赤き翼の盗賊団
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■ショートシナリオ&
コミックリプレイ プロモート
担当:えりあす
対応レベル:2〜6lv
難易度:普通
成功報酬:2 G 38 C
参加人数:6人
サポート参加人数:-人
冒険期間:02月10日〜02月19日
リプレイ公開日:2005年02月17日
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●オープニング
「そろそろ日が沈む頃だなぁ〜。森は薄暗いと不気味で怖いから、早く抜けよう」
白い息を吐きながら、森の細い道を足早に駆けていく旅人。
日は傾き、徐々に森は闇に飲み込まれていく。
自ら奈落の穴に飛び込んでいくような気分を感じながら、旅人は先を急いだ。
「ここの分かれ道を左に行けば、もうすぐ彼女のいる村に着くな」
森の分かれ道の分岐に立ちながら旅人はホッと胸を撫で下ろす。
ここまで来れば、目的地まであと少しだ。
日が沈む前に村に到着できるであろう。
森を迂回して遠回りすれば安全なのだが、早く愛すべき人の元へ行きたい。
そう思って、深淵に臨むが如く、森の道を抜けるルートを選んだ。
夜になれば危険は増す。
だが、それまでに村へ辿り着けそうだ。
再び、力強く歩み始めた旅人。
だが、彼が歩くたびに聞こえてくる別の足跡。
「な、何だ!」
慌てて立ち止まって後ろを振り向く。
足音は消えた。
背後には誰もいない。
「こ、怖いなぁ」
今度は走り始める旅人。
彼の走りに合わせて、複数の足音が静寂な森から聞こえてきた。
やはり、何者かが後を追いかけて来ている。
「わ、わ、うわぁ〜」
何時の間にか口からは悲鳴が出てきた。
走りながら後ろを振り向く。
2人? 3人?
正確な数はわからない。
いくつかの人影が追いかけてくる。
そして、正面を向いた瞬間‥‥
「いくぞ! クロスラインだ!」
「おう!」
旅人の目の前に赤いマスクと翼のようなマントを羽織った存在が2人。
2人はお互いにロープを握っており、旅人の首を目掛けてそのロープを引っ張る。
全速力で走っていた旅人は止まることができず、見事にロープが首に引っかかった。
「ゴホっ!」
倒れた旅人の周りを赤いマスクの存在が囲んだ。
同じマスクとマントをした存在が7人いる。
「我々は『レッドウィング団』だ。命が欲しければ、金と荷物を置いていけ。さもなくば‥‥」
旅人の首筋にロングソードの刃先が突きつけられた。
「は、はい! 命だけは助けてぇ〜!」
旅人は荷物と財布を地面に置くと、速攻で逃げ出した。
影は追ってこなかった。
*
――キャメロット・冒険者ギルド
キャメロットから4日ほど北に向かった場所にある森に盗賊団が出没しているようだ。
盗賊団は赤いマスクと翼を模したマントをしており、自らを『レッドウィング団』と名乗っているらしい。
報告によれば、数は7人。
被害に遭っているのは皆、気の弱そうな旅人ばかりで、強そうな旅人や冒険者が襲われたという話は聞かれない。
まるで、弱者を痛振るゴブリンのような盗賊団だ。
この依頼を受領した冒険者は可及的すみやかに盗賊団が出没する森へ向かい、この卑劣な盗賊団を撲滅せよ。
●リプレイ本文
●赤き翼の盗賊団
「トラップはこんなもんでいいかなァ‥‥」
「そうだな‥‥こんな簡単なものでも、暗くなればわかりにくい筈だ」
僅かな日差しが射し込む静寂な森の中で、黙々と作業をする人影があった。
作戦を展開する地点で罠を設置しているのはルカ・レッドロウ(ea0127)と来生十四郎(ea5386)。
明るいうちに森へ到着した彼らは周辺を調査し、盗賊団を包囲する地点に罠を仕掛けている。
罠は樹と樹をロープで結んだり、草を結って足を引っ掛けるといった簡単なものであった。
「では、そろそろ待機しておかないとな。後は頼んだぞ」
「任せておきな」
十四郎は囮担当に装備を渡すのと盗賊団を包囲する為、待機地点へ向かった。
「少し余裕があるから、落とし穴でも掘っておくか」
スコップを手に落とし穴を掘り始めたルカ。
「がんばってるわね☆」
森の探索から戻ってきたセクスアリス・ブレアー(ea1281)が作業をしているルカの背中に抱きつく。
「働いている男の後姿ってス・テ・キよ☆ それに‥‥ルカさんって、私のタイプだし」
「積極的なお嬢さんだな‥‥でも、続きは仕事が終わった後に‥‥」
ルカがそう言うと、セクスアリスはさらに強く彼を抱きしめた。
セクスアリスのふくよかな胸と甘い吐息を感じ、ルカは息を呑む。
「じゃあ‥‥」
セクスアリスが耳元で囁く。
そして、そっと唇をルカに近づけ、ゆっくりと目を閉じた。
「ま、待てよ‥‥」
ルカは思わぬ展開に緊張しつつも、これはチャンスとばかりにセクスアリスの肩を抱き、そっと彼女へ顔を近づける‥‥
「わー! あんたら、こんな所で何やってんねん!」
が、そこへ、偵察中だったイフェリア・アイランズ(ea2890)が通りかかった。
今、2人がしようとしていた行為を目の当たりにし、イフェリアは顔を紅潮させる。
「あ〜ん。折角、イイところだったのにぃ〜」
「そ、そんなことしとって『レッドうんちく団』やらが現れたらどないすんねん!」
「カップルの振りをすれば、盗賊団も怪しまないかなって☆ それに、狙われるのは弱そうな人だけでしょ? ルカさんは強そうだから大丈夫よ」
「あかん! あかん! あかんっ! ちゃんと、仕事しぃや!」
イフェリアの説教にむ〜っと小鼻を膨らませるセクスアリスであった。
「仕方ないわね‥‥盗賊団を倒した後で楽しみましょ☆」
「あぁ‥‥ロイヤルな夢を見せてあげるよ‥‥お嬢さん」
セクスアリスはルカにウインクすると、再び探索へ戻った。
*
「何か不気味だね‥‥オバケが出そうで怖いねー」
「そうね。早く、この森から抜けたいわね」
日が暮れて、森も暗くなる頃。
チップ・エイオータ(ea0061)とタチアナ・ユーギン(ea6030)は、姉弟を装って道を歩いていた。
2人が囮となって、盗賊団を誘き寄せる作戦である。
チップが周囲に気を配りながら歩いているが、特に盗賊の気配は無い。
予定通り、包囲地点に到着した2人。
「あ、ご飯食べたお店に大事なお守り忘れちゃった」
「あら、忘れ物? ここで待っているけれど、心細いから早く戻ってきてね」
チップがわざと大きな声でそう叫ぶと、タチアナに荷物を預けて今来た道を引き返していく。
その頃。
近くの茂みの中では‥‥
「なぁ‥‥本当にあの親子を狙うのか‥‥何か、かわいそうだよ‥‥」
「俺達は『レッドウィング団』だ! 心を鬼にしろ! ‥‥と、言っても、女子供を狙うのは気が引けるなぁ‥‥」
小声で何やら相談している影があった。
赤いマスクとマントの盗賊‥‥『レッドウィング団』だ。
「ね、ねぇ‥‥他の人にしない?」
「で、でも‥‥」
盗賊は躊躇していた。
「もしかしたら、あれが『レッドウインク団』やろか‥‥」
上空から周囲を見張っていたイフェリアが盗賊を発見した。
今にもタチアナを襲いそうな様子ではあるが、盗賊は行動に出ない。
そのような状況に疑念を浮かべるイフェリア。
「作戦でもあるんやろか‥‥すぐに仲間に連絡せんと‥‥」
イフェリアは急いで盗賊が現れた事を仲間へ知らせに行った。
「敵が現れたか。俺達もすぐに向かわないとな」
「そうだね、十四郎にーちゃん。タチアナさんに何かあったらマズいしね」
十四郎と彼から弓矢を受け取ったチップは、イフェリアから盗賊が現れた事を聞き、すぐに包囲地点に向かう。
*
――ガサッ
「あら?」
茂みの方から聞こえた音に反応してタチアナが振り向く。
「チップ? 随分早いわね‥‥え? 誰!?」
振り向いた彼女が見たのは‥‥赤いマスクを被り、羽根を模したマントを羽織った盗賊であった。
「我々は『レッドウィング団』だ。手荒な事はしたくはない‥‥大人しく、荷物を置いていけ‥‥」
ロングソードを手にした‥‥恐らくリーダーであろう‥‥盗賊が近づいてきた。
後ろには6人の同じマスクとマントをした盗賊を従えている。
「あなた達。こんな大勢で弱い者を狙うなんて、恥ずかしいと思わないの?」
タチアナが盗賊のリーダーを睨む。
「子を思う母の気持ちはよくわかる‥‥だが、我々もこれが仕事だ‥‥悪く思わんでくれ‥‥」
盗賊のその言葉にタチアナは‥‥憤激した。
「ち、ちょっと‥‥誰が親子ですって!?」
「ひ、ひぇ〜」
「よし、今だ!」
タチアナの癇癪声に驚いた盗賊の隙を突いて、包囲組が飛び出した。
「レディを襲うとはいただけないねェ‥‥」
ルカが盗賊のリーダーへ飛び掛った。
「俺の間合いに入ったな‥‥いくぜェッ! ―緋燕―ッ!」
跳躍しつつ、右回りの回転を利用して抜刀し、盗賊リーダーを薙ぎ払う。
「ひぃ〜! こいつら、強そうだ!」
早くも盗賊は逃げ腰となった。
「逃がしはせんぞ‥‥」
盗賊の前に立ちはだかる十四郎。
ディザームで盗賊の短剣を叩き落とし、捻じ伏せる。
「くぅ! 大丈夫か!」
「あ! 十四郎にーちゃん、危ない!」
十四郎に襲い掛かろうとする盗賊へ、チップが咄嗟に矢を放とうとした。
しかし、チップの体力ではショートボウでクイックシューティングを行う事は出来ない。
戸惑うチップ。
危険が迫る十四郎。
だが、その危機を救ったのはイフェリアだった。
「これでも喰らいぃ!」
イフェリアの上空からの急降下跳び蹴りが盗賊の顔面を捉えた。
「うぎゃー」
格闘初心者のイフェリアだが、盗賊も避けに関しては初心者である。
彼女の見事な蹴りを喰らい、遅れて放たれたチップの矢を受けて倒れた。
「うわぁ〜! ママー!」
背を向けて逃げ出す盗賊。
「そっちは行き止まりよ」
タチアナはファンタズムで逃げ道に幻影の岩を作り出し、盗賊を罠の設置してある道に誘導した。
――ぐわぁ!
暫くすると、罠に引っ掛かった盗賊の悲鳴が聞こえてきた。
「悪い事するからこうなるのよ。それじゃ、出血大サービスでキツく縛ってア・ゲ・ル☆」
罠に掛かり、蹲っている盗賊を秘技のロープワークで縛りつけようとするセクスアリス。
だが‥‥
「あー! ロープ忘れてきちゃったぁ!」
素っ頓狂な声を上げる。
縛り付けようにも、肝心な縄がなければどうしようもない。
仕方なく、ロングソードを突きつけて降伏させた。
*
「「「「「「「本当にすみませんっ!」」」」」」」
冒険者によって成敗された『レッドウィング団』は武装解除され、一列に並んで地面に正座させられた。
「ふざけた盗賊団だぜ‥‥弱者ばかり狙うなんてな」
ルカが盗賊のリーダーへ鉄拳を下す。
「それで‥‥この盗賊さん達をどうするの?」
「十分、反省しているようだしな」
タチアナと十四郎が頭を下げている盗賊を見た。
「せやけど、悪い事したんやから役人のとこにしょっ引いて、一から根性叩き直してもらわなあかんな!」
「ひぇ〜」
イフェリアの怒号に盗賊は情けない悲鳴を上げる。
「折角だから‥‥どんなお顔か拝見しちゃお☆」
セクスアリスは俯いている盗賊の顔を眺めると、被っているマスクを剥ぎ取った。
そこから現れた盗賊の素顔は‥‥
「まぁ! イイ男じゃない!」
なかなかのイケメンであった。
思わず、セクスアリスは驚喜の声を上げる。
「じゃあ、こっちも☆」
嬉々としながら2人目のマスクを外すと‥‥
「「「「「「えー」」」」」」
その顔に全員が驚嘆した。
盗賊は同じ顔であった。
3人目、4人目‥‥と、盗賊のマスクを剥いでも出てくるのは、やはり同じ顔。
何と、盗賊団は7人兄弟だったのだ。
「兄弟揃って、どうして盗賊行為なんかやっていたんだい?」
「俺達の村は貧しくて‥‥両親を楽にさせたいと思ってやっていました‥‥」
チップが問うと、盗賊のリーダー(恐らく長男であろう)が涙混じりに答えた。
「俺達じゃ強い人に勝てないから、弱そうな人を狙ってたんです‥‥」
「なるほど‥‥これが弱い者を狙う盗賊団の正体なのね」
タチアナが溜息を吐いた。
「う〜ん、イイ男に囲まれてハーレムね☆ でも、同じ顔ばっかりだと、すぐに飽きちゃうかしら」
セクスアリスは盗賊の顔を撫で回していた。
「な、なぁ‥‥さっきの約束は‥‥」
ルカが尋ねるが、残念ながら今のセクスアリスの眼中に彼は無いようだ。
結局、『レッドウィング団』を名乗っていた7人兄弟は、村に引き渡されて強制労働を課せられる事になった。
「今回はこれで見逃したるさかい、ちゃんとお勤め果たしてきぃや‥‥た〜だ〜し! また悪さしとるとこ見つけたら、鼻から手ぇ突っ込んで奥歯ガタガタ言わしたるからな! よ〜く覚えときぃ!」
極上の笑みを浮かべながらイフェリアが兄弟に告げる。
再び、彼らが盗賊行為をすることはないだろう。
刑期を終えれば、彼らは村の為‥‥そして、両親の為に一生懸命に働く事であろう‥‥今までの罪を償いながら‥‥。