・ストール(ea4327)とシーモア・レッドハート(ea1321)は会場の整理をしたり、迷子になった子供の手を引いて一緒に親を探したりしていた。
「知らない人の前で歌うのは‥‥ちょっと照れくさいな」
「まぁ、それもいい経験でしょう」
 人前で歌を披露するのがちょっと照れくさいと感じている柾木崇(ea6145)は、陽気に鼻歌を歌っている天草乱馬(ea6082)と会場を回っていた。あまりものものしい雰囲気を出さないように気を配り、ステージに邪魔が入らないよう注意している。
「あまり目立ってファンが増えちゃったら困るしね」
 ジョセフィーヌ・マッケンジー(ea1753)は密かにステージの裏で隠れていたりする。一応、騒動があればすぐに出るつもりであるが。
 その頃、ヲーク・シン(ea5984)は休憩時間を利用してナンパをしていた。
「異国の空気を纏いし華麗な吟遊詩人‥‥その美しい言霊を紡ぐ唇を独占したいと望むのは、世界への冒涜だろうか?」
『何言ってるのかな? もしかして‥‥ナンパ? ごめんなさい‥‥私、おヒゲはダメなの!』
 突然、ヲークに話しかけられたパロ・ルウ(ea2849)は困惑した。彼女はイギリス語がわからないのである。雰囲気からナンパであることは理解できたので、とりあえず笑顔で断っておく事にする。
「まだチャンスはあるさ!」
 ヲークはニヤリと邪笑を浮かべると、近くにいたエルフにターゲットに絞った。
「あら、ヲーク。どうしたの?」
「その銀髪を剣とし、凛と冴える剣技を以て、俺の心の闇を切り裂いてくれ‥‥真心が見える様に」
 ナンパドワーフの口説き台詞に、艶やかに微笑みつつ耳を傾けているのがレテ・ルーヴェンス(ea5838)。彼女はヲークの瞳を見つめると、
「私の瞳でさえ見通せぬ程の深い闇なのかしら? 真心さえも切り裂いてしまいそうね」
 と、切り返す。
「‥‥私より背が高くなったら「考える」わ、坊や♪」
「ま、待ってくれ!」
 年上の余裕の笑みでナンパ攻撃を避け、バイバイと手を振って立ち去るレテをヲークは追いかけようとするが‥‥
「そこの挙動不審者! 何をしているの!」
「怪しいヤツやなぁ。ちょっと詰所まで来てや」
 コウ・ティルソラス(ea0275)とアルンチムグ・トゥムルバータル(ea6999)が行動の怪しいヲークを取り押えた。
「何やぁ? ヲークはんやん。紛らわしいなあ」
 取り押えたのがヲークだとわかると、アルンチムグは首に突きつけたダガーを収めた。
「何をしてるのですか! しっかり仕事してください!」
「あまりチョーシくれてると手痛い思いをすることになりますよ? さぁお仕事をしてくださいね」
 コウの説教も聞かず、さらにナンパしようとしたヲークはミオにおもいっきり殴られ、詰所に連れていかれたそうだ。こうして、ヲークのナンパ成功率0%は防衛される事になった。

 *

 冒険者達の働きで、トラブルもなく無事に大会が進行する。
『トップバッターはピックルさん! では、どうぞ!』
「僕が考えた歌だよ! みんなしっかり聞いてね!」
 ピックルが自信たっぷりに宣言し、歌を披露する。


『僕はピックル♪ PIKKLE♪
 みんなにビックル BIKKLE って言われてるけど、違うんだい♪
 ピクルスでもないからね♪』


 さて、彼の胸中を歌った歌詞であるが‥‥
 評価は‥‥彼の名誉の為省略させて頂く。

『続いては、遥々ノルマンからやってきたポエマー、パロさんです!』
 司会者のコールを受け、パロは緊張しながらステージに進む。
 シフールの通訳を通じてパロの歌が披露された。


『波の音 白い雲 カモメ鳴いたら目がさめて
 賑やかな街 おいしいケーキ

 ナンパされた! サイコー!

 キャメロット万歳』


 ゲルマン語ではあるが、ゆったりと情感的な歌と、訳された歌詞に観衆は耳を傾ける。
 その元気な歌に観衆は拍手を惜しまなかった。

『ありがとうございます。続きましては、ミオさんです! タイトルは「私だけの貴方で」』
 拍手を送る観衆に一礼して、ミオはいつか離れてしまう兄へ想いを届ける為に愛の歌を唄う。


『二人を繋ぐ絆の色は 永久に結ばれぬ証の赤
 だから今だけ 貴方の微笑を 手のぬくもりを
 今だけ 私だけの貴方でいて』


 結ばれぬ愛の歌。
 特別審査員のミリエーヌ嬢はこんな歌が大好き。高い点数を付けたようだ。

『次はジャパン出身の天草さん! タイトルは「悲しき受付嬢へ捧げる歌」です!』
 相変わらず鼻歌を歌いながらステージに進む乱馬。
 彼が鼻歌を止め、ギャラリーを見渡すと、会場は一気に沈黙した。


『流れる君の声 いつか聞く予感
 遥かな月の光 いつか見えるかな

 離れ呼び合い どこかで出会うその日

 逢えるといいね』


 乱馬の歌を聞き、審査員Bがニヤリと笑った。
 どうやら「悲しき受付嬢」が誰かわかったようである。

『生きるということは歌を奏でること。誰もが人生という自分だけの歌を紡いでいる‥‥レテさんはそう考え「生命(いのち)の花」という歌を紡ぎます』
 紹介を受けたレテは、凛とした雰囲気で人生の歌を紡ぐ。


『遥か高き蒼天 流れゆく雲路
 歩みゆく明日は迷宮なれど
 命なる花よ咲き誇れ
 彷徨えど 実を結ぶ
 其の日は何時か必ず』


 透き通るような声が会場に響き渡った。
 観衆はレテの紡ぐ人生の歌に大きな拍手を送る。

『続いては柾木さんです。張り切ってどうぞ!』
(「やっぱり人前だと照れくさいな。でも、それを克服するいいチャンスだ」)
 照れくささを隠しながら、崇はステージの中央に立つ。
 深呼吸をすると、自分のこれまでの人生や気持ちを綴った言葉を歌にした。


『星(あかり)を亡くした少年は
 ひとり旅立つ
 星(あかり)がなくとも歩いてゆこう
 そう決意して
 そして気付く
 星(あかり)はひとつではないと』


 無事に歌を披露した崇は、ステージを降りホッと胸を撫で下ろす。

『次はヲークさんです! 宜しくお願いします!』
 会場の雰囲気から、純粋に芸術を楽しむ人が多いと判断したヲークは、2つ用意した歌からこの歌を選んだ。

『血溜まりに重なる紅蓮の炎
 揺れる髪、瞳に映る紅(あか)い断末魔
 今、君の無垢な瞳に揺れる紅(くれない)‥‥身を‥‥離す‥‥』


 ヲークの熱い歌に会場がどよめく。
 これが彼の胸の奥底にある真なる心。
 ナンパ師の裏に隠された真実の姿であろうか。

『旦那様が出張中で寂しいというコウさん。その想いを託した歌を披露してくれるそうです!』
(「緊張するわけじゃないけど、人前で歌うのは初めての事だから不安ね‥‥」)
 すこし苦笑しながらコウはステージに上がり、愛する旦那へ向けて想いを放つ。


『行ってくる、と接吻交わし去り行く貴方
 無事で帰って‥‥
 唇のぬくもりがいつしか涙に変わる その前に‥‥』


『おー! ミリエーヌ嬢が満点を付けたようです!』
 偽りの無い愛の歌にミリエーヌは満点を出したようだ。
 コウは安堵の息を吐き、控え室に戻った。


(「あー! 緊張する!」)
 シーモアはかなり緊張した様子であったが、出番が近づくにつれて少しずつ落ち着いてきた。
 他の参加者の歌を聞きながら、自分の披露する歌を何度も口ずさむ。
『では、シーモアさんの出番です! がんばってください!』
 冷静さを取り戻したシーモアは、練習通りに歌を披露した。


『窓の外 黒い雲 その向こう
 青い空 白い雲 遠く広がる
 七色の 橋眺め 気が付けば
 赤い空 暖かく この 世界を包む』


「きゃーーーっ!」
 称賛の拍手の中、シーモアは少し錯乱気味にステージを降りた。

『では、アルンチムグさんの入場です! 題名は「月」。サルと読むそうです』
 望郷の想いを詠んだアルンチムグ。
 

『蒼天(てん)に浮かぶは白い月 遥かな我が家(ゲル)を懐かしむ
 次に浮かぶは母の微笑(えみ) お元気ですか‥‥元気でいます』


(「おかん‥‥うちは頑張っとるで」)
 歌い終わったアルンチムグの胸に込み上げる熱いもの。彼女はゲルに立つ人を想い、涙を浮かべた。

『最後はジョセフィーヌさんです! 拍手でお出迎えください!』
(「タイトルは差し詰め『ある殺し屋のラブソング』ってとこかな」)
 制限に苦労したようだが、ジョセフィーヌは自信の作品を送り出す。


『私は殺し屋 一人の騎士に恋をした 
 血文字で恋文残したら 結局彼に捕まった
 私は殺し屋 愛する男に抱かれて死んだ』


「う〜ん、いい感じだったかな?」
 ジョセフィーヌはそう呟くとステージを後にした。

 *

 大会が開催されている途中も特にトラブルはなく、閉会式に移る。
『では、第3位の発表です!』
 結果の集計が終わり、順位が発表された。
『第3位は天草さんです!』
 得点は74点。安定した評価を得て第3位を受賞である。
『第2位ですが‥‥何と、4人もいました!』
 2位は77点でコウ、レテ、ヲーク、崇が並んだ。
『そして、栄光の第1位は‥‥ミオさんです!』
「本当ですか! ストール家の名誉を守る事ができました‥‥兄様‥‥」
 得点は78点。わずか、1点の差である。
 入賞できなかった冒険者達も作品を大きく評価され、特別賞を受賞した。
 ちなみに、ピックルくんは最下位だったそうな。
 こうして、無事に大会は閉幕した。