【ピックルくんの学園生活】最後の試験

■ショートシナリオ


担当:えりあす

対応レベル:2〜6lv

難易度:難しい

成功報酬:1 G 69 C

参加人数:8人

サポート参加人数:-人

冒険期間:01月29日〜02月03日

リプレイ公開日:2005年02月06日

●オープニング

 ――ケンブリッジギルド・『クエストリガー』
「うわぁぁぁぁ〜ん!! やっぱり、僕には冒険者は向いていないんだぁぁぁ〜!!」
 クエストリガーの室内で泣きながら飛び回っているシフールがいた。
 彼の名はピックルくん。
 まだ、キャメロットなら慰めてくれる友達もいるかもしれないが、ケンブリッジではそんな仲間もいない。
 その様子を受付係は迷惑そうな表情で見ていた。
 彼の入った依頼はことごとく失敗する事で有名だった。
 先日も大事な期末試験の準備依頼で仲間が集まらず、大変な目に遭ったそうだ。
 しかも、試験は赤点。
 この結果がピックルくんの自信を完全に喪失させてしまった。
「お、いたいた。ピッケル、お前に話がある」
 そこへ、ピックルくんが学んでいるフリーウィル冒険者養成学校の担任教師が訪れた。
「ピッケル違〜う! ピックルだい!」
「すまん、すまん。間違えやすい名前だからな」
 ガックリとさらに肩を落とすピックルくん。
「それで、話なんだが‥‥」
 資料を見ながら真剣な表情でピックルくんに話す担任教師。
「ピクルス‥‥お前は残念ながら、このままでは落第確定だろう‥‥そこで、特別課題を与える。これが出来なければ‥‥わかるな?」
「‥‥ですから、ピックルなんですけど‥‥シクシク」
 落第確定と言われ‥‥さらに、真剣な顔で名前を間違われた事にもショックを隠しきれないピックルくん。
「ううう‥‥それで、課題って何?」
「以前、アンデッドが出現して使用中止になった期末試験会場の洞窟があっただろう? 一応、アンデッドが現れた隠し扉は塞いであるものの、忙しくて誰も手をつけていない状態のままになっている。今回の課題は、その洞窟にいってアンデッドを全滅させること。以上だ」
「ひぇぇぇ! そんなの、一人で無理だよぉ〜!」
 課題の内容を聞いて慄然とするピックルくん。試験担当教師の話によれば、目視できただけでも数体のズゥンビが確認できたという。恐らく、それ以上のアンデッドが存在している可能性があるのではないかと予測される。
「別に一人だけとは言っておらん。今回の件に関しては、特別に予算が出ている。流石に定期的に使用される試験会場を危険な状態で放置しておくのも問題があるからな。クエストリガーにも依頼として出しておくので、その一員として依頼に参加し、課題を成功させることだ‥‥失敗すれば‥‥わかるな?」
「‥‥ハ、ハイ」
 小さな声で頷くピックルくん。その時、ピックルくんは心の中で決心した。
(「これがダメなら‥‥僕はもう冒険者引退かな‥‥」)

●今回の参加者

 ea0105 セーツィナ・サラソォーンジュ(28歳・♀・ウィザード・エルフ・ノルマン王国)
 ea0885 アーサリア・ロクトファルク(27歳・♀・神聖騎士・人間・イギリス王国)
 ea2231 レイヴァート・ルーヴァイス(36歳・♂・ナイト・人間・イギリス王国)
 ea6565 御山 映二(34歳・♂・侍・人間・ジャパン)
 ea7095 ミカ・フレア(23歳・♀・ウィザード・シフール・イスパニア王国)
 ea9347 ナスターシャ・ロクトファルク(25歳・♀・ウィザード・人間・イギリス王国)
 ea9951 セレナ・ザーン(20歳・♀・ナイト・ジャイアント・イギリス王国)
 eb0486 グレイス・ストウナー(35歳・♀・ナイト・エルフ・ノルマン王国)

●リプレイ本文

●【ピックルくんの学園生活】最後の試験

「は〜い、出席取りますよ。みんな、いますか?」
 出発前、ケンブリッジで教師をしているグレイス・ストウナー(eb0486)が点呼を取ると‥‥
「「「「「「はーい」」」」」」
 学園で学ぶ生徒の参加者から元気な返事が返ってくる。
「やはり学生には助け合いの精神が大事ですよねぇ。追試がんばりましょうねぇ、ピッケルくん♪」
「まぁ、何だ。一つデカい仕事を成功できれば、それが自信になる。きっと先生も、それを考えてこの仕事を回したんだろうなぁ‥‥そういうワケで、宜しくなピッコロ!」
 魔法学校の生徒であるセーツィナ・サラソォーンジュ(ea0105)とミカ・フレア(ea7095)がピックル・リックルを励ますが‥‥
「名前違〜う! 僕はピックルだい!」
 と、少々ご機嫌斜めの様子。
「今回はピッケル様のお手伝いをすればよいのですね。わたくし‥‥実戦は初めてですが、宜しくお願いしますわ」
「ううう‥‥セレナちゃんまで‥‥」
 丁重に挨拶を交わすセレナ・ザーン(ea9951)。
 だが、真顔で名前を間違われてショックを受けるピックル。
「期末試験の用意は皆大変だから、試験準備の手伝いなんて依頼には集まらないですよ‥‥‥‥えーと‥‥ぴっくるさん」
 暫しの沈黙の後、懐から木簡を取り出してピックルの名前を確認するのはFOR生徒の御山映二(ea6565)。
「‥‥みんな、名前覚えてよね‥‥シクシク」
 名前を覚えてくれない事を嘆く泣き虫ピックルであった。
「全く‥‥忙しいからといって放置して、生徒に押し付ける? 普通」
 魔法学校生徒のナスターシャ・ロクトファルク(ea9347)が担当教師の対応に呆れながら呟く。
「う〜ん。でも、3月にまた期末試験があるから‥‥」
 ナスターシャの愚痴を聞いてニヤリと邪笑を浮かべるピックル。
 確かに生徒に押し付けるのは問題があるかもしれないが、洞窟は今後も期末試験で使用される。
 つまり、事前に試験会場の把握ができるのだ。
 崖っぷちのピックルにとって、これはメリットでもある。
「珍しくナッシュがボクを頼ってくれたし、がんばるぞ!」
「そうですね、がんばりましょう」
 妹であるナスターシャの頼みでキャメロットからやって来たアーサリア・ロクトファルク(ea0885)と、彼女の許婚であるレイヴァート・ルーヴァイス(ea2231)。
 アーサリアは妹の学園での様子を見たいという理由もあってケンブリッジに来たようだ。
「そういえば、スパイ養成クラスのパープル先生から手紙が来ているわよ」
 出発の直前、ギルドの受付係がピックルに手紙を渡す。
「パープル先生から? 何だろ?」
 その手紙を読んだピックルは‥‥まるで命が尽きた蝶のようにひらひらと地面に落ちて‥‥ガクリと膝をついた。
「どうしたのでしょう?」
 疑問に思ってセレナが手紙を読むと‥‥

『頑張って玉砕してきなさいね☆』

 今のピックルにとって破壊力抜群のメッセージが書かれている。
「さすが、パープル女史だぜ‥‥まぁ、気にするなって、ニッケル!」
 ポンと肩を叩くミカであったが、ピックルはさらに肩を落としたようであった。

 *

 試験会場の洞窟まで参加者同士、親睦を深めながら向かう。
「ポッコル君ならきっと大丈夫よ。こんな素晴らしい仲間がいるのですもの。精霊碑文学とか勉強すると、かなり見違えると思うんだけどな」
「はい、グレイス先生! でも、名前違います!」
 ピックルを元気付けようと話しかけるグレイス。
 セーツィナも今までの依頼で経験したことをピックルに聞かせる。

 期末試験の会場となる洞窟に到着した冒険者達。
 レイヴァートを中心に洞窟内での戦術を話し合い、フォーメーションを確認する。
「この依頼はあなたの課題でもあるのだから、わたし達に頼るのではなく、一緒に冒険をする仲間としてあなたが出来る事はやりなさい」
「は、はぁい」
 ナスターシャが不安そうに周りを飛び回っているピックルに厳しく言う。
「でも、僕は何をすればいいの?」
「あら、ピッコロくんも自分の役目があるじゃないですか?」
「そうだね。じゃあ、これをお願いするね」
 にこやかに笑いながらセーツィナが答えると、アーサリアはランタンを取り出してピックルに渡した。
「みんなの役に立つっていうのは、何も戦いに強いだとか、凄い魔法が使えるとか、そんな表面的な事ばかりじゃありません。どんな小さな事でもみんなの助けになる‥‥それだけで充分ですよぉ。その人にはその人にしかできない事がありますからねぇ、ピッカラくん♪」
「陣形が崩れると戦いの方向性が崩れ、連携に支障が生じるからな。しっかりと作戦は聞いておけよ、ニッコロ!」
「だから‥‥名前違うよぉ‥‥」
 セーツィナとミカが助言するも、相変わらずピックルの名前は間違っているのであった。

 洞窟は分岐も無く、ただ奥に通路が続いている。
 セーツィナに借りたランタンを手にした映二とレイヴァートが先頭で奥に進んでいく。
 その後方にアーサリア、中央にセーツィナとナスターシャ、ピックル。
 中央からやや後方にミカ、最後方にセレナとグレイスという配置である。
「通路にモンスターはいないみたいですわ。でも、これは何でしょうか」
 セレナが通路を調べると、所々に木の残骸やロープの切れ端が落ちている。
「試験用の罠だったのかな」
「そのようね」
 2人の教師、アーサリアとグレイスが納得した表情で罠の残骸を見る。
「こんなのが仕掛けてあるんだ〜」
 ピックルはそれらの罠を調べ、次のテストの参考にしようとしている。
 だが、彼が壁際に埋まっているロープの切れ端を調べようと引っ張った瞬間‥‥

 ――ドドドドドッ!

「わぁー!!」
 壁が崩れ、ピックルが土砂に飲み込まれて生き埋めになった。
「たっ、大変ですわ!」
 セレナが慌ててスコップで土砂を除け、ピックルを掘り出す。
「うわぁ〜ん! また失敗だよぉ〜!」
 救出されたピックルはその場でしゃがみ込んで泣き出した。
 どうやら、罠はまだ生きていたようだ。
「今回の課題はアンデッドの掃討ですから気にしないで下さい」
 泣きじゃくるピックルを慰めるレイヴァート。
 もし、これが期末試験だったら‥‥ピックルは確実に落第であったであろう‥‥。

 洞窟の奥に木で固定された扉らしきものがあった。
 これが隠し扉であろう。
 戦いに備え、アーサリアはグットラックを仲間に、映二はオーラパワーとオーラエリベイションを自分に使う。
「レンジャーとしての基礎は習ってるんでしょ? 無理をする必要はないけど、広間への出口付近の様子を見てきて」
 ナスターシャはピックルへ偵察に行く様に指示した。
「こ、怖いなぁ」
 恐る恐る扉の向こうへ入っていくピックル。
 すると、目の前に‥‥
「わぁー!」
 ズゥンビがいた。
 慌てて飛び出したピックルを追いかけ、ズゥンビが扉から這い出してきた。数は8体。
「無理しないでくださいね‥‥」
「これくらい、大丈夫だよ」
 レイヴァートがアーサリアをサポートしながらズゥンビを迎撃。
「‥‥死体が動いちゃ駄目じゃないか‥‥死体は、死んでなきゃ」
 くすりと笑いながら映二が出てきたズゥンビに切り掛かっていく。
 セレナはスマッシュでズゥンビを攻撃。
 ズゥンビは体が腐敗している為、避けるという事が出来ない。セレナは攻撃をスマッシュEXに切り替えてズゥンビを次々に倒していく。
「生徒が怪我しちゃ引率する教師として失格ね」
 グレイスは回避に専念し、迫り来るズゥンビから魔法を使う生徒を身を挺して守る。
 教師に守られた魔法学校の生徒達。ナスターシャはストーンウォールでズゥンビの行動を妨害し、セーツィナはダメージを受けたズゥンビを狙い、専門ランクのウォーターボムで攻撃。彼女の能力では成功率は五分であるが、詠唱は成功。水弾はズゥンビを直撃した。
「てめぇら、全員火葬してやらぁ!」
 ミカはファイヤーボムを撃ち込もうとするが‥‥
「やめなさい! こんな所で使ったらみんな巻き込まれるわ!」
 グレイスが大声で叫んでミカを止める。
 通路の幅は約5m。
 狭い場所で使用すれば範囲の直径が倍になる。
 初級の射程は15m、どんなに後ろの方に撃っても直径が倍の30mになれば確実に被害が及ぶ。
 しかし、ズゥンビは冒険者達によって瞬殺された。
 被害も、レイヴァートとセレナがかすり傷を負っただけである。
「少しの怪我でも戦いに影響があるから、すぐに直すよ」
 アーサリアがリカバーで2人の傷を癒す。

 広間にはいくつもの棺桶が安置されている。
 ズゥンビの姿はもう無かったが、代わりに別の存在が3体。 
 剣と盾を持った‥‥スカルウォーリアーである。
 しかし、多勢に無勢。
 ズゥンビよりも戦闘能力の高いスカルウォーリアーも冒険者達によって掃討された。
 冒険者達は全ての棺桶を調べ、アンデッドが存在しない事を確認する。

 *

「これから先、今回みたいな事があるかもしれませんけど、諦めなければ立派な冒険者になれますよぉ♪ その時は、また御一緒しましょうねぇ、ピーヒャラさん♪」
「また、どっかで会おうな、コロ助!」
「だから‥‥もういいや‥‥」
 試験会場のアンデッドを掃討し、帰還した冒険者達はピックルと別れの言葉を交わす。
 最後まで名前は間違われていたようだが。
「ナッシュは偉そうな物言いだし、高慢ちきに見えるかもしれないけど、本当は人一倍寂しがりやでお人好しだから、よかったら仲良くしてあげてね」
 アーサリアが優しくピックルにお願いすると、その様子を見ていたナスターシャはプイと明後日の方向を向いた。

 全員の活躍によって依頼は成功した。
 自信を取り戻したピックルは、再びケンブリッジで学業に励む事となる。
 どこかで彼を見かけたら‥‥声を掛けてやってほしい(あまり虐めないでね)。