【ピックルくんの大冒険】死者の廃鉱
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■ショートシナリオ
担当:えりあす
対応レベル:1〜4lv
難易度:難しい
成功報酬:1 G 44 C
参加人数:8人
サポート参加人数:2人
冒険期間:10月23日〜10月30日
リプレイ公開日:2004年11月01日
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●オープニング
「はぁ‥‥あの手紙、読んでもらえたかしら‥‥返事はこないし‥‥やっぱりダメだったのかなぁ‥‥」
溜息を吐きながら雑務をしている受付嬢。
はて、一体何があったのであろうか?
「ねぇねぇ。最近、ちょっと懐が寂しくてさ。何かお手軽な依頼ってない?」
そんな受付嬢にシフールのレンジャー、ピックルくんが声を掛けた。
彼の入った依頼はことごとく失敗することで有名だったが、最近はそうでも無いみたいだ。
「あー、もう! どうせ、デートで彼女に貢いだりしてたんでしょ!」
「何でそうなるんだよぉ!」
相変わらず仲の良い2人である。
しかし、お金が無いのはどの冒険者も一緒だ。
依頼には危険が付きもの。
命に関わることだってある。
その為に、冒険者は出来る限り準備をする。
生きていく上で食事は不可欠だ。
その為、冒険者は保存食を用意しなければならない。
狩りをすればいいじゃないかって?
依頼は緊急を要するものも多い。そんなことで時間を無駄にして依頼を失敗させるのかね?
矢1本でもお金は掛かる。危険な依頼に薬を用意する冒険者もいるだろう。
最近、夜は寒い。夜営道具の準備も必要だ。体を壊す前に寝袋程度は用意したいものである。
だから、冒険者はいつもお金が無い。
冒険家業以外に生業で補っている者も多くいる。
「手っ取り早くて、簡単そうなのだったら、こんな依頼はどう?」
受付嬢は1枚の依頼書をピックル君に見せた。
*
【依頼書】:ズゥンビ退治
先日、村の廃鉱からズゥンビが数匹現れ、周辺を彷徨っている。
今のところ村人への被害は少ないが、放っておけば被害が拡大することは間違いない。
至急、ズゥンビが出没した村へと向かい、これを撃退せよ。
*
「なーんだ、ズゥンビ退治か。数も少ないみたいだし楽勝だね♪」
ピックル君はすぐに契約書にサイン。
「でも、甘く見てまた失敗したりしないでね」
受付嬢は苦笑しつつも、また雑務へと戻るのであった。
丁度、その頃‥‥
急にギルドが騒々しくなった。
そして、係員がこの依頼書の内容を訂正し、途中に文章を追加していく。
*
【依頼書】:****アンデッド退治
先日、村の廃鉱から****アンデッドが**多匹現れ、周辺を彷徨っている。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
たった今入った情報では、廃鉱の中から多数のアンデッド‥‥ズゥンビ、スカルウォーリアー、さらに、レイスが現れ、村を襲っている!! 詳細は不明であるが、手の空いている冒険者は、可及的すみやかにこの村へ向かい、アンデッドを殲滅せよ!!
*
「ち、ちょっと待ってよ!」
ピックルくんは驚いた。
ズゥンビだけと思っていたのに、ここにきて急にスカルウォーリアーやレイスが増えたのだ。
こんな強敵と戦ったことなんてないのに‥‥
「で、でも‥‥行かなくちゃ‥‥アンデッドを倒さなくちゃ‥‥」
ピックルくんは覚悟を決め、この依頼書を見ている冒険者に協力を求めた。
‥‥それは、あなたである。
●リプレイ本文
危険な依頼を買って出た冒険者達とピックル。
強敵がいるということで、十分に対策を立ててアンデッドが出没した村に向かうのであったが‥‥
「ごめんねーっ! 今度は忘れないからっ!」
「すみません。少しお分け頂くことはできないかしら?」
ピアレーチェ・ヴィヴァーチェ(ea7050)とミルク・カルーア(ea2128)は2日分の保存食しか準備していなかった。幸い、キース・レッド(ea3475)とイリス・ローエル(ea7416)が多めに保存食を用意していたので、最悪の事態は免れることができた。
「ピックル殿、怖ければ逃げて良いぞ」
「こ、怖くなんかないやい! 絶対にアンデッドを倒すんだ!」
「いい心構えだ‥‥戦う勇気を持っているなら、敬意を込めてこれをやろう」
「ピックル君! ピアもこれあげるね!」
イリスとピアレーチェはピックルにシフールの礫を渡した。小さくて貧弱な飛礫だが、シフールが投げることによって威力が増す。
*
村に到着した一行は、始めに村長の家を訪ねた。
ウォルフガング・シュナイダー(ea0433)は村長に拠点となる小屋を借りる事ができないか交渉し、村の空き小屋を使用する許可を得た。また、廃鉱の地図も入手する事が出来た。
「あの死人達は‥‥かつては村人だった可能性もある‥‥村を守る為とはいえ、彼らを殲滅しなければならない事を御了承頂きたい」
アンデッド殲滅についても了承された‥‥かつての村人が村を襲っているかもしれない‥‥ウォルフガングは複雑な心境だった。
「君が例のピッケル君か‥‥レンジャー同士、がんばろうじゃないか」
「違〜う! 何でみんな僕の名前を間違って覚えてるんだよぅ‥‥」
キースとピアレーチェ、ピックルは村の周囲を調査していた。
「いいかい? レンジャーは力技ではナイトやファイターに劣るんだ。でも、短所を認め、長所を仲間の為に生かせば、君もきっと活躍できるよ? レンジャーは身の軽さ、機動力、柔軟さが売りなのさ、ピクルス君?」
真剣にキースの話を聞いていたピックルだが、やはり間違った名前を言われてガクッと項垂れる。そんなピックルをピアレーチェが宥めつつ、アンデッドの捜索が進む。ピアレーチェのデティクトアンデットで大体の数と位置は把握できたようだ。
小屋では偵察隊が入手した情報や地図で作戦が検討されていた。
偵察隊の調査で、廃鉱から出てきたズゥンビとスカルウォーリアーはその周辺を彷徨っていることがわかった。しかし、レイスはどこにいるのかわからない。
また、王零幻(ea6154)よりアンデッドについて説明がされた。ズゥンビは問題無いとしても、スカルウォーリアーは名前の通り骸骨で隙間ばかりの為、突きや矢などの攻撃は効果が無い。レイスは通常の武器は効かず、接触しただけでダメージを受けるのだ。
「廃坑に何か隠された秘密が有るのだろうか」
「アンデッド君達が沢山出てきたんだから、何かあるかもしれないね」
ファング・ダイモス(ea7482)の疑問にピアレーチェが答える。
「死霊に襲われた者がまた死霊になる、という悪しき環など作らせはせぬ」
王は強く数珠を握り締めた。
*
小屋での打ち合わせが終わり、一行は村の見回りを行った。
偵察隊がアンデッドを発見した場所を中心に回り、ズゥンビの群れを発見する。数は8体。
そのズゥンビをキース、ピアレーチェ、ピックルの偵察隊が囮となって引き寄せてきた。
「来たか‥‥」
近寄ってくるズゥンビにウォルフガングがソニックブームを放つ。
「他愛も無い‥‥もっと強いのは居らぬでござるか」
黒畑緑朗(ea6426)が誘き出されたズゥンビの頭を叩き割る。
「何が原因で這い出して来たのかは知らないが、村に手出しはさせない」
ファングが力任せにジャイアントソードをズゥンビに振り下ろし、その腐敗した体を真っ二つにした。
「屍人風情が私に敵うと思ったか」
イリスはシュライクでズゥンビを攻撃。そこへ王のピュアリファイが発動。ズゥンビは浄化されていく。
ズゥンビは冒険者達の力技によって次々に破壊されていった。
そこへ、生きるの者の気を感じたのか、スカルウォーリアーが姿を現した。その数は4体。
一般的にスカルウォーリアーは、剣と盾で武装しているものが多いが、現れたスカルウォーリアーはハンマーを手にしていた。おそらく、生前に坑道で使っていたものであろう。
「ピッケル殿、貴殿にはズゥンビをお願いするでござる」
スカルウォーリアーの姿を確認した緑朗は、攻撃対象をスカルウォーリアーに変えた。
「ううう‥‥ピックルなんですけども‥‥」
嘆きつつもピックルはシフールの礫でズゥンビを攻撃。
「できるだけ引きつけてから投げつけてねっ!」
ピアレーチェの指示通り、ギリギリまでズゥンビを引き付けてから投げつけた。威力を増した飛礫はズゥンビの体を貫通する。
「チッチッチ☆ レディ達を危険な目に合わせるわけにはいかないからね」
キースは女性陣を庇いながらズゥンビをシルバーダガーで切り裂いていく。さらに、ミルクがスマッシュで脚を切断し、倒れたところに剣を突き刺す。まだ襲いかかろうとするズゥンビの頭にピアレーチェがメイスを叩き付け粉砕。これでズゥンビは動かなくなった。
「多少はましな相手か」
シュライクでは命中させることが出来るかどうか五分と判断したイリスは、普通にスカルウォーリアーを攻撃。的確に攻撃を命中させていく。
「極めれば、この世に切れぬ物なし」
緑朗もやはり、安定した戦法を取り、確実にスカルウォーリアーを破壊していった。
「コナン流合成技、フルバースト!」
ファングは強靭な肉体から繰り出される大技、スマッシュEX+バーストアタックEXでスカルウォーリアーのハンマーを破壊していく。スマッシュEXは、武器の重量を生かして攻撃のダメージを増やす技である。しかし、極めて扱いが難しく、卓越した技量を持たないと命中させることはできない。達人クラスの技量を持つファングだからこそできる業なのだ。
武器の無いスカルウォーリアーなど、冒険者の敵ではない。次々と破壊され、王のピュアリファイによって浄化されていく。
この戦いで大きな怪我を受けた者はいなかった。ヨシュア・グリッペンベルグがリカバーで傷を癒す。
そこへ‥‥
「あっ! あそこ!」
ピアレーチェが青白い炎のような存在を見つけた。レイスだ。
目が合った瞬間、レイスは木などの障害をすり抜けて真っ直ぐどこかへ向かっていった。
すぐに追いかける冒険者達。
レイスが向かった先は廃鉱であった。
しかし、一行は中へ入るのを止めた。
「とりあえず、周囲のアンデッドはいないようだ‥‥一旦、小屋に戻るとしよう」
ウォルフガングの意見に頷き、一旦引き上げる事になった。
*
恐らく、レイスは廃鉱の中にいる。
冒険者達は地図を広げ、慎重に坑道のルートを検証した。
「ここで事故があったようだ」
王はある通路を指差した。
村人からの情報で昔、坑道の中で大きな事故があったという。
坑道と事故とアンデッド。冒険者の頭の中でキーワードが結びつく。
廃鉱前。
ウォルフガングと崔白蓮が武器にオーラパワーを付与していく。
レイスには普通の武器は効かないが、オーラパワーが持続している間はダメージを与えることができる。また、アンデッドに対して効果が上昇するので、対レイス戦には有効な手段となる。
王の持つランタンの明かりを頼りに坑道を進む一行。
奥へ進むと落盤があったと思われる通路に出た。
その時‥‥
──何故、誰も助けてくれなかった‥‥
不気味な声と共に再び一行の前に現れたレイス。
「さて、厄介なのが出てきたな‥‥」
イリスがシルバーダガーを構えるのと同時にレイスは襲い掛かってきた。
「うっ!」
触れただけで体に痛みが走る。しかし、イリスも取り付かれまいとシルバーダガーをレイスに突きつける。
「コナン流の真髄で再び眠りについて貰う」
ファングもジャイアントソードでレイスを振り払った。
──ギャァァァ!
死霊の呻き声が坑内に響く。
「なるほど‥‥手応えがあるようでござるな」
緑朗はダブルアタックで確実にレイスにダメージを与えていく。ウォルフガングも狙いを定めて突き進み、確実に倒す事を考える。
「これがレンジャーの戦い方さ。しっかり見ておけよ?」
「僕も負けてはいられないっ!」
キースとピックルが同時にレイスに切り掛かる。素早さを生かしたその連続攻撃は、オーラパワーの効果もあってスマッシュなど強力な技に匹敵するダメージをレイスに与えた。
レイスも2人に反撃。だが、彼らは余裕でレイスの攻撃を避けて見せた。
「心配でしたけど、大丈夫のようね」
ミルカも安心して援護に専念し、オーラショットで支援する。
「成仏しなさいっ!」
ピアレーチェもメイスで攻撃。
結局、戦いは自然にレンジャー2人がレイスの攻撃を捌き、そこへ一斉攻撃を仕掛けるという戦法となった。
まさに、それぞれの長所を生かした戦法と言えよう。
「死霊は六道の環に非ず。弥勒の慈悲だ、滅せよ!」
──ウワァァァ‥‥
王のピュアリファイでレイスは消滅した。
村に戻った一行。
村の護衛の為、待機していたヨシュアが傷ついたイリスとファングをリカバーで癒す。
どうやら、アンデッドはもういないようだ。
昔、廃鉱で大規模な落盤事故があった。
長い年月と共に忘れ去られようとした時、今回の事件が起きたのだ。
その後、死者の冥福を祈る為、2度とこの事故を忘れない為に慰霊碑が建てられたそうだ。
レイスが冒険者を事故の場所まで導いたのは、この惨劇を忘れないようにというメッセージだったのかもしれない‥‥