【ピックルくんの学園生活】愛を届けて
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■ショートシナリオ
担当:えりあす
対応レベル:フリーlv
難易度:普通
成功報酬:0 G 39 C
参加人数:8人
サポート参加人数:-人
冒険期間:02月15日〜02月18日
リプレイ公開日:2005年02月23日
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●オープニング
「あぁぁぁ‥‥忙しいっ! もうすぐ、バレンタインなのに、彼氏に会えないなんて!」
周囲の冷めた視線も気にせず、叫んでいる女性がいた。
彼女は非常勤講師のベリンダ先生。
「先生ー! 何でキレているの?」
そこへ、たまたまフリーウィル冒険者養成学校の生徒であるピックル・リックルが通りかかり、彼女へ声を掛けた。
賢明な他の生徒のように、無視していればよかったものを‥‥
何でも首を突っ込みたがる性格がピックルをそうさせるのか、自ら災禍の中へ飛び込んでいく。
「ピー助! いいところにいた! ちょっと、頼み事があるんだ!」
「僕はそんな名前じゃないやい! ピックルだよ!」
「あぁん? 誰に向かってそんな口聞いてんだ! いつも、ピーピー泣いているからピー助だろっ!」
「ひ、ひどい! 鬼! 悪魔!」
「悪魔? それは、わたしにとって最高の褒め言葉だよ!」
「わー! 本物の悪魔だったんだ!」
「うるさいっ! 羽根引きちぎるぞ!」
(ベリンダ先生の暴走が収まるまで時間を要したので省略させていただく)
「で、彼氏にバレンタインカードとプレゼントを渡してきて」
「そんなの、自分で渡せばいいじゃないですか!」
「忙しくて、ケンブリッジから出れないから頼んでいるんじゃない! 嫌って言ったら、ピー助を受け持った時、課題倍増だ!」
「うわぁ〜ん! 邪道! 外道! 非道!」
結局、ピックルはベリンダ先生の頼みを聞くことになった。
「で、プレゼントって何?」
「コレ」
と、大きなバックパックをピックルに渡すベリンダ先生。
中にはかわいいリボンの付いた箱や大量のお酒等が入っている。
「ち、ちょっと! こんな重い荷物持てないよ!」
「飛べないだけで、歩くことはできるだろ! ちゃんと、持って行けよ。場所はここだ」
「シフールに歩いて行けって言うの! 本物の悪魔だぁ!」
「ピー助が弱いから訓練も兼ねているんだよ!」
「ひどいよぉ! うわぁぁぁーん!」
結局、有無を言わさずベリンダ先生のプレゼントを運ぶ事になったピックルである。
「こんなの僕だけで無理だよぉ〜‥‥仕方ないや。クエストリガーで手伝ってくれる人頼もう‥‥」
ピックルは荷物を引きずりながらケンブリッジギルド・クエストリガーへ向かった。
彼がクエストリガーに到着したのは日が沈む直前であったという。
●リプレイ本文
●【ピックルくんの学園生活】愛を届けて
「このケンブリッジでは混血種にも学業を受けさせているという話だな。酔狂な事だ」
コロス・ロフキシモ(ea9515)がケンブリッジの街並みを眺めながら呟く。
「こちらの武闘大会参加までの小金稼ぎと思って依頼を受けたが、本当に簡単な依頼しかないようだな‥‥」
クエストリガーに着いたコロスが、依頼主であるピックル・リックルに向かって話しかけた。
「おぬしが依頼人殿か。よろしく‥‥」
「よ、よろしくね‥‥」
「今日は配達のお仕事で伺いました、月白兎です。お取り扱い品は、割れ物ですか? 生ものですか?」
時を同じくして、月白兎(eb1017)がクエストリガーへやって来た。
皆に明るく挨拶を交わし、営業スマイルでピックルに微笑みかける。
「あ、荷物はあれだよ」
「はい、かしこまりました!」
ピックルがクエストリガーの奥にあるテーブルを指すと、そこにはバックパックが置いてあった。
「これが、プレゼントなのですね‥‥」
エリス・フェールディン(ea9520)がその荷物を見て、何やら思案する。
「‥‥錬金術を極めれば、きっと力の弱い者でも重い荷物を運べるようになります。ピックルくんも錬金術を学べば、これくらいの荷物だったら自分で運ぶ事が出来るかもしれません。是非、私と錬金術を勉強してみませんか?」
「え〜! そんな難しいことわかんないよぉ!」
エリスはピックルを錬金術の道へ勧誘する。
「なるほど、バレンタインの贈り物は量も決めてなのか?」
榎本司(ea5420)がバックパックの中身を見て頷く。
中に入っているのは、リボンで可愛らしく包まれた箱と大量のお酒。
「そうじゃないと思うけど‥‥あの人、相当な酒乱だから‥‥」
ピックルが言う。
あの人とは‥‥この荷物を押し付けたベリンダ先生である。
「ベリンダ先生も酷なお方ですね。これだけの荷物、シフール一人では何日かかることか‥‥」
と、バックパックを中身を確認しているラス・カラード(ea1434)。
「あ、挨拶がまだでしたね。初めまして、ピックル君。フォレスト・オブ・ローズ所属のラス・カラードと申します」
「私はリン・ミナセです。この荷物‥‥じゃないですね。ベリンダ先生の愛を無事に届けましょう」
ラスと司の傍にいたリン・ミナセ(ea0693)がピックルに挨拶をした。
「シフール便も、このくらい重い物が色々と送れるようになるといいよね」
ピックルと同じシフールのミル・ファウ(ea0974)が外からやって来た。
「シフールに必要なのは、やっぱり機転と工夫よ。重い荷物だって、驢馬がいれば運ぶのに苦労しないし。人の世界は私達の規格を考えてくれないんだから、私達で合わせないと」
ミルがクエストリガーの外へ視線をやった。
ピックルが窓から外を見ると、そこにはミルの愛馬であるドンキーがいた。
「この驢馬ね、パックルって言うんだよ」
「へぇ‥‥いいなぁ〜」
ドンキーに興味を持つピックル。
「ピックルくん、初めまして。僕は先日、魔法学校に入学しましたアルカーシャ・スタンスラヴァと申します。よろしくお願いします」
丁重にピックルへ挨拶をするアルカーシャ・スタンスラヴァ(eb1145)。
「‥‥生徒でも依頼ってできるんですね」
「うん。生徒はみんなで協力しないとね」
「それにしても、何と言うか‥‥この荷物をギルドまで運んだ時点で褒めたい気がします」
アルカーシャが感心しながら言う。
ベリンダ先生の試練でもある、この届け物。
クエストリガーへ運ぶだけでも、ひ弱なピックルにとってみれば大変な事なのである。
「荷物は均等に配分しましょう。それではお配りしますよ、皆さん」
ラスが荷物を仲間に配った。
「力仕事には慣れている。任せるがいい」
コロスは片手で楽々とバックパックを持ち上げる。
「では、がんばってベリンダ先生の愛を運びましょう♪」
「期日通り、しっかりと配達いたします」
リンと白兎も『愛』を届ける支度を整え、出発の準備は万全。
こうして、彼らの冒険が始まった。
*
ベリンダ先生の彼氏の村までの道中。
ミルの吹くオカリナの明るいメロディーを伴奏に、一行の足取りも楽しげであった。
「あなたが関わった依頼の報告書を拝見しましたが、本当に良く名前を間違われるのですね‥‥」
「そうなんだよぉ‥‥シクシク」
旅の道中、ラスはピックルの悩みを聞いていた。
ピックルの一番の悩みは‥‥そう、名前をよく間違われる事。
幸い、今回一緒に旅をする人は、しっかり彼の名前を覚えてくれたようであるが。
「そうそう。ピックル君は聖バレンタインの日にプレゼントをもらったりはしていないのですか?」
「そう言えば、届け物をするのも結構だが‥‥バレンタインを恋人と過ごさなくても良いのか?」
ラスと司がピックルに尋ねる。
「こんな仕事押し付けられなかったら、彼女の村に行ってデートするつもりだったのに‥‥シクシク」
「な、何と! 恋人がいるのか‥‥」
ピックルの返事に司はショックを受けた。
残念ながら‥‥今年は贈り物を受け取る事の出来なかった司であった。
「バレンタインと言うと、お菓子を贈りあう日の事ですよね‥‥?」
司の横にいたリンが唐突に尋ねる。
「違うぞ! 昔、聖バレンタインと言う司祭がいたんだ。その頃、戦争の中での結婚は士気を衰えさせるからと禁止されていたそうだ。だが、聖バレンタインはそんな中でも、兵士を秘密に結婚させていたんだ」
教師である司が伝承知識を思い出して、リンに講義した。
「そんな事をすれば当然捕まる訳で、聖バレンタインが処刑された日がバレンタインデーとして、祭りの風習とあいまって、愛を祝う祝祭日として人々に祝われ続けているんだよ。まぁ、でも、お菓子は好きだから‥‥」
と、司はリンに手を差し出した。
「贈り物‥‥?」
リンが司の顔を見る。
「あはは。じゃあ美味しそうなお菓子があったら贈呈しますね♪ どう言うお菓子にしようかなあ‥‥」
と、ポンと彼の手に「お手」をするリン。
「ここでの学業は本当に役に立つのか? 課題など出されて面倒な様に見えるがな」
コロスが尋ねる。
「正直、わかんないや‥‥」
と、答えたのはピックル。
「僕も強くなろうと思ってフリーウィルに入学したんだけど‥‥」
「それは、進むべき道が間違っていたのです。今からでもやり直せます。錬金術を学べばピックルくんも強くなれますから‥‥」
「エリス先生〜! だから、難しい事はわかんないんだよぉ!」
エリスは錬金術の道に引きずり込もうと、ピックルを再び勧誘。
「ねぇ、ピックルくん。ケンブリッジについて教えてもらえないかな? 僕、早くこの街について知りたいんだ」
「僕もケンブリッジに来てから日が浅いので‥‥このあたりの地理には不慣れですから」
白兎とアルカーシャがピックルにケンブリッジについて尋ねた。
「ご、ごめん‥‥僕も正式に入学してから長い訳じゃないから、そんなケンブリッジについても詳しくないんだ」
2人に謝るピックル。
「今度、みんなでケンブリッジの見学とかできたらいいね」
そう言うピックルに頷く白兎とアルカーシャ。
「俺も武闘大会に参加する為、ケンブリッジに来たのだが‥‥」
コロスが振り向く。
「ケンブリッジで培われたものがどれほどのものか‥‥一度手合わせ願いたいものだな」
フェイスガードの奥から鋭い眼差しを向けた。
「ねぇ、ピックル君」
オカリナの演奏を止め、ミルがピックルをドンキーのパックルの元へ呼び寄せる。
「確かに高いかもしれないけど、重い荷物も運べるし、懐いてくれるし、大人しくて賢いし、驢馬がいたらいろいろ便利だよ。ギルドに幾つか依頼を出す事を考えたら、多分そう高くないんじゃないかな」
「うーん。欲しいけど‥‥勉強と一緒に依頼をしてお金稼ぐの大変だしなぁ」
ミルの意見に悩むピックル。
欲しくても、すぐに買えるようなものではない為、仕方が無いであろう。
「あっ!」
会話に夢中の2人を見てエリスが立ち止まる。
そして、魔法を詠唱した‥‥サイコキネシス。
ドンキーから、届け物のお酒が落ちそうになっていたが‥‥遠隔操作でそれを動かし、事なきを得る。
「今のは、力を逆転すると‥‥説明すると長くなるので、今度、機会があったら講義しましょう」
と、エリスは魔法ではないことをアピールする。
*
一行は無事にベリンダ先生の恋人がいる村まで到着した。
「お届け物を配達しに来ました!」
「ベリンダさんから、バレンタインの贈り物です。仕事で会えない分の想いがこのプレゼントの量に出ていますね」
白兎とラスが荷物を渡す。
「ああいう性格の女性とお付き合いができるなら、心が広い方ですよね。多分‥‥」
アルカーシャが呟く。
「元冒険者の教師なので気丈な性格ですが、本当は寂しがり屋なんですよ」
彼氏が微笑んだ。
帰り際、ベリンダ先生の恋人からバレンタインカードを預かった。
「それでは、あなたとベリンダさんお二人にセーラ神の御加護があらん事を‥‥」
ラスが祝福する。
「何はともあれ、全ての恋人たちに幸ある日となるように‥‥そして、来年こそは‥‥」
司はその様子を見ながら、心に誓いを立てるのであった。
ケンブリッジに戻った一行は、カードをベリンダ先生に渡し、これで依頼は終了である。
「少しは重い物を持てる様に身体を鍛える事だな。さらばだ‥‥」
依頼が終わると、コロスはすぐにその場から立ち去った。
「39C、しっかり頂きました! またのご利用をお待ちしてますね」
最後も営業スタイルの白兎。
ピックルにから受け取った報酬を確認し、頭を下げる。
「錬金術を利用した運搬方法は無いものでしょうか‥‥新しいエネルギーを見つけ出すことが可能なら‥‥これは研究が必要ですね」
エリスは今回の依頼を振り返り、何やら思案している様子であったという。