疾風雷光の夜
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■ショートシナリオ
担当:えりあす
対応レベル:1〜3lv
難易度:普通
成功報酬:0 G 78 C
参加人数:8人
サポート参加人数:-人
冒険期間:07月25日〜08月01日
リプレイ公開日:2004年08月02日
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●オープニング
依頼を求め、あるいは出会いや自分の腕を試す場を求める者が今日も冒険者ギルドに集う。
依頼と言えばモンスター退治が定番だが、人や物を護衛する依頼も頻繁に持ち込まれる。
夕暮れ時。冒険者がギルドから酒場に移る頃、一枚の依頼書が張り出された。
『ジャパンの壷を守る護衛急募!』
ジャパンの珍しい品物は貴族の間で人気がある。
今回の依頼はジャパン産の壷を貴族まで届けるのが目的だ。
貴族の屋敷はキャメロットから3日ほどかかる。
その道中、ジャパンの品物を狙う盗賊が出没することがあるようだ。
万が一にも壷が盗難、あるいは破損するようなことがあってはいけない。
十分な備えを持って依頼に当たられたし。
なお、今回の依頼を受けた者には日数分の保存食を支給する。
依頼書を見て受付をする冒険者。
その時、ふと街中に張り出されているお尋ね者のことを思い出した。
『WANTED!! 窃盗を繰り返し、街に騒音を鳴り響かせる迷惑な盗賊2人組! 生死不問!』
この盗賊達は「ストーム」と「ライトニング」と呼ばれ、ジャパンから入ってきた珍しい品物を専門に盗む盗賊らしい。
「ストーム」は、大人が一人すっぽりと入ってしまう大袋を持ち、この大袋を使って人ごと品物を強奪していくという。
「ライトニング」のほうは、後ろに大きな輪を付け、そこになぜかいくつもの鍋をぶら下げている。「ライトニング」が現れると、この鍋が鳴り響き稲妻のようにうるさいという。かなり迷惑な盗賊だ。
ジャパンの品物を扱う以上、この盗賊2人が現れる可能性は高い。
この盗賊達から無事に壷を守り抜き、貴族の屋敷まで届けてほしい。
●リプレイ本文
●出発
「‥‥この壷の価値がわからん」
「壷の護衛か‥‥」
荷車に輸送する壷を載せながらカイル・ニート(ea4881)が呟いた。隣では鉄劉生(ea3993)が何か思うことがあるらしく、一人思案している。
「全く、なぜ金持ちはこんな物を高い金を出して欲しがるのか」
ハイエラ・ジベルニル(ea0705)も準備している様子を眺めながら溜息をつく。
「ま、折角一緒になれたんだし。ハイエラ、依頼がんばろうな!」
そんなハイエラに劉生は、初めて依頼で一緒になるということで改めて挨拶をした。
今回は割れ物を扱うので、依頼主は最初から荷車を用意していたようだ。また、冒険者からダミーの箱を用意するという提案に、依頼主も賛成した。同じ空箱を2つ用意し、中に同じ重さくらいのガラクタを入れる。本物の箱には裏に黒い星で目印を書いておき、中には布切れと藁を敷き詰めた。
「これでよしっと。後は貴族の館まで運ぶだけね」
手際よく準備を終えたアリシア・シャーウッド(ea2194)が男性陣に合図を送る。当然、運ぶのは男の仕事だ。
「常に壷の傍に誰かが居ないといけないからね。それに、僕はひ弱だし♪」
「おまえなぁ‥‥」
カイルが荷車に乗る気満々のアルヴィス・スヴィバル(ea2804)を見つけ、彼の前に立ちふさがる。これ以上、荷車の重量が重くなると運搬が大変だ。
「けど、乗るの♪ どけ☆」
絶妙に回文だったりするが、その知的な言葉も理解はされず、カイルは色をなして怒った。だが、アルヴィスも一歩も引かない。こうして、出発がかなり遅れたというのは秘密である。
●輸送
「くそっ! 重いぞ!」
荷車には壷とダミー、各人の荷物、そして、結局一歩も引かなかったアルヴィスが乗っている。それを、カイルと劉生が引いているが、二人だけでは進まないので、オルトルード・ルンメニゲ(ea4484)が後ろから荷車を押している。
「女の子は無理しなくていいんだぞ」
スピア・アルカード(ea2096)がオルトルードに声を掛けるが、ゲルマン語しか理解できないオルトルードはただ頷くだけだった。
「ま、気楽に気楽に行こうよ。それにしても、護衛で盗賊を倒す機会があるいい依頼だよね」
朴培音(ea5304)も隣で一緒に荷車を押し始める。彼女の片手には包帯が巻かれており、それを横目で見たオルトルードは少し驚いた。別に怪我をしている訳ではないのだが。
『せっかくだし一緒に行く女性陣とは仲良くなりたいものだな』
イギリス語は理解できなかったが、培音の言葉に合わせてオルトルードも答えた。
●疾風雷光参上!
三日目の夜。
野営は4人2組に別れ、一晩に前半・後半2人ずつ交代で不寝番を立てることになった。
盗賊はいつどこから襲ってくるかわからない。当然、夜襲を企てる可能性も高いのだ。
「倒したら本当に首を落とすのか? 死体を運ぶのは精神的に苦手なんだけど‥‥」
1組目の後半。ハイエラとスピアが当番。スピアは風神雷神を倒したときのことを考えていた。冒険は死と隣り合わせであるが、すぐ近くに死体があると思うと、やはり気持ち悪いものである。
「首はダミーの箱に入れるらしいから大丈夫じゃない? 生死不問なんだから、わざわざ五体満足で生かしたまま連れ歩く必要もないだろうし」
スピアとは対照的にハイエラは気にしていない様子であった。
今宵は満月。その大きな円が暗雲に飲み込まれたその時‥‥。
――ガラガラガラガラ‥‥
闇の向こうから金属音が徐々に近づいてきた。
「何て解りやすい‥‥」
スピアは剣を鞘から引き抜き、寝ている面々を起こそうとする。が、その瞬間、どこからか焚き火に水袋が投げ込まれた。
「しまった!」
煙を立てて焚き火の火は消え、辺りが暗闇に覆われた。ハイエラはわずかな残り火を頼りに荷車の護衛に向かう。
「くそっ! 来たぞ、起きろ!」
スピアが大声で全員を起こそうとする。異変に気づいたカイルが起き、ランタンに火を燈す。
「へへへ、お宝頂戴♪」
そこへ、忍足で荷車に近づく影があった。
「ぬぉ! 箱がいっぱい! いったいどれだ!」
近寄ってきたのは大袋を肩に乗せた大男、ストームだ。
「本物は一つ。残り二つはお前達の首が入るのさ!」
ハイエラが荷車の護衛に間に合った。ダガーを構え、壷から注意を逸らす為にストームを挑発する。
「は、何だその格好は。間抜けにも程があるぞ!」
「な、何ぃ! 馬鹿にしたな!」
たしかに、上半身は裸で下半身は腰布を巻いただけ、その格好で大袋を担いでいる様は間抜けであろう。
「壷は無事ですか!」
大声で目を覚ましたアリシア、劉生、アルヴィスが参戦。オルトルードと培音はライトニングの迎撃に向かう。
「てめぇぇー! その袋使えなくしてやらぁー」
カイルがストームの大袋目掛けてソードボンバーを放つ。その衝撃波は大袋ごとストームの体を吹き飛ばした。
「くそっ! やりやがったな!」
大袋を投げ捨て、ストームはショートソードを引き抜く。
「アニキ! 大丈夫ですかぁ!」
少し情けない声でライトニングが倒れたストームに声をかけた。慌ててストームの方に向かおうとするが、オルトルードと培音が前に立ちふさがる。
「私が相手だよ。かかってきな!」
培音は手に巻いてあった包帯をはずした。その手は明らかに色が違い、毒々しい感じがする。
「いい度胸だ。本気でいくぜ!」
ライトニングも担いでいる輪をはずして身構える。どうやら、ライトニングも武道家のようだ。
『女性には我が身を盾にしてでも指一本ふれさせん!』
オルトルードはライトニングを大声で威嚇。言葉は通じないだろうが、その気迫はまさに鋼鉄の乙女という感じだ。
「ふん、小賢しい」
ライトニングがオルトルードに殴りかかった。右、左のワンツー、さらに右の回し蹴りを叩き込む。だが、オルトルードはガードでライトニングの攻撃を耐える。
『所詮、その程度か!』
オルトルードが隙を見て剣を振り下ろそうとした瞬間、ライトニングはそのまま地面に手をつき、左足でオルトルードの足を払う。トリッピングだ。バランスを崩したオルトルードは尻餅をついた。
「やってくれたね! ぶっ飛ばしてやる!」
培音がライトニングの腹に前蹴りを放つ。これは外したが、続けて腰を一旦引き、顔面を狙って上段蹴り。
「ぐぉ!」
見事、ライトニングの顔面にヒット。さらに、首を狙って手刀を突きつけた。
「くっ! これは!」
ライトニングは外腕受けで手刀は捌いたが、その手を見て驚愕した。これが噂に聞く蛇毒手。この手で傷を負えば麻痺毒を受ける。
「アニキ! こいつらタダモンじゃないですぜ!」
ライトニングは身構えながら、ストームに叫んだ。
「予想外だったな。ずらかるぜ!」
ストームの声を聞くと、ライトニングは背を向けて逃げ出した。
「くそっ! 逃げられたか!」
培音が追いかけようとするが間に合わない。深追いは逆に危険だ。
「それならっ!」
アリシアがライトニングに弓を放つが命中しなかった。
「うそっ! 脱走!?」
今回も回文気味だが、アルヴィスも高速詠唱でウォーターボムを発射。
「当たったぁ♪」
これは命中したようだが、ライトニングの姿は闇の中に消えていった。
「さて、こっちは逃がしてくれそうにないな‥‥」
ストームはハイエラ、スピア、カイルに囲まれている。実力ではストームのほうが上だが、多勢に無勢。徐々に追い詰められていった。
「そんなに欲しいなら、くれてやるよ。ほうらよっと!」
劉生が荷車から箱を取って、ストームに投げつけた。もちろん、ダミーのほうである。
「うわぁ!」
条件反射なのか、投げつけられた箱をストームは慌てて受け取ろうとした。
「残念だったな! くらえっ! オーラ斬り!!」
そこに劉生の光の剣――オーラソード――が振り下ろされた。オーラソードは通常の品物には干渉せず、そのまますり抜けて直接ダメージを与えることができる。
「ぐわぁぁぁ!」
その一撃でストームは地に伏せた。
「本物の壷は大丈夫のようね」
アリシアは荷車の壷をチェックしていた。幸い、傷も無く無事のようだ。
「それで‥‥やっぱり、首を落とすのか? できれば引渡しがいいけど‥‥」
スピアが倒れているストームを見ながら呟いた。
「バッサリいっちゃいましょう。運ぶの大変だし」
「じゃあ、いくぜ」
培音の言葉を合図に、カイルがストームの首を落とした。
「いやぁぁぁぁ!!」
ストームの首が体から離れたと同時に、スピアは失神した。
●鑑賞
盗賊の襲撃を退けた一行は、無事に壷を貴族の館まで運ぶことができた。
「いやぁ、ごくろうさん。これを見るのが本当に楽しみだったのだよ」
部屋に通された冒険者達は壷が入っている箱を貴族に渡した。アリシアが今回の盗賊の件を話すと、快くコレクションを見せてもらうことができた。
「古今東西、いろいろな壷を集めるのが趣味でね」
コレクション・ルームには古くて使い物にならないような物から、金属製の豪華な物まで、実に様々な壷が展示されている。
「うわぁ。すごい!」
アリシアは興味深く展示されている壷を眺めていた。
「やっぱり‥‥壷の価値なんかわからんな」
集めて、眺めるだけ。カイルやハイエラはこのような趣味が理解できないようであった。
「この独特の絵といい、この手触りといい、わざわざジャパンから取り寄せただけの価値はあるな」
貴族は壷を撫でるように触りながら、うっとりと壷に見入っている。
「やはり、この壷は‥‥」
そう、貴族が言いかけたその時‥‥。
――ニタリ
アルヴィスが不敵な笑みを浮かべた。
「お前なぁ!」
劉生が慌てて貴族につっこもうとするアルヴィスを羽交い絞めにする。
こうやって、ドタバタしながら依頼は完了した。
なお、ストームの首を取ることができたので、冒険者達は半分の賞金を得たようだ。