『D』

■ショートシナリオ


担当:えりあす

対応レベル:1〜4lv

難易度:難しい

成功報酬:1 G 0 C

参加人数:10人

サポート参加人数:-人

冒険期間:11月03日〜11月08日

リプレイ公開日:2004年11月11日

●オープニング

「何とか依頼成功だったな。後はギルドに報告して報酬貰うだけだぜ!」
「ああ、お疲れさん。今日は早く休むか」
 ある冒険者のパーティ。依頼を終えてキャメロットに向かう途中、彼らは街道沿いで夜営をしていた。
 この辺りはキャメロットに続く街道で比較的整備がされており、モンスターの数も少ない。
 だが、その気の緩みが悲劇を呼ぶ事となったのだ‥‥
「き、夜襲だ!」
 見張りが声を上げた。
 慌てて起きると、5,6人の盗賊に囲まれている。
 その中に黒色のローブを着て、自分の身長以上の巨大な剣を持つ人物がいた。
「金とアイテムは全部置いていけ。そうすれば、命は助けてあげよう‥‥聞かぬというのなら‥‥」
 冷淡にローブの人物は冒険者に言う。
「ふざけるな!」
 だが、その言葉を最後まで聞かず、冒険者達は武器を手に盗賊団へ立ち向かう。
 しかし‥‥
「訪れるのは闇。即ち、死を意味する」
 ローブの人物は巨大な剣を素早く持ち上げると、向かってくる冒険者に振り下ろした。

 ──グシャァァァァ!

 冒険者に叩きつけられた巨剣は、レザーアーマーを貫通し、胸に深くめり込んだ。
 巨剣の破壊力。武器の重量を乗せたそのテクニック。
 まともに受ければ、たった1発で命を落としかねない。
「うわぁぁ!」
 血が噴出す胸を必至に押さえながら悶え苦しむ。
「ひ、ひぃぃ!」
「もう一度問う。金とアイテムを全部置いていくか、死を選ぶか‥‥」
 ローブの人物は恐怖に怯える冒険者に告げる。
 その様子は、まさに死神のようだ‥‥
「覚えておくがいい‥‥わたしの名は‥‥」


   *


「な、何! 冒険者を狙う盗賊が出没するだと!」
 突然張り出された依頼書は冒険者達を驚駭させた。


【依頼書】:冒険者を狙う盗賊団を倒せ
 最近、冒険者を狙って金やアイテムを強奪する盗賊団が出没している。
 盗賊団は、依頼直後の疲労した冒険者を中心に襲っているらしく、被害数は増加している。
 中には手練の用心棒がいるという情報もあり、命を落とした冒険者もいるようだ。
 これ以上被害を出さない為にも、この盗賊団退治専門の冒険者を招集する必要がある。
 冒険者に被る被害は、冒険者の手によって排除しなければならないのだ。
 なお、この依頼は危険度が高い為、成功報酬としてさらに2Gを用意している。
 我こそはと思う者は、この依頼を受領されたし!


「いくら疲れているところを狙うといっても、お前たち冒険者は戦いのプロだ。それを相手にしているということは、盗賊団もかなりの実力があるということだろう」
 依頼を張り出した係員は真剣な表情で冒険者に言った。
「盗賊団の中にいる用心棒だが、たった一振りで冒険者を重傷にしたらしいな‥‥かなり、強力な技を持つ用心棒のようだ。気をつけないと怪我だけじゃ済まないぞ‥‥」
 被害を受けた冒険者の証言では、盗賊団の中にかなりの実力を持つ用心棒がいるらしい。また、他の盗賊も冒険者と互角に渡り合えるだけの技量があり、力だけで押し切ることは困難だという。
「でも、なんで冒険者ばかり狙うんだ?」
「それはわからん‥‥だが、冒険者の中に珍しいアイテムを持っている人がいるだろう? それを狙ってるんじゃないかと思う。そういうアイテムは高額になるし、自分達も強くなれるからな‥‥」
 強力なアイテムを手にすれば当然強くなれる。それで、盗賊団は実力を付けてきたのであろう。
「そういえば、その用心棒‥‥女のだったらしく、自分でこう名乗っていたそうだ‥‥」
 係員が一瞬、恐怖に襲われたかのような顔をした。
 暫し沈黙の後、話を続ける。

「『わたしの名は『D』。わたしは闇に生きる者‥‥そして、死を運ぶ者‥‥』と‥‥」

●今回の参加者

 ea0579 銀 零雨(32歳・♂・武道家・人間・華仙教大国)
 ea0904 御蔵 忠司(30歳・♂・志士・人間・ジャパン)
 ea2462 ナラク・クリアスカイ(26歳・♀・神聖騎士・エルフ・イギリス王国)
 ea3451 ジェラルディン・ムーア(31歳・♀・ファイター・ジャイアント・イギリス王国)
 ea3800 ユーネル・ランクレイド(48歳・♂・神聖騎士・人間・フランク王国)
 ea5235 ファーラ・コーウィン(49歳・♀・ファイター・人間・ノルマン王国)
 ea5619 ミケーラ・クイン(30歳・♀・ファイター・ドワーフ・フランク王国)
 ea7050 ピアレーチェ・ヴィヴァーチェ(29歳・♀・神聖騎士・人間・ビザンチン帝国)
 ea7416 イリス・ローエル(24歳・♀・ファイター・エルフ・イギリス王国)
 ea8015 ルース・アトレリア(30歳・♂・ファイター・人間・イギリス王国)

●リプレイ本文

「冒険者が減ってはギルドも困るだろう。協力してくれ」
「盗賊君達が仲間を使ってギルドで情報収集をしているかも知れないからねっ!」
 盗賊がギルドで情報を集めている可能性があると考えたイリス・ローエル(ea7416)とピアレーチェ・ヴィヴァーチェ(ea7050)は、ギルドに偽の依頼を張り出してもらえるよう協力を要請した。場所は盗賊が出没する街道に一番近い村で、内容は魔術師の実験に協力するというもの。もし、盗賊がこの依頼を見ているのならば、帰りを狙って襲撃してくる可能性が高いだろう。
「今まで盗賊に奪われた品はどんな物があるのでしょう?」
「盗賊の使う武器がわかれば助かる」
 ファーラ・コーウィン(ea5235)とイリスが係員に尋ねた。
 詳しい被害についてはまだわかっていないようだ。用心棒が使っている武器は、被害者の証言から「ラージクレイモア」と考えられる。
「依頼帰りの冒険者を襲うなんてゆるせないっ! 絶対にやっつけてやるんだぃ!」
 両手を組んで怒りを表すピアレーチェ。
「さて、苦難の旅の始まりだ。もっとも望むところではあるがな」
「まだ、会いたい人達がいます。何としても生きて戻りたいです」
 イリスとファーラはそれぞれの想いを胸に、危険な冒険へと向かう。


   *


「冒険者狙いの盗賊だなんて、キャメロットの冒険者も舐められたものだよねっ!」
「全く‥‥無駄に力があると妙な考えに走ってしまうのか?」
 闇夜の街道沿い。焚火の炎に照らされたジェラルディン・ムーア(ea3451)の顔は怒気を帯びていた。対して、ナラク・クリアスカイ(ea2462)は感情をマスカレードで隠している。
「さて‥‥依頼でアイテムを貰った風に見せましょうか」
「僕は少し離れた所を行きますね」
「うまく隠れることができればいいんだけどな」
 御蔵忠司(ea0904)はドンキーにフライングブルームを目立つように積み直し、銀零雨(ea0579)とルース・アトレリア(ea8015)も奇襲の為の準備をする。
「みんなにこれを渡しておこう」
 ミケーラ・クイン(ea5619)は全員にリカバーポーションとヒーリングポーションを渡した。
「赤字覚悟で依頼に臨むとは恐れ入った。オレも準備していたんだがな〜」
 ユーネル・ランクレイド(ea3800)も仲間の為にポーションを用意していたが、こちらは後でしっかり取り立てるつもりだったようだ。
「大変な依頼ですが、知り合いが仲間にいて心強いです」
 そんなユーネルにファーラが微笑む。2人は酒場での顔見知りである。
「野盗退治が終わったら、また飲みにでも行こうぜ」
「ユーネルさんの奢りですか?」
 2人の何気ない会話には、必ず無事でキャメロットに戻るという強い意志が込められていた。


   *


「これはいい金になるぞ!」
 ピアレーチェの奏でるリュートベイルと、ミケーラの声が暗闇の街道に響く。
 手には金塊――いや、金塊のように「見える」モノ‥‥愚者の石であるが――が大事に握られている。
 冒険者達は盗賊を誘き寄せる為、偽りの依頼の帰りという設定を演じていた。
 ジェラルディンは冒険帰りで怪我を受けた感じを演出し、ナラクは酒の代わりに水を飲んで酔ったフリをしている。
「いいもの手に入れたようだな、冒険者さんよ」
 暗闇の中から松明を手に近づいてくる人影。盗賊だ‥‥数は6人。
「‥‥来たようですね」
 忠司がトライデントを手に取った。ジェラルディンとファーラもロングソードを構える。
「金とアイテムは全部置いていけ。そうすれば、命は助けてあげよう‥‥」
 黒色のローブを着た人物が冒険者の前に立った。両手で自分の身長以上の巨剣を持ち、冷淡に告げる。
「もし、断ったらどうする!」
「わたしの名は『D』。わたしは闇に生きる者‥‥そして、死を運ぶ者‥‥。断ればここであなた達の冒険は終わりを告げる‥‥」
 ミケーラの問いに『D』と名乗る用心棒は冷たく答えた。
 その時。
「ここで終わるのはあんた達のほうだ!」
 不意を突いて奇襲班のルースと零雨が盗賊に襲い掛かった。
 しかし。
「その程度! こっちはお見通しなんだよ!」
 盗賊達は即座に応戦。
 距離を取れば暗闇に紛れることは簡単だろう。だが、うまく近づけるかどうかは別問題。2人共そのようなスキルは持っていない為、盗賊に気づかれていた。零雨は反撃を退けたが、ルースは盗賊のラージハンマーの直撃を受ける。
「チッ‥‥なかなかうまくいかないもんだ‥‥」
「大丈夫か。死ぬにはまだ早すぎる」
 ルースはヒーリングポーションを飲み干し、ユーネルもリカバーポーションを与えて傷を回復させる。
 ユーネルはダークネスを唱えようとしたが、装備が邪魔になる為、詠唱が難しい状態だった。奇襲が失敗に終わったので、そのまま抜刀して盗賊に切り掛かる。
「如何に実力があろうとも盗賊行為を黙って見過ごす訳には参りません」
 盗賊の出方を伺っていた忠司は、襲い掛かっていた盗賊にトライデントを思い切り突き出す。だが、三叉の穂先は盗賊の脇腹を掠めただけで、大きなダメージを与えることが出来なかった。そして、盗賊の剣が忠司を襲う‥‥回避手段に乏しい忠司は、盗賊の攻撃を全て受けてしまった。
「大丈夫ですか! ここは僕が引き受けます!」
 零雨が傷ついた忠司を庇う。
 零雨は防具を付けていなかった。それは、突出した回避能力を身に着けているからだ。盗賊の攻撃を全て避け、日本刀で切り伏せていく。
「ここで倒れる訳にはいきません」
「これ以上、あんた達を好き勝手にさせる訳にはいかないんだからっ!」
 ファーラはオフシフトで盗賊の攻撃を回避し、その隙を狙ってジェラルディンがスマッシュを叩き込んだ。
「そのような腕を持ちながら、何故正しい事に使おうとしないのだ」
 ナラクは後方からディストロイで支援。武器を持つ利き腕より、傷ついた部位を狙って数を減らすほうが効果的と考え、仲間が攻撃した部位を集中的に狙う。


「貴殿の腕前は聞いている。その技、見せてもらおう」
「‥‥死に急ぐか」
 イリスが『D』の前に立つ。イリスは正面から攻撃を引き付けようとし、『D』は受けを警戒している。2人は膠着状態となった。
「これなら避けれないだろぉ!」
 膠着状態を破り、背後からピアレーチェがホイップで攻撃。だが、『D』も振り向きざまにピアレーチェをラージクレイモアで薙ぎ払う。ピアレーチェはリュートベイルでの受けが間に合わず、腹部にラージクレイモアの強烈な一撃を受けて跳ね飛ばされた。
「いたぁぁぁいぃぃ!!」
 ピアレーチェの悲痛な泣き声が街道に響く。
「しまった!」
 イリスはロングソードを振り下ろし、無防備な『D』の背中を切り裂いた。『D』は防具を着用しておらず、十分なダメージを与えたはずであるが‥‥。
「‥‥闇に滅せよ」
 まるで効いていないかのように『D』は呟き、イリスを睨みつけた。
「これ以上死人を出させるわけにはいかんな! 叩き殺してくれよう!」
 側面からミケーラがパリーイングダガーで『D』を斬り付けた。攻撃を受けた『D』の足元には多量の血が滴り落ちている。それでも、よろめきながら『D』はミケーラにラージクレイモアを振る。
「死に損ないが!」
 だが、ミケーラはミドルシールドで攻撃を受け流すと、再びパリーイングダガーを『D』に突き刺す。
「そこが貴殿の限界か!」
 そして、動きが止まったところにイリスのロングソードが振り下ろされた。
 ――ズシャ!!
 肉を切り裂く音が聞こえる。
「‥‥わたしは‥‥死を運ぶ者‥‥あなた達を‥‥」
「まだ言うか!」
 パリーイングダガーで『D』の喉笛を切り裂くミケーラ。
 丁度、その頃。盗賊も全て地に伏していた。


   *


「剣鬼の道、また進むことになったか」
 イリスは『D』の装備を回収していた。『D』が装備していたのはラージクレイモアのみ。防具を付けていなかったのは重量の為か、余程剣技に自信があった為なのか。
「しかし‥‥このような事をした理由は本当に金銭目的だけなのか?」
 ナラクの心の中に疑問が残る。だが、盗賊が存在しない以上、その答えはわからないままだ。
「そういえば『D』って、どんな意味だったんだろう? Darkstalker? Deathbringer? まさかDevilだったりしないよねぇ?」
 ジェラルディンは『D』という名前が疑問に残ったようだ。もちろん、真意は誰も知る由も無い。
 盗賊の装備も解除され、ギルドで持ち主に返却されることになった。
 所有者がわからなかったラージクレイモアはミケーラが引き取る事になった。
「初依頼だったけど、何とか成功でよかった」
 ルースは報酬を受け取り、ホッと溜息を吐く。
 傷ついた冒険者達はミケーラが渡したポーションを使い、次の冒険に傷を残す事はなかった。