キミの星に

■ショートシナリオ


担当:えりあす

対応レベル:フリーlv

難易度:易しい

成功報酬:0 G 65 C

参加人数:6人

サポート参加人数:-人

冒険期間:08月11日〜08月16日

リプレイ公開日:2005年08月26日

●オープニング

●ある日の出来事
 夕暮れの港での出来事でした。
 波止場には男と女2人の影。
 男は女の肩を抱き寄せ、甘く優しく呟きます。
「キミと知り合ってから、オレは何か熱いモノを感じていた‥‥そう、それは恋という燃え盛る炎。キミの澄んだ青い瞳にオレの気持ちは吸い寄せられ‥‥気がつくと、オレはキミを愛していた」
「あぁぁ‥‥だ、だめぇ‥‥あたしには恋人がいるの‥‥」
「恋は障害が多いほど燃え上がるのさ‥‥オレはそれ以上にキミを幸せにしてあげる事ができる! 好きだ‥‥だから、付き合ってくれ!」
「そ、そんなぁ‥‥強引に‥‥」
 イヤと言いつつも、ちょっとその気があるんじゃないかという女に、男は猛烈アタックを仕掛けます。
「オレはキミを世界で一番愛している! 今ある幸せは本物じゃない。オレが真実の幸せというものを教えてあげるから‥‥」
「いやぁ、やめてぇ‥‥」
 女に顔を近づけ、尚も甘い言葉で攻める男。
 あと一歩で女は陥落間違いなしという状態でした。
「そう‥‥試練の果てにある真実の幸せ‥‥男と付き合っていては得ることの出来ない快楽‥‥オレは唯一、キミにそれを教える事が出来る!」
「‥‥え!?」
 すると、男はおもむろに服を脱ぎ始めます。
 そこには‥‥
「わぁぁぁぁぁぁ! あんた女だったのっ!」
「そうだ‥‥一緒に本当の愛を‥‥あ、どうして逃げるんだ!」
「いやぁぁぁぁぁ! あたしはそんな趣味なんかないからっ!!!」
 女は逃げ出しました。
 男だと思われていた人は‥‥実は男装の麗人だったのです。

●ギルドにて
「ちょっと、どうにかしてよっ!」
 勢い良く冒険者ギルドの扉を開けて飛び込んできたのはブリジット・キャミル(ez1004)さんでした。
「どうしたのですか?」
「どうしたもこうしたもないっ! あたしはそんな趣味ないからっ!」
 一体、何があったのか受付嬢が尋ねますが、ブリジットさんは大変混乱しているようです。
「うーん、落ち着いてください〜」
 彼女から事情を聞きだすのに苦労する受付嬢でした。

「実はね。最近、ノルマンから来たっていう人と知り合って、キャメロットを案内したりしていた訳なのよ」
 お茶をすすりながら事情を話すブリジットさん。
「その人、見た目はすごくカッコ良くて、背が高くて、性格も良くて、お金も持っているみたいで‥‥女が惚れる要素満載な訳よ!? で、ちょっと仲良くなりたいな♪ って思って‥‥あ、あたしゃ、相方いるからね。あくまでお・と・も・だ・ちとしてよ♪」
「へぇ〜、いいなぁ。今度、紹介して下さい‥‥じゃなくて、それで何か問題とかあったのですか?」 
「そうなのよ! 実はね‥‥告白されちゃったのよ!」
「え! いいじゃないですか‥‥」
「それはもう、嬉しかったんだけど‥‥」
 そう言うと、ブリジットさんはテーブルを『バン!』と叩き、絶叫しました。
「そいつ、女だったのよっっっっっっっっ!!!」

 詳しく説明しますと、ブリジットさんはノルマンから渡って来たという戦士・エトワールさんと知り合い、キャメロットを案内したり、いろいろお世話をしていたそうです。
 暫く付き合っているうちに、エトワールさんはブリジットさんを好きになってしまいました。
 でも、エトワールさんは見た目はすごくカッコ良いのですが、女なのです。
 しかも、恋愛対象は同性。
 つまり、百合。
 ブリジットさんはエトワールさんに強引に迫られているみたいで、助けて欲しいそうです。
 彼女には恋人もいますし、そんな趣味は全くありません。
 どうにかして、エトワールさんをブリジットさんから引き離してください。

●今回の参加者

 ea0356 レフェツィア・セヴェナ(22歳・♀・クレリック・エルフ・フランク王国)
 ea2731 レジエル・グラープソン(29歳・♂・レンジャー・人間・イギリス王国)
 ea3657 村上 琴音(22歳・♀・志士・人間・ジャパン)
 ea5984 ヲーク・シン(17歳・♂・ファイター・ドワーフ・イギリス王国)
 ea9929 ヒューイ・グランツ(28歳・♀・レンジャー・エルフ・イギリス王国)
 eb3277 パティオ・オーランダー(25歳・♂・バード・ハーフエルフ・イスパニア王国)

●リプレイ本文

●キミの星(エトワール)に

「はぁ‥‥本当に災難だわ‥‥」
「ぶりぢっと殿も苦労が絶えぬのぅ」
 ブリジット・キャミル(ez1004)さんは村上琴音(ea3657)ちゃんとキャメロットの街道を歩いていました。
「ホントよ! 何であんなのばっかり近づいてくるのよっ! 最近、相方が冷たいし! どうすればいいのよっ!」
「ブリジットさん、落ち着いてください。慌てていては相手が燃え上がるだけです!」
 かなり混乱気味のブリジットさんを、レジエル・グラープソン(ea2731)さんが宥めます。
「相手は障害があればある程、燃え上がるタイプです。相手から逃げるのは逆効果になるのではないかと思うのです。ですから、次に会う機会があったら、宗教の事や恋人の事を落ち着いてお話される事をお勧めしますです」
 パティオ・オーランダー(eb3277)さんも冷静になるようにブリジットさんへ勧めます。
「落ち着いていられる状況じゃなぁい!」
「まぁまぁ、ぶりぢっと殿。これだけ手を貸してくれる人がいるのじゃから、何とかなる筈じゃ」
 琴音ちゃんもブリジットさんに落ち着くように言いますが、本人はとてもそんな状態ではないようです。
「まずは、自身の気持ちを伝えるべきではないか? そうしなければ、いつまでも纏わりついてくると思うが」
「そうですね。エトワールさんに自分の意思をはっきりと伝えて見る事をお勧めします。それでも、しつこく迫って来ようものならば、他の手も考えますが‥‥」
 ヒューイ・グランツ(ea9929)さんとレジエルさんは、ブリジットさんがエトワールさんに自分の意思を伝える事を勧めます。
「あんなのにもう会いたくないわよっ!」
「大丈夫だよ。少しの辛抱。僕はクレリックだし、その後はちゃんと説法するから」
 嫌がるブリジットさんをレフェツィア・セヴェナ(ea0356)さんが我慢するように説得します。
「それなら、あなたの恋人を呼んでらぶらぶあつあつな所をエトワールさんに見せつけるというのはどうか?」
「うーん。それなら、諦めるかしら」
 ヒューイさんが新たな提案をしました。
 恋人とらぶらぶあつあつ大作戦です。
「かなり効果があると思うぞ」
「じゃあ、相方呼んでこようかしら。あっちの酒場で働いているんだけど‥‥」
 その時です。
 街道の向かい側から、手に花束を持って華麗なステップで近づいてくる人がいました。
「で、でたぁ!!!」
 慌てて逃げようとするブリジットさん。
「あぁ、何故逃げるんだい? 恥ずかしがらなくてもいいじゃないか」
「違〜う!!! 近づかないで!!!」
 そう、この人がブリジットさんを狙っているエトワールさんです。
 エトワールさんはブリジットさんの傍で跪くと、花束を差し出しました。
「ほぅ‥‥これがこの国での愛の表現なのじゃろうか‥‥」
「琴音‥‥これは、完全に間違っているから‥‥ジャパンで『イギリスでは男はこうやって告白してました』って報告しないでよ‥‥そもそも、こいつは女だし」
 琴音ちゃんはまだ『恋愛』というものに詳しくありません。
 ブリジットさんとエトワールさんのやり取りがちょっと気になっていました。
「ジーザス教では、同姓同士が付き合っちゃダメなのは知っているよね。僕はお互いが本気で愛し合っているのなら、同姓でも付き合っていいと思うんだけど‥‥誰にも迷惑かけないんだったらね」
「あぁ‥‥わかっているさ‥‥だが、オレは女しか愛する事が出来ない‥‥だから、迷惑をかけぬように男を装っているんだ。傍から見れば、男女が付き合っている様にしか見えないだろ」
「でも、ブリジットさんは嫌がっているんだよ。無理矢理迫るのは良くないよ」
 レフェツィアさんがエトワールさんに強く言い聞かせます。
「嫌がっている? 違うな。ブリジットは心を閉ざしたままなんだよ‥‥その、扉を開けるのは‥‥オレさ」
 それでも、エトワールさんはブリジットさんにアタックを仕掛けます。
 華麗なステップで近づき、ブリジットさんの顎に手を伸ばし、優しく言葉を囁きました。
「ち、ちょっと! 近づかないでぇ! それに、何でいつもそんな風に迫ってくるのよっ!」
「オレはとある国の劇団でスターダンサー(エトワール)だったのさ‥‥年下の女に手を出して退団になったが」
 ブリジットさんに迫るエトワールさん。
 そこへ‥‥
「ちょっと待て。ブリジットさんにはらぶらぶな相手がいるんだぞ」
 ヒューイさんがブリジットさんの恋人であるジーンさんを連れて来ました。
「そ、そうよっ! あたしにはらぶらぶな相方がいるんだからっ!」
 突然、この場に連れてこられて何が何だかわからず、おどおどするジーンさんに抱きつき、らぶらぶあつあつな所をアピールするブリジットさん。
「二人の仲は本物だ。これ以上、ブリジットさんを追い回すのはやめるんだな」
 ヒューイさんがエトワールさんに二人が本当に愛し合っている事を納得させようとします。
「そうか‥‥だが、オレは諦めない! 必ず、振り向かせてあげよう。そう、オレはキミの星になる‥‥」
 ですが、エトワールさんも諦めが悪いようです。
 そんな状況の中に、突然飛び込んで来た人がいました。
「ああっ! 何て、凛々しい女性なんだ!」
 その人はヲーク・シン(ea5984)さん。
 手にエトワールさんと同じように花束を持ち、彼女へ迫ります。
「な、何だ! オマエは!」
「俺にはわかるッ! 貴女は俺みたいな男性を求めている事がッ!」
「だ、誰がオマエみたいな男なんか!」
「ああっ、冷たい視線が心地良い‥‥その冷たさは、俺の事を思っての事ですね! 何も言わなくて良いです。俺にはわかっていますから!」
「嫌だ! 気色悪い! 近づくな!」
「嫌と言うのも、好きの裏返しってね。やっぱり、俺の事が気になっているんだ!」
 ヲークさんはエトワールさんに付き纏い、次々と口説き文句を言います。
 自分がやっている事を身を持って知ってもらおうと、エトワールさんが嫌がる位にナンパします。
「男同士? 冗談だろ‥‥」
 ヲークさんがエトワールさんを追い掛け回している周りでは、レジエルさんが通りすがりを演じて二人に冷たい言葉を浴びせます。
「男同士で、同性で愛を育むのは不毛なのです〜」
 パティオさんも甲高い声で、周囲に響き渡るように批難しました。
「きゃー! 不潔ー! いやー! 女の敵ー! なのです〜」
 パティオさんの批難に、近くにいた一般の方々もヲークさんとエトワールさんに冷たい視線を送ります。
「待ってくれ! 俺の星(エトワール)よ!」
「く、来るな!」
 ヲークさんの執拗なナンパ攻撃と周囲の非難に折れたエトワールさんは撤退しました。
「ブリジット‥‥オレはキミの星(エトワール)になれないんだね‥‥」
 少し悲しそうな表情で呟くと、エトワールさんは街の中に消えていきました。
「はぁ‥‥助かった‥‥」
 ペタリと地面に座り込むブリジットさん。
「エトワールさんは本当にブリジットさんの事を好きだったんだね。そういうのってよくわからないけど、嫌がる事をするのってやっぱりダメだよね‥‥」
「好きなのはわかりますが、常識と良識を持ってもらいたいものです」
 エトワールさんの背中を見ながらレフェツィアさんとレジエルさんが溜息混じりに言いました。
「追い返した所で解決にはならんのじゃ。さてと‥‥」
 始終を見ていた琴音ちゃんはブリジットさんの手を引っ張り、どこかへ連れて行こうとします。
「どこへ行くの?」
「教会じゃ。一応、私が話を通しておる。また、えとわーる殿がぶりぢっと殿の前に現れるかもしれぬし、そうでなくとも、えとわーる殿のことを話しておけば正しい教義を彼女に説いてもらえるじゃろうしな」
「あぁいうのは、多分無理のような気もするけど‥‥とりあえず、今回はいろいろ疲れたわ。たまには教会で精神を落ち着かせようかしら」
 琴音ちゃんとブリジットさんが教会に向かった頃‥‥
「エトワールさん、なにもこの国でなくてもエトワールさんの好きな女性はたくさんいるのです。ここよりももっと広い場所で女性もOKな女性がエトワールさんを待っているのです‥‥多分。ですから他の国、行ってみますですか?」
 パティオさんは恋に破れたエトワールさんに声を掛けていました。
「‥‥そうだな」
 暗い一言で返すエトワールさん。
「同姓を愛する事は、ジーザス教の教義に反するというのはわかっている‥‥だが、それ故に苦しんでいる者もいる‥‥神はその苦しみを助けてはくれぬのだ‥‥」
 そう言い残すと、エトワールさんはパティオさんの目の前から消えて行きました。