第13傭兵部隊『死神』
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■ショートシナリオ
担当:えりあす
対応レベル:4〜8lv
難易度:難しい
成功報酬:2 G 88 C
参加人数:8人
サポート参加人数:-人
冒険期間:06月13日〜06月18日
リプレイ公開日:2005年06月30日
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●オープニング
傭兵って言うのは、金で雇われる兵士の事。
だが、世の中には傭兵が強くなり過ぎた為に主従関係が逆転してしまったってパターンがある。
以前、ある領主が雇っていた傭兵団があって、そこの一番下の部隊が『第13傭兵部隊』と呼ばれていた。
この部隊は外国からの流れ者やハーフエルフで構成されていて、領主や他の部隊から忌み嫌われていたらしい。
その『第13傭兵部隊』は『外人部隊』とか『死神部隊』と差別され、真っ先に危険な任務に投入されていたようだ。
しかし、その過酷な状況がヤツらを戦闘のプロへと変えていった。
実力を付けた『第13傭兵部隊』は領主を支配しようとするまでになった。
影響力が強くなり過ぎた『第13傭兵部隊』を他の部隊が潰そうとしたんだが‥‥それは、領地を巻き込む戦いに発展した。
その結果‥‥『第13傭兵部隊』は他の部隊をほぼ全滅させ、領地を荒廃した地へと変えた。
だが、『第13傭兵部隊』も戦力の大半を失い、僅かな生き残りはどこかへと消えていった。
現在、『第13傭兵部隊』はどこにも雇われず、盗賊と同じような行為をしているらしい。
この近くでも被害が出てきている。
商人の荷馬車を奪ったり、村を襲撃して食料を奪ったり‥‥やってる事は盗賊と変わりはない。
この依頼は『第13傭兵部隊』を倒す事。
最近、被害にあった村の近くにヤツらのアジトと思われる廃屋が見つかった。
おそらく、ここを拠点として活動しているのだろう。
このアジトを襲撃してヤツらを倒してくれ。
最後に‥‥相手は盗賊じゃない。
戦闘のプロ集団という事を絶対に忘れるな。
●リプレイ本文
●第13傭兵部隊『死神』
初めに記しておく。
この依頼を受けた者達は何度も冒険を繰り返し、経験を積んだ冒険者の筈である。
だが、その冒険に慣れている筈の者達が、生きていく為の食料を用意せずに冒険に出発するとはどういう事だろうか?
食う物が無ければ、飢えで冒険どころではないであろう?
幸い、今回は仲間が予備を蓄えていた為、最悪の事態は免れる事が出来た。
それでも、キャメロットに戻る途中は食料が足りずに、ソルフの実といった食べられそうなものを口にしなければならない程、悲惨な状況だった。
*
「火攻めで来るとはやるじゃねぇか‥‥まぁ、外に出れば矢の雨だろうしな」
冒険者が放った火矢で廃屋は火に包まれようとしていた。
ここは『第13傭兵部隊』のアジト。
中では落ち着いた表情で傭兵達が話し合っている。
「このままじゃ、丸焼きだな」
「しゃあねぇ‥‥そこにテーブルあるだろ‥‥」
*
「さぁ、盛大に燃やしておくれよ」
チャイ・エンマ・ヤンギ(ea9952)は離れた場所からアジトの様子を静観していた。
仲間が放った火矢がアジトに燃え移る。
だが、敵側に動きは無い。
「出てこないな‥‥」
弓に矢を番え、ケヴィン・グレイヴ(ea8773)は傭兵が燃え盛る廃屋から出てくるのを狙っていた。
火矢を放ち、廃屋から傭兵を燻り出す作戦であるが、傭兵は出てこない。
廃屋は木で建てられた粗雑な造りで、火は思ったよりも早く廃屋を包み込む。
普通なら限界の筈だった。
「煙に巻かれて死んだんじゃないのか」
「ディストロイでもぶっ放してみるか?」
駿馬に乗って待機するデュノン・ヴォルフガリオ(ea5352)とアルフォンス・シェーンダーク(ea7044)が廃屋を見る。
敵に動きは無い。
傭兵はかなり戦闘に熟練した者達だと聞いている。
この程度で死ぬ訳は無いとデュノンも理解していた。
火が回っても出てこないのは、間違いなく傭兵に考えがあるからだ。
駆け引きなのか。
だが、廃屋は窓から煙が立ち込め、外に出なければ危険な状態になりつつある。
「兄さん、この周辺には罠は無いみたいだよ」
「あぁ、わかった」
「手練だからこそ、罠に頼らずとも勝つ自信があるということでしょうか‥‥」
ハーヴェイ・シェーンダーク(ea7059)と壬鞳維(ea9098)は周囲に罠があるか調べていた。
しかし、それらしき物は見つからず、廃屋からも攻撃してくる様子も無い。
ハーヴェイの報告を受けてデュノンはアルフォンスが唱えるディストロイの射程を合わせる為、駿馬を進ませる。
その直後、状況に変化が訪れた。
「来た!?」
レナン・ハルヴァード(ea2789)が盾を構えた。
廃屋の入り口から傭兵が飛び出して来たのだ。
傭兵は矢を防ぐ為にテーブルを盾に突進して来る。
だが、初撃は矢の雨ではなかった。
「来やがったか! じゃぁ、行くぜ!」
アルフォンスとデュノンによるディストロイが突撃してくる傭兵を襲う。
「ぐぁぁぁぁ!」
傭兵達の読みは外れた。
破壊の魔法の直撃を受け、盾となって突撃してきた傭兵は地面に倒れた。
「ち、ちくしょう!」
慌てて体制を整えようとする傭兵に襲い掛かるのは、皮肉にも彼らが意識した矢の雨だった。
「こちらの思う壺だな」
ケヴィンとハーヴェイが防ぐ手段を失った傭兵に矢を射る。
手練の傭兵とて、矢を撥ね返す技術は無い。
ある程度、戦闘で培われた矢を見切る技能はあるかもしれないが、射手の技術がそれを上回れば為す術も無い。
「破壊と混沌の王よ! 我らに仇成す者共を地獄の業火で焼き尽くせ!」
チャイはファイヤーコントロールでアジトの炎を増長させた。
「ぎゃぁぁぁ!」
「オォ〜ッホッホッホッ、骨まで残らず焼き尽くされるがいいわぁ!」
炎は傭兵を包み込んだ。
「死神には死神が相手になんぜぇ!」
駿馬から降りたデュノンが大鎌を手に傭兵へ切り掛かる。
大鎌は矢と火傷で傷つく傭兵を薙ぎ払っていく。
「行っくよ〜♪ 傭兵さん」
ミネア・ウェルロッド(ea4591)はパリーイングダガーで傭兵の剣を捌きながら、ナックルを決めていく。
攻撃を避ける自信がなければ己の格闘技術で受け流せばよい。
ミネアの判断は正しかった。
傭兵の攻撃はミネアの体を触れる事はなかった。
「これでどうかな!」
レナンは動きの鈍った傭兵に長槍で突き進む。
穂先は傭兵の胸に食い込み、それを引き抜くと同時に血飛沫が飛び散る。
「ぐぉぉぉぉ!」
だが、傭兵はその血を見て‥‥狂ったようにレナンへ襲い掛かる。
恐らく、重傷くらいの怪我の筈だが‥‥瞳が赤い。
ハーフエルフ特有の狂化だ。
『第13傭兵部隊』はハーフエルフの傭兵も多いと聞く。
「くっ!」
狂化したハーフエルフは執拗にレナンへ切り掛かる。
一撃は盾で防いだものの、熟練した剣捌きはそれだけで終わらない。
傭兵の剣はレナンの横腹を抉り、刃を紅く染めた。
「死ねぇぇぇ!」
そして、振り上げられた剣がレナンに襲い掛かろうとしたその時‥‥。
「危ないです!」
鞳維が傭兵の脚を払い、転倒させた。
そこへ、素早く頭部へ突きを撃ち込み、傭兵は動かなくなった。
「無理するなよ」
「すまない‥‥助かった」
アルフォンスがホーリーフィールドを展開し、レナンを護衛する。
レナンはポーションを飲み干すと、再び長槍を構えた。
「うーん、しつこいな」
ミネアは受け・捌きを重視し、隙あらばナックルで攻撃を決めるという作戦だった。
だが、ナックルでの攻撃は決定打にはならず、戦いは均衡していた。
「このタイミング‥‥チャンスだ!」
ミネアが傭兵の攻撃を捌いた瞬間、ハーヴェイがそのタイミングを逃さず矢を放つ。
「よーし! こっちもチャンス!」
絶妙のタイミングで放たれた矢は傭兵の胸へと突き刺さり、それと同時にミネアもパリーイングダガーで傭兵の腹を刺す。
傭兵の口から大量の血がこぼれる。
ミネアは虚ろな目の傭兵を殴り倒すと、骨が砕ける鈍い音が聞こえた。
傭兵はそのまま、ゆっくりと地面に倒れる。
冒険者の攻勢に傭兵団は徐々に追い詰められていった。
実力は互角‥‥いや、作戦等を含めれば冒険者側の方が上手であった。
傭兵達の士気は確実に低下している。
冒険者の格闘、射撃、魔法によって傭兵は悲鳴を上げ、倒れていく。
「おまえが傭兵団のリーダーってところか‥‥なかなかやるじゃねぇか」
だが、ただ1人、冒険者と互角以上の戦いをする傭兵がいた。
デュノンと激しくぶつかり合っている『第13傭兵部隊』のリーダーである。
デュノンが振り回す大鎌も盾で受け止め、逆に彼を追い詰めるほどであった。
「それならば、行きますよ‥‥鳥爪撃!」
鞳維は目にも留まらぬ素早い蹴りを放つ。
その素早い蹴りは、盾で受け止めるのが極めて困難であった。
「ぐぉ!」
直撃を受けつつも、リーダーは攻撃の手を緩めない。
鞳維を薙ぎ払おうとするが、鞳維も盾でその攻撃を受け止める。
その直後。
鞳維はリーダーに盾を投げつけた。
不意を突かれたリーダーは体制を崩し、隙を突いて鞳維はナックルでの連撃から頭部へ蹴りを叩き込む。
そこへ、ケヴィンの放った矢が‥‥
アルフォンスの唱えたディストロイが‥‥
そして、デュノンが振り下ろした大鎌が‥‥
冒険者の容赦ない攻撃が『死神』と呼ばれた傭兵団を率いたリーダーを撃ち砕いた。
*
「傭兵団は確か6人でしたよね‥‥」
鞳維が横たわる傭兵の死体の数を確認していた。
「5体しかないんだが‥‥まさか!」
ケヴィンが慌てて周囲を見渡す。
「チッ! 逃げやがったか」
アルフォンスが捜索しようとしたのと同時に、まだ炎上しているアジトの炎が大きくなった。
「逃げる気かい? そうはさせないよ!」
「女が‥‥どきやがれ!」
アジトの裏側では逃亡しようとしている傭兵とチャイが対峙していた。
チャイを振り切ろうとする傭兵だが‥‥
「地獄の深淵で後悔するんだね!」
地獄の業火の如く、増長した炎が傭兵を焼く。
そして、駆け付けた仲間に止め刺され‥‥『第13傭兵部隊』は全滅した。