幽霊ちゃんと遊ぼう!

■ショートシナリオ


担当:えりあす

対応レベル:1〜5lv

難易度:普通

成功報酬:1 G 35 C

参加人数:7人

サポート参加人数:-人

冒険期間:11月27日〜12月02日

リプレイ公開日:2006年12月01日

●オープニング

●おともだちがほしいの
 ルゥちゃんは泣いていました。
 そこは、ボロボロになった小屋の片すみ。
 部屋は荒れていて、あるのは割れたお皿とガタガタになったテーブとイス、ボロボロになっているベッドくらいです。
 窓から外を見渡してみると‥‥誰もいません。
 そう‥‥ここは廃墟。
 ひとりさみしく、ルゥちゃんはボロボロな小屋に住んでいるのです。
 さみしさのあまり、いつもルゥちゃんはいつも泣いています。
 でも、こんな誰もいないところでも、お客さんが来てくれることがあるのです。
 それが、ルゥちゃんにとってなによりの楽しみなのでした。
 あ、いま誰かお客さんが小屋にきたようですよ。
「いいところに小屋があったな。こんなボロボロでも休憩するには問題はないな」
「この近くには宿屋もありませんし、ちょうどよかったです」
「本当に助かったな。寒い中、目的地までずっと野宿かと思ったよ」
 お客さんはどうやら3人の冒険者のようです。
 ルゥちゃんはうれしくなって、その冒険者に話しかけました。
「ようこそ! おつかれみたいですね。ゆっくり休んでいってください!」
 冒険者の前にあらわれ、やさしく語りかけるルゥちゃん。
 でも‥‥。
 冒険者のみなさんの表情は強張っています。
 そして、顔を真っ青にしながら叫びました。

「「「うわぁぁぁ! でたぁー!!!」」」

 一目散に小屋から出ていく冒険者のみなさん。
 そんな彼らを最後までみつめるルゥちゃんの目に、また涙があふれてきました。
「そんなぁ‥‥おともだちになりたいのに‥‥」
 そう、ルゥちゃんは‥‥幽霊なのです。

 ルゥちゃんは生まれつき病弱でした。
 体がよわくて、お外に出ることができないから、おともだちはひとりもいませんでした。
 おともだちはママがつくってくれたお人形さん。
 お人形さんのお名前は『フレンディ』と名づけました。
 ベッドから体をおこし、窓の外を見わたすルゥちゃん。
 彼女の目に入ったのは、おなじくらいの年齢の男の子たちが元気にあそんでいる様子でした。
「わたしもお外であそびたいなぁ‥‥」
 ルゥちゃんはいつもそう口にしていたのです。
 でも、病魔は日に日に彼女の体力をうばっていきます。
 そして、体を動かすことも、おしゃべりをすることも、外を見ることもできなくなってしまって‥‥。
 ついに、ルゥちゃんは息を引き取ったのでした‥‥。

 ですが‥‥おともだちがほしいという強い想いが彼女をよみがえらせたのです。
 ‥‥そう、幽霊となって。
 でも、幽霊になることで、病気はなくなりました。
 自由に遊ぶこともできます!
「これなら、おともだちができるかも!」
 ルゥちゃんはよろこびました。
 さっそく、お外に出ようと思ったのですが‥お外に出ようとすると力がぬけていってしまいます。
「あれれ?」
 お外に出ることができません。
 しかたないので、お人形さんの『フレンディ』と遊ぼうと思っても、手に取ることができません。
 肉体がないから当然なのですが‥‥ルゥちゃんがそれを理解するのに時間がかかりました。
 ルゥちゃんはかなしくなって、泣いてしまいました。
 でも、その時‥‥
「あれ、だれかきたみたい‥‥もしかしたら‥‥おともだちになってくれるかな?」
 小屋に入ってきたのは、冒険者でした‥‥でも、ルゥちゃんを見るなり、あわてて逃げていってしまいました。
 ルゥちゃんは幽霊なのだから‥‥。
 幽霊となることで、病気で苦しむことはもうありません。
 でも‥‥そのかわり、みんなから嫌われる存在になってしまったのです‥‥。
「おともだちがほしいだけなのに‥‥」
 ルゥちゃんは、今日もボロボロの小屋の片すみで泣いています。

●変わった依頼?
「廃墟になった村の小屋に幽霊が出るみたいなんです‥‥」
 冒険者ギルドの受付のお姉さんは、ちょっと複雑なお顔で説明しました。
「幽霊がでる‥‥というだけで、被害は全く報告ないのです‥‥」
 説明によると、その小屋に入ると『おともだちになろう!』と幽霊が声をかけてくるそうなのです。
 おともだちといっても、だれも幽霊となかよくなろうとは思いません。
「強引に成仏させてもいいのですが‥‥その幽霊の姿がかわいらしい女の子で、敵意もないようですので‥‥彼女と友達になってあげてくれませんか?」
 どうやら、この依頼は幽霊とおともだちになるという、ちょっと変わった依頼のようです。

 お姉さんが説明するには、現世での未練を断ち切ることができれば、幽霊は成仏できるそうです。
 つまり、この幽霊騒動を解決するには‥‥。
 幽霊はおともだちがほしいといっています。だから、彼女とおともだちになればいいのです!
 冒険者のみなさん。どうか、このかなしんでいる幽霊を救っていただけませんか!?

●今回の参加者

 eb2849 沙渡 深結(29歳・♀・忍者・パラ・ジャパン)
 eb5311 シェリー・シグルーン(20歳・♀・バード・シフール・イギリス王国)
 eb7700 シャノン・カスール(31歳・♂・ウィザード・エルフ・イギリス王国)
 eb7706 リア・エンデ(23歳・♀・バード・エルフ・イギリス王国)
 eb8646 サスケ・ヒノモリ(24歳・♂・ウィザード・ハーフエルフ・イギリス王国)
 eb9296 霧島 屠龍(30歳・♂・浪人・人間・ジャパン)
 eb9318 カナミ・シロコグ(20歳・♀・ファイター・ドワーフ・イギリス王国)

●リプレイ本文

●幽霊ちゃんと遊ぼう!

●悲風
「‥‥さみしいところだね」
 シェリー・シグルーン(eb5311)ちゃんが、沙渡深結(eb2849)さんの愛馬『白石さん』にまたがりながら周囲を見渡すと、か細く小さな声でいいました。この辺りは荒野が続くだけで、目につくのは枯れた木や風化した動物の死体ばかり。こんな風景が続くと、心まで虚無になってしまいそうです。
 ヒューと横に冷たい風が吹きつけてきました。シェリーちゃんの声も横風にかき消されそうで‥‥何か体も心も冷たくなりそうな気分だったので、シェリーちゃんは防寒服の襟をギュッと締めてうずくまりました。
「どこまでこんな景色が続くのやら‥‥」
 ミドルボウを構えて先頭を歩いている霧島屠龍(eb9296)さんも、眼前一面の物悲しい荒野の情景に思わず嘆息してしまいます。生き物もほとんどいない場所ですから‥‥それを狙うモンスターもいないのでしょう。これまで、敵に出会うこともありませんでした。まさに、死の荒野です。
「あ〜、何か見えてきましたよ〜」
 おや? リア・エンデ(eb7706)さんが何か見つけたようですよ。彼女の指した方角を見てみると‥‥
「あの場所でしょうか」
 そこには、崩れた家がいくつか点在する地帯でした。深結さんはシェリーちゃんを乗せた白石さんを引き連れて近くに行きます。他の仲間も一緒について行きました。
 ここはかつて村だった集落でしょうか。でも今は誰もいない廃墟でしかありません。
「いかにも出そうな場所だな‥‥」
 サスケ・ヒノモリ(eb8646)さんが崩壊した家々を眺めます。どの家も崩れてとても住めるようなものではありませんが、そんな中にひとつだけボロボロだけどまだ使えそうな小屋があることに気づきました。
「ここかな? 彼女がいるってところは」
 小屋に近づき、恐る恐る中の様子を覗いてみるシャノン・カスール(eb7700)さん。窓からちょっとお邪魔して中を拝見してみると‥‥奥のほうに青白い存在がうずくまっているのが見えました。
「この小屋のようですね。お邪魔させていただきましょう」
 深結さんは近くの木に白石さんを繋ぎ、小屋の中へと入っていきました。

●さびしい幽霊
 小屋の中にはテーブルやベッド等、生活感のあるものがありますが、家と表現するには小さくて‥‥少ない人数で暮らしていたのでしょうか。冒険者のみなさんが入ると、ちょっと狭い感じがしました。
「‥‥あっ」
 物音に気づいたのでしょうか、部屋の奥でうずくまっていた存在‥‥幽霊が冒険者のみなさんへ振り返ります。でも、あわてて顔を背けると、目をゴシゴシ拭いて‥‥今度はとびきりの笑顔をみなさんへ見せました。
「いらっしゃいませ!」
「こんにちは〜、可愛い子ですね〜。お名前教えてくださいです〜」
 幽霊は可愛らしい女の子でした。彼女と目線を合わせてあいさつをするリアさん。
「わたしはルゥ! お姉ちゃんは?」
「ルゥちゃんっていうですか〜、私はリアっていいます〜。お友達になってくださいですよ〜」
 お友達!? と聞いてルゥちゃんは大喜びしました。
「じゃあ、俺も友達‥‥かな?」
 シャノンさんは何やら魔法を唱えると‥‥すこし地面から浮かび上がりました。
「じゃあ、突然のなぞなぞ。最初は4本足、次は2本、次は‥‥0? これ、な〜んだ?」
「えっ!? なんだろー?」
 ルゥちゃんはシャノンさんの問いに悩みます。
「答えは‥‥幽霊。赤ちゃんのときは手と足両方で動き、大きくなると二足歩行、最後は‥‥幽霊になって浮かんでるんだよ。ほーら、俺も君といっしょ。浮かんでるぞー」
「あ、なかまだー☆」
 地面から浮いて幽霊っぽい仕草をするシャノンさんでした。
「ここで少し遊びたいと思うんですが‥‥その前に部屋を掃除してもいいですか?」
 深結さんがルゥちゃんに尋ねます。小屋の中は長い間誰も住んでいなかったせいか、ホコリだらけです。家具もボロボロでした。
「うん! ありがとう!」
 ルゥちゃんは喜びました。ではさっそくお掃除です。
 深結さんは家小人のはたきを取り出すと、パタパタとほこりを落としていきます。
 シェリーちゃんは小物のお片付けとちょっと高い場所のお掃除。
 シャノンさんは魔法で浮かび上がって、天井についているクモの巣を取っています。
 リアさんはルゥちゃんと一緒に家具のセッティング。
 その指示を聞いてテーブルやベッドを動かしているのはサスケさんと屠龍さんでした。
 みんなのおかげでお掃除はあっという間に終了。
 お疲れ様でした☆
「ベッドの下からこのお人形が出てきたのですが‥‥」
 深結さんがお掃除の途中でお人形さんを見つけたようです。
「あ、フレンディ♪」
「お人形のお名前ですか? いいお名前ですね。でも、ちょっとほつれているところがあるので直しましょう」
「本当? よかってね、フレンディ!」
 深結さんは裁縫セットを取り出してお人形さんを直していきます。作業が終わると、深結さんはそのお人形を抱きかかえました。すると‥‥
『やぁ、ボクはフレンディ。ルゥちゃん、元気かい?』
「わ! フレンディがしゃべった!?」
 深結さんは声を変えて腹話術みたく、お人形さんがしゃべっているように見せました。ルゥちゃんは、そんなことがわかる訳もなく、お人形さんがしゃべっているように聞こえてビックリです。
「部屋も片付いたことだし、そろそろいいかな」
 そういうと、サスケさんは外からゴーレム達を連れてきました。
「わぁ! すごーい!」
 ルゥちゃんはサスケさんの連れてきた埴輪とウッドゴーレムに驚きました。大きくて動くお人形さんみたいなのは、初めて見るのですから。
「よし。部屋の端まで競争だ」
 ゴーレムのかけっこ大会です。『ここからあの線まで移動』と命令を送り、位置についてよーい、ドン!
 でも‥‥
「‥‥」
「‥‥」
「‥‥」
 埴輪とウッドゴーレムは動きません。
「もう少し親睦を深めないといけないな‥‥今回は引き分け!」
「あはは」
 でも、ルゥちゃんは珍しいゴーレムを見ることができただけでも大満足でした。
「俺はジャパンの遊びでも教えてやろうかな」
 屠龍さんはルゥちゃんにジャパンの遊戯『将棋』を教えることにしました。将棋はジャパンでしか手に入れる事ができないので、テーブルにマス目を書いて駒の代わりに石を置いて説明します。とりあえず、ルゥちゃんと屠龍さんが組んで、お相手はジャパン出身の深結さんにお願いしました。
 ルゥちゃんには複雑なルールはわかりませんが、屠龍さんと一緒に駒を動かしているだけでも楽しいのです。その時‥‥ルゥちゃんが駒を指そうとした瞬間、手が屠龍さんと触れあいました。
「!」
 ビリリ! と、電撃のようなものを感じた屠龍さん。痛みでちょっと声が出そうになったのですが‥‥
(「男でしょ? 我慢して!」)
 シェリーちゃんが屠龍さんの耳元でささやきます。
「どうしたの?」
 ルゥちゃんが何かあったのかと心配になった、顔を覗きこみます。
「あはは。女の子と手つないだ事ないみたいだから緊張してるみたい☆」
 と、シェリーちゃんがごまかしました。
「せっかくですから〜、みなさんで歌いませんか〜」
 お遊びも一段落すると、リアさんはシフールの竪琴を取り出して音楽を奏でます。シェリーちゃんも音楽に合わせて歌い、ルゥちゃんや他の仲間はリズムに合わせて踊りました。
「こういう時くらい、動いてくれよな」
 サスケさんは最後に『音楽が聞こえる間踊れ』とゴーレムに命令をしてみました。今度は命令を聞いてくれるようでした。ゴーレムなので動きはぎこちないですが、音楽に合わせて彼らも踊ります。ルゥちゃんも2体のゴーレムの間を飛び回って楽しそうです。
 音楽を奏でたり、歌ったり、踊ったり‥‥楽しい時間はあっという間に過ぎていきました。

●お別れ
「ずっと‥‥わたしとおともだちでいてくれるかな‥‥」
 もう、外は日が暮れて真っ暗になっていました。みんな遊び疲れて少し休んでいた時、ルゥちゃんが尋ねてきました。そして、彼女はそっと小さな手を差し出します。
「もちろんです〜、ずっと、ずっと、おともだちですよ〜」
 そう言って、差し出された手を見つめるリアさん。ルゥちゃんは幽霊です。触ると痛いのは知っていますが‥‥リアさんは思い切ってルゥちゃんの手を握り締めようとしました。
「っ!」
 ルゥちゃんの手に触れた時‥‥思っていた痛みはなく、何か暖かいものを感じました。
 そして、小さな手に一つ、また一つと大切なおともだちの手が重なっていきます。
「ありがとう‥‥あれ、かなしくなんかないのに涙が‥‥」
 ルゥちゃんは涙をこらえきれませんでした。そして、初めて知りました‥‥うれしくても涙がでることを。
「みんな、ずっとおともだちでいてくれるんだね!」
 うなづくのはみんな同時でした。その時‥‥ルゥちゃんの体が優しい光に包まれながら徐々に消えていきました。
 おともだちが欲しかった‥‥その願いが叶えられた瞬間、彼女を縛るものはなくなったのです。
「ずっとわすれないから‥‥もし、家族に会ったらたくさんおともだちができたっていってね‥‥」
 シェリーちゃんはかなしみをこらえ、最後は歌ってルゥちゃんを見送りました。彼女はおともだちがほしくて、この廃墟に留まっていたのですから‥‥冒険者のみなさんはその呪縛を解き放ったのです。お別れはかなしいけど、これがルゥちゃんにとって一番幸せなことなのでした。
「永遠に‥‥おともだちですぅ‥‥」
 消えていくルゥちゃんを見ながらリアさんは思いました‥‥歌にすれば誰かがこの小さなさびしがりやの女の子のことを憶えていてくれる‥‥と。
 そして、その姿が完全に消えた瞬間‥‥聞こえた? いや、心に響くようにこう感じました。

『ありがとう!』