ピクニックに出かける前に

■ショートシナリオ


担当:えりあす

対応レベル:4〜8lv

難易度:やや難

成功報酬:2 G 88 C

参加人数:10人

サポート参加人数:3人

冒険期間:04月28日〜05月03日

リプレイ公開日:2005年05月13日

●オープニング

「失礼致します」
 その日、冒険者ギルドにやって来た依頼人は入り口で恭しく一礼し、カウンターへと進んだ。
 その依頼人の異様な雰囲気に多くの人が注目する‥‥。
 どこかの屋敷に仕える給仕さん‥‥いや、ただの給仕さんならそこまで注目されることは無いだろうが。
 綺麗な黒髪のロングストレートに目を奪われるが、右目を包帯で隠し、左手も包帯が巻かれていた。
 怪我でもしたのだろうか‥‥。
 しかし、そのような痛々しい雰囲気‥‥と、いう訳でもない。
 どこか、不思議‥‥いや、怪しいという感じの雰囲気がする給仕さんであった。
「お忙しいところ、申し訳御座いません。大変、急なお願いなのですが、宜しいでしょうか?」
「は、はい。それが、ここの仕事ですから」
 周囲の視線も気にせず、給仕さんは丁寧に受付嬢へ依頼を頼む。
「実は、当家のお嬢様がピクニックに出かけたいとおっしゃっています。その為、現地の平原を確認したのですが、そこにモンスターが住み着いているようなのです」
「では、そのモンスターを倒せばよろしいのですね」
「はい。モンスターは数匹のパピヨンとラージアント、ジャイアントマンティスがいました。流石に、これだけの数となると私1人ではどうしようもできませんので、冒険者の皆様のお力をお借りしたいと考えた次第で御座います」
「え!?」
 受付嬢は言葉を失った。
 この給仕さん、モンスターと戦おうとしたのか‥‥。
「パピヨンは綺麗な模様をした羽を持つ蝶ですが、毒の燐粉を周囲に撒き散らします。ラージアントは目視したのは2匹ですが、近くに巣があればもっと沢山の数がいるかもしれません。ジャイアントマンティスは3メートル程の巨大な蟷螂でした」
「は、はぁ‥‥」
 給仕さんの説明にただ頷くしかない受付嬢。
 この、給仕さん。
 やはり、怪しい‥‥。
「それでは、何卒宜しくお願いします」
 深々と礼をする給仕さんを見送りつつ、心の中で思う受付嬢であった。

●今回の参加者

 ea0433 ウォルフガング・シュナイダー(40歳・♂・ナイト・人間・フランク王国)
 ea0728 サクラ・クランシィ(20歳・♂・クレリック・エルフ・フランク王国)
 ea0749 ルーシェ・アトレリア(27歳・♀・バード・人間・イギリス王国)
 ea2681 フーリ・クインテット(20歳・♂・ウィザード・エルフ・イギリス王国)
 ea2699 アリアス・サーレク(31歳・♂・ナイト・人間・ノルマン王国)
 ea2700 里見 夏沙(29歳・♂・志士・人間・ジャパン)
 ea6226 ミリート・アーティア(25歳・♀・レンジャー・人間・イギリス王国)
 ea6278 エミリエル・ファートゥショカ(26歳・♀・レンジャー・エルフ・ロシア王国)
 ea7468 マミ・キスリング(29歳・♀・ナイト・人間・フランク王国)
 ea7487 ガイン・ハイリロード(30歳・♂・ナイト・人間・イギリス王国)

●サポート参加者

楼 風空(ea1717)/ イフェリア・アイランズ(ea2890)/ ヨシュア・グリッペンベルグ(ea7850

●リプレイ本文

●ピクニックに出かける前に

「皆様。お忙しい中、当方の依頼に協力していただきまして、誠に感謝致します」
「へぇ‥‥異国の給仕さんって、こんな恰好なのか‥‥」
 冒険者へ深々と礼をする給仕を、里見夏沙(ea2700)は物珍しそうに見つめていた。
 夏沙は後ろを振り返ると、友人のサクラ・クランシィ(ea0728)とフーリ・クインテット(ea2681)に尋ねる。
「なぁなぁ‥‥こっちの給仕さんって、普段の恰好そのまんまでモンスター退治に行くもんなのか?」
「そうだ。この格好で戦いに赴くのだ」
「へぇ‥‥すげぇなぁ」
 フーリに間違った知識を植えつけられる夏沙であった。
「怪我しているみたいだな。ポーションはいるか?」
「‥‥別に俺のリカバーポーションを漁るのは構わんが‥‥」
 夏沙はサクラの懐を漁ってリカバーポーションを取り出すと、給仕へ差し出した。
「お構いなく。怪我ではありませんので」
「え?」
 給仕の言葉に、手にしたリカバーポーションを握り締めたまま疑問を浮かべる夏沙だった。
「‥‥なぁ、依頼を頼む前に1人でモンスター狩りに行ったそうだが、何か理由があるのか?」
 サクラはレインと名乗った給仕に尋ねる。
「お嬢様の行く先々に危険があれば排除するのが私の役目で御座います」
「やはり‥‥この給仕、只者ではないな」
 彼女の返事にフーリは不敵な笑みを浮かべた。
「ピクニックですっ! お弁当広げて、楽しく‥‥って、今回はそれが目的では無くて、その準備なのですよね」
 ルーシェ・アトレリア(ea0749)が苦笑した。
「春だし、いい天気の日が続いているから、お嬢様がピクニックに出かけたいというのも理解できる。ピクニックが楽しめるよう、しっかり準備しなくては」
 雲一つ無い青空を見上げるアリアス・サーレク(ea2699)。
「是非とも成功させて、今度はピクニックも楽しみたい所です」
「お嬢様は冒険者の方々と話すのを何より楽しみにしておられます。成功したのであれば‥‥是非、ピクニックの方もご参加いただけたらと存じます」
 レインはルーシェに優しく微笑んだ。
「お嬢様がピクニックをご所望か‥‥それにしても、どうしてこんな危険そうな場所を選んだのかな」
「お嬢様は、以前から目的地の景色を見たいと言われておられました。でも、まさかモンスターが出没するようになっているとは思ってもいなかったものでして‥‥」
 疑問を浮かべつつも、仕事は仕事と割り切るガイン・ハイリロード(ea7487)にレインが答える。
「‥‥しかし、そのモンスターと戦おうとしたのか、この給仕さん」
「まぁ、その件は‥‥一先ず置いておく」
 明らかに怪しい給仕ではあるが、ガインとアリアスは気にしない事にした。
「アーティア様。お嬢様よりアーティア様は大切な親友とお伺いしております。今回もお嬢様の為にご参加いただき、ありがとうございます」
「えっ! もしかして、お嬢様って‥‥ミリエーヌちゃんの事だったの!?」
 突然、レインに声を掛けられたミリート・アーティア(ea6226)は驚いた。
 レインはエンフィルド家に仕える給仕だった。
 そして、お嬢様とは‥‥彼女の大切な親友である。
「じゃあ、楽しいピクニックになるように頑張らないと!」
 ますます依頼成功の為に意気込むミリートであった。

 *

「いろんなモンスターがいるそうですわね。本当はじっくりと観察したいところですけども」
 モンスター学士のエミリエル・ファートゥショカ(ea6278)が苦笑した。
「今回はモンスターの排除が目的だからな」
 先頭を歩くウォルフガング・シュナイダー(ea0433)が振り返る。
「どうやら、パピヨンがいるようですね。毒の燐粉を周囲に撒きますので、それを吸わないように口元を布で覆うと良いかもしれません」
「どれほど効果があるかはわからないが、何も対策しないよりはいいだろう」
 エミリエルが仲間にパピヨンについて説明すると、ウォルフガングやガインは燐粉対策用に布を用意した。

 目的地に到着した一行は、真っ先にパピヨンを探した。
 他のモンスターとの戦いの最中に毒の燐粉をばら撒かれると大変である。
 幸い、パピヨンを発見するのは容易だった。
 一見すると普通の蝶であるが、エミリエルの識別によりパピヨンと断定する事が出来た。
「見た目は綺麗だから倒すのは可愛そうだけど‥‥毒のぱらぱらは遠慮だよ!」
 ミリートは矢を放ち、パピヨンを射落としていく。
 そして、サクラのブラックホーリー、ルーシェのムーンアロー、フーリのウインドスラッシュ、ガインのオーラショットで始末されていく。
 パピヨンと思われる蝶は6匹。
 全て駆除は完了した。

「アントを見たのはこの辺りかい?」
「そうで御座います」
 アリアスはレインにラージアントを見た場所を確認した。
「それでは、この辺りを中心に探そうか」
 フーリは探索する場所を絞り、ブレスセンサーでラージアントを探す。
「いたぞ」
 ブレスセンサーの反応を頼りにフーリはラージアントを発見した。
 彼が見つけたのは2匹だが、近くにまだ3匹の反応がある。
 即座にヴェントリラキュイで仲間に報告し、戦闘態勢に入った。
「数が少ないうちに倒してしまいましょう。すぐに仲間が現れるかもしれません」
 マミ・キスリング(ea7468)が魔法のメイス‥‥インセクトスレイヤーを構えた。
「同感だ」
 ウォルフガングも同じくインセクトスレイヤーを手にしていた。
「こいつもあるし、前衛でも何とかなるだろ」
 オーラエリベイションで士気を高めるガインも、リュートベイルを盾に前衛に出た。
「顎には気をつけろ」
 ウォルフガングがオーラパワーを付与したインセクトスレイヤーをラージアントに叩き込む。
 続けてマミもインセクトスレイヤーを振り下ろす。
 この魔法の武器の威力は絶大だった。
 2人の攻撃でラージアントは動きが止まった。
 もう1匹のアージアントと戦っているガインも、リュートベイルで攻撃を防ぎつつ反撃し、夏沙の支援にも助けられて何とか倒すことが出来た。
「気を抜くな。まだ、3匹いるぞ」
 フーリが示した方向から新たに3匹のラージアントが現れた。
「虫が嫌いって訳じゃないけど、あんまりいっぱいだと困っちゃうよ」
 ミリートは先制してシューティングPAでラージアントを狙い、放たれた矢は深く突き刺さった。
「ラージアントは一つの目標に集団で襲い掛かる性質をもっています。気をつけて下さい」
 エミリエルが仲間にアドバイスをする。
「では、私が引き付ける」
 アドバイスを聞き、ウォルフガングが囮となりラージアントを引き付ける。
「非力ではありますが、私も‥‥」
 レインは左手の包帯を外した。
「やはり、只者では無かったようだな」
 フーリが彼女の左手を見て呟く。
 レインの左手は毒々しい程に変色していた。
「十二形意拳・蛇毒手!」
 その左手でラージアントを手刀で攻撃。
 傷を受けたラージアントはその動きが止まった。
「怪我じゃないってこう言う意味だったのか」
 夏沙は感心しつつも、ワスプ・レイピアで動かなくなったラージアントを突き刺す。
 1匹ずつ集中攻撃が浴びせられ、ラージアントは次々と倒れていった。

 2種類のモンスターを倒した冒険者達は最後の敵を探した。
 この敵を探すのも容易であった‥‥。
「うわぁ‥‥おっきぃカマキリ。でも、負けないもん!」
 ミリートがその姿を見て感想を漏らす。
 敵は3メートルはあろうかという巨大な蟷螂‥‥ジャイアントマンティスである。
「下手したら頭からバリボリされちゃいますから頑張らないと‥‥恋人に会えなくなっちゃいますっ!」
 ルーシェが気合を入れると、シャドウバインディングを唱えた。
 ジャイアントマンティスは影を固定され、行動が出来なくなった。
「よし、今だ! 火鳥飛翔!」
 夏沙はファイヤーバードで空へ舞うと、ジャイアントマンティスの背後に回る。
「鎌さえ気を付ければ‥‥」
 オーラシールドでジャイアントマンティスの一撃を警戒しつつ、アリアスはシールドソードでその巨体を切りつけていく。
 背後に回った夏沙もヒートハンドで少しずつジャイアントマンティスにダメージを与え、サクラもブラックホーリーで体力を奪っていく。
「いいタイミングだ。食らえっ!」
 ガインは仲間の攻撃に合わせ、オーラショットを放つ。
 続けて放たれたのは‥‥ウォルフガングのソニックブーム。
「これが止めです!」
 真空刃の直撃を受けたジャイアントマンティスはよろめき、そこへマミのスマッシュが決まった。
 ジャイアントマンティスの大きな体が地へ沈む。
 掃討は完了した。

 *

「ここでピクニックが行われるそうだな‥‥」
 ウォルフガングは平原を見渡した。
 成る程、この辺りは見晴らしも良く、綺麗な花も咲いている。
 ピクニックをするには最適な場所である。
「戦いで荒れた場所とかは無い様だな」
 アリアスも辺りを見回っていた。
 幸い、冒険者達はピクニックを意識して激しく踏み荒らしたりする事は無かった。
「沢山の種類のモンスターを観察する事が出来て良かったです。本当なら、もう少し詳しく調べる事が出来れば嬉しかったのですけども」
 エミリエルが呟く。
「皆様のおかげでモンスターを排除する事ができました。これで安心してお嬢様をピクニックにお連れすることが出来ます。ありがとうございました」
「まだ、何か秘密がありそうだな」
 深々と礼をするレインを見て思うフーリであった。