【救出作戦】にゃんこを救えっ!
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■ショートシナリオ
担当:えりあす
対応レベル:1〜3lv
難易度:やや易
成功報酬:0 G 78 C
参加人数:4人
サポート参加人数:-人
冒険期間:01月11日〜01月18日
リプレイ公開日:2005年01月18日
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●オープニング
――昼下がりの学生食堂
「あっ! このドロボウ猫っ! まてぇ!」
お昼頃、ケンブリッジの学生食堂での出来事でした。
どこから入ってきたのか、黒いにゃんこが男子生徒が食べようとしていたごはんをパクッと口にくわえて逃げようとしたのです。
男子学生が捕まえようとしましたが、すばしっこいにゃんこはそれを振り切って外に逃げ出しました。
「くそっ! 絶対捕まえてやるからなっ!」
男子生徒も外に出てにゃんこを追いかけます。
逃げるにゃんこを追いかけて通りを抜け、細い路地裏に入ると、そこは行き止まりでした。
ここに入ればにゃんこは逃げることもできません。
「このドロボウ猫めっ! おしおきしてやるっ!」
男子生徒が怯えるにゃんこに近寄ろうとしたその時です。
「オイ! 可愛いにゃんこちゃんに何しようとしてんだぁ!」
突然、路地裏に怒声が響き渡りました。
男子生徒が後ろを振り向くと、そこには大きな体の怖そうなお兄さんが立っていたのです。
「にゃんこちゃんを虐めるヤツはオレ様が許さん!」
お兄さんは指をボキボキと鳴らしながら男子学生に近寄ります。
「わぁ! 助けてぇ!」
男子生徒は怖くて逃げ出しました。
でも、お兄さんは彼を追いかけることはしませんでした。
逃げ出した男子生徒を後ろから睨み付けると、すぐににゃんこを抱き寄せて頭を撫でます。
「怖かったでちゅね〜。でも、もう大丈夫でちゅよ〜」
なぜか赤ちゃん言葉でにゃんこに話し掛けるお兄さん。
怖そうなお兄さんがにゃんこを可愛がっているその様子は、とても不思議な光景でした。
「こんな可愛いにゃんこちゃんを虐める輩がケンブリッジにいるとは‥‥これは許す訳にはいかん! オレがにゃんこちゃん達を救うんだ!」
にゃんこを抱きながら、ギュッと拳を固めるお兄さん。
そして、事件はそこから始まったのです‥‥。
――ケンブリッジギルド・『クエストリガー』
北側の森の傍に立てられている平屋の小さな校舎のような建物。
ここは、冒険者やその心得を持つ生徒が一般の生徒では手におえない事件等を小額の依頼金によって請け負い、問題を解決する施設・ケンブリッジギルド、通称『クエストリガー』です。
クエストリガーの室内では、小さな机でケンブリッジの教師と受付係が話をしていました。
「最近、ケンブリッジで猫が行方不明になる事件が起きているんだ。飼い主も心配している。猫を探して事件を解決して欲しい。勿論、解決できるのであれば学園の生徒やケンブリッジに来ている冒険者、誰でも構わない」
教師が依頼内容を書きながら受付係に話し掛けます。
「はい、わかりました。では、いつも通りに依頼として張り出しておきますね」
受付係は教師が書き終えた羊皮紙を確認しながら答えます。
「生徒から噂を聞いたのだが、最近、ケンブリッジに猫を溺愛する暴漢が出没しているらしい。おそらく、そいつがこの事件に関わっているんじゃないかと思うんだ」
「そうなのですか‥‥」
教師の話を聞いて、すぐにメモを取る受付係。
その情報をまとめた羊皮紙を後ろの壁に張り出そうとした時、教師は思い出したように付け加えます。
「そうだ。この依頼は、人命に関わる危険は少ない‥‥猫の飼い主はつらいだろうが‥‥できれば、初めて依頼を受けるような生徒や冒険者に頼みたいんだ‥‥ 少しずつ成長していって、いつかは立派になってもらいたいものだな‥‥」
そう言うと、教師は苦笑しました。
その時、もしかしたら自分の過去を振り返っていたのかもしれません。
そう、誰にでも「最初の冒険」というのはあるのです。
初めて冒険に出る生徒・冒険者の皆さん。
学園都市・ケンブリッジで発生している「にゃんこ失踪事件」を解決して、無事にゃんこを救出してください。
●リプレイ本文
●【救出作戦】にゃんこを救えっ!
「『にゃんこ退治』の依頼‥‥化け猫が相手のようだな。初めての依頼で相手には不足はない! がんばるぞっ!」
友人からこの依頼の事を聞いて参加してくれたヤクゥ・スンマ(eb0592)さんが、拳を固めて気合を入れています。学業が多忙なのでしょうか、みんな集まって相談する時間が取れませんでしたので、今回はヤクゥさんがリーダーとしてがんばります。でも、彼の後ろでは‥‥
「あれぇ〜? 猫を探す依頼ではなかったのでしょうか〜?」
と、レイ・ラヴィナス(ea0793)さんが疑問を持ちます。
「いや? 猫を捕獲するのではないのですか?」
と、シーン・フォレスト(eb0403)さんが呟きます。
「違うぞ! 猫失踪事件の犯人を探して、猫を助ける依頼だ!」
と、アクセス・ディマーナク(eb0517)さんが声を荒げます。
どうやら、依頼の内容を全員がしっかりと把握していないみたいです。
お勉強や部活動が忙しくて依頼の内容をしっかりとケンブリッジギルド・『クエストリガー』で確認する時間がなかったのでしょうけども、依頼の内容を理解して、みんなが解決に向けて相談を行い、一人一人がそれぞれの能力・役割に応じて行動するということは、とても大切な事です。もちろん、依頼が成功しなければ報酬も貰えませんし、成長もできません。
「ん〜、大丈夫かな〜。とりあえず、慎重に猫を探しましょう〜」
「レイさん、その前に装備をしっかりしましょう。もしかすると、危険があるかもしれませんから」
にゃんこの捜索に取り掛かろうとするレイさんに、フォレスト・オブ・ローズの生徒であるシーンさんが装備を整えるように言いました。にゃんこ探しの依頼と思って軽装で来たのかもしれませんが、アクセスさんが言った「犯人」が武装している場合、装備を整えていないと危険な目に遭うかもしれないのです。
「捜索の基本は現場から、だな。猫が失踪したと思われる場所を探そう‥‥猫か‥‥あまり動物は好きじゃないんだけどなー」
「ん〜、猫。猫ねぇ〜」
アクセスさんとレイさんは、あまりにゃんこが得意ではないのでしょうか‥‥ちょっと苦笑いしながらにゃんこ失踪事件の調査に乗り出しました。
*
アクセスさん、シーンさん、レイさんの3人は始めに学生食堂の近くで起こった事件について調べました。アクセスさんが聞き込みをしたところ、この学生食堂の近くでにゃんこを抱きかかえた大柄な男が不自然な行動をしているのが目撃されているようです。どうやら、この男はにゃんこを溺愛しているようで、にゃんこを虐めていた生徒に大声で怒鳴りつけたりしていたという話もありました。
「なるほど‥‥猫を愛するが為の犯行、か。だが、それだけでケンブリッジ中の猫を連れ去るのは許されることでは、ない」
聞き込みで得た情報を整理し、犯人像を絞ったアクセスさんが呟きます。
「兎に角、犯人を追跡してアジトを突き止めなければ、な」
「アジトに猫がいっぱいいたら、包囲しながら捕まえないといけませんね」
シーンさんはアクセスさんの意見を聞きつつ、自分の考えていた作戦を言います。
「でも、どうやって犯人を捜すのでしょう?」
「犯人も猫が好きですから〜、猫を探していたら犯人も見つかるのではないですかねぇ〜」
シーンさんの疑問にレイさんが答えました。
「そうだな‥‥猫を探せば犯人も出てくるかもしれない、な」
アクセスさんも異論は無いようです。
こうして、3人はにゃんこを探す為、周辺を捜索することにしました。
一方、その頃。
「にゃんこめっ! どこだっ!」
ヤクゥさんは、相変わらず依頼を『にゃんこ退治』と勘違いをしているようでした。
左手にロングソードを構え、神経をピリピリさせながら存在しない強敵『化けにゃんこ』を探しています。
しかし、にゃんこはなかなか見つかりません。ただでさえ、ちっちゃくて、すばしっこいにゃんこなのに、失踪事件のおかげで数が少なくなっているのです。捜索は難航しました。
「疲れたなぁ‥‥化かされちゃったのかな」
時は既に夕暮れ。ケンブリッジ中を歩き回って疲れ果てたヤクゥさんは、路地裏の壁に背を向けて座り込みました。そろそろ、夕食の時間です。おなかも減ってきました。
「寒くなってきたし‥‥早く見つけないと!」
気を奮い起こして立ち上がったヤクゥさん。
その時でした。
『にゃぉ〜ん』
「‥‥っ! にゃんこ!」
声‥‥そう、ヤクゥさんが探している敵の鳴き声が聞こえてきたのです。
「ど、どこだっ!」
慌てて探すヤクゥさん。
路地裏の奥に輝く2つの瞳‥‥そこに、にゃんこがいたのです。
『にゃぅ〜ん』
「くっ! にゃんこめ! そんな目で見ても、俺は騙せないぞ!」
ロングソードを握り締め、1歩1歩にゃんこに近づくヤクゥさん。でも、にゃんこのちっちゃな瞳で見つめられると動きが止まってしまいました。敵は「可愛らしさ」という魔法でヤクゥさんを縛り付けたのです。
「オイ! テメェ! にゃんこちゃんに剣を向けるとは許せねぇ! オレ様が成敗してやる!」
その魔法を解いたのは男の怒鳴り声でした。ヤクゥさんが振り向くと、そこには大きな体の怖そうなお兄さんが立っていたのです。
「こっ‥‥こいつは危険と判断した!」
焦りながらロングソードをお兄さんに向けるヤクゥさん。
「どうした! 何かあったのか!」
「大丈夫ですか!」
騒ぎを聞きつけて、他の3人も路地裏に駆けつけてきました。
「仲間がいたのか。ひよっこ共め、まとめて相手してやる! にゃんこちゃんはオレ様が救うんだ!」
お兄さんも駆けつけた仲間を見て、ノーマルソードを鞘から引き抜きます。
「やるというのなら、こちらも全力で立ち向かうまで‥‥」
アクセスさんがお兄さんの大きな胸板目掛けてウォーターボムを発射しました。放たれた水球はお兄さんへ命中し、辺りに水飛沫が激しく飛び散ります。しかし、お兄さんは何事も無かったかのように立っているのです!
「ちょっとは効いたかな。だが、その程度ではオレ様は倒せんぞ!」
ウォーターボムは魔法抵抗できませんが、そのダメージはお兄さんにとってかすり傷程度のものでした。
「あなたが猫を捕まえている犯人ですか!」
お兄さんが剣を手にしたので、シーンさんも右手にロングソード、左手にノーマルソードの二刀流でお兄さんに立ち向かいます。
「ハハハ! どうした? その程度か?」
両手に武器を持っても、シーンさんの装備状態ではロングソードを振るのが精一杯。その攻撃も、お兄さんは易々と避けてしまいます。
「それなら、これでどうですか〜」
続けてレイさんもクルスソードで切り掛かります。
「甘いなっ! それくらいでやられるオレ様じゃねぇ!」
レイさんの攻撃もお兄さんには通用しませんでした。お兄さんがニヤリと不敵な笑みを浮かべると、レイさんのクルスソード目掛けてノーマルソードを叩き付けます。
――ガキィィィン!
「うわぁ〜!」
あまりの衝撃にクルスソードを落としてしまうレイさん。幸いにも武器が壊れることはありませんでした。
「こっ‥‥こいつ‥‥」
ヤクゥさんがお兄さんを睨みながら、間合いを詰めていきます。
「へっ! 掛かってこいよ!」
そんなヤクゥさんの表情を見ながら、お兄さんは挑発してきます。
「くっ! い、いくぞっ!」
「うぉ! コイツ‥‥なかなかやるな‥‥」
ヤクゥさんの剣捌きに焦りの表情を浮かべるお兄さん。なんとか、武器受けで攻撃は回避しましたが、その表情に先ほどまであった余裕はありません。
「効かないのなら、これでどうだ!」
アクセスさんは再びウォーターボムの詠唱をしました。効果が無いのなら最大の力で!‥‥魔法は低いランクで使用すれば失敗することはありません。しかし、最も高いランクで使用する場合、失敗する可能性があります‥‥アクセスさんは、専門ランクでウォーターボムを使用しましたが、覚えたてだった為に失敗してしまいました。
「所詮はその程度! ‥‥ぅお!」
再び、余裕を見せたお兄さんでしたが‥‥その隙を狙って、ヤクゥさんがトリッピング! 足を払われたお兄さんは、見事に転んでしまいました。転倒してしまったら隙だらけです。一斉にお兄さんに3本の剣が突き付けられました。
*
「ここがアジトか‥‥ボロボロの小屋だな」
アクセスさんは、お兄さんから聞き出したアジトの場所へやってきて感想を呟きました。
アジト‥‥と言っても、ただの古い小屋です。
「中に猫がいるのでしょうか‥‥うわっ〜!」
レイさんが小屋の扉を開けると‥‥
『にゃぁ〜ん』
『にゃぉ〜ん』
『にゃぅ〜ん』
同時に、沢山のにゃんこ達が飛び出してきました。
「つ、捕まえませんと‥‥」
シーンさんは素手で捕獲しようとして、にゃんこと追いかけっこをしています。
「これで、猫は開放された。あとは、飼い主の元へ返すだけだ、な」
アクセスさんが言うと、レイさんとシーンさんは笑顔で頷きました。
その頃‥‥
「ううう‥‥今度こそ負けないぞっ!」
『にゃぅん?』
ヤクゥさんは、にゃんことにらめっこをしているのでした。
こうして、みんなのおかげで、にゃんこ失踪事件は解決しました。
ありがとうございました!