ハーフエルフを脱がす者
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■ショートシナリオ
担当:えりあす
対応レベル:3〜7lv
難易度:普通
成功報酬:2 G 4 C
参加人数:8人
サポート参加人数:-人
冒険期間:03月31日〜04月05日
リプレイ公開日:2005年04月07日
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●オープニング
ある月夜の晩。
その忌まわしき事件は起こった。
「む、娘はどこだー!!!」
「うわぁぁぁぁぁ!」
街路を歩いていたハーフエルフの男性が突然、人間のオヤジに襲われた。
「ひぇぇぇぇぇぇ! 助けて〜!!!」
オヤジは素早くハーフエルフの男に襲い掛かると、衣服を瞬時に剥ぎ取った。
露になるハーフエルフの肌。
「ち、違う! 娘じゃない! 男の体だし、アザもない! 一体、娘はどこに行ったんだ! 『男になりたい』と言って家出しおって!」
オヤジはそう叫ぶと、剥ぎ取った衣服を投げ捨ててどこかへと消えていった。
*
「最近、ハーフエルフが衣服を剥ぎ取られるという事件が多発している」
冒険者ギルドの受付係に依頼の内容を話しているのは‥‥漆黒のローブを纏い、フードを深く被った人物だった。
恐らく、彼‥‥いや、性別は受付係の憶測に過ぎないが‥‥もハーフエルフなのであろう。
そうやって、ハーフエルフ特有の身体的特徴を隠す‥‥不要な情を沸かせない為の自衛手段なのである。
「それで、その犯人を捕まえればいいわけですね?」
「いや‥‥できれば、穏便にキャメロットから追い出して欲しい。犯人は‥‥オレの父なんだ」
受付係が尋ねると、ハーフエルフはそう言った。
「お父さんが犯人‥‥何か理由があるのですか‥‥」
「‥‥オレは冒険者になる為に家出した。こうやって顔を隠しているから、衣服を剥ぎ取って確認しなければわからないからそうしているのだろう‥‥」
ハーフエルフは少し濁して答えると、足早に冒険者ギルドを後にした。
「不思議な方だったな‥‥中性的な感じというか‥‥」
受付係はハーフエルフを見送ると、仕事に戻った。
●リプレイ本文
●ハーフエルフを脱がす者
「‥‥ここの所、変な依頼無かったから油断してた‥‥」
ハーフエルフを脱がすという人物の調査という変な依頼に、激しく落胆の表情を浮かべるサクラ・キドウ(ea6159)。
「まあ、ミリートと同じ依頼に入れたからいいです‥‥とりあえず落ち込んでいても仕方が無いので、聞き込みをしましょうか」
「そうだね、サクラちゃん♪ 酒場とかだったら、人がイッパイいるから何かわかるかもね」
彼女は親しい友であるミリート・アーティア(ea6226)と共に、犯人に襲われたと言う被害者への聞き込みを始めた。
時を同じくして、チップ・エイオータ(ea0061)とオルテンシア・ロペス(ea0729)も、今回の事件についての情報収集をしていた。
主に住宅街や人通りの多い広場等で、通行人に聞き込みをする。
夕方頃。
冒険者達はそれぞれ収集した情報を持ち寄って情報交換をする。
「どうやら、おとーさんは夜に現れるみたいだね」
「そうみたいね。でも、何故衣服を剥ぎ取る必要があるのかしら? ちょっと理由がわからないわ」
チップが収集した情報を話すと、オルテンシアは疑問を浮かべる。
「やれやれ‥‥今度は、ハーフエルフを脱がす変態が相手かよ? 疲れるな‥‥」
そう呟きながらリュイス・クラウディオス(ea8765)は溜息を吐いた。
「今回は囮か‥‥」
「リュイスお兄さんが囮だね。おじさん、上手く来るかな?」
「夜、普通に出歩けばすぐ飛んで現れそうだな‥‥やっぱり脱がされるのか‥‥」
ミリートがそう言うと、リュイスはさらに深く溜息を吐く。
*
その夜。
クレハ・ミズハ(ea0007)は被害が多発しているという場所を中心に巡回をしていた。
「この辺りか‥‥話によれば、犯行時刻は夜だった筈だな」
クレハは周囲を警戒しながら夜の街路を歩く。
巡回経路は、リュイス達の囮班に向かいながら犯人をそこに追い込むようなルートである。
そうすれば、囮に引っかかる可能性が高いと考えた。
同じ頃。
オルテンシアは依頼人と接触していた。
「ギルドや酒場では、いろいろ話しにくい事とかあると思うからね」
フードを深く被った表情の見えぬ依頼人に話しかけるオルテンシア。
「お父様は家出したあなたを探している。それだけなら衣服を剥ぎ取る必要はないはず。顔を隠すものだけ取ればいいのに、わざわざそんな事をするのはどうして?」
「父め‥‥どこで、そんな情報を聞いたんだか‥‥」
依頼人は怒りを含んだ声で言った。
そして、フードを取り、その素顔をオルテンシアへ晒す。
ハーフエルフであることを示す尖った耳。
そして、容姿は‥‥まさに美青年。
「何故、衣服を剥ぎ取らねばわからないのか‥‥それはだな‥‥」
そう言うと、依頼人はローブを脱いだ。
「え!?」
オルテンシアは依頼人の体を見て驚いた。
「お、女だったの‥‥!?」
「そうだ‥‥いや、過去そうだった」
依頼人は女であった。
さらしを巻いて胸を潰し、男性を装っていたのだ。
「オレは男を愛せない‥‥女しか愛す事ができないんだ! だから、女である事を捨て、男として生きていく道を選んだ。父もその事を知ったのだろう。服を脱がして確認しなければならない理由は‥‥」
依頼人は自分の左胸を指した。
そこには少し大きなアザがある。
「これがあればオレだとわかる。だから、ハーフエルフの男を片っ端から脱がしているんだ」
「なるほどね‥‥」
オルテンシアは呆れつつも、依頼人の父がハーフエルフを脱がす理由を理解した。
*
一方。
囮役のリュイスも人の気配の無い夜道を歩いていた。
「おとーさん、来るかなー」
チップは物陰に隠れながら周囲を確認し、気配を探る。
その時。
リュイスの足が止まった。
「き、来たか‥‥」
人影がリュイスへ向かって近づいてくる。
「もしかして、現れたのでしょうか」
「あれが、おじさんなのかな?」
サクラとミリートも立ち止まり、気付かれぬよう相手を確認する。
「お、お前は‥‥」
人影もリュイスを見ると立ち止まった。
「む、娘なのかー!!!」
「うわぁ!」
突然、リュイスへ襲い掛かる人影。
彼は間違いなく、依頼人の父であろう。
「おとーさん! やめて!」
チップは彼の足元に油を投げつける。
すると、依頼人の父は滑って地面に転んだ。
「抑えなくちゃ!」
ミリートとサクラが飛び出す。
チップも逃げることが出来ないように、両足にしがみつく。
「な、何だ! お前らは!」
「わっ!? 暴れちゃダメだよ!? チョット落ち着いて!」
ミリートが宥めるが、依頼人の父は暴れ続けた。
「暴れるんじゃないよ! 大人しくしな!」
チャイ・エンマ・ヤンギ(ea9952)がホイップで暴れる依頼人の父の手を絡め取った。
「何しやがる! 放せ!」
「まだ暴れるか‥‥ならば、目には目を、歯には歯を‥‥」
クレハはクルスソードを握り直した。
そして‥‥
「うわぁぁぁぁー!!!」
夜の街に悲鳴が響き渡る。
クレハは依頼人の父の衣服をクルスソードで切り裂き、自分がハーフエルフに対してどのような事をしてきたのか、身を持って理解させた。
「‥‥五月蝿いので暫く黙っていて下さい‥‥」
尚も暴れ叫ぶ依頼人の父をサクラはスタンアタックで気絶させる。
「‥‥言っておくが、これは大人しくさせる為の手段だからな? 私にそんな趣味はないぞ‥‥」
剣を収めるクレハは、最後にそう呟いた。
「脱がされずに済んだか‥‥」
囮役のリュイスはホッと胸を撫で下ろした。
*
「ほら、キリキリ歩きな!」
ロープで腕を縛られた依頼人の父は、オルテンシアの棲家へと連れていかれた。
「‥‥取り合えず、お二人で納得の行くまで話し合ってください」
サクラが部屋の中に案内する。
そこには‥‥ハーフエルフである自分の子がいた。
「お前は‥‥」
依頼人の父は怒りを顕にした。
「落ち着いて下さい。子供の心配をする親の気持ちはわからないでもないですが‥‥流石にあなたの行動は他人の迷惑になってます‥‥」
「いきなり家出しちゃったら、誰だってびっくりするのはわかるよ。でもね、そうしたのには何か理由があるんじゃないのかな? 落ち着いて話し合えば、少しは相手の事も理解できるよ」
サクラとミリートが落ち着かせようとするが‥‥
「その理由が『男になりたい』など! ‥‥許せるものかっ」
依頼人の父は怒鳴ろうとするが、声を飲み込み、震えた声で言う。
「「「「え〜!!!」」」」
その発言に驚く冒険者達。
「そういう事なの。でも、子供もいつかは一人で生きていかなくてはならない。自分で選んだ道なんだから‥‥そのようにさせても‥‥」
オルテンシアは少々困惑した表情で依頼人の父に言う。
「認めんぞ!」
「まぁまぁ、おとーさん。はい、これでも飲んで落ち着いて」
チップが飲み物を差し出す。
「それで、おとーさんは冒険者になるっていうのは反対なの?」
「当然だ!」
「あれもダメ、これもダメ、では子供は納得しませんよ? 冒険者になって力試しくらいはさせてもいいのではないかしら?」
オルテンシアが口を挟む。
「う〜ん。そういう事はわかんないけど‥‥子供が自分の足で歩き始めたら、それを見守るのが親なんじゃないのかな? 私のお父さんとお母さんは、そんな感じの事を言って冒険者になる事を許してくれたの。だから、それくらいはいいんじゃないかな?」
「いかん!」
ミリートの意見を一蹴する父。
「さっさとしておくれ! あんたらのくだらない内輪もめにいつまでも付き合ってられる程、こっちだって暇じゃあないんだよ!」
なかなか話し合いがうまくいかず、業を煮やすチャイ。
「大体、あんたがキャメロットに居るから親父が事件を起こすんじゃないか! 親父を追い出したけりゃあんたが先に出ていきな!」
「ち、ちょっと、チャイさん!」
チップが依頼人に対してきつく言うチャイを制止しようとするが、チャイはそれでも続ける。
「ハーフエルフだって事を気にしてそんな格好してるから親父が服なんか剥ぐんだよ。私を見てみな、迫害されようが冷遇されようが堂々と胸張って生きてんだよ! コソコソするくらいならはなっから街に出て来んじゃないよ!」
「堂々と‥‥」
チャイの言葉に反応する依頼人。
「それに、親父! ハーフエルフが世間でどれだけ肩身が狭いかなんて、所詮あんたら普通の種族には理解出来やしないんだ‥‥私らハーフエルフなんてぇ種族は他人よりも早く独り立ち出来なきゃ長生き出来ないんだよ!」
そう言い捨てると、チャイは部屋を出て行った。
「わかった‥‥男になるというのは諦める‥‥」
依頼人は小さく父に向かって言った。
「だから、冒険者になる事は認めてくれ!」
*
話し合いの結果、依頼人は『男になる』という事を諦め、その代わりに冒険者となることを認めてもらうという事になった。
父は田舎へ帰り、ハーフエルフが脱がされるという事件はキャメロットから無くなった。
「多分、親父はお前の事愛しすぎて、こんな奇行に走ったんだろ? だったら旅先から手紙でも書いて送れよな? そうすれば、安心じゃないのか?」
リュイスが旅立つ依頼人に言う。
「そうだな‥‥今回はいろいろ迷惑を掛けてすまなかった‥‥」
依頼人は頭を下げた。
「それと、チャイさん‥‥あなたの言葉に胸を打たれた。これからは、堂々と胸を張って生きていこうと思う」
「勝手にしな‥‥」
チャイに礼を述べる依頼人。
「本当にありがとう‥‥」
チャイはそのまま背を向けて帰っていったが、その姿を依頼人はずっと見ていた。
「これからは、女である事を隠さず、堂々と好きだと言おう。必ず、受け入れてくれる女がいる筈だから‥‥」