Can you feel my pain?

■ショートシナリオ


担当:えりあす

対応レベル:1〜5lv

難易度:やや易

成功報酬:5

参加人数:5人

サポート参加人数:-人

冒険期間:12月26日〜12月31日

リプレイ公開日:2005年01月05日

●オープニング

『今度デートの約束したのに、うちの相方ったらまた冒険に行っちゃったのよ!!
 デートの日まで戻ってこなかったらどうするの!!
 相方を見つけて、連れ帰してちょうだい!!
 言う事聞かなかったら、痛い目に遭わせてもいいからっ!!

                             ――メルティからの依頼』



「ねぇ、こんな依頼があるんだけど?」
 受付嬢はギルドに入ってきた男に依頼書を見せました。
「メルティか‥‥今、それどころじゃないんだよ」
 でも、男は首を振って別の依頼を探します。
 実は、彼が依頼人であるメルティの恋人・ドナシューなのです。
「もう‥‥彼女が一緒に居たいって言ってるのに。どうして、彼女を放って冒険にいくのよ」
「こっちの都合だ。関係ない」
 ドナシューは素っ気無く言葉を返すと、別の依頼を見つけて契約のサインを交わしました。
「少しは彼女の気持ちも考えてあげなさいよ」
「じゃあ、オレの気持ちはどうなんだ? 人の関係に口を挟む前に、一緒にいる相手を見つけろ」
「うにゅ‥‥」
 受付嬢はそれ以上言葉が出なかったようです。
「‥‥もう少しで、メルティの為に‥‥後、1Gあれば‥‥」
 小声を漏らすと、ドナシューはギルドを飛び出しました。


「仕方が無いわね。他の冒険者に頼もうかしら。依頼は依頼だし」
 たまたま本人が来たので、説得しようと思ったが失敗でした。
 仕方なく、受付嬢はメルティからの依頼を掲示板に貼り付けます。
「でも、こんな依頼に興味を持つ冒険者っているかしら‥‥報酬も少ないし‥‥」
 青息を吐く受付嬢。
「女の子の気持ちがわかってないんだから‥‥どんなに寂しい思いをしてるか‥‥」
 同じ女性として、メルティの心の痛みを感じる事ができるのでしょうか。
 メルティの元へ、ドナシューが戻る事を祈りながら、受付嬢は仕事に戻りました。

 冒険者の皆さん。
 ドナシューを彼女の元へと連れ戻してあげて下さい。

●今回の参加者

 ea4329 李 明華(31歳・♀・武道家・人間・華仙教大国)
 ea4432 リューン・シグルムント(31歳・♀・バード・人間・フランク王国)
 ea5981 アルラウネ・ハルバード(34歳・♀・ジプシー・人間・ビザンチン帝国)
 ea7743 ジーン・アウラ(24歳・♀・レンジャー・人間・エジプト)
 ea8902 ヒューベリオン・グリルパルツァー(32歳・♂・ナイト・ハーフエルフ・イギリス王国)

●リプレイ本文

●冒険者ギルドで確認を
「ドナシューさんの特徴とか教えていただけませんか? お会いされた事あるんですよね?」
 ドナシューを連れ帰すという、メルティからのお願いを受けた冒険者の皆さんは5人。その内、李明華(ea4329)さんとアルラウネ・ハルバード(ea5981)さんは、冒険者ギルドを尋ねて情報を集めていました。
「そうねぇ。ドナシューも冒険者だから、よくギルドにも来るわね。青髪にちょっと釣りあがった目。見た目は少しキツそうだけど、以外に優しい男よ。口は悪いけど、思い込んだら一直線って感じね」
 ドナシューもやはり冒険者のようで、受付嬢がその特徴を明華さんに教えます。
「彼女の為に何か一生懸命になってるみたいだけど、彼女はデートをすっぽかしてまで何かしてもらいたいとい思うかしら?」
「離れている時間が長いと、やっぱり不安になるものよね。傍にいてあげる事も大事よね」
 受付嬢の疑問に、アルラウネさんが微笑みながら答えました。
「他に、何かドナシューさんについて何か知りませんか?」
「う〜ん。出て行く時に『‥‥後、1Gあれば‥‥』なんて呟いていたわねぇ」
「『1G』ねぇ‥‥彼女への贈り物かしら?」
 明華さんが尋ねると、受付嬢はドナシューが言っていた言葉を思い出しました。アルラウネさんは、それがメルティへの贈り物の為ではないかと推測します。
「その、贈り物とデート‥‥天秤に掛けるとすると、どちらが大切ですかね?」
「どちらも大切で、素敵なものよ」
「そうですよね。そうすると、あたし達がするべき事は‥‥」
「そうね。彼女の依頼内容もクリアして、尚且つ丸く事を納めるなら『彼の依頼をちゃっちゃと片付け贈物を用意させる事』よね」
 明華さんが尋ねると、アルラウネさんが情報を纏めて作戦を提示しました。
「彼がどのような内容の依頼をしていて、期間はどれくらいなのでしょう?」
 ドナシューが受けた依頼について、明華さんが受付嬢に尋ねます。
「え〜と、隣村まで荷物を運ぶ依頼ね‥‥」
「期間はどうなっていますか?」
「隣村までは普通に歩いて2日程みたいね」
「片道2日!? デートの日って何時だっけ!?」
「デートの日は4日後のはずよ‥‥」
「急がないと間に合わないかもしれないです‥‥」
 ドナシューの依頼の期間を聞いて明華さんは焦りました。デートの約束は4日後です。ドナシューの依頼は村まで往復4日。ギリギリ‥‥もしかしたら、間に合わない可能性もあります。
「兎に角、ドナシューさんに会わなければならないですね」
「私はメルティのお相手をするわ。お話をしたり、占いをしたりすれば、時間稼ぎになると思うし」
 ギルドを出ると明華さんはドナシューの依頼の手伝いに、アルラウネさんはメルティの家に急ぎました。

●お手伝い
「お兄さんってどこにいるんだろうね?」
 冒険者ギルドに来たジーン・アウラ(ea7743)さんが、隣にいるヒューベリオン・グリルパルツァー(ea8902)さんに尋ねます。
「ギルドに‥‥恐らく、会えると思うが‥‥」
 キョロキョロ周囲を見渡しながら、ヒューベリオンさんが答えます。
「じゃあ、おいらが様子見てこようか?」
「ああ、頼んだ」
 そう言うと、ジーンさんはドナシューを探しに行きました。
「冒険者なら‥‥偏見はないと思うが、俺が行くとな‥‥」
 ヒューベリオンさんは、少し悲しそうな表情を浮かべました。彼は布を顔に巻いて耳を隠し、正体がわからないようにしています。そう、ヒューベリオンさんはハーフエルフなのです。もし、ドナシューもハーフエルフを忌み嫌っているとすると、助力の申し出を拒否されるかもしれない‥‥そんな思いがヒューベリオンさんの心にありました。

 ドナシューは依頼に出発する直前でした。
 何とか見つけ出した冒険者達‥‥ジーンさん、ヒューベリオンさん、明華さんの3人が彼に近寄ります。
「あたし達は依頼によってドナシューさんにある日までに連れ戻すように受けました」
 明華さんが自分達の正体と目的をドナシューに告げます。
「また、そんな事か‥‥オレにも都合があるんだ。目的を果たすまで戻れん」
 ドナシューは冒険者達を見て怪訝な顔をしました。
「我々もメルティの依頼を受けた以上、最良の方法を講じたつもりだ‥‥おまえの目的達成の為にもそれは役立てると思うぞ」
「聞いた話によると、早くお金を稼がなくちゃいけないんだね。おいら達が協力するから!」
「勝手にしろ」
 ヒューベリオンさんとジーンさんが説得すると、ドナシューも折れました。
 懸念されたヒューベリオンさんの正体について、ドナシューは関心が無いみたいです。そう、冒険者はどのような種族でも協力して依頼を遂行しなければいけません。ギルドなど冒険者が関わる場所では、個人的な感情はあるにしろ、ハーフエルフだからといって非協力的になることはあまりありません。
「確か、隣村まで荷物を運ぶのですね? 急ぎましょう」
 明華さんが言うと、ジーンさんとヒューベリオンさんも急いで準備を整えます。

●時間稼ぎ
 アルラウネさんとリューン・シグルムント(ea4432)さんはメルティの家に来ていました。彼女の相手をして、時間稼ぎをするのです。
「こんにちは。私達はあなたの依頼を受領した者です」
「初めまして。この度は宜しくお願いします」
 2人はメルティに挨拶をすると、早速お話をします。
「デートの約束ですか‥‥ギルドに依頼を出す程まで、彼に早く帰ってきて欲しいのですね」
「そうなのよ! いつも冒険ばかり行って、わたしの事なんか‥‥」
「彼に会えず、淋しい思いをされているのですね」
 アルラウネさんがメルティに言うと、リューンさんも彼女を慰めます。
「あなたが不安なのはわかるわ。そうね、よかったら恋占いでもしてみないかしら?」
 アルラウネさんが占いを勧めると、メルティも喜びました。女の子は占いが大好きです。メルティもジプシーに占ってもらう機会はなかなか無いので、すごく嬉しそうです。
(「少しは落ち着かれたようですね」)
 それを見計らったようにリューンさんが静かに歌を紡ぎます。
 もちろん『メロディー』を乗せて‥‥

 一滴の水滴が集り川の流れとなり海になる
 一つの想いも募り心の流れとなり恋になる
 海は全てを飲み込み海原の下に
 その激しい想いと共に静かに揺蕩う
 穏やかなる波のままに

 子守唄のように心に響くメロディ‥‥
 次第に焦っていたメルティの心も穏やかになっていきます。
 そして、3人はドナシューが帰るまで、お互いの恋愛話を語り合うのでした。

●その頃
 ドナシューの依頼に同行する3人。
「ゴメンねぇ〜。おいらも乗ったら大変だよね」
 ジーンさんがヒューベリオンさんの馬に向かって話しかけています。ジーンさんとヒューベリオンさんの体重、装備を合わせると、馬の搭載量をオーバーしてしまいます。でも、移動は半分になってしまいますが、何とか進ませる事は可能でした。
 冒険者達は目的の村に到着しました。
 途中、特に障害も無く、無事に依頼の品を村まで届ける事ができました。
 ここで、ヒューベリオンさんはドナシューに向かって力強くこう言います。
「荷物が村まで到着すれば依頼は成功だ。後はまかせろ。報酬を持ってメルティの元へ行け」
『何が何でも速攻で帰らせる』。そう、仲間がメルティの感情を抑えている間に。ヒューベリオンさんは、依頼主に荷物を届けたりしている時間がロスになると考え、速攻でドナシューを帰還させる事にしたのです。
「だが、そんなことで‥‥」
「いいから行け!」
「わかった‥‥感謝はしておくぜ」
 ドナシューはヒューベリオンさんに背を向けると、メルティの元へと向かいました。
 果たして、デートの時間まで間に合うのでしょうか‥‥。

●あなたはわたしの心の痛みがわかるの?
「遅いわねぇ‥‥」
 依頼最後の日。そして、メルティとドナシューのデートの日。
 夜になってもドナシューの姿は現れませんでした。
「こんなにお互いを想っておられるのですもの。必ず、ドナシュー様はこられますわ」
 リューンさんがメルティの傍で囁きます。そして、彼女にファー・マフラーを掛けてあげました。冬のキャメロットの夜は大変寒いです。そんな状況の中、ずっと待ち続けるのは疲れます。
「やっぱり、こないのね‥‥」
 メルティが涙声で呟きました。待ち続けるのが、どんなにつらい事か‥‥彼はわたしの心の痛みがわかるの‥‥メルティの目から涙がこぼれました。
「大丈夫よ‥‥彼を信じて‥‥」
 アルラウネさんがそっとメルティの手を握りました。そして、彼女を見つめます。アルラウネさんの自信に満ちた顔を見ると、なんとなくメルティも信じてみようという気持ちになってきました。隣ではリューンさんが歌を唄います。安らかなメロディーに乗せて‥‥。
 そして、メルティがアルラウネさんの手をギュッと強く握ったその時‥‥
「メルティ!」
 強く扉を押し開き、メルティの家にドナシューが帰って来たのです!
「ドナシュー! 遅いじゃない!」
「悪かった‥‥」
 2人はアルラウネさんとリューンさんがいる事も忘れて、強く抱き合いました。メルティの目からは、先程と違う涙が流れました。
「どうして‥‥わたしを放って‥‥えっ!?」
 突然、ドナシューがメルティの口を塞ぎました‥‥キスという愛情表現で‥‥。
 そして、ドナシューは口付けをしたまま彼女の指に何かをはめました。それは、銀色に輝く指輪でした。
「誰かをこれ程までに愛する事ができるって、本当に素敵なことですね」
「そうね。これで依頼は終了。退散しましょう」
 アルラウネさんとリューンさんは、2人の邪魔にならないように、そっと家を出ました。
 外に出ると、白い雪が舞い降りています。
 この雪はジーザス様の祝福なのでしょう‥‥そう、思いながら2人はメルティの家を後にしたのでした。