師匠の槍

■ショートシナリオ


担当:えりあす

対応レベル:3〜7lv

難易度:やや難

成功報酬:2 G 4 C

参加人数:8人

サポート参加人数:-人

冒険期間:04月07日〜04月12日

リプレイ公開日:2005年04月16日

●オープニング

「師匠の仇を‥‥頼む」
 穂先が折れた槍を持った青年の願いはこうだった。

 青年は村一番の槍の使い手という男に師事していた。
 その男が青年の師匠であった。
 だが、先日。
 彼の村がオーガに襲われた。
 オーガは3匹だったそうだ。
 師匠はこのオーガを討つ為、単独で戦いを挑んだ。
 青年も一緒に行くと祈願したが、師匠はそれを却下した。
 仕方なく、青年は師匠の無事を祈った。
 師匠は若い頃、幾多の危険な冒険を乗り越えてきたという猛者である。
 師匠なら必ず‥‥。
 青年は祈り続けた。
 しかし‥‥。
 翌日。
 青年に届けられたのは師匠が戦死したという悲報と、穂先が折られた槍‥‥。
 青年は悲しんだ。
 そして‥‥。
 報復を誓った。
 だが、師匠でも太刀打できなかった相手に自分が勝てる訳がない。
 それなら‥‥。
 昔、師匠もそうだったという冒険者に‥‥。
 青年は冒険者ギルドがあるというキャメロットに向かった。

「村を襲ったオーガを‥‥師匠を殺したオーガを倒して欲しい‥‥」
 青年は頭を下げる。
「話によると、オーガも槍を使うらしい。師匠に教わった槍術‥‥オーガごときに負ける訳には‥‥」
 青年は震えた。
 怒りなのか、恐れなのか‥‥。
 それは、青年にもわからない。

 冒険者達よ。
 この青年と共に、オーガを退治せよ。

●今回の参加者

 ea0007 クレハ・ミズハ(36歳・♂・神聖騎士・人間・イギリス王国)
 ea0210 アリエス・アリア(27歳・♂・レンジャー・人間・イギリス王国)
 ea5301 羽紗 司(41歳・♂・浪人・人間・ジャパン)
 ea5603 ユーウィン・アグライア(36歳・♀・ナイト・ジャイアント・モンゴル王国)
 ea7050 ピアレーチェ・ヴィヴァーチェ(29歳・♀・神聖騎士・人間・ビザンチン帝国)
 ea9244 ピノ・ノワール(31歳・♂・クレリック・エルフ・ビザンチン帝国)
 eb0711 長寿院 文淳(32歳・♂・僧兵・人間・ジャパン)
 eb0835 ロゼッタ・メイリー(23歳・♀・クレリック・人間・イギリス王国)

●リプレイ本文

●師匠の槍

 ――報復
 命を奪った者には死を与え、復讐と為す‥‥
(「師匠‥‥必ず、仇を‥‥」)
 青年は愛用の槍‥‥師匠から譲り受け、修行を共にしてきた相棒を握り締めた。
 幸い、力になってくれる冒険者が集まった。
 これだけの力があれば、オーガなど‥‥。

 羽紗司(ea5301)は村に到着後、青年と共に素早く罠を作り始めた。
「オーガごときか‥‥あまり、そう言う風に言わない方が良い。それが慢心を呼んで、足元を掬ってしまうのだ。武器を手に戦うものは、いずれその武器で死んでしまう事を覚悟しておかないと‥‥向けた刃は、いずれ自分へ帰ってくるからな」
 青年は司の言葉に驚いた。
 まるで、自分の心を読まれているかのような‥‥。
 だが、青年は黙々と作業を続ける。
「‥‥心配ですね」
 長寿院文淳(eb0711)は青年の様子を見て嘆く。
「‥‥仇を目の前に冷静でいられるでしょうか‥‥」
「出来れば、仇を討たせてあげれたらいいのですが」
 アリエス・アリア(ea0210)は文淳と顔を見合わせた。
「君は師匠の残した槍術を受け継ぎ、そして超えなければいけない筈だよ。敵が槍を使うと言っても無理をしてはダメだよ。報復も成長も‥‥総ては生きていてこそ、だから」
 ユーウィン・アグライア(ea5603)は青年を諭す。
「そうですね。師匠はあなたに生きて槍術を伝承して欲しいから、戦いに連れて行かなかったのでしょう」
 そして、アリエスも青年を慰めるように言う。
「敵討ち‥‥か」
 クレハ・ミズハ(ea0007)は苦い表情をしていた。
「青年に止めを刺させるのか‥‥だが、ただ命だけを奪う行為が青年の為になるのか‥‥」

 *

 罠の設置は完了した。
 後は、オーガを誘き寄せるだけだ。
「今日の相手はオーガ君かぁ。相手にとって不足は無しっ! 頑張っちゃうぞ!」
 ピアレーチェ・ヴィヴァーチェ(ea7050)は村人から聞いた前回の襲撃現場付近を警護していた。
「何という事を‥‥。オーガ3匹に一人で挑むとは。村が襲撃されないよう必ず全てを仕留めます」
 ピノ・ノワール(ea9244)も青年の師匠の無念を晴らすことを心に誓い、オーガが現れるのを待つ。
「ピアさん。オーガ戦士は戦闘経験が豊富で、熟練した槍使いでもあります。十分、注意して下さい」
「うん、わかったよ! 気をつけるね」
 ピノからオーガ戦士について説明を聞いたはピアレーチェは元気に返事した。

「来た‥‥か」
 司は3体の巨体を目視した。
 手には槍と金棒‥‥オーガだ。
「現れたようだ。引き付けるぞ」
「こちらも準備は整った」
 司が指示すると、冒険者達はそれぞれ受け持った担当の用意をした。
 クレハは後衛の為にホーリーフィールドを唱える。
「こっちだ。来い」
 司がオーガを誘き寄せる。
 すると、オーガは獲物を見つけたかのように嬉しそうな表情をした。
「舐められているようだな」
 ロングスピアを構え、オーガ達を睨みつけるクレハ。
「よっし。行くぞぉ」
 ピアレーチェも武器を手に取った。
 重武装を身に纏うその凛々しい姿は、まさに戦乙女。
「‥‥さて、オーガが来ましたが‥‥」
 文淳は青年に目をやった。
 彼は槍を構え、少々怯えた様子だった。
「‥‥危険な目に遭わせる訳にはいきません」
 青年を庇うように文淳はオーガを迎え撃つ。
 そして、3体のオーガは雄叫びを上げつつ、冒険者に向かって突進してきた。
 だが、オーガはそれほど知性がある訳ではない。
 冒険者達が設置した罠‥‥泥濘に足を捕らわれ、勢いを失う。
「まとめて現れましたか。状況は不利ですが全力で倒します」
 同時にピノがブラックホーリーを撃ち込んだ。
「村を襲い一人の勇者を亡き者にした報い、思い知れ。滅せよ!」
 オーガは魔法に抵抗出来ず、直撃を受けた。
「‥‥あたしね、君達とは因縁が深いんだ、凶暴なオーグラやトロールとも戦った事がある。だからこそわかる、我が矢にて貫けぬ者無し、ね!」
 そして、待ち構えていたユーウィンが同時に3本の矢をオーガに放つ。
 極めて難しい技であるが、ユーウィは放った3本の矢を全て命中させるという離れ技をやってのけた。
 矢はオーガの胸に深々と突き刺さり、大きなダメージを与えた。
「よし。一気に叩くぞ」
「‥‥いきます」
 クレハと文淳は同時に傷ついたオーガを狙う。
「これでどうだ」
 クレハはフェイントアタックで確実に槍を命中させていく。
 オーガも必死に抵抗するが‥‥傷ついた体で抵抗も出来ず、さらに大きな怪我を受けた。
「さて、オーガと言えどこいつは効くだろ」
 司はもう一方のオーガを相手に、格闘で素早い連撃を繰り出す。
 そして、急所に放たれた一撃はオーガの意識を失わせ、気絶させた。
「あたしが相手だよっ!」
 ピアレーチェは単独でオーガ戦士と向かい合った。
 モーニングスターによる重い攻撃を命中させるが‥‥流石は数々の戦いを潜り抜けてきた戦士‥‥その一撃を受けつつも、槍で反撃する。
 だが、ピアレーチェもその槍をヘビーシールドで防いだ。
 しかし、オーガ戦士はさらに連撃をピアレーチェに放つ。

 ――ガキィィィン!

 金属がぶつかり合う激しい音が響いた。
「これくらい、全然平気だよ!」
 オーガ戦士はたじろいだ。
 目の前にいる人間の女が、自信の槍の攻撃を耐え切ったのだ。
「今です‥‥あの背中、取らせて頂きます」
 アリエスはオーガ戦士に気づかれること無く背後に忍び寄り、背面から矢を放った。
 オーガ戦士の着込んだ鎧の隙間を同時に2本の矢で狙うという、普通では不可能な技‥‥だが、相手に気づかれる事がなければ狙うのは不可能ではない。

 ――グォォォ!

 オーガ戦士の苦痛な悲鳴が上がる。
 その2本の矢で‥‥オーガ戦士は重傷を負った。
 そこへ、さらにピアレーチェの攻撃が叩き込まれる。
 オーガ戦士はよろめいた。

「今です。師匠の仇に止めを!」
 ピノが青年に向かって叫んだ。
「‥‥早く、仇を‥‥」
 文淳は青年を守るようにオーガを引き付ける。
「は、はい」
 青年は槍をオーガ戦士に突き刺した。
「‥‥師匠の仇!」

 *

 冒険者達の活躍により、オーガ達は討たれた。
 そして、青年の願いであった師匠の仇を討つ事にも成功した。
「このまま武術に励めばきっと、師匠は超えられる。慢心だけはするな。常に発展途上、道は長いぞ」
「はい、ありがとうございます」
 司は青年を励ました。
 彼の言葉に青年はさらに修行に励むことを決意する。
「君は‥‥きっと、良い槍使いになれると思うよ。頑張って」
 ユーウィンも優しく微笑みながら青年に囁いた。
「はい。師匠のように強さと厳しさ、優しさを兼ね備えた槍使いになります‥‥」
「その思いを絶やさぬよう鍛錬して下さい。私も負けませんよ」
 青年の決意にピノも応援の言葉を送る。

 冒険者と別れた後、青年は村の裏手にある墓へ向かった。
 村の危機を救おうと単身オーガへと挑んだ村の勇者‥‥自分の師匠が眠る場所。
 青年は墓の前に槍を突き刺した。
「師匠を超える事‥‥それが、何よりの恩返しです‥‥自分は旅に出ます‥‥教わった槍術をさらに磨く為に‥‥」