シフールの抜け道

■ショートシナリオ


担当:えりあす

対応レベル:6〜10lv

難易度:普通

成功報酬:3 G 9 C

参加人数:5人

サポート参加人数:6人

冒険期間:11月30日〜12月05日

リプレイ公開日:2006年12月08日

●オープニング

 キャメロットの冒険者ギルドに3人のシフールが集まった。
 1人はシフール便の飛脚、1人は冒険の記録係、もう1人は冒険者のようだ。
「重要なお願いがあるんです‥‥我々、シフールにとって深刻な問題が発生しまして‥‥」
 手紙を詰め込んだ小さなかばんを持ったシフールがギルド員に事情を説明する。
「僕は飛脚だがら手紙を配達するのが仕事。この手紙を配達する村へ行くのに大きな森を通らないといけないのですが、普通にこの森を通ろうとすると2日くらいかかるんです。でも、シフールだけが知ってる抜け道を使うと1日もかからずに森を抜けることができるんですよ」
 シフール飛脚は少し慌てた表情で経緯を語った。
「でも、最近この抜け道の途中にモンスターが現れるようになって、通れなくなったんです」
 シフール達が使っているという森の抜け道に現れたモンスターが、彼らを襲っているようだ。
 仕方なく、今は遠回りをして森を迂回しているという。
「このままだと、僕も仕事が遅れちゃうし、他の仲間もちょっと不便になるから、何とかしてほしいんです」
「何とかしてほしい‥‥といっても、場所は私たちしか知らないんだから、案内人は用意してるよ」
 記録係のシフールがその森の抜け道を案内してくれるシフールを紹介した。
 彼は冒険者のシフールだった。
 冒険者ならば、途中で危険があっても何とかなるだろう。
「僕がそこまで案内するよ!」
 シフール冒険者‥‥彼はピックル・リックル(ez1020)と名乗った。
「モンスターはゴブリンの集団だよ。どうやら、抜け道の周辺に新しく住み着いたみたいなんだ」
 彼は抜け道の状況とモンスターについて説明する。
「ゴブリンくらいなら何とかなると思うんだけど‥‥この抜け道、舗装されてないし人が通るのは大変だからね」
 やはり抜け道というからには、舗装された道と違い、荒れた道を通ることになる。
 しかも、大きな森の道無き道を進軍することになるため、迷うと大変な事になりそうだ。
 シフールしか知らないのは、そういう理由からなのであろう。
「僕も抜け道はよく通るし、レンジャーだから森の地理にも詳しいんだよ。だから安心してね!?」
 満面の笑顔で自信を表情に表すピックル。
 そんな彼と共に、シフールしか知らない抜け道に現れるゴブリンを退治してほしい。

●今回の参加者

 eb3310 藤村 凪(38歳・♀・志士・人間・ジャパン)
 eb3349 カメノフ・セーニン(62歳・♂・ウィザード・エルフ・ロシア王国)
 eb3530 カルル・ゲラー(23歳・♂・神聖騎士・パラ・フランク王国)
 eb3630 メアリー・ペドリング(23歳・♀・ウィザード・シフール・イギリス王国)
 eb5363 天津風 美沙樹(38歳・♀・ナイト・人間・ジャパン)

●サポート参加者

カルナ・バレル(ea8675)/ フィーネ・オレアリス(eb3529)/ 稲生 琢(eb3680)/ イレクトラ・マグニフィセント(eb5549)/ ヴェニー・ブリッド(eb5868)/ 留菜 流笛(eb7122

●リプレイ本文

●シフールの抜け道
「この子たちをよろしく頼むわね」
 天津風美沙樹(eb5363)はペットをレクトラ・マグニフィセントに預け、冒険のあいだ面倒をみてもらうことにした。せめて馬くらい連れて行ける場所ならいいのだが、ちょっと難しいようだ。
「それじゃ、いってくるよぉ〜♪」
 途中まで見送りにきた留菜流笛らに手を振るカルル・ゲラー(eb3530)。一緒にきていたヴェニー・ブリッドは、しばしの別れを惜しむようにカルルの頭を無邪気にわしわしと撫で、彼を送り出した。

●道中
 メアリー・ペドリング(eb3630)は不思議に思った。
 我々シフールは危険が迫ったとき、飛んで逃げることができる。抜け道にゴブリンがいたとしても、飛んで迂回するとか方法はあるはずなのに、なぜ冒険者ギルドに依頼を出してまで排除しなければならないのか‥‥と。
「実はね。この抜け道の途中に、シフールが休んだり情報交換をする休憩所があるんだ」
 メアリーの疑問にピックル・リックル(ez1020)が答える。
「そこにゴブリンがいたら困るし、飛脚の仕事をしているシフールは情報交換も大切だからね」
 それに、非力なシフールだけではゴブリンの集団は倒しきれないから、とピックルは付け加えた。
「なるほど‥‥」
 メアリーは頷いた。
「それでは、ピックル殿は今までどのような冒険をされてきたのだ?」
 メアリーの質問に、仲間と共にモンスター退治の依頼をしたり、ケンブリッジへ勉強しにいったりしていたと答えるピックル。同じシフールの冒険者同士ということで二人は話が弾む。
「ふむ‥‥困ったのぅ‥‥」
 立派に蓄えられたあご髭を触りつつ、眉間にしわを寄せるカメノフ・セーニン(eb3349)。何が困ったのかといえば‥‥彼の視線の先にいる二人の女性‥‥藤村凪(eb3310)と美沙樹の装備である。二人は鷹をイメージして作られた鎧‥‥ホークウィングを纏い、カメノフの奥義『スカートめくり』をする隙を与えないのだ。
「‥‥爺様。また、やましいことをお考えになられているのですわね」
 美沙樹と視線が合った。ちょっと気まずい雰囲気。
「ほーほっほ。何のことかのぅ」
 とりあえず誤魔化しておくカメノフだった。
「作戦変更じゃ‥‥」

●森へ
「ここだよ。シフールの抜け道は」
 ピックルに案内されてシフール達が使っているという抜け道に到着した一行。予想していたとおり、人が通ることなど考えもしないような、まさに獣道だった。
「ま、案内人がおるし、迷子にはならへんやろ。そんなことより、どっから敵が沸いて出るかわからへんのが怖いわ」
 ピックルの後をついて行く凪は周囲の警戒を怠らなかった。
「わしは年寄りじゃが、こう見えても視力はいいからのぅ」
 カメノフは目視での索敵とブレスセンサーを合わせ、周辺を警戒する。
「あら。さすが女をいやらしく見るために、目だけは鍛えられているのですわね」
「そこを強調せんでもええじゃろうに!」
 美沙樹のオトナの余裕に満ちた発言に声を荒げるカメノフだった。

 ピックルの先導でシフールの抜け道を分け入る冒険者達。
「ひゃぁ‥‥ピックルくん、まってよぉ〜」
 荒れた狭い抜け道に苦心しながらも必死に進むカルル。シフールしか知らない‥‥いや、他の種族が知っていたとしても、使うことのない抜け道だということをカルルは身を持って体感した。これだけ苦労するなら、素直に舗装された一般道を使うだろう。
「このような抜け道があるとはな‥‥」
 メアリーは一行のやや上空を飛びながら進んでいた。この位置なら、もし敵襲があってもすぐに知らせることができる。
「シフール便の飛脚もここを使っていると聞く‥‥早く解決して、便りを待つ人々により早く確実に手紙が届くようになってほしいものだ」

●夜の森で
 シフールなら一日もかからないで到達できる距離だが、荒れた細い道を歩いて進む一行は二日かけてようやく目的地まであと少しという所まで来た。だが、時は既に夕方を過ぎ、森は暗闇に包まれていく。このまま強行し、戦闘になっても不利だということで、一旦休息を取ることにした。
「ホンマ、夜になると寒いわ‥‥」
 ウール入りの防寒服で寒さを凌ぎつつ、野営の用意を整える凪。美沙樹と共に、敵に見つかりにくいように場所をカモフラージュしたりしていた。

 夜も更け、不寝番のローテーションはカメノフに回ってきた。
「うひょひょひょ‥‥この時を待っていたぞい!」
 カメノフの目は血走っていた。
 もちろん、こんな夜更けにすることといえば‥‥
「の、覗きじゃ!」
 彼の興奮は最高潮に達しかけていた。湧き上がる興奮を抑え、とりあえず同士を誘う。
「何事も経験、経験‥‥おなごのあらわな寝姿じゃぞ? 後学の為にも見ておいて損はないぞい」
 まずは、カルルを起こしてを誘ってみる。
「そ、そんなぁ! 婦女子の寝ているところを覗くなんて不純だよぉ!」
 あっさりと拒否されるカメノフ。
 仕方なく、今度はピックルを叩き起こす。
「ピックル、おぬしもどうじゃ? メアリーちゃんなんか見てみたいと思わんかのぅ」
「僕、彼女いるから興味ないよ」
「な、なんと!」 
 あえなく撃沈。
「まったく、最近の若いもんは‥‥」
 結局、一人で覗きを決行するカメノフだった。
 抜き足、差し足、忍び足‥‥と、不可侵の聖域に忍び込むカメノフ。
 暫し後‥‥。

 ――パッシーン!!

 強烈なビンタの音と共に、悲鳴が聞こえた。

●シフールの休憩所
 翌日。
 カメノフは毛布に巻かれロープでグルグル縛りつけられた状態で放り出されているところを、カルルによって発見された。
「も、もう少し老い先短い老人をいたわらんか〜っ!」
 どうやら、敵襲対策に配置しておいた枝を踏んで音を出してしまったために、覗きを発見されたらしい。
「エロフは丈夫で長生きすると聞きましたわ」
「だ、誰がエロフじゃぁ! わしは立派なエルフじゃぞい!」
 冷めた視線でカメノフを見る美沙樹。残念ながら、今回は完膚なきまでカメノフの敗北だった。

 準備を整え、目的地に向かう一行。
「もう少しで休憩所に使ってる場所に着くよ」
 ピックルの案内で目的地周辺に辿り着いた。
 問題はここからだ。この辺りにゴブリンが出没するという。
「この近くにいるみたいじゃぞ‥‥一つ、二つ‥‥捉えられる限りでは五つじゃ」
 ブレスセンサーを使ったカメノフが、小言をつぶやくかのように言う。
「ゴブリンさんのお出ましだねっ」
 カルルはクルスソードを手に取った。
「どっから来るかわからんしな‥‥注意せなあかん」
 十手と愛刀である『宝寿さん』こと陸奥宝寿を構え、辺りを警戒する凪。
 慎重に、少しずつシフールの休憩所に近づく冒険者達。
「すぐそばにいるぞい‥‥」
 カメノフが声を潜めて言うと、皆一様にうなづく。
 目的地はやや広く、傍らに古い小屋があった。昔、猟師が使っていたものらしいが、今はシフール達の憩いの場となっている。
「あそこに何匹かおるわ‥‥」
 凪は茂みの中にゴブリンの姿を発見した。数は二匹。
 そこへ、カルルはゴブリンに気づかれないようにゆっくりと近づく。彼の後方上空にはメアリーが待機。
 美沙樹は目でカルルに合図を送ると、すばやく動いた。
「いっくよ〜っ☆ えいやっ!」
 背後からカルルがゴブリンへ襲い掛かる。同時にメアリーがグラビティーキャノンを唱え、もう一匹のゴブリンを吹き飛ばした。
 すると、騒ぎを聞いたのか、さらに三匹のゴブリンが駆けつける。
「こいつらはまかせて!」
 ピックルが飛び出すと、三匹のゴブリンの方へ向かう。
「ピックル殿! 無茶はなさるな!」
 メアリーが叫ぶが、大丈夫だよと返すとゴブリンを迎え撃つ。
「危なっかしいことしはるわ‥‥」
 その間に凪はゴブリンを切り伏せ、倒れているところにカルルの振りかざしたクルスソードが脳天を直撃。頭部を砕かれたゴブリンは絶命した。もう一匹のゴブリンも美沙樹によって斬り捨てられ、瀕死の状態となっている。
 ピックルはシフールの俊敏さと冒険者・レンジャーの技術でゴブリンを撹乱していた。そして、駆けつけた冒険者達によって、この三匹も瞬く間に倒されていく。
「まだ、いるようじゃぞ‥‥気を抜いてはいかん!」
 カメノフが声を張り上げると、茂みの奥からさらに二匹のゴブリンが現れた。五匹のゴブリンとは違い、鎧とフレイルで武装した戦士クラスのゴブリンだ。
「さすがに戦士クラスを相手にするのはこわいなぁ‥‥」
「私達でも怖いと感じるものはある‥‥けれど‥‥!」
 やや怖気づくピックルの横でメアリーはクエイクを唱え、突進してくるゴブリン戦士の動きを阻害しようとした。カメノフはサイコキネシスで大きな石を飛ばし、直撃を受けてうずくまるゴブリン戦士へ美沙樹が切りかかった。
「鎧を着ていたとしても‥‥見えますわ!」
 鎧がカバーしていない箇所を霞小太刀が撃ち抜く。強烈な斬撃によろめくゴブリン戦士に、凪が素早い連携で陸奥宝寿を突き刺す。痛みに悲痛な声を上げるゴブリン戦士を狙い、カルルが突き進んだ。
 ――グサッ
 カルルのクルスソードは腹を貫通し、ゴブリン戦士の口から大量の血がこぼれる。
「これで最後ですわね‥‥」
 崩れ落ちる片方のゴブリン戦士を尻目に、美沙樹がもう一方を氷のような冷たい視線で睨む。
「いくよ!」
 ――ウォォォォ!
 冒険者達が発した気合の声とゴブリン戦士の雄叫びが同時に森へ響き渡った。

●かるるくんのにっき
 最後におそってきたゴブリンさんはちょっと強かったよ。
 でも、ちゃんと倒すことができたんだ。
 おじ〜ちゃんがまほうでゴブリンさんがいないかしらべていたけど、もうあそこにはいないみたい。
 これで、またシフ〜ルさん達が抜け道を使うことができるようになったんだ。
 よかったねっ☆

 追記
 なんでオトナはオンナの人の寝ているところを覗きたがるのか、ぼくにはわかりません。