一つだけの英雄譚

■ショートシナリオ


担当:えりあす

対応レベル:フリーlv

難易度:易しい

成功報酬:0 G 93 C

参加人数:8人

サポート参加人数:1人

冒険期間:10月09日〜10月16日

リプレイ公開日:2004年10月15日

●オープニング

 昔、ある所に美しく平和な国がありました。
 国のみんなは心優しく、争い事もありませんでした。
 そんな国の象徴と言えるのが、この国のお姫様です。
 お姫様は大変優しく、みんなの心の支えとなっていました。
 しかし、ある日。
 突然、邪悪なウィザードがお姫様を城から連れ去ってしまったのです!
 この日を境に、平和だった国は至る所で争いが起き、このままでは国が滅んでしまいます!
 そして、国を救うべく1人の騎士が立ち上がりました!
 騎士は迫り来る強敵を倒して、邪悪なウィザードがいる城に辿り着きました。
「ようやく辿り着いたぞ! 邪悪なウィザード、姫を返してもらおうか!」
「ふはははは! ここまで辿り着いたことだけは誉めてやろう」
「きゃぁ〜! 騎士様! 助けて〜!」
「姫に手を出すな!」
「ふはははは! 残念だがお前は此処で死ぬ運命なのだ!」
 邪悪なウィザードが合図をすると、後ろから黒い鎧を着た3人の敵が騎士に襲い掛かります!
「雑魚の相手などしている時間はない! 消えろ!」
 騎士が剣を振り上げたその時‥‥

 ――グキッ!

「ぬぉぉぉぉ!」
「ど、どうした!」
 腰を抑えて苦しむ騎士に、みんなが駆け寄ってきました。
 これはお芝居で、公演に向けて猛練習中だったのです。
「こ、腰がぁ‥‥」
 どうやら、ぎっくり腰になったようです。
 その後も、役者の人が手を怪我したり、足をひねったり、お腹を壊したり、次々と降板していきました。
「い、いかん! このままでは公演まで間に合わんぞ!」
 座長さんは焦りました。
 公演まで時間がありません。
「折角、苦労して旗揚げしたのにこのままでは‥‥仕方が無い」
 座長さんは悩んだ挙句、ある場所へと向かいました。
 そこは、冒険者ギルドと呼ばれる冒険者のみんながお仕事を受ける所でした。

 *

『処女公演を成功させる為、冒険者の力を貸して欲しい!』

 今回の依頼はある演劇一座の座長からの依頼である。
 処女公演が近づいているが、役者が怪我で大量に降板してしまし、代わりの役者を募集している。
 今回の演目はファンタジーの王道を行く、勇者が姫を助ける冒険物である。
 冒険者なら演劇経験が無くても、リアルに演じることが出来るだろう。
 冒険者の力で演劇を成功へ導いて欲しい。

●今回の参加者

 ea0187 空魔 玲璽(34歳・♂・武道家・人間・華仙教大国)
 ea0286 ヒースクリフ・ムーア(35歳・♂・パラディン・ジャイアント・イギリス王国)
 ea0445 アリア・バーンスレイ(31歳・♀・ファイター・人間・イギリス王国)
 ea0606 ハンナ・プラトー(30歳・♀・ナイト・人間・イギリス王国)
 ea1583 エルド・ヴァンシュタイン(30歳・♂・ウィザード・人間・フランク王国)
 ea2593 リン・ティニア(27歳・♂・バード・人間・イスパニア王国)
 ea5382 リューズ・ウォルフ(24歳・♀・バード・パラ・イギリス王国)
 ea6597 真 慧琉(22歳・♀・武道家・シフール・華仙教大国)

●サポート参加者

ミケーラ・クイン(ea5619

●リプレイ本文

●劇団・虹の竜座 処女公演『騎士とお姫様』

 <キャスト>
 騎士:ハンナ・プラトー(ea0606)
 お姫様:アリア・バーンスレイ(ea0445)
 邪悪なウィザード:エルド・ヴァンシュタイン(ea1583)
 悪の大魔王:真慧琉(ea6597)
 騎士の相棒:リン・ティニア(ea2593)
 手下A:ヒースクリフ・ムーア(ea0286)
 手下B:空魔玲璽(ea0187)

 語り部:リューズ・ウォルフ(ea5382)
 道具係:ミケーラ・クイン

●シーン1
『昔々、あるところに大変美しく平和な国がありました。心優しいお姫様を慕い、国の民は争うことも無く穏やかに暮らしていました』
 ストーリーテラーのリューズさんが、竪琴で穏やかなメロディーを奏でながら物語の冒頭部分を語ります。
 そして、幕が開き、舞台は姫が暮らすお城となりました。
「あぁ、この平和が永遠に続きますように‥‥」
 ベランダには煌びやかなドレスを身に纏ったお姫様役のアリアさんが佇んで、緑に囲まれた美しい国を見渡します。
『しかし、この平和な国に忍び寄る影がありました‥‥』
 リューズさんの奏でる竪琴のメロディーが転調して、物々しい雰囲気の曲調に変わりました。そして、ベランダにアリアさんが作った赤黒いトンガリ帽と同色のコート風ローブを着た邪悪なウィザードを演じるエルドさんが煙と共に現れます!
「平和の象徴である姫よ! 我が手中に収め、この国を支配してくれよう!」
「きゃぁ〜! 誰か助けて〜!」
 エルドさんはアリアさんを捕まえると、ミケーラさんから借りたフライングブルームでベランダから飛び立ちました!
「ひ、姫様! おのれ、邪悪な魔術師! 姫様を返せ!」
 そこへ、生真面目な騎士を演じるハンナさんがベランダに登場! 騎士らしく玲璽さんに借りたフランケン勲章を付け、ミケーラさんが作ったラージクレイモアを手に邪悪なウィザードを追いかけようとします!
「姫を返してほしければ、我が城に来るのだな。ははは!」
 ハンナさんが追いかけようとしても、邪悪なウィザードは空の上です。悔しがるハンナさんを尻目に、エルドさんはフライングブルームで舞台の上へ消えていきました。
『姫は邪悪なウィザードにさらわれてしまいました。平和が乱れ、このままでは国は滅んでしまいます』
 リューズさんの奏でる悲しいメロディーが悲壮感を演出しています。
「このままでは国が滅びてしまう! 姫を助けに邪悪なウィザードの城に向かわなくては!」
「騎士様、邪悪なウィザードの城は私が知ってます。がんばろうね、騎士様v」
 ハンナさんは月の魔法使い・リンさんの協力を得て、邪悪なウィザードの城へ向かうのでした。

●シーン2
『騎士と仲間は邪悪なウィザードの城に辿り着きました。しかし、そこにはウィザードの手下が待ち構えていたのです!』
 リューズさんは太鼓を取り出すと、激しい民族的なリズムの曲を披露し、場面を盛り上げます!
「良くぞ此処まで来よったな、愚か者どもめ! 貴様等如き、偉大なる魔術師様のお手を煩わす迄も無い。魔術師様よりこの門の守りを任されたこの俺が相手をしてやろう。皆まとめて打ち倒してくれるわ!」
 手下の戦士役のヒースクリフさんがステージに立つと、その存在感に観客がどよめきました。
「雑魚の相手などしている時間はない! 消えろ!」
 ハンナさんはヒースクリフさんに切り掛かります! しかし、ヒースクリフさんはそれを避けずに巨体で受け止めてしまいました!
「何だその攻撃は? 今度はこちらから行くぞ!」
 ヒースクリフさんは高笑いしながら、ハンナさんに剣を振り下ろしました! 振り下ろされた剣はハンナさんの手前で逸れますが、その物凄い風切り音は観客にも聞こえるくらいで、かなり迫力がありました!
「騎士様! 大丈夫!」
 リンさんがヒースクリフさんの後ろに回りこみ、攻撃を仕掛けようとします!
「えーい! ちょこまかと!」
 ヒースクリフさんが後ろに気を取られた瞬間!
「もらったぁ!」
 ハンナさんのラージクレイモアがヒースクリフさんに直撃しました!
「ぬぉぉぉ! 魔術師‥‥さ‥‥まっ」
 ゆっくりとヒースクリフさんの体が崩れていきます。しかし‥‥
「ちょっとはやるようだな! 次は俺が相手だ!」
 舞台に新たなる手下の玲璽さんが飛び込んできます!
「まだ敵がいたのか!」
「いくぜ!」
 玲璽さんは台詞を覚えるのが苦手みたいで、アドリブで演じています。その技は演技ではなく本気です。それはもう、生き生きとして我を忘れたかのように、舞台の上を縦横無尽に暴れまわっています。
「ははは! いや、こう言う闘いが一番だな!」
「くそっ! 手強い!」
 ハンナさんは玲璽さんの攻撃を捌くのが精一杯。苦戦している様子を見て、子供から「騎士様がんばれー!」と声援も飛び出します。その声援を聞いて「はっ!」と我に返った玲璽さんは、攻撃の手を緩めました。
「なかなかやるな。ウィザードを探しているんだろ? そこまで案内しよう」
 玲璽さんは突然裏切りを宣言します。アドリブだったので少々不自然でしたが、無理矢理誤魔化しました。
『勇気ある少年の声に、手下は心を洗われ、騎士の味方となるのでした』
 とりあえず、リューズさんもアドリブでフォローしておきます。
「僕が中の様子を確認するね。これがあれば空から調べる事ができるんだ」
 リンさんが、ミケーラさんの用意したフライングブルームを使って舞台の上に上昇します。リンさんは心の中で「ちょっと楽しいv」と思っていたりします。
 ウィザードの居場所を見つけた騎士と仲間たちは、ついに城の中へと攻め込むのでした。

●シーン3
「ようやく辿り着いたぞ! 邪悪なウィザード、姫を返してもらおうか!」
 ハンナさんは、勢い良く扉を蹴破るシーンから始まります。入った部屋には床に六芒星が書かれており、その各点にはランタンが設置されています。騎士が部屋に入った瞬間、突然ランタンの火が燃え上がり、舞台の上からゆっくりとフライングブルームに乗ったエルドさんが降りてきました。
「よくぞ来た、ブレイバー。我が名はローテ・ヴルスト‥‥フフフ、歓迎しよう、暖かくな!」
「騎士様! 助けてください!」
 部屋の奥の牢にはアリアさんが囚われています!
「姫様! 今、お助けいたします!」
「悪いウィザードさんをこらしめて、お姫様を助けるんだ!」
 舞台にはハンナさん、リンさん、そして、裏切った玲璽さんが揃い踏み。その様子をエルドさんが眺め、
「裏切り者がいるな。まとめて地獄の業火に焼かれ灰になるがよい!」
 と言って構えます!
「まぁ、そっち相手のほうが楽しそうだからな」
 玲璽さんも開き直って、戦いが始まります! リューズさんも演奏で場面を盛り上げ、舞台の活気は最高潮に達しました。
 ハンナさんは、エルドさんの操る炎に苦戦します。しかし‥‥
「騎士様! 火の魔術師にはこの魔法で!」
 リンさんがイリュージョンの魔法でエルドさんに雨の幻覚を見せます。でも、観客にはわからないので、ランタンの火を小さくしていき状況をアピールしました。邪悪なウィザードは力を失っていくのです。
「お、おのれ!」
「これで終わりだ!」
 力を失ったエルドさんは、ハンナさんの振り下ろしたラージクレイモアで倒されました!
「姫様! 大丈夫ですか!」
 邪悪なウィザードを倒し、アリアさんを助け出したハンナさん。でも、その時!
「ははは! ならば、この身を捧げ‥‥大魔王、召喚!」
 しかし、エルドさんは最後の力を振り絞り、大魔王を召喚してしまいました! 怖い音楽に変わり、炎が燃え上がって、そこから大魔王役の慧琉さんが登場です!
「不完全な召喚だが、貴様らを倒す力ぐらいはあるわ!」
 角を付けて衣装も完璧な慧琉さん。
「大魔王か! 相手にとっちゃ不足はないな!」
 そこへ、玲璽さんが攻撃を仕掛けます! オーラパワーで気を溜め、全力攻撃で大魔王に立ち向かいました! しかし!
「ふっふっふ、私には相手の心を読めるのだ。貴様らの攻撃などお見通しだ」
 玲璽さんの攻撃を兎跳姿で素早く避けてしまいます。
 そして、手にしたリボンを魔法のように見せかけて投げ、玲璽さんを倒してしまいました! さらに、エルドさんのファイヤーコントロールで全体に攻撃をしているように見せかけ、まさに最終ボスに相応しい強さを演出をします!
「皆の想いを‥‥これを受けてみよ!」
「わるいことをするひとは、おしおきなんだから!」
 しかし、ハンナさんの一撃が、リンさんの魔法が大魔王に繰り出されます!
「な、なんだこの力は!」
 攻撃を受けた慧琉さんは、派手に吹っ飛びながら退場しました。
「人を助けるのに、理由なんて要らない。それが、騎士として、人としての当然の行為だ」
「騎士様‥‥本当にありがとうございます」
 無事、大魔王を倒し、姫を助け出した騎士。2人が抱き合い、感動のフィナーレを迎えました!
『こうして、騎士の活躍により姫は助け出され、国に平和が戻りました。めでたし、めでたし』
 冒険者の迫真の演技により、舞台は大成功! 幕が下りた後も拍手は鳴り止まなかったそうです。


●後片付け♪
「こんな仕事、女子供に任せてられないだろ。なぁ、ヒースクリフ?」
「あぁ、こういう事は私達の仕事だね」
 玲璽さんとヒースクリフさんは大道具の片付けをしていました。力仕事は彼らにお任せなのです♪
「お姫様の役だから、すごく緊張しちゃった」
「私も主役だから大変だったよ。でも、私は何時だって真面目で何事にも全力投球だからね」
 アリアさんとハンナさんはお掃除をしながら感想を話しています。
「今度はあたいとラブロマンスやろ♪」
 慧琉さんはエルドさんを追っかけていました。捕まえると、腕に抱きついて口説いていたそうです。今回もステキな男性に抱きつく事ができて嬉しそうでした☆