●リプレイ本文
●危険な同居人
冒険者の皆さんが「危険な」同居人を退治する為、レグナさんの家にやってきました。
「なかなかお洒落な家だな」
「‥‥そうだな」
ユイス・イリュシオン(ea9356)さんがレグナさんの家を見渡すと、感想を恋人であるウォルフガング・シュナイダー(ea0433)さんに呟きました。
家は所々傷んだ箇所があったりするのですが、丁寧に修復されており、レグナさんの家に対する愛情を感じさせます。
「‥‥気に入った物は、他人からどう見えようと自身には宝だからな」
コバルト・ランスフォールド(eb0161)さんも頷きました。
そう、「家は城」。ボロボロな家でも、レグナさんは人生で一番大きな「夢」を手に入れたのです。
「こんにちは。依頼でギルドから派遣されてきた者です」
軽く扉をノックして、エクリア・マリフェンス(ea7398)さんが「危険な」同居人を退治しに来た事を告げます。
「は〜い、今開けますね〜」
中から女性の声がしました。レグナさんの奥さんなのでしょう。扉を開けると、優しく微笑んで家の中に招いてくれました。
レグナさん宅にお邪魔した冒険者達は広間へと案内されました。まだ、引っ越してきたばかりなのか、少し荷物が散乱しています。
「汚くてごめんなさいね〜」
「いえいえ、お気になさらずに」
奥さんが苦笑しながら頭を下げると、ライノセラス・バートン(ea0582)さんもそう言って椅子に腰掛けました。
「ライさん、初めてご一緒しますね。よろしくお願いしますね」
「一緒の依頼に参加できて私は嬉しいですよ」
ライノセラスさんの両脇に夜枝月藍那(ea6237)さんと獅臥柳明(ea6609)さんが座って挨拶を交わします。
「今、主人を呼んできますね〜」
そう言うと、奥さんはレグナさんを呼びに行きました。
暫くすると、依頼人であり、家主であるレグナさんが広間に来ました。
「初めまして。早速だけど、先に地下室を調べさせてもらっていいかな?」
ハーヴェイ・シェーンダーク(ea7059)さんはレグナさんに了解を得て、皆より先に地下室の調査を行うことにしました。
「この家の由来とか歴史がわかれば教えて欲しいのだが‥‥」
ライノセラスさんがレグナさんにこの家の事について尋ねます。
レグナさんも購入する時、いろいろ話を聞いたりして情報を集めていました。でも、さすがに「同居人」がいるなんて聞いてはいません。
「よろしければ、地下室の状況を教えていただけませんか?」
エクリアさんが地下室について聞きました。
階段を下りると正方形の地下室に出ます。その奥に扉があるのですが、今回の一件があってから、レグナさんは地下室に行っていません。地下室から奇妙な音がする事があるそうですが、おそらく「同居人」の仕業だろうとレグナさんは話します。
「依頼人の話から推測すると‥‥恐らく、家等に取り憑く『ポルターガイスト』だろう。「騒がし幽霊」とも言われている。普通の武器は通用しないようだから、戦う時は注意しなければならない」
レグナさんの話を元に、コバルトさんが「同居人」の正体を推測しました。
「相手は物に憑依してきます。地下室に入ったら全てが相手の武器と考えても良いと思います」
柳明さんも以前、依頼でポルターガイストを見たことがあります。その時の体験も一緒に話しました。
「‥‥物に取り憑くとなると、地下室に何があるかが問題になるな」
「扉を開けた時に目に入った部屋の状態を教えて欲しい」
ウォルフガングさんが呟くと、ユイスさんがレグナさんに地下室の扉の向こうに何があったか尋ねます。
しかし、明かりが届かなかったせいか、部屋の中の様子まではわからなかったそうです。
「先にハーヴェイさんが地下室に行っているようだな。俺達も行こうか」
情報を皆が理解すると、ライノセラスさんが立ち上がって地下室に向かいました。他の冒険者も彼の後に続きます。
*
コバルトさんが持つランタンの明かりを頼りに、冒険者達は地下室に向かいました。
「‥‥様子はどうだ?」
「たまに、何か音が聞こえてくるね」
ウォルフガングさんが先に来て調査をしていたハーヴェイさんに様子を尋ねます。
「ほら、また聞こえてきたよ」
ハーヴェイさんが言うと、扉の向こうから何か物が動くような音が聞こえてきました。
扉の向こうに敵がいる‥‥冒険者達は来る戦いに向けて準備を開始します。
「嵐を司る雷皇よ、汝が力、我と共に‥‥雷皇の鎧」
柳明さんはライトニングアーマーを使用。他の冒険者も武器にオーラパワーを付与しました。ライノセラスさんはハーヴェイさんの武器にもオーラパワーを付与しましたが、弓に付与しても効果は無く、矢1本1本に付与していかなければならなかったので結構大変でした。幸い、敵は扉の向こうなので、問題は無かったのですけれども。
「敵が本体になったら合図します、それを機に一気に叩いてください」
グットラックを全員に掛け終えた藍那さんが言います。
「本体が出るまで私が彼らを守る。だから心置きなく攻撃を頼む」
「直線上に効果がある魔法を使用しますので、範囲に入らないように注意しますね」
ユイスさんが振り向くと、エクリアさんも答えて精神を集中しました。
「今回はポルターガイスト一体だけ、前よりは苦戦しなくて済みそうですね。油断はしませんがね」
「事前に準備できる分、俺達が有利だろう。だが、確かに油断はならんな。あと、家もガタがきているから暴れすぎにも注意が必要だ」
柳明さんが小太刀を振って戦いに備えると、コバルトさんもそう言って照明を扉に向けます。
「‥‥行くぞ」
「突然、飛来物が来るかもしれないから、慎重に中へ入ろう」
音が鳴り止んだのを確認すると、ウォルフガングさんとユイスさんが扉を開けて部屋に侵入しました!
部屋に入ると、中は色々な物が散乱しており、中央に白い霧のような存在が漂っています。東の壁には本棚が、北の壁にはテーブルなどが配置されていました。
「あれが本体です」
藍那さんが部屋の中央を指差しました。あの霧がポルターガイストなのです!
「よし! ピンポイントで!」
ハーヴェイさんがポルターガイストを攻撃しようとしましたが、銀の矢を番えたところでポルターガイストは東側の本棚に乗り移ってしまいました。ガタガタと揺れ始める本棚。すると、冒険者に向けて本や木の破片が飛んできます!
「‥‥このくらい」
飛来するものを避けるウォルフガングさん。ユイスさんも隣で後列支援者に命中しないようにシールドソードで受け止めています。
「本棚ですね!」
エクリアさんが本棚に向けてライトニングサンダーボルトを放ちます!
稲妻の閃光が暗い地下室を迸り、本棚を直撃しました!
「よし! 今だ!」
ライノセラスさんがノーマルソードで本棚に突撃しました! 一気に本棚を吹き飛ばすと、続けてノーマルソードで叩き壊します。
本棚が破壊されると、ポルターガイストは再び、霧のような正体を冒険者達に晒しました。
「‥‥これが本体か」
ウォルフガングさんがポルターガイストを捉えると、手にしたシルバーナイフで攻撃を仕掛けます。その攻撃は霧のような姿でも、確かに手応えがありました。
「あなたに怨みはありません。ただ、あなたの存在が害となっている以上‥‥倒します」
続けて、柳明さんが連続で切りかかります。しかし、柳明さんの攻撃はなかなか本体を捉えることができず、攻撃は1発しか命中しませんでした。攻撃を受けたポルターガイストは、ゆらりと北側に移動しようとします。
「次に移るつもりですか、逃がしませんよ」
柳明さんが追撃するも、なかなか素早いポルターガイストはそれを振り切りました。
テーブルに乗り移ったポルターガイストは、上に乗っていた食器やナイフを周囲に飛ばし始めます。
「危険だ! 下がれ!」
ライノセラスさんの声が地下室に響きます。
テーブルの物を飛ばし終えたポルターガイストは、続けてテーブル自身を投げつけようとしました! ガタガタと震えながらテーブルが宙に浮き、狙いを定めます。
「これは危険だな」
ユイスさんは大きな物が飛来し、危険だと判断した為、ホーリーフィールドを展開しようとしました。しかし、彼女の装備では詠唱に支障がでます。その為、シールドソードを外して詠唱しなければならなかったのですが‥‥魔法が発動する前にテーブルが無防備な彼女目掛けて飛来して来るのです!
「きゃぁ!」
テーブルはユイスさんを直撃し、彼女は怪我を負いました。
「ユイス! 大丈夫か!」
「すぐに手当てをします!」
ウォルフガングさんが床に倒れたユイスさんを心配すると、藍那さんが駆けつけてリカバーで治療します。
「‥‥許さん!」
憑依する物を全て失い、地下室に浮かぶポルターガイストへウォルフガングさんが怒りを込めてソニックブームを放ちます。ハーヴェイさんも狙いを定めて銀の矢を撃ちました。
「これで‥‥消えろ」
コバルトさんもブラックホーリーを、エクリアさんも再びライトニングサンダーボルトを撃ち込みました。魔法によって徐々にその動きが鈍ってきたポルターガイストに、ライノセラスさんが剣を振り下ろします。この攻撃は外れましたが、続けて切り掛かった柳明さんによって危険な「同居人」は姿を消したのでした。
*
「お疲れ様でした〜。ご飯が出来てますよ〜」
地下室から戻った冒険者達を、奥さんが暖かく迎えてくれました。
緊張が解れると、冒険者は体が冷えていることに気がつきます。地下室は結構寒かったのでした。
「はい、どうぞ〜」
広間には冒険者達を労う為に、食事が用意されていました。奥さんの得意な野菜スープです。
食事を頂いた冒険者達は身も心も温かくなりました。こうして、冒険者達は次の冒険に向けて英気を養ったのでした。